ポケットモンスター スカーレット・バイオレット - レビュー

「オープンワールド」なのはそんなに重要ではない

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』レビュー:「オープンワールド」なのはそんなに重要ではない
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「ポケットモンスター」シリーズは、第1作目がゲームボーイで発売されて以降、その通信対戦、交換といったアイデアや、クロスメディア展開などで大きく人気を伸ばし、今では「最も人気のあるゲームIP」と言っても過言ではない規模に成長した。

しかし、その圧倒的な人気ぶりに対して、ゲーム自体は毎回数世代遅れている印象を受ける。実際、このシリーズは元々、今で言う「インディーゲーム」に近い体制で制作された作品であり、その職人気質はGB、GBAなどの携帯ゲーム機で存分に発揮されていた。3DS、Nintendo Switchに入って、ゲームフリークの技術的な遅れが露呈してくるものの、「メガシンカ」などのアイデアや、舞台の文化的な作り込み、魅力的なキャラクターの数々などをみると、やはり「ポケモン」は他フォロワーの追従を許さないポテンシャルを持つシリーズであると再認識する。

 

とはいえ、今までその進化はだいぶ緩やかで、どこか保守的な印象があった。「ポケモン」は既にゲームフリークだけの問題ではなく、その関連会社である株式会社ポケモンや任天堂の業績すら左右する巨大なIP。断片的に新しいことには挑戦していても思い切った方向転換はしづらいのかもしれない。そういう意味で、『Pokémon LEGENDS アルセウス』における数々の挑戦は歓迎されるべきだと思ったし、本編シリーズの最新作が初のオープンワールドを採用するというのはかなりの大ニュースだ。

しかし、結論から言うと『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』における革新は「オープンワールド」部分ではなく、シリーズで初の「学園モノ」を採用したことにあるように感じた。本作のオープンワールドは、むしろその学園モノとしてのプレイを際立たせるために機能しているのである。とはいえ、本作がオープンワールドを採用することは公式も売り文句にしてきた部分であるし、まずはその部分から触れていこう。

本レビューは、発売日時点での『ポケットモンスター スカーレット』バーションを元に執筆している。

ポケモンに出会い捕まえる楽しさとは合うが、ストーリー進行といまいち噛み合わないオープンワールド部分

広大なフィールドを自由に探索する遊びと、「ポケットモンスター」シリーズのポケモンを捕まえるという遊びとの相性の良さはすでに『Pokémon LEGENDS アルセウス』が証明しているが、もちろん本作でもそれは健在だ。舞台となるパルデア地方には、水辺や森、乾燥した荒野や雪山、洞窟などバリエーションに富んだロケーションが存在し、フィールド上にはロケーションにマッチしたポケモンが400種類近く生息している。本編シリーズとしては初めて野生のポケモンとのバトルが完全にシンボルエンカウントになったため、メインストーリーをそっちのけで目につくポケモンを手当たり次第に捕まえたくなるし、過去作よりもポケモン図鑑を埋めるのが楽しく感じる。ある意味、他のオープンワールド作品と違い、それっぽいロケーションを用意してポケモンが湧くように設定するだけでオープンワールドとしての遊びが成立してしまうぐらいには相性がいいのである。

ポケモン図鑑の本棚のようなデザインのUIもかなり可愛らしい。特に図鑑登録時の、情報がケースに収まって本棚にしまわれるような演出はかなりグッとくる。ケースはポケモンごとに異なる表紙を持っており、1匹1匹そのポケモンの特徴にあったスクリーンショットが使われているようだ。

オープンワールドになったことで、プレイヤーが特定の道路を通るとは限らなくなったため、フィールドにいるトレーナーは過去作のように視線の先を通っただけで勝負をしかけてくるということはなくなり、プレイヤーが話しかけた時だけ勝負をすることができるようになった。戦闘が面倒だというプレイヤーは最悪ほとんどトレーナーと戦わなくともクリアが可能で、レベルが足りないという場合だけ経験値目当てに戦いにいくということもできる。

手持ちのポケモンを野生のポケモンにけしかけることで自動で戦ってくれる「レッツゴー」という機能も新たに追加された。これを使用すると、もらえる経験値が下がるものの、連続でいくらでもそのあたりにいるポケモンを倒すことができるので、これもレベル上げに重宝する。なので、全体を通してバトルはほぼプレイヤーの任意のタイミングでできるようになっており、フィールドの探索を阻害しない仕様はシリーズとしては新しい。

パルデアのフィールドを探索する上では、「コライドン」、「ミライドン」の存在も欠かせない。彼らは伝説のポケモンでありながらかなり序盤にライドポケモンとして仲間になる。単純に乗ることで徒歩より早く移動でき、徒歩状態ではできないジャンプをすることもできる。最初はそこまで機動力は高くないのだが、メインストーリーを進めるごとにどんどん能力が開放されていき、最終的には「滑空」や「崖登り」などによってフィールドを縦横無尽に駆け回ることができる。

ポケモンの捕獲が主体だった「アルセウス」と本作が異なるのは、「ポケモン」シリーズの本編らしい「ジム戦」や、いわゆる「悪の組織」との戦い、「ライバル」とのバトルなどがメインストーリー上で描かれる部分。ポケモン図鑑を埋める遊びは従来作品と同じようにサブの目的となっている。

本作のメインストーリーは3つのルートに分かれている。ルートには、8つのジム戦に挑戦し、チャンピオンクラスを目指す「チャンピオンロード」、秘伝スパイスを求めて、ヌシポケモンを討伐する「レジェンドルート」、スター団と呼ばれる学校の不良達に立ち向かう「スターダスト★ストリート」があり、オープンワールドらしく、好きなルートから攻略することができる。最終的には3つのルートを終えることで1つのルートに合流し、パルデア地方の謎に迫るストーリーが展開される。

各ルートの目標をクリアするたびに挟まる写真が毎回可愛く、モチベーションに繋がる。

ただし、この3つのルートによるストーリーの描き方がオープンワールドとして正しく機能しているかと言われれば疑問が残る。公式サイト上で「フリーシナリオ」として紹介されているこれらのルートだが、本作には手持ちのポケモンに応じてレベルが最適化されるというようなシステムはないため、結果的には適正レベルに沿った攻略順になる。各ルートもだいたい均等に攻略が進められるように配置されている。例えば「チャンピオンロード」を進めるためにジム戦を終えて、次のジム戦を目指そうとしたとき、ルート上には大体「スターダスト★ストリート」の目標であるスター団のアジトや「レジェンドルート」のヌシポケモンが生息している場所がある。プレイヤーごとに多少の変動はあっても、自由な攻略ができるゲームであるとはいい難く、ジムとジムの間に悪の組織とのバトルが挟まるような従来作品とプレイ感覚はあまり変わらない。

一応、序盤にこれらのルートが開放されたとき、アカデミーのある街の「西門から行くか」、「東門から行くか」といった分岐があり、これによってパルデア地方を「右回り」に攻略するか、「左回り」に攻略するかといった大きめの差が出てくる。しかし、これに関しては悪手だったようにも感じる。

筆者は最初、街の東門から出て右回りに攻略していった。途中大陸の北に位置する雪山に差し掛かる辺りで、一度街の西門から出て左回りのルートも攻略することにしたのだが、右回りに攻略を進めてだいぶ手持ちのポケモンのレベルが上がっていたため、西門を出てしばらくは敵のレベルが低すぎてレベル差でゴリ押しできてしまった。最初にプレイヤーが西門からでても東門から出ても大丈夫なように、どちら側も同等にレベルが低く設定されているのである。最終的には雪山に戻ってきてまた適正なレベルになったが、攻略すべき目標のうち1/3以上が消化作業のようになってしまっているのはかなり痛い部分だ。ゲーム後半に作業感が出てしまうのを嫌うユーザーは、別ルートに切り替える際にパーティの総入れ替えを行うなどすると本作のメインストーリーを100%楽しめるかもしれない。

どちらにせよ、これは本作のオープンワールドとしての自由度が中途半端に演出された結果発生した問題のように感じるし、下手に西・東に分岐させず、プレイヤーの進行ルート自体は固定してしまってもよかったのではないかと思う。もしくは、プレイヤーの手持ちに合わせた難易度変化などを組み込めば正しくオープンワールドらしい自由な攻略順を実現できたかもしれないが、これに関しては手持ちをボックスのポケモンと交代できるシステムや、進化や多様な技覚えなど「ポケモン」ならではの要素との相性が悪く、適切な難易度に調整することがかなり困難になることは間違いないだろう。

シリーズの最新作としてオープンワールドを採用したことは、ポケモンを自由に捕まえる楽しさという面においてはプラスに働いているが、シリーズならではのストーリー進行はそれに追いつけていない印象だ。

学園モノであることを最大限に生かしたシステムとメインストーリー

冒頭でも述べたように、本作はオープンワールドになったことよりも学園モノになったことのほうが新しいと感じている。主人公の立場が学園の生徒であるということをしっかりと活用し、ゲーム全体を通してまとまりのあるシステムとストーリーを実現しているのだ。

舞台となるパルデア地方、その中央にはこの地方で最大の都市となる「テーブルシティ」が位置している。テーブルシティの最上層、最も目立つ位置に、スカーレット版では「オレンジアカデミー」、バイオレット版では「グレープアカデミー」と呼ばれる学園が建っている。

物語は、パルデア地方に引っ越してきた主人公が学園に初登校するところから始まる。本作における冒険は学校の課外授業という体になっており、パルデア地方を旅して外の世界への見聞を深めることを目的としている。課外授業中に何をするのかは生徒次第だが、ゲーム的には、ご近所さんでバトル大好きな「ネモ」や、登校中に出会った先輩の「ペパー」などのキャラクターに勧められ、上述の3つのルートが開放される形となっている。

学園での課外授業という設定は本作における冒険とかなりマッチしている。ポケモン図鑑を埋めるというシステムや、ゲームの進行に合わせてだんだんとポケモンのタイプ相性、技やとくせいなどのシステムをプレイヤーが理解していく過程は、学園の生徒として「勉強」をする立場である主人公とリンクする。同級生や先輩、先生など、学園モノならではの立ち位置にある登場人物と主人公との関係性は今までのシリーズではあまり見ない新鮮なもので、シリーズの得意とする特徴的なキャラ付けもより際立って感じられる。学園の中を探索して、メインキャラクターに話しかけることでちょっとしたサブイベントが進行していくといった仕掛けもあり、これもシリーズではあまり見ない学園モノならではの要素と言える。

もちろん、従来どおりジムリーダーたちも皆魅力的だ。動画配信者兼ジムリーダーというかなり今風な女性や、ラッパーでピチピチな格好のいかついおばさま、発売前から大人気の中性的でクールなこおりタイプジムリーダーなど、このシリーズは相変わらず個性的で印象に残るキャラクター作りが非常に上手い。特に本作をプレイした人はみんな好きであろうノーマルタイプのジムリーダー「アオキ」は最高で、「いたって普通のサラリーマン」を皮肉ったようなキャラクターは今までのシリーズではあまりなかったアプローチかもしれない。

学園モノであることは設定上の飾りではなく、システムの上でもしっかりと機能している。一番特徴的なのは、学校のエントランスからいつでも受けられる「授業」という要素。授業には「歴史」や「数学」、「生物」や、「言語学」、「バトル学」といったものまで様々あり、それぞれ異なる担当の先生による講義を受けることができる。講義は複数回に分かれて行われるが、中間テストや期末テストなどもあり、実際にテストに答えて合格を目指すことになる。特に「歴史」の授業は本作の世界観を紐解く重要な設定がいくつも語られるため興味深い。先生たちも皆かなり個性的で、テキストも秀逸。講義の中にはゲームとは関係なくわりとためになる話なども含まれている。

キャラクターカスタマイズに関しては、帽子やメガネ、靴などは自由にショップで購入して着替えることができるものの、服に関しては今のところ購入はできず、春服、夏服、秋服、冬服の4種類の制服から選択する形になっている。人によっては残念な部分かもしれないが、個人的には学園の生徒としてのロールプレイが万全な本作において、むしろこれはプラスな部分だと感じている。とはいえ、クリア後なら服替えが開放されてもよかったのではないかと思うし、今後のアップデートで追加される可能性にも期待したい。

本作のメインストーリーで描かれるテーマも「友情」、「家族」、「不登校」など学園モノらしいものになっており、3つのルートはそれぞれ演出やBGMなどのノリも差別化されている。「チャンピオンロード」は、ライバルとの切磋琢磨と言える内容で、ジムバッジを集めていくというサイクルもあり、かなり従来作品らしい雰囲気のストーリー。「レジェンドルート」は、「サン・ムーン」や「アルセウス」などにあったボス戦の役割を担っており、ペパー先輩の少し特殊な家族関係がメインの話となっている。「スターダスト★ストリート」は学園モノという設定を最も生かしたストーリーで、不良となったスター団達に真摯に向き合う校長先生の姿勢が熱い。

最終的には1つのルートに合流し、そこからクライマックスにかけての展開が描かれる。それらの展開も、ベタではあるが効果的に作用しており、3つのルート上を進めるなかで描かれていた伏線も鮮やかに回収される。純粋に終盤のミステリアスな雰囲気はかなりワクワクさせられるし、キャラクター達もより深掘りされ、演出面でも印象的な仕掛けが用意されている。ストーリーに関しては近年の「ポケットモンスター」作品の中で一番面白いと断言できる内容だ。

 

本作において新たな挑戦といえる要素はもうひとつある。それは「ポケサークル」と呼ばれるマルチプレイ要素で、合言葉などを入力することでプレイヤー同士が集まって、広大なパルデア地方を一緒に冒険することができる。面白いのは、マルチプレイ中プレイヤーたちは一緒に行動をする必要は必ずしもなく、メインストーリーなども問題なく進行が可能になっているということだ。筆者は友人とボイスチャットをしながらこのポケサークル機能でマルチプレイしつつ、実際にはお互いに全く別の場所に赴いてストーリーを進めるといったプレイをしていた。

マルチプレイ中にほとんど会うことがないのであれば、そもそもやる意味があるのかと思うかもしれないが、本作においてこれはおそらく想定されたプレイであり、離れていても緩く繋がれる機能がいろいろと備わっている。そのうちの1つとして、マップ上に点在する結晶にアクセスすることで挑むことができる「テラレイドバトル」がある。「テラスタル」と呼ばれる、ポケモンが結晶化する現象がパルデア地方では近年見られるようになっている。そのテラスタル化したポケモンに集団で挑んで捕まえることを目的とする要素で、開始時に募集をかけることでサークル内のプレイヤーに通知され、瞬時に参加して共闘することができる。

ほかにも、ポケサークル中のプレイヤーとはいつでもポケモン交換や対戦をすることができ、それらはすべてプレイヤーの座標に関係なくいつでも行える。たまに顔を合わせた時にはエモートでリアクションをしたり、一緒に自撮りをして記念写真を撮ったりといったこともできる。とはいえ、やはりマルチプレイ要素としてはかなり薄い繋がりで、仮に離れず冒険をしたとしてもトレーナーとのバトルやストーリーを協力して遊べるわけではない。チャット機能などもないため、裏でボイスチャットなどをしていることが前提といえるデザインになっている。ただ、「ポケットモンスター」シリーズとしてはやはりリアルタイムで他のプレイヤーと同じ空間に居られるというだけでもかなり新鮮で、それだけでもかなりわくわくさせられた。

本作の対戦において重要な新要素である「テラスタル」についても触れておこう。ただし、筆者はオンライン対戦用のポケモンをレビュー執筆までに準備できなかったので、メインストーリー及びレンタルチームでの対戦からのテラスタルに対する所感であることに留意いただきたい。

「テラスタル」は、バトル中にポケモンを一度だけ「テラスタル化」させることのできる要素で、テラスタル化したポケモンはそのポケモンの持つ「テラスタルタイプ」に応じたタイプに変化する。変化したタイプと同じタイプの技の威力が2倍になるという効果もあり、ここぞというタイミングで使う切り札としての要素になっている。過去作にも、似たように切り札として運用する「メガシンカ」や「ダイマックス」が存在したが、それらと比べればポケモンの能力値が変化するわけでもないためすこし地味に映るかもしれない。

ただ、純粋に技の威力がアップするというだけでも十分に強く、元々高い威力の技を持つポケモンのさらなる火力強化のために使うのが主流になると思われる。本作から追加された、技のタイプがテラスタルタイプと同じになる「テラバースト」という技を採用し、相手の意表をついたタイプに変化した上で反撃するといったことも可能だ。そのポケモンの持つ弱点を補う形でテラスタルを使うのか、長所を伸ばす形で使うのかといったことを考える必要があり、今までよりもさらにパーティ編成で考えるべきことは複雑になり、試合もより読み合いが加速する形となるだろう。

グラフィックの品質の低さとパフォーマンスの問題点

もうすでにだいぶ慣れてきてはいるのだが、やはり本作のプレイを開始して数時間はそのフィールドのグラフィック品質の低さに驚きを隠せなかった。遠景は異様にのっぺりとしており、ライティングも非常にチープに感じる。描画負荷を軽減するための処理は何重にも重ねられており、かなり近づかないと表示すらされないオブジェクトの影や野生のポケモン、近づくと急に回り始める風車など、違和感を生じるレベルのものがかなり多い。ここまで切り詰めていながらフレームレートはガタガタで、フィールドを駆け回る時には10フレーム出ているか怪しい場面も多々ある。確かにNintendo Switchのハードウェア性能は決して高いとは言えないが、それでも本作は発売までにすべき最適化の水準を大きく下回っているように感じてしまう。ただし、室内や戦闘時などでは比較的パフォーマンスは安定している。

現在、インターネット上でも本作で起きた様々なバグが拡散されている。ただ、筆者の場合は致命的と言えるバグにはほとんど遭遇しなかった。クリアまでに2回ほどエラー落ちがあったものの、本作はオートセーブがデフォルトになっているのでそこまで影響はない。ユーザーの規模の大きさゆえ、よりバグが発見、拡散されやすくなっているということも考えられるため、バグだらけのゲームと印象づけて警戒する必要はないと思われる。とはいえ動作が不安定なのは間違いなく、ここは今後のアップデートにて改善を期待したい部分だ。

逆に、建物や室内などのグラフィックについてはむしろかなり良い。特に室内にかんしてはパルデア地方やアカデミーの文化がしっかりと垣間見えるデザインになっており、生活感が感じられる。それだけに、今回は民家などに入ることがほとんどできないのは少しさみしい部分だ。

キャラクターモデルの品質も高く、今回はアニメーション、フェイシャルアニメーションに特に気合が入っている印象をうけた。バトル開始時やテラスタル発動時、ストーリー中のカットシーン時などにキャラクターの個性が際立つアニメーションを見ることができる。ポケモンのアニメーションにもバリエーションがあり、バトル中の凛々しい動きはもちろん、手持ちのポケモンを場に出してコミュニケーションが取れる「ピクニック」中には普段と違うオフな姿も見せてくれる。

なんだかんだ、このシリーズにとって一番重要なのはやはりポケモンとキャラクターであり、そこに力が入っているのであれば良いのではないかという気もするが、せっかくのオープンワールドのフィールドをもう少し心地よい空気感で楽しみたかったというのも事実だ。

とはいえ、「学園モノ」を基軸としたメインストーリーとその仕掛けの上手さや、同級生や先生など今までのシリーズにはなかった関係性、シリーズ初の同じフィールドでのマルチプレイなど、シリーズの最新作としては十二分に新しいことができており、それも全体を通してかなりの品質で仕上げてきている。グラフィックやパフォーマンスの問題さえなければシリーズ最高傑作という声もより多く聞かれていたのではないかと思える内容で、「ポケットモンスター」シリーズのポテンシャルをより感じると同時に、シリーズの技術的な問題がより露呈してしまったことは残念に思う。

長所

  • 近年のシリーズで最も仕上がっているメインストーリー
  • 学園モノの設定をしっかりと活かしたキャラクターとシステム部分
  • ポケモンを捕まえる遊びとオープンワールドとの相性の良さ
  • 緩く繋がれるオンラインマルチプレイ

短所

  • グラフィックの品質がかなり低い
  • 不安定なパフォーマンス
  • オープンワールドと噛み合っていないストーリー進行

総評

シリーズ初の「学園モノ」としての設定を生かした主人公とキャラクター達との関係性や、最終的に集結し、終盤にむけてミステリアスになっていく展開、そしてしっかりと仕掛けが用意されてるクライマックスなど、本作のメインストーリーはシリーズでもトップクラスの仕上がりとなっている。同一のフィールドで遊べる新しいオンラインマルチプレイや、対戦を左右する新しい切り札テラスタル、協力型のテラレイドバトルなど長く遊べる要素も多数用意されており、このあたりもシリーズの最新作として申し分ない。ただ、やはりオープンワールド部分はまだ上手くいっているとは言い難く、シリーズの特徴的なシステムと噛み合わせることに苦戦している印象だ。とはいえ、縦横無尽にフィールドを駆け回ってポケモンを捕まえられる体験はやはりシリーズとしては新鮮で、パフォーマンスやグラフィックなどの問題点を除けば、本作はシリーズ最高傑作と言っても過言ではない作品だろう。

※購入先へのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、そちらの購入先での販売や会員の成約などからの収益化を行う場合はあります。 詳しくはプライバシーポリシーを確認してください
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『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』レビュー:「オープンワールド」なのはそんなに重要ではない

8
Great
シリーズ初の「学園モノ」として、キャラクターや終盤のミステリアスな展開、しっかりと仕掛けが用意されているクライマックスなど、本作のメインストーリーはシリーズでもトップクラスの仕上がりだ。新しいオンラインマルチプレイやテラスタル、テラレイドバトルなど長く遊べる要素も多数用意されており、最新作として申し分ないが、シリーズ初のオープンワールドの扱いには苦戦している印象を受ける。
ポケットモンスター スカーレット・バイオレット
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