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藤田朋子・57歳、父の最期を振り返り「生きていれば、必ずそういう時期が来る」

 東日本大震災で家族全員を失い、深い贖罪の意識と喪失感に苛まれていた主人公が、職場の介護施設での出会いを通して成長していく姿を描く映画、『こわれること いきること』が現在公開中です。
藤田朋子さん

藤田朋子さん

 高齢化社会にも光を当て、人の生き方や人生の終焉で願うこととは何かを観る者に改めて問いかける“人間の尊厳”に迫る命のヒューマンドラマに、俳優の藤田朋子さんが出演しています。  藤田さんは、主演の吉田伶香さん演じる遥の恩師で、認知症を患い、夫婦で施設に入居する由美子役を好演しています。どういう想いで本作に取り組み、由美子役を演じたのか。話を聞きました。

“福島県への想い”もありオファーを受ける

――本作のオファーを受けた際、どのような印象を抱きましたか? 藤田朋子(以下、藤田):母が福島県喜多方市の出身なこともあり、震災直後から「ごしごし福島基金」という団体に参加して除染のお手伝い等をしてきました。そういったご縁もあって、福島の震災も扱う作品ならば、自分の役柄どうこうではなく、ぜひやらせていただきたいと思いました。 ――なるほど、かなりパーソナルな意味での接点もあったのですね。 藤田:そうですね。実は、わたしが演じた役はもっと年齢が上の方が演じたほうがいいのではないかと感じ、「私は童顔なので認知症を患うような年齢に見えないですし、介護施設に入るような年齢でもないですが、本当にわたしでいいのでしょうか?」と、何回か監督とやり取りさせていただきましたが、「大丈夫です」というお返事を頂き、それならば、とお受けすることにしました。

役作りへの思い

『こわれること いきること』より

『こわれること いきること』より© 三英堂商事/アイ・エム・ティ

――いくつものメッセージが込められた物語だと思いますが、ご自身ではどう受け止めていますか? 藤田:両親を失った主人公の遥が失望の中から希望を見出し生きていこうとする作品であることと、福島だけでなく、日本人全体が抱えている高齢者の方々をとりまく課題、日本の介護の仕組みなどが描かれていて、とても複雑で深い話だと思いました。 ――決して遠い話、他人事ではないですよね。 藤田:そうですね。みんな生きていれば、必ずそういう時期が来るものですよね。私の父も亡くなる前には認知症を発症しましたので、身近に感じました。監督は介護の現場に携わる方々の仕事の大切さや、生きていくことの素晴らしさを伝えたかったのだと思います。 ――由美子役は、どのように作り上げていったのでしょうか? 藤田:彼女は回想シーンを除いて、すでに認知症が発症しています。監督からの特別な指示はなかったので、同じ病気の症状の方の ドキュメンタリー映画を探して、その方を参考に所作、表情を取り入れたつもりです。
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遥の痛みを皆さんに感じてもらえたら
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