ベンチャー企業に就職するメリット・デメリットは?【先輩社会人にアンケート】

“ベンチャー企業”という言葉は耳にしたことがあっても、「具体的にどういう企業のこと?」「ベンチャーじゃない企業とはどんなところが違う?」といった疑問を持つ就活生もいるのでは?どのような企業を“ベンチャー企業”と言うのか、働く上でのメリット・デメリットなどをプロに聞きました。また、新卒でベンチャー企業に入社した先輩たちに、入社動機や入社してみて感じる魅力や不満を聞いたアンケート結果も紹介します。

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ベンチャー企業とは?

ベンチャー企業とはどんな企業のことを指すのでしょうか?会社の規模や従業員数、設立年数などで定義が決まっているのか、人事として新卒採用を20年担当し、現在はさまざまな企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんに聞きました。

ベンチャー企業の定義はある?

「資本金が〇円以下で、従業員が〇人、設立年数が〇年以下」というようなベンチャー企業の明確な定義はありません。ただ、英語のベンチャー(venture)には、「(危険を伴う)冒険・投機」という意味があります。そこから派生して、日本では新しい技術やビジネスモデルを展開し成長する企業のことをベンチャー企業と呼んでいます。そのため「成長志向」と「新規性」を持った企業が、ベンチャー企業だと言えるでしょう

「成長志向」に関しては、新しいものを生み出そうとする“成長の度合いの甚だしさ”が指標になります。資本金や出資の総額、従業員の数という観点では中小企業に分類される企業でも、成長志向が高いと「ベンチャー企業」と言えるでしょう。

また、ベンチャー企業の根本にあるのは「新規性」。新しいことへのチャレンジには変化が伴うため、時として事業内容や社内の体制が流動的で曖昧な状況があることもベンチャー企業の特徴と言えるでしょう。

 

中小企業について詳しく知りたい人は、こちら↓
【プロが解説】中小企業に就職するメリット・デメリットは?どうやって選んだらいい?

「スタートアップ」「メガベンチャー」とはどんな企業?

また、「ベンチャー企業」と似た言葉に「スタートアップ」「メガベンチャー」があります。明確な定義はありませんが、企業の成長フェーズに応じて以下のように使い分けされるようです。

スタートアップ

会社を立ち上げて間もない段階のベンチャー企業は、スタートアップ企業と呼ばれることがあります。企業の体制や事業が混沌(こんとん)とした時期で、事業転換も多く、会社の方向性を定めようとしている段階だと言えます。そのため、スタートアップは少数精鋭のプロ集団であることが多く、新卒採用を実施していないところもあるでしょう。

スタートアップから少し進むと、事業内容がある程度固まり、資金調達を終え、組織づくりにまい進しようという急成長期に入ります。このフェーズの企業を「ベンチャー企業」と呼ぶことが多く、新卒採用をスタートするタイミングも重なります。

メガベンチャー

メガベンチャーは、成長と新規性を追求したまま、規模が拡大した組織を指します。順調な成長により従業員が数千人まで増え、企業規模が拡大すると、多くの企業は変化よりも安定性を重視するようになります。そんな中でも、ベンチャーのマインドを残したまま変化を好み、新たな事業創造にまい進する企業が、メガベンチャーと呼ばれています。

ベンチャー企業の多い業界、地域は?

ベンチャー企業は「成長志向」と「新規性」を持った企業と言えるので、成長している業界にはベンチャー企業が多いと言えるでしょう。IT業界のほか、現時点で大きい業界ではないものの、最先端の技術が求められる人工知能、医療関連のベンチャー企業が立ち上がっています。

ベンチャー企業の多い地域についても、「マーケットが伸びている地域」と言うことができるでしょう。日本においては、東京や大阪が該当します。

なお、日本において外資系資本のベンチャー企業は見かけません。中国や、東南アジアなど、人口が多かったり増えていたりする地域では、マーケットの伸びが期待できるでしょう。しかし、少子高齢化により経済規模が縮小していく日本は、マーケットの伸びは期待できないからです。

 

外資系企業について詳しく知りたい人は、こちら↓
外資就活の参考に!外資系企業のメリットは?日系企業との違いは?

ベンチャー企業で働くメリット・デメリットは?

ベンチャー企業で働くことにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょう。社風や給与、福利厚生、将来性などの観点で、曽和さんに聞きました。

給与

比較的低いケースが多いでしょう。これから事業成長というフェーズで給与を高く設定しておくことは、経営陣にとってリスクになるからです。ただ、固定給が低くても、やった分だけインセンティブがもらえる、ストックオプション(株式会社の経営者や従業員が自社株を一定の行使価格で購入できる権利)があるなどのメリットがあるとも言えます。

福利厚生

大手企業と比べると、ベンチャー企業は資産面での体力が劣るため、退職金制度や保険などの福利厚生は整っていないケースが多いでしょう。

ただ、事業推進に役立てるために、福利厚生を充実させる企業もあります。例えば、会社の近くに住む人に住宅補助を支払うことで社員同士の交流を増やしたり、採用力を上げるためにおしゃれなオフィスにしたりするなどが挙げられます。

また、必要な制度は自分から声を上げて作っていくこともできるでしょう。

社風

学生起業家が立ち上げた会社か、あるいは一般企業で経験を積んだ人たちが起業したかで、集まっている人材が異なり、それにより社風も変わってきます。

学生起業家が立ち上げたベンチャー企業の場合は、似た価値観の仲間が集まる一様性の高いケースが多くあります。ただ、だからこそ勢いがあり、意思決定のスピードが速いとも言えます。

社会人経験を経た人の集うベンチャー企業は、それぞれの領域で知識と経験を積んだプロフェッショナルが集結しているので、キャリアのロールモデルは多岐にわたります。専門性を持ったプロしか必要としないスタートアップ期に、このようなベンチャー企業に新卒で入るのは難しいでしょう。しかし、入社して活躍できる力があるのなら、プロ集団にもまれ人的ネットワークを広げられる点で、今後のキャリアの貴重な糧になっていきます。

 

社風が合う企業」に興味がある人の企業選びのコツ

将来性

ベンチャー企業は、成長過程にあり、会社としてまだ安定していないので、メリットがあるとすれば将来性という観点からでしかありません。将来大きく成長する可能性を秘めていますが、一方で事業が継続できなくなるリスクも十分に考えられます。

なお、事業によって当り外れがあるので、ベンチャー企業の将来性を正確に予測するのは難しいでしょう。

ベンチャー企業で働くのに向いている人は?

ベンチャー企業に向いているかどうか、次の4つの性質で自分がどちらに当てはまるか考えてみるのも一つの手です。

楽観⇔慎重
変化⇔安定
多様性⇔一様性
未知⇔既知

左側に書かれている価値観の方が当てはまる人が、ベンチャー企業的な志向性が高いと言え、“楽観的で変化志向で、多様なものを受け入れ、知らないものに出会うことが好き”な人は、ベンチャー企業により向いていると言えるでしょう。

ベンチャー企業で働く人々のイメージ

ベンチャー企業に新卒入社した先輩に聞いた、入社理由は?

では実際に、ベンチャー企業で働く先輩たちは、どんな思いで企業を選び、入社後の今どう考えているのでしょう。新卒でベンチャー企業に入社した社会人300人にアンケートを実施し、リアルな声を集めました。

■どのような点に魅力を感じてベンチャー企業への入社を決めましたか?(n=300、複数回答)

「どのような点に魅力を感じてベンチャー企業への入社を決めましたか?」アンケート結果のグラフ

 

最も回答が多かったのは、「仕事内容」(51.7%)という結果に。「自身の成長」(35.0%)、「企業の成長性」(26.0%)と回答した人も多くいました。
そのほかは、「社風」(23.3%)、「福利厚生」(16.7%)、「経営者の人柄や理念」(15.7%)、「給与」(15.3%)、「働き方」(10.0%)、「社会への貢献度」(9.0%)という結果になりました。

それぞれに、具体的に感じた魅力について聞いたコメントを紹介します。

仕事内容

・研究室でやっていた内容に関連した事業だった(電機業界)
・これからの成長産業で働ける(インターネット業界)
・海外から製品を仕入れていることもあり、海外と触れる環境があること、大学時代に学んでいた英語を生かせると思った(専門商社)
・最先端の技術を近くで見られる(インターネット業界)

自身の成長

・さまざまな資格を取得できる環境が整っているため、ステップアップできる(インターネット業界)
・若手のうちから難しい課題に取り組ませてもらえる可能性にひかれた(冠婚葬祭業界)
・裁量のある仕事を若いときからすることで、どこに行っても通用する人材になれると思った(インターネット業界)
・安定性がないところで自分がいかに働けるか知りたかった(リース業界)

企業の成長性

・毎年業績が伸びており、業務内容にも成長性が見込めた(通信業界)
・これから伸びる、ニーズがある市場だった(人材業界)
・上場企業となった(インターネット業界)
・急成長している会社の様子を近くで見ることができて良い刺激になると感じた(インターネット業界)

社風

・若い人が多く、やりたいことをやれる(ソフトウェア業界)
・合理性を重視していて、論理的なコミュニケーションができる人たちが多い(人材業界)
・自分の趣味を大切にしてくれたり、社員同士で誕生日を祝ったり、風通しの良さを強みとしていた(自動車業界)

福利厚生

・家賃補助があった(不動産業界)
・近距離手当があった(人材業界)
・保育園がある(介護・福祉業界)
・社員旅行がある(レジャー・アミューズメント業界)

経営者の人柄や理念

・経営者と世代が同じで、理念にも共感した(ソフトウェア業界)
・ビジョンがしっかりしていて、自信を持って仕事をしていた(建設業界)
・社員と一緒になって行事やイベントに参加してくれるすてきな人でした(自動車業界)
・社員の負担を減らすためにさまざまなシステムの導入を検討してくれる(電機業界)

給与

・年功序列ではない(インターネット業界)
・新卒としては高めの初任給だった(電機業界)
・企業が成長すれば今より給料が上がり、やる気につながると思った(医薬品業界)
・人事考課がきちんとしている(ファッション・アパレル業界)

働き方

・時間内で成果を出し、無駄な残業はしない(通信業界)
・フレックス制度、テレワークが充実している(ソフトウェア業界)
・正社員、時短社員、アルバイトを選択できる(その他販売業界)
・社長の下で働ける(インターネット業界)

社会への貢献度

・仕事の効率化に寄与する仕事(SI業界)
・人手不足が叫ばれている業界に対する貢献度が高い(電機業界)
・福祉活動にも積極的だった(自動車業界)

ベンチャー企業に新卒入社した先輩に聞いた、働いてみて感じる魅力は?

続いて、入社して働いてみた中で感じたベンチャー企業の魅力について聞いてみました。

■ベンチャー企業に入社後、働いてみて感じる魅力はどこですか?(n=300、複数回答)

「ベンチャー企業に入社後、働いてみて感じる魅力はどこですか?」アンケート結果のグラフ

 

アンケートの結果、入社前に感じた魅力と同様、「仕事内容」(50.0%)が最も回答が多いという結果になりました。同様に「自身の成長」(36.0%)と回答した人も多くいました。

そのほかは、「社風」(17.3%)、「企業の成長性」(17.0%)、「給与」(14.0%)、「福利厚生」(12.7%)、「働き方」(12.0%)、「経営者の人柄や理念」(9.3%)、「社会への貢献度」(7.3%)という結果になりました。
こちらも具体的にどんな魅力を感じたのか聞いたコメントを項目ごとに紹介します。

仕事内容

・自分に合っていて楽しかった(インターネット業界)
・計画から実行まで携わることができてやりがいを感じた(製薬業界)
・目に見えて成果がわかる(放送局)
・社員一人ひとりの権限が大きく、企画や意見が通りやすかった(教育業界)

自身の成長

・事業所の立ち上げなど経験し、上からの指示に従うのではない行動が身についた(人材業界)
・入社して間もないころから担当を任せられることで、自分を追い込んで挑戦することができて、自信がついた(食品業界)
・やりたいと声を上げたことへ参画させてもらえる、それ以外にも適性がありそうなことには積極的に声がかかる(人材業界)

社風

・先輩でも後輩でもなんでも言える風通しのいい社風(自動車業界)
・堅苦しくなくて、自由な感じ(インターネット業界)
・社内イベントが多い(人材業界)

企業の成長性

・売り上げが伸びている(インターネット業界)
・アジア方面で急成長している(SI業界)
・大きな案件も受注していて今後さらなる活躍ができると思っている(SI業界)
・事業所の移転や上場に向けた動きなどがあった(人材業界)

給与

・納得した額をもらえている(インターネット業界)
・年齢に対してもらえている(自動車業界)
・ボーナスが良かった(インターネット業界)
・やった分だけ即給与に反映される(人材業界)

福利厚生

・各種手当が充実している(自動車業界)
・有給休暇が取りやすい(自動車業界)
・産前産後休暇、育児休暇などの取得が可能で、周囲の人の理解があった(銀行業界)

働き方

・フレックスで働きやすい(製薬業界)
・定時で帰れる(インターネット業界)
・子どもがいても働きやすい(介護・福祉業界)
・チームでやるが、欠員しても大丈夫なように予定を組んである(自動車関連業界)

経営者の人柄や理念

・社会貢献への思いや社員を大切にしてくれる(自動車業界)
・成果を正当に評価し、還元しようとしている(通信業界)
・一緒にご飯に行って親身になって話を聞いてくれた(自動車業界)

社会への貢献度

・社会のインフラにかかわる部分の仕事ができて、非常にやりがいを感じた(SI業界)
・困った人を救えている実感があった(インターネット業界)
・世界中に支社を増やしている(インターネット業界)

ベンチャー企業に新卒入社した先輩に聞いた、働いてみて感じる不満は?

ここまで、ベンチャーで働く魅力について先輩の声を紹介してきました。では、逆に入って感じたギャップ、不満はあったのでしょうか? こちらも、寄せられた意見をご紹介します。

■ベンチャー企業に入社して不満に感じることは何ですか?

・教育制度と評価制度が明確ではなかったため、自分が会社に求められている役割を見失いそうになった(インターネット業界)
・社内のルールや業務分担がしっかりと決まっていないので、電話に出た者が対応しなければいけないし、判断に困ることが多かった(電機業界)
・毎年体制が変わるので、ついていくのが大変だった(人材業界)
・幅広い仕事ができる一方で、移り変わりも早い(インターネット業界)
・社長の独断に振り回されやすい(教育業界)
・他社との競争が激しい(SI業界)
・新卒でも意見を言ってくれと求められることが多く、意見を言うまでの知識がないので困った(クリエイティブ業界)

ほかにも「人が足りないのに仕事は増える」(インターネット業界)、「給料がなかなか上がらない」(ブライダル業界)などの声も。ベンチャーのメリット・デメリットは、まさに捉え方次第ということがわかります。

自分に合うベンチャー企業の見つけ方、探し方

ベンチャーとひと言で言っても、業態はさまざま。自分に合う会社はどのように見つけるといいのでしょうか。曽和さんに聞きました。

自己分析でベンチャー企業向きか見極める

まずは、成長志向と新規性を求める“ベンチャー”自体が自分に合うかどうか、自己分析から始めましょう。
事業内容や社風、経営陣の人柄などリアルな情報を得るのに、オススメしたいのはインターンシップ等のキャリア形成支援プログラム。大きな企業だと、就業体験をしても全体像を把握するのは難しい。でも、ベンチャー企業であれば、現場の社員から社長まで全員の様子を見て、会社の雰囲気が自分に合うかどうか、社長の思いに共感できるかどうかを見極められるでしょう。

新商品の展示会やベンチャーキャピタルのホームページで情報収集を

ベンチャー企業の情報を幅広く集めたい人は、大型イベント会場で行われている業界別の新商品展示会などに顔を出してみては。あるいは、ベンチャーキャピタルのホームページで、投資している企業リストを見ることで、今後の成長が見込まれる業界、企業が見えてくるでしょう。ただ、それらの企業が新卒採用をしているかはわかりません。就活サイトや採用ホームページなどと並行して情報収集することをオススメします。

 

志望企業・業界を考える際は、自分の価値観を知っておくことが大切です。「リクナビ診断」は、日常の行動や考えに関するさまざまな質問に答えることで「向いている仕事のタイプ」と「個人としての特徴」を知ることができます。

 

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【調査概要】
調査期間:2019年7月19日~22日
調査対象:「新卒時点でベンチャー企業に入社した」と回答した社会人300人
調査協力:株式会社クロス・マーケティング

 

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曽和利光さんプロフィール写真

【監修】曽和利光さん
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『人事と採用のセオリー 成長企業に共通する組織運営の原理と原則』(ソシム)など著書多数。最新刊に『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)がある。

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記事作成日:2019年9月26日 記事更新日:2022年1月27日
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