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「京義線完全断絶、祖国統一塔撤去せよ」対南機関を整理する金正恩委員長

登録:2024-01-17 07:59 修正:2024-01-17 08:48
朝鮮中央通信の16日の報道によると、北朝鮮は15日、平壌の万寿台議事堂で最高人民会議第14期第10回会議を行い、南北会談と南北交流業務を担当してきた祖国平和統一委員会と民族経済協力局、金剛山国際観光局を廃止することを決めた/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮は15日に行われた最高人民会議第14期第10回会議で、祖国平和統一委員会(祖平統)、民族経済協力局、金剛山国際観光局など、南北会談と経済協力を導いてきた機関を廃止することを決めた。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が南北を「敵対的な二つの国家の関係」と規定し、対南路線を根本的に転換すると述べたことを受け、民族関係を象徴した対南機関の整理に乗り出したのだ。金総書記は、祖父の金日成(キム・イルソン)主席と父の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の統一遺訓の関連施設もなくすよう指示しているため、南北交流協力の再開の可能性を完全に遮断したと評される。

 祖平統は、朝鮮労働党中央委員会統一戦線部の外郭機関として1961年5月13日に発足。2016年6月に国家機関へと格上げされた。韓国と国外同胞に対して南北・統一問題に関する宣伝活動をおこなってきた。2018年3月に板門店(パンムンジョム)の北側で南北首脳会談の準備に向けた高官級会談が開催された際には、祖平統のリ・ソングォン委員長(当時)が北側代表団の団長を務めるなど、南北会談を主導してきた。だが、その後は2021年3月にキム・ヨジョン労働党副部長が談話で「現情勢でもはや存在する理由がなくなった対南対話機関である祖平統を整理する問題を日程にあげざるを得なくなった」と述べるなど、権限と機能が大幅に弱まっていた。

 北朝鮮は、南北関係の硬直で事実上断絶していた経済協力関連の対南機関も廃止を公式化した。民族経済協力局は、2007年に結成された南北経済交流協力共同委員会が稼動していた時期に支援していた北側の機関だ。同委員会は鉄道や道路の接続だけでなく、農水産、保健医療などへの交流協力分野の拡大にも貢献してきた。金剛山国際観光局もまた、金剛山観光事業をおこなっていた現代峨山との実務協議および会談を担っていた機関だ。

 北朝鮮は祖平統廃止などに先立ち、6・15共同宣言実践北側委員会、祖国統一汎民族連合北側本部、民族和解協議会、檀君民族統一協議会も廃止することを決めている。13日付の労働新聞が報じた。ただし北朝鮮は現在までのところ、対南業務を総括する統一戦線部の改編案は示していない。

 金正恩総書記は施政演説で「京義(キョンウィ)線の我々側の区間を回復不可能な水準に物理的に完全に切断しておくことをはじめ、境界地域のすべての北南連携条件を徹底的に分離するための段階的措置を厳格に実施しなければならない」とも指示した。「すべての北南連携条件」に言及していることを考えると、南と北をつなぐ鉄道や道路などのすべての交流窓口を閉鎖するよう指示したと解釈される。金総書記は、「祖国統一3大憲章記念塔」も「見苦しい」として撤去するよう指示した。

 京義線などの鉄道の南北連結事業は、2000年に金大中(キム・デジュン)大統領と金正日国防委員長が発表した6・15共同宣言の産物であるため、金総書記の指示はこれを否定する試みだと解釈しうる。ただ、鉄道が断絶して久しいため、北朝鮮が改めて取る措置はないと考えられる。6・15共同宣言後に接続された京義線の文山(ムンサン)~開城(ケソン)間は、2007年に南側から開城工業団地まで貨物輸送が実現しており、東海(トンヘ)線の江陵(カンヌン)~安辺(アンビョン)間の接続も推進された。しかし2008年の李明博(イ・ミョンバク)政権発足後は南北関係が硬直し、いずれも中断された。

 祖国統一3大憲章記念塔は、金正日国防委員長が父親の統一遺訓を称えるため、2001年に平壌(ピョンヤン)の関門である楽浪(ランナン)区域の統一通りの入口に建設を指示したもの。「祖国統一3大憲章」とは、金日成-朴正熙(パク・チョンヒ)時代の7・4共同声明にもとづいて発表された、祖国統一3大原則▽高麗民主連邦共和国創立案▽祖国統一のための全民族大団結10大綱領のこと。

 統一研究院のホン・ミン先任研究委員は「金総書記はもはや先代が遺産として残してきた統一綱領を継承する必要がなくなったと判断した。先代が建てた諸施設をなくすよう指示したことも、そこに脈絡がつながっていると考えればよい」と評した。

チャン・イェジ、シン・ヒョンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1124714.html韓国語原文入力:2024-01-16 20:06
訳D.K

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