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[記者手帳] 高高度防衛ミサイル配備と南北関係

登録:2015-04-13 09:43 修正:2015-04-17 15:48
米国の対韓半島ミサイル防衛体系。//ハンギョレ新聞社

 大きな波紋を呼んだ在韓米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備置問題は、アシュトン・カーター米国防長官の訪韓で峠を越した。カーター長官が10日、「THAAD生産完了時期はまだ決まっておらず、生産が完了した後に配備の可能性や何基生産するかが決定が下されるだろう」と比較的明瞭に現在の状況を説明したためだ。予め事情を話していたら生煮えの議論が起きることもなかったはずなのに、なぜ米国は今まで韓国で様々な憶測が飛び交うのを放置してきたのか気がかりだ。

 今回の騒動は、韓国社会が北朝鮮の軍事的脅威の前で心理的にいかに脆弱であるかを示すことになった。もちろんそれが理解できないわけではない。米国の反核団体「天然資源保護協会」(NRDC)が2004年10月に政府秘密文書を分析して公開した「朝鮮半島核使用シナリオ」によれば、北朝鮮が広島型原爆と同じ威力(TNT 15キロトン)の核をソウルの龍山に投下した場合、62万から125万人が亡くなると予測される。南北の敵対的対決意識が今のように高まった状況で“ならず者”の北朝鮮が核ミサイルを撃たないとは誰も断言できない。泥棒に一度もあったことがなくても丈夫な鍵をかけておかなくては安心できないのが人の心理だ。北朝鮮が核をミサイルに搭載するほどの小型化の能力があると信じるに足る情報はないとする政府発表も、特に慰めにはならない。

 それでもTHAADが解決策になるかは疑問だ。THAADの実戦能力については米国でも議論が分かれる。米国国防省のマイケル・ギルモア兵器運用試験評価局長は先月の議会報告書で「今までの飛行実験と信頼性実験データを分析すると、THAAD体系の構成部品は各実験の間で一貫性や確かな信頼性向上を示していない」と評価した。

 ミサイルをミサイルで当てて撃ち落とすというミサイル防御構想自体が、終わりのない「矛と盾」の戦いで知られる古びた問題提起が相変らず有効だ。米軍当局は昨年、中国が極超音速滑空ミサイル(HGV) 「WU-14」を3回試験発射したのを探知して非常事態に陥った。マッハ10に達する途方もない速度で飛ぶWU-14は既存のTHAADでは防ぎ難いためだ。そこで米国では迎撃ミサイルの速度と交差点を拡張した「THAAD-ER」の開発を推進しているという報道もされている。さらに鋭い矛と盾を追求する“矛盾”の消耗戦に終わりは見えない。

 問題は韓国の安保をいかに確保するかにある。THAADの軍事力だけで安全が保障されるだろうか。南側が北側の34倍もの軍事費を使っていながら不安であるという現実は、韓国の安保が軍事力の優位でだけでは確保できない性質であることを物語ってはいまいか。

 実際に、鍵だけで、いや警察力だけで家が安全になることはない。隣との友好関係、さらには町内、社会の信頼関係のほうが重要だ。だからこその南北関係である。南北の敵対的対決意識を和らげなければ、天文学的な軍備を費やしたところで私たちの不安は常に現在形だ。

パク・ビョンス政治部先任記者//ハンギョレ新聞社

 安保は軍事力だけの問題ではない。 交流と協力、対話と交渉の外交が伴わねばならない。私たちが北朝鮮に対し軍事的手段ばかり固執する理由は何なのか。互いに行き来して交流と協力、理解の幅を広げ、軍事的緊張を低める方法から目を逸らす理由などない。南北間交流と協力のための譲歩は一方的恩恵などではないのだ。

 THAAD配備はいずれまた問題にされるだろう。再び米国と中国のうちどちらか一方を選ばなくてはならない賛否論争を行わねばならないのだろうか。そうではないはずだ。南北関係の改善で朝鮮半島の安保環境を、対決と葛藤から平和と協力に変え問題の火種をなくす努力が急がれる。

パク・ビョンス政治部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-04-12 19:01

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/686470.html 訳Y.B

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