『アクセレレート・ジャパン』27号

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#27. SPRING 2020

変化する世界

歩みを止めないリーダー達


TRADE SHOW 1-2 September 2020 - GLOBAL

Be Part of the World’s First Global & Virtual Natural Refrigerants Trade Show!

ATMOsphere is launching the world’s first natural refrigerant virtual trade show, taking place on 1st - 2nd September 2020. The event will be free to attend.

www.atmo-marketplace.com


出 版 者 挨 拶 // 3

変化する時代を生き抜くために − ヤン・ドゥシェック

2

ヤン・ドゥシェック 出版者

020 年 2 月に発行された『アクセレ

開発の最前線を、バーチャルで体験いただ

レート・ジャパン』26 号の発行から、

く。メーカーとエンドユーザーによる対面

今号が世に出されるまでに世界は大きな変

のコミュニケーションを、オンラインで実

化に見舞われました。新型コロナウイルス

現する。オンラインという舞台に場所を移

感染症(COVID-19)の感染者数は、世界

しつつも、環境にクリーンな技術の開発や、

で猛威を振るってい ま す。 日 本 だ け で も

持続可能な社会の追求という、将来に向け

15,000 人以上の感染が確認され、行政によ

たメッセージは変わりません。これまで皆

る外出自粛要請、全国規模の緊急事態宣言

様が作り上げてきたよい時代の流れを停滞

発令に至りました。国内は 2 月から 3 月に

させず、さらに一歩前進するきっかけとし

かけ、冷凍冷蔵空調業界の展示会が一斉に

て、オンラインカンファレンスがお役に立

開催される「スーパーフェブラリー」の時

てればと考えています。

期でもありましたが、感染者数拡大に伴い 「HVAC&R JAPAN 2020」の開催が中止と なりました。同様に、5 月開催を予定して

もうすぐ 5 周年を迎える『アクセレレート・

いた「FOOMA JAPAN 2020 大坂」も開催

ジャパン』も、新たな世界に向けた変化を

中止が決定されています。

目指します。これまで私達は、業界を牽引 するステークホルダーの皆様から、多くの

日本だけでなく、世界 各 国 に も 展 示 会 中 止の余波が広がって い る 中、 本 誌 発 行 の

shecco では新しい世界に対応するべきだ として、2 月からある準備を進めてまいり ました。それは時代の変化に対応した、国 際会議や展示会の開催。すなわち、オンラ インカンファレンスの第一歩へ踏み出すと いうことです。自然冷媒の市場動向や技術

有意義な情報を得て、それを市場に提供し てきました。これからは、今まで以上に市 場にとって有益な情報を、よりタイムリー にコンテンツとして提供することを目指し、 コンテンツ提供のプラットフォームを革新 して参ります。詳細は近日中に発表を予定 しております。私達からの報告を、ぜひ楽 しみにお待ち下さい。 JD

ご意見ご感想はこちらまで japan@shecco.com

Spring 2020 // Accelerate Japan


#GoNatRefs

The Future of Air Conditioning JUNE 23-24, 2020

ONLINE


編 集 長 挨 拶 // 5

次なる選択肢として 台頭する炭化水素 − 佐藤 智朗

2

020 年 2 月 の「 ス ー パ ー フ ェ ブ ラ リー」は、かつてない困難と直面しま

した。同時期に世界的な感染拡大を見せた新

そして、2 月 10 日には本誌発行の shecco が 主催する自然冷媒国際会議「ATMOsphere

Japan 2020」 が 開 催 さ れ ま し た(P20)。

型コロナウイルスの影響により、 「HVAC&R

今回で 7 回目を数える本会議では、政策動

JAPAN 2020」が中止。無事開催にこぎつ

向、業界リーダーセッション、エンドユー

けた各展示会でも、来場者数が前年を下回る

ザーパネル、技術ケーススタディ、そして

などの事態に見舞われました。5 月開催予定

自然冷媒市場の成長に貢献した功労者達を

だった「FOOMA JAPAN 2020」も中止が発

讃える、『アクセレレート・ジャパン』賞の

表されるなど、国内外の多くのビジネスシー

表彰式を実施。各分野の専門家やリーダー

ンが、変化を求められることとなったのです。

達が、HFC の段階的廃止に向けたライフサ イクルマネジメントの見直し、自然冷媒ソ

激動のさなかに開催が実現した「スーパー マーケット・トレードショー 2020」(P46) と「HCJ2020」(P54) で は、 例 年 以 上 に 炭化水素機器の展示が目立ちました。新製

リューションの最前線、エンドユーザーの 取組みの「今」を発表してくれました。政 策、技術、導入事例の実態を知る機会として、 ぜひご一読ください。

品発売に向けた参考展示なども見られ、幅 広い小売業態に、同冷媒の可能性を示す展 示会となりました。国内外の自然冷媒導入 事例も、喜ばしいニュースが届いています。 オーストラリアでは、冷凍冷蔵倉庫の分野 に前川製作所が初上陸(P16)。ローソンは 中国・上海市内にて、同国初のノンフロン 店をオープンさせました(P18)。本事例に は、パナソニックの CO2、炭化水素それぞ のシステムを採用。長らく CO2 冷媒の技術 を牽引し、さらにソリューション拡大を目 指すパナソニックには、これからの戦略を

また本誌では、第 4 世代冷媒の HFO にま つわる議論について、気候ネットワーク 東 京事務所長の桃井 貴子氏に寄稿頂きまし た(P58)。あらゆる業界が経済的に停滞し、 自然冷媒市場にも大きな影響がありました。 それでも、各界のリーダーが歩みを止めず に進み続けている様子を、心強く感じます。 その姿をより多くの関係者に伝えられるよ う、『アクセレレート・ジャパン』も成長と 進化を続けてまいります。

取材しています(P12)。

ご意見ご感想はこちらまで japan@shecco.com

Spring 2020 // Accelerate Japan

佐藤 智朗 編集長


6 // 目次

目次

12

10年の歩みに続く、次の1年 パナソニックの2019年度の総括と 2020年度戦略 パナソニック株式会社アプライアンス社

03

出版者挨拶

05

編集長挨拶

コールドチェーン事業部長の冨永氏に聞いた、これ までの総括と未来戦略

次なる選択肢として 台頭する炭化水素

08

本誌について

10

業界ニュース

// メ ー カ ー 取 材

変化する時代を生き抜くために

16

オーストラリアに「NewTon」が初上陸 株式会社前川製作所

オーストラリアに前川製作所の「NewTon」が初上陸

本誌の詳細について

業界の最新ニュース

Accelerate Japan // Spring 2020


18

ノンフロン店をオープン 株式会社ローソン

上海市内に、CO2・炭化水素両冷媒を採用 した店舗がオープン

20

58

ローソンが中国で初の // 市 場 動 向

// エ ン ド ユ ー ザ ー 取 材

目 次 // 7

ATMOsphere Japan 2020 開催レポート 2月10日にsheccoの主催する

// イ ベ ン ト レ ポ ー ト

政策動向セッション

28

業界リーダーセッション

気候ネットワーク 桃井 貴子氏寄稿

各国のHFOにまつわる研究調査と今後 の方向性について

46

炭化水素製品の初披露、続々と スーパーマーケット・トレードショー2020

第54回スーパーマーケット・トレードショーが 開催、多くの自然冷媒機器が展示

ATMOsphere Japan 2020が開催

24

第4世代冷媒HFOのたどるべき道

ライフサイクルマネジメントのさらなる強化へ

自然冷媒を軸に、進化し続ける高効率システム

32

エンドユーザーパネル

38

アクセレレート・ジャパン賞 授賞式

40

技術ケーススタディ

社会的責任に向き合う事業者の挑戦

3部門で功労者達を表彰

自然冷媒にさらなる付加価値を

Spring 2020 // Accelerate Japan

54

炭化水素ソリューション拡大 HCJ2020

炭化水素の内蔵ショーケースを中心に、ノンフ ロン製品のラインナップ拡充を感じさせる展 示会となった


8 // 本誌について

#27. SPRING 2020

Accelerate Magazine Spring 2020 Volume 5, Issue #27

創刊者 マーク・シャセロット marc.chasserot@shecco.com @marcchasserot

出版者 ヤン・ドゥシェック jan.dusek@shecco.com

編集長 佐藤 智朗

執筆者 ヤン・ドゥシェック 岡部 玲奈 佐藤 智朗 デビン・ヨシモト マイケル・ギャリー キャロライン・ラム 桃井 貴子(寄稿)

アクセレレート・ジャパンについて 自然冷媒に関する情報発信の世界的エキスパートsheccoがお届けする アクセレレート・ジャパンは、あらゆるHVAC&R分野で自然冷媒ソリューシ ョンを取り扱う、最も革新的なビジネスリーダーの皆様を対象とした日本 初季刊誌です。

翻訳者

http://acceleratejapan.com

尾松 貴美

アクセレレート・ジャパンの出版社であるsheccoは、ベルギー・ブリュッ

広報マネージャー

セルに本社を構え、日本・東京、アメリカ・ニューヨーク、オレゴン、そして

ヤン・ドゥシェック

オーストラリア・シドニーに支社を持つことで、グローバルなネットワーク を形成しています。

デザイン 工藤 正勝 アナ・サルホファー ジュリアナ・ゴメス

写真 ベン・ビーチ 佐藤 智朗

広告掲載について 広告掲載の申し込みは下記までご連絡ください。 広報マネージャー : ヤン・ドゥシェック

jan.dusek@shecco.com 080-2165-9629

本誌上で寄稿者により示される見解は、必ずしも本 誌 発 行 元 の 見 解を表 すもので はありません 。本 誌 に掲載する内容の正確性については万全を期して いますが、掲載内容の誤り・脱漏により発生するい

取材の申し込みやご提案について 取材のお申し込みやご提案は下記までご連絡ください。

か なる影 響 につ いても、発 行 元 は 一 切 の 責 任を負 いません。 アクセレレート誌はsheccoJapan株式会社が発行

編集長 : 佐藤 智朗

しています。無断複写・転載を禁じます。著作権者か

tomoro.sato@shecco.com

らの書面による事前の許可なしに、本誌の全部また

080-4353-8232

は一部を複写・複製することを禁じます。

Accelerate Japan // Spring 2020


本社 〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町 2-10 大阪支店・工場 / 滋賀工場 / 福岡営業所 / TEL : 03-5579-8830 FAX : 03-5579-8831

東日本サービスセンター / 北海道サービスセンター


10 //

業界ニュース

業界ニュース フロン排出抑制法施行

炭化水素の指定製品化に向けて

フロン排出抑制法(正式名称 : フロン類の使用の合理化及び管理の

2 月 15 日、経済産業省産業構造審議会のフロン類対策ワーキング

適正化に関する法律」 )が改正、2020 年 4 月 1 日に施行された。

グループの会議が開催。新たな指定製品の目標値、目標年度の設

国内ではフロン機器を廃棄する際、フロン回収を業者に義務付けて

定案が公表された。その中で、ビル用マルチエアコンは 2020 年度

きた。しかし 10 年以上にわたり、フロンの廃棄時回収率は 4 割弱

中に指定製品化を行うとして、GWP の目標値は R32 を想定した

と低迷。2020 年度に 50%、2030 年度に 70% という目標達成に

750 に設定、目標年度は 25 年度を目指すことが示された。同会議

向け、対策強化が課題となっていた。この状況を抜本的に解決する

では、一般社団法人日本冷凍空調工業会(日冷工)が業務用内蔵型

ため、改正法ではフロン回収を行わない事業者への直接罰の導入、

冷凍冷蔵機器についても言及。同機は R404A、R410A といった高

廃棄物・リサイクル業者等にフロン回収済み証明の交付の義務付け、

GWP 冷媒が中心として使用されており、低 GWP 冷媒への転換が

解体工事発注者へ各種確認記録の保存義務付けといった項目を追

急務とされている。転換先の候補の 1 つである炭化水素は、近年

加。確実にフロン類回収が行われるよう、都道府県の指導監督、各

注目されている一方で可燃性など安全性が懸念される。日冷工は炭

事業者それぞれに対する仕組みの強化が実施された。一般社団法人

化水素を使用した場合の安全性評価を検討し、安全規格の原案を整

日本冷媒・環境保全機構(JRECO)は、フロン類および機器の管

備するほか、独自に廃棄業者向けに「廃棄の手引」の原案を作成し

理状況を把握できるクラウドシステム「RaMS(ラムズ) 」につい

た。現時点での指定製品化は厳しいとしつつも、速やかな指定製品

て、改正法に対応したアップデートを追加。JRECO では改正法に

化を目指したい考えだ。

伴い「RaMS」のへの関心が高まっているのを受けて、ネット上で の情報発信の他、改正法の専用冊子も発刊している。

Accelerate Japan // Spring 2020


エ ン ド ユ ー ザ ー 取 材 // 11

苫小牧埠頭、道内最大級の倉庫に

ヨコレイ、気仙沼新センターに

アンモニア/CO2 を採用

アンモニア /CO2 冷凍機を設置

北海道苫小牧市で倉庫業、港湾運送業等を営む苫小牧埠頭株式会社

4 月 24 日、横浜冷凍株式会社(ヨコレイ)は宮城県気仙沼市に水

は、4 月 28 日に同社運営の温度管理型冷凍冷蔵倉庫「北海道クー

産加工・保管施設の「新気仙沼ソーティングスポット」 (仮称)の

ルロジスティクスプレイス」 を竣工した。倉庫は敷地面積 28,441㎡、

新設を発表。2021 年 6 月末の竣工を目指す。同社が気仙沼市に建

延床面積 14,738㎡を誇り、温度管理型冷蔵倉庫としては道内最大

設する拠点として、同施設は 3 代目を数える。敷地面積 15,792㎡

級となる。倉庫では省エネ・環境対策として外断熱工法を採用する

のセンター内では、魚の選別、箱詰め、脱パン等の作業の自動化

ほか、アンモニア /CO2 冷媒機器を使用。同倉庫は苫小牧国際コン

によって、省力化を図る。冷却設備については、F 級用にアンモニ

テナターミナルに隣接し、5 月下旬以降に稼働を予定している。

ア /CO2 冷凍機を 2 基、低温室用にアンモニア /CO2 冷凍機を 1 基、

C 級用の鮮魚置き場に CO2 冷凍機を 1 基、凍結用にアンモニア直 膨式のスクリュー冷凍機を 5 基設置予定である。

日水物流、新拠点が稼働開始。 冷凍機には「NewTon」を再び採用 日水物流株式会社は 4 月 1 日、新たに竣工した大阪舞洲物流セン ター 2 号棟の稼働を開始したと発表。延床面積 16,000㎡の 2 号棟 を増設したことにより、舞洲物流センターの設備能力は倍増したこ ととなる。同社は前川製作所株式会社の「NewTon」をこれまで採 用してきたが、2 号棟にも同機を設置。環境配慮の姿勢を保持した まま、同社が保有物流センターでも最大規模の拠点が完成した。

Spring 2020 // Accelerate Japan


12 //

メーカー取材

10 年の歩みに続く、次の1年 パナソニックの2019年度の総括と 2020年度戦略 CO2 冷凍機およびショーケースの分野で、毎年多くの納入実績を重ねるパナソニッ ク株式会社アプライアンス社。2019 年 4 月 1 日付の組織変更および人事異動にて、 同社のコールドチェーン事業部 事業部長に冨永 弘幸氏が新たに就任した。本誌は

2020 年 1 月、群馬県大泉町に位置する、同社のコールドチェーン事業部の拠点 である東京製作所を訪問。冨永氏に 2019 年度の総括と、これからの戦略につい て語ってもらった。 文 : 佐藤 智朗、岡部 玲奈

右 : 冷凍機営業部 島田 賀久氏 左 : 事業推進部 橘 秀和氏

Accelerate Japan // Spring 2020


13 メ ー カ ー 取 材 //

市場変化に合わせた戦略 2019 年度も、本誌ではパナソニックの取り組みを多く特集してきた。 前号で掲載した、株式会社東急百貨店が 2019 年 11 月にオープンさせ た「渋谷スクランブルスクエア」にて、ハマ冷機工業株式会社と共同で 開発した国内初の CO2 水冷式内蔵型ショーケースを納入した事例や、同 社のタイ工場でプロパン(R290)、イソブタン(R600a)という 2 つ の炭化水素冷媒ショーケースの製造に乗り出したというニュースは、記 憶に新しいところである。CO2、炭化水素の両方で、新技術開発や生産 体制の構築により機器提供の土台を整えたパナソニックの 2019 年度は、 大きな転換期であったと冨永氏は言う。

2019 年度の市場に目を向けると、政府主導の補助金による自然冷媒採 用が進み、キガリ改正や国内法でのフロン規制強化に伴う R404A の価 格上昇が、日本を含めた世界各国で起きている。こうした情勢が、市 場全体でのエンドユーザーの自然冷媒転換に拍車をかけたと言えるだろ う。その一方で、2019 年度は日本の小売店舗の設備投資を減速させる 問題に直面する 1 年でもあった。近年深刻化する人手不足に対する、運 営形態の見直しである。コンビニエンス大手の一部では、営業時間の短 縮実験が行われた。それによる売り上げ減少の影響により、同年度の新 規店舗出店計画も下方修正に動いたであろうと推測でき、新店を中心に 採用されてきた CO2 冷凍機にも波紋を呼んでいる。「私達の事業にも、 少なからず影響が出ています。CO2 冷凍機の出荷ペースは当初の計画を 下回り、現時点で前年比から 6 ポイントの減少をしました。日本市場で は今後、新規店舗出店に伴う自然冷媒機器の提案よりも、リニューアル での機器転換により重きを置いた上で、市場活性化に向けて動くことと なるでしょう」

小売業界の市場動向に注視しつつ、目指すは新たなマーケットの開拓だ。 冨永氏は食品加工工場、冷蔵倉庫などの産業用分野の領域に対しても意 欲を示し、同社が中国拠点で生産する 80 馬力の大型 CO2 ラックシステ ムにて市場参入を狙う。大型冷凍機を扱う産業分野への展開は、同社に とっても初の試みとなる。2019 年 11 月に一般社団法人日本冷蔵倉庫 協会が主催し、倉庫業者を中心としたエンドユーザー 100 名ほどが集っ た「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」では、CO2 ラックシス テムに関して発表するなど、慎重に、かつ確実に足を踏み込み始めてい る。最もハードルの高い初号機の納入が決まり、納入事例を積み重ねる ことができれば、産業分野でも飛躍ができると冨永氏は期待する。

自然冷媒機器を提案する際には、「ノンフロン機器をただ提案するので はなく、機器より生じた排熱を有効活用するといった付加価値も提案す ることで、自然冷媒製品のメリットを強化し、転換を促していきたい考 えです」と、冨永氏は語る。欧州では SDGs に代表されるように、社会 的責任を果たすことへの義務感が非常に強いが、日本市場でより重視さ れるのはやはり「自然冷媒が成果(売上)にどう影響するか」という経済 合理性である。単体の冷凍機だけを見れば、イニシャルコストで HFC の 方が経済性が高いという判断になってしまう。コールドチェーン事業部 冷凍機システム総括部長の大西 学氏は、冷凍機単体ではなく、店舗・倉庫・ 工場全体のオペレーションを踏まえたシステム構築の提案が、日本市場で は重要だと考えている。イニシャルコストではなく 10 年間のランニング

Spring 2020 // Accelerate Japan


14 //

メーカー取材

コストも踏まえた上で、メンテナンスや冷媒の確保の保証、省エネ 性による CO2 および炭化水素冷媒のメリットなどを、メーカーと 政府が市場に説明していく責任があるとも、大西氏は話した。

様々な戦略を元に展開していく同社は、その勢いを海外でも着実 に伸ばしている。それは数字が物語っており、同社は 2020 年 1 月時点で、世界 15 カ国に累計約 700 台の CO2 冷凍機の納入を実 現した。同年夏には、欧州ですでに販売している 2 馬力、10 馬 力に続いて 4 馬力の冷凍機を投入する予定であるという。「自然 冷媒のマーケットとして、やはりもっとも先進的なのが欧州です。 ここで認められることこそ、私達にとってグローバルからの評価 の第一歩と認識しています」と冨永氏は言い、今後も欧州市場で 闘う姿勢を見せる。実際に欧州で認可を受けた製品が、ニュージー ランドの受注にもつながっているという。欧州市場をプロローグ として、オセアニア、アジアの市場活性化に結びつけることが、 パナソニックにとっての海外戦略の大きな道筋なのである。

炭化水素と CO2、両方の「道」を示す CO2 のみならず、タイ工場でプロパン、イソブタン使用の炭化 水素冷媒機器の製造が進むパナソニック。アジア、オセアニア市 場では炭化水素冷媒のニーズが高まる中、2 つの冷媒をどのよう なバランスで開発していくこととなるだろうか。「決して炭化水 素が中心という訳ではありません。オセアニア、東南アジア、中 国、日本と、各国市場のニーズに合わせた展開を試みます」と、 1/ 2/

1/ コールドチェーン事業部 事業部長 冨永 弘幸氏 2/ 東京製作所にて試験運転中の CO2 冷凍機

Accelerate Japan // Spring 2020


15 メ ー カ ー 取 材 //

冨永氏はあくまで二者択一の冷媒戦略ではないことを強調。その

日本市場の次の 10 年に向けた戦略は、小売店舗が抱える課題と

上で、炭化水素の商品ラインナップを精査するとした。大西氏は、

向き合うことが必要だろう。設備投資よりも店舗運営の改善に軸

炭化水素の市場を次のように分析する。「アジア市場ではスモール

足が置かれている現状は、やむを得ない事実である。政策や規制、

フォーマットの店舗が多く、プラグインタイプの炭化水素製品が

補助事業といったパッケージが整備されつつある国内において、

先行する形となるでしょう。欧州では CO2 冷凍機での市場展開を

マーケットが再び設備投資に軸足を置くタイミングを、長期的な

果たし、その成果を日本へと持ち帰りたいと考えています。欧州

観点で注視していく必要がある。年内のマーケットを大きく左右

や東南アジア、日本、中国、オセアニアでは流通形態の発達度、

する事柄として、事業推進部 グローバル渉外担当の橘 秀和氏は、

食文化、小売形態の特徴がまるで異なります。メーカーの思いだ

2 月 14 日に経済産業省より発表される「フロン排出抑制法に基

けで、自然冷媒を推進することはできません」。いつどの市場にど

づくフロン類の使用見通し」に関する案を示唆した。「海外と比べ

の冷媒を選択するか。議論や現地調査を進めながら、最善手を打

て規制が甘いと言われる日本において、2025 年、2030 年までの

ちたいところである。

国内のフロン類の使用見通しが提示されれば、規制強化と同様の インパクトにつながると考えています」。このインパクトを最大限 活用するためには、パナソニック 1 社のみならず、メーカー同士

こうした繊細な取り組みは、すでに実を結び始めている。リリー ス時期は未定だが、冨永氏は 2020 年中に炭化水素機器の市場投 入が決定していると明かした。CO2 の技術開発も、着々と進行し ている。CO2 冷媒の課題は、圧力の高さから既存の配管設備が利 用できないという点にある。エンドユーザーにとって、配管の入れ 替えで工期が長くなってしまうのは大きな痛手だ。既存配管で CO2

の協力も不可欠だ。同社が 2018 年に掲げた「CO2 ファミリー」 構想(他社メーカーに同社の CO2 冷凍機を提供することで、他社 メーカーにも CO2 市場に参入してもらい市場規模拡大を目指す構 想)は、約 1 年で着実に広がりを見せている。今後も地道に歩み を進めていくと、冨永氏は力強く述べた。

冷媒を使用できれば、この問題が大きく前進するため、その技術開 発についても、タイミングを図り成果を発表したいと同氏は述べた。

東京製作所では、実際に CO2 冷凍機と接続して稼働したショーケー スのほか、試験稼働中の 80 馬力 CO2 ラックシステムを見ることが

10 年の歩みに続く次の 1 年 2010 年に CO2 冷凍機を市場へ送り出し、今年で 10 年という節

できた。変化する市場と共に、10 年以上に渡って開発と製品販売 の歴史を紡いできたパナソニック。今後発表される新たな納入事例 や技術開発の進展に、期待で胸を膨らませる思いである。 TS,RO

目を迎えるパナソニック。同社のスタートは、当時の経済産業省 が主導していた補助事業の技術開発支援を受けてのものだった。 そして、当時まだ実績がない中で、CO2 冷凍機の導入に踏み切っ たエンドユーザーの存在。ひとえにこの 2 つの条件が揃ったこと

参考記事 : 東急百貨店に導入された国内初の CO2 水冷式内蔵型ショーケース

https://issuu.com/shecco/docs/aj_26/22

で、パナソニックは自然冷媒へのスタートを切ることができたの

参考記事 : タイ工場での炭化水素冷媒機器の製造に関する記事

だと、冨永氏は言う。「この 10 年で、弊社製品は市民権を獲得す

https://issuu.com/shecco/docs/aj_26/50

ることができました。しかし 2019 年までの実績で、私達の CO2 機器の導入に至った店舗は約 4,200 店です。マーケットのポテン

参考記事 :「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」の開催レポート

シャルから鑑みて、まだまだ展開できる余地を残しています」

https://issuu.com/shecco/docs/aj_26/38

Spring 2020 // Accelerate Japan


16 //

メーカー取材

オーストラリアに 「NewTon」が初上陸 株式会社前川製作所のアンモニア /CO2 冷凍機「NewTon」が、2019 年 7 月にオース トラリアの冷凍冷蔵倉庫に設置された。同社にとって初となるオーストラリアでの機器 設置は、現地業者との連携による綿密な計画によって、実現したのである。 文 : デビン・ヨシモト、キャロライン・ラム

3 社連携による初の「NewTon」設置

緻密な設計で高い省エネ性能を発揮

7 月、プロジェクトの設置請負業者である Tri Tech Refrigeration

「NewTon」の設計には高度な冗長性が組み込まれていると、プロ

Australia は、オーストラリア・シドニー西部に新設された冷蔵倉

ジェクトの冷凍冷蔵主任コンサルタント、バジル・マッキンリー

庫と物流センターに、株式会社前川製作所の主力製品である二次

氏は説明する。「『NewTon』は R6000 ユニット 1 台で、低温装

冷媒式アンモニア /CO2 産業用冷凍機「NewTon」を設置した。オー

置の冗長性を 100% 確保できるうえ、必要に応じて熱交換器を介

ストラリアで「NewTon」が設置されるのは、今回が初めてとな

して、中温装置のバックアップも可能です。また、停電時は冷凍

る。Tri Tech Refrigeration Australia のエンジニアであるマック・

機の熱質量を利用して、中温装置内の CO2 の圧力上昇を抑制し

ハジャール氏によると、顧客は会員制の多国籍小売業者の大手で、

ます」。マッキンリー氏はさらに続ける。「もしも停電が長引いた

直売店に搬入する冷蔵・常温製品を、第三者の倉庫で管理してきた。

場合は、予備のディーゼル発電機が低温側の CO2 ポンプと冷凍機

しかし今後、既存の直売店をさらに拡大する計画のため、自社の

用蒸発器のファンの 1 つを稼働させることで、両システムを設計

物流センターの建設に踏み切った。同プロジェクトでは、産業用

圧力以下に保てるのです」。設置および委託には、「NewTon」と

冷凍冷蔵分野のコンサルタント企業、Basil McKinley Consulting

CO2 ポンプステーションの間に勾配を設けるなど、いくつかの課

が熱負荷の計算や仕様書の作成を担当。前川製作所がコンセプト

題があったとハジャール氏は振り返る。「試運転およびプログラ

デザインと機器選択を行い、Tri Tech Refrigeration Australia が

ミングを通じて、熱放出効率を最適化するための水流バランスと、

詳細な設計や設置、および委託業務を担った。

解凍に必要な温度維持を可能とした構造設計を実現できました」

設置されたのは、中温対応型の「NewTon-C」3 台と低温装置

2019 年 5 月 に メ ル ボ ル ン で 開 催 さ れ た、 自 然 冷 媒 国 際 会 議

「NewTon R6000」2 台。「NewTon-C」 は 倉 庫 内 に 設 け ら れ た

「ATMOsphere Australia」にて、前川製作所オーストラリアの販売

約 28,975m3 の冷蔵エリアを、708kW の冷却能力で 2℃に保ち、 「NewTon R6000」 は 約 15,119m3 の 冷 凍 エ リ ア を、198kW

部長、ピーター・オニール氏は次のように語った。 「冷凍貯蔵エリ アで使用される 2 台の『NewTon R6000』は、従来のポンプ式ア

の冷却能力で -24 ℃に保つ設計となっている。ハジャール氏は

ンモニア循環型装置と比べて、アンモニアの使用量を 1,900kg か

「NewTon」を選んだ理由に、顧客の求める 2 つのニーズー安全性

ら 100kg まで減少できます」 。なお、CO2 の充填量は 1,300kg で

とシステム冗長性ーを満たしていたからと明かした。「NewTon」

ある。プロジェクトが最初に提案されたのは 2 年以上前。6 月にい

は二次冷媒に CO2 を使用。アンモニアの充填量が少量で済むのに

よいよ最終設置の段階に入り、日本の前川製作所からサポートを受

加え、半密閉コンプレッサーを採用することで、アンモニアの漏

け、7 月末に委託が完了した。想定される省エネ性能について、ハ

えいリスクを大きく軽減できる。「この先進的なコンプレッサーに

ジャール氏は次のように話す。 「エネルギー使用データから算出す

は、軸封装置や滑り弁がついておらず、完全な速度制御を可能と

ると、コンプレッサーの平均消費量は、同規模の産業用冷蔵倉庫

する他、永久磁石が埋め込まれた IPM モーターを採用しています。

で採用されている従来の 2 段ポンプ式アンモニアプラントよりも、

このような新技術のオーストラリア市場参入は、非常に喜ばしい

大幅に抑えられるでしょう」 。ハジャール氏は、定期的な保守・整

ことです」と、ハジャール氏は語った。

備とメーカーの提供サービスにより、今後 25 年間は想定通りのパ フォーマンスを発揮するだろうと見込んでいる。 DY,CR 参考記事 : 前川製作所、守谷工場でのインタビュー https://issuu.com/shecco/docs/aj24/44

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メ ー カ ー 取 材 // 17

1/

2/

1/ 前川製作所の「NewTon」 2/ シドニー西部に新しく建設された冷凍冷蔵倉庫と物流拠点

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エンドユーザー取材

ローソンが 中国で初の ノンフロン店をオープン 国内の自然冷媒機器導入を牽引する企業、株式会社ローソン。 同社の 100% 子会社である羅 森(中国)投資有限公司は、2020 年 1 月に中国で初となる自然冷媒機器の採用店舗をオープ した。CO2・炭化水素の両冷媒を採用した。国内外で 14,000 店以上のコンビニエンスストア を運営してきたグループ全体で、今回は初の試みである。 文 : デビン・ヨシモト、岡部 玲奈、佐藤 智朗

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19 エ ン ド ユ ー ザ ー 取 材 //

中国に初の CO2・炭化水素採用店舗 株式会社ローソンは、2020 年 2 月時点で 14,659 店舗のコンビ ニエンスストアを運営し、2020 年 2 月、日本の約 3,700 店舗 で CO2 冷媒機器を採用している。日本以外では中国、インドネシ ア、フィリピン、タイ、ハワイの各国で店舗を運営する。同社の

100% 子会社である羅森(中国)投資有限公司は、2020 年 1 月 15 日、中国の上海交城路 348 号店をオープン。同店舗には、ト ランスクリティカル CO2 システムと炭化水素冷媒ショーケースの 両方が採用された。ローソンは中国において、北京、大連、上海、 浙江、江蘇、重慶、武漢、長沙、瀋陽、天津、合肥等に約 2,600 店舗を運営するが、その中で初となる、CO2 および炭化水素冷媒 機器を導入した店舗が誕生したこととなる。店舗への自然冷媒機 器導入は、上海ローソンの建設部長、阮 峥氏を中心に実施された。

上海交城路 348 号店に設置されたのは、パナソニック株式会社の

CO2 トランスクリティカルシステム(2 馬力)で、ショーケース は 5 ± 2 度の温度帯で使用している。また店舗では、中国・大連 で製造されたパナソニックのプロパン(R290)内蔵型ショーケー スも 1 台(6 尺)設置された。R290 ショーケースは、アイスクリー ム用に使用されている。建設総監の乾辺 雅章氏は、従来システム よりも約 16% の省エネ効果を期待できると語った。

継続的な店舗開発が生んだ成果 今 日 の 社 会 が 抱 え る 課 題 に 対 す る 提 言 を ま と め た SDGs (Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)では、 大きく 17 の目標が掲げられている。このうちローソンは、「7. エ ネルギーをみんなに そしてクリーンに」「13. 気候変動に具体的 対策を」という 2 つの開発目標に対して、社会的責任を果たす義 務を負っているのだと、乾辺氏は説明する。実際にローソンは、 日本にて継続的な店舗開発を進めてきた。2019 年 9 月 23 日に は、ホシザキ株式会社の協力でプロパン(R290)、イソブタン (R600a)、CO2 を採用した完全ノンフロン店をオープンしている。 羅森(中国)投資有限公司も今回の店舗開発については、オープ ンの半年以上前から同社の建設部とパナソニックと共同で、計画 を企画・実行を進めてきたのである。

CO2 冷凍機の施工に関しての課題について、大きな問題はなかっ たと乾辺氏は言う。「施工にあたり、設置に関する技術指導研修を パナソニックから受けることができました。今後は同社の技術指 導なしで施工可能かどうかが、ノンフロン採用の大きな課題にな るでしょう」

国内の自然冷媒機器導入におけるリーディングカンパニーとして、 ローソンはノウハウを蓄積し続けてきた。今後はその力を、アジ アのリーディングカンパニーとして発揮する日が近いのかもしれ ない。

DY,RO,TS

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参考記事 : ローソン初の「完全ノンフロン店」の誕生

https://issuu.com/shecco/docs/aj_26/32


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イベントレポート

ATMOsphere Japan 2020

開催レポート 文 : 佐藤 智朗、デビン・ヨシモト

誌を発行する shecco が主催する国際会議、ATMOsphere Japan 2020 が 2 月 10 日開催された。会場は昨年に引き続き、東京コンファレンスセ

ンター・品川。日本で 7 回目を数えることとなった本会議には、国内外から 66

の企業・団体が参加。国内外で納入実績を積み重ね、さらなる自然冷媒ソリューショ ンの拡大を見せるメーカーや、環境性・経済性両面を配慮しつつ、自然冷媒機器 導入を進めるエンドユーザー。そして各種法整備・規制によって技術開発・市場 活性化を進めようとする政府・団体。自然冷媒の未来を担う関係者達が、一堂に 会する本会議では、三者三様の取組みが発表された他、今後の市場動向を占うさ まざまな議論がかわされたのである。

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 21

10/02/2020

TOKYO

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イベントレポート

ATMOsphere Japan 2020 概要 ATMOsphere は技術、市場、研究開発、各種規制の動向など世界の自然冷媒業界 の最新情報が集まる国際イベントであり、冷凍冷蔵・空調などの分野において用 途に合わせた自然冷媒技術が果たす役割と実行可能性を示すことを目的としてい る。2009 年以来、世界各国で本誌を発行する shecco 運営のもと、自然冷媒の一 大イベントに成長した本会議。日本での開催も今年で 7 回目を数えることとなり、 エンドユーザーをはじめメーカー、環境省や経済産業省などの政府関係者といっ た各参加者が集い、情報交換と議論を交わす。新たなビジネスパートナーとの出 会いも生むなど、自然冷媒業界全体に発展をもたらすイベントである。

ATMOsphere Japan 2020 レポート 参加企業・団体数

66 社

エンドユーザー数

29 名

発表者数

25 名

スポンサー企業数

15 社

政 策 動 向 セッション ・・・・・・・・P24 業界リーダーセッション・・・・・・・ P28 エンドユーザーパネル・・・・・・・・ P32 アクセレレート・ジャパン賞 授賞式・・P38 技術ケーススタディ ・・・・・・・・・P40

プレゼンテーション一覧はこちら https://atmo.org/category/atmo-japan-2020/

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 23

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イベントレポート

ライフサイクルマネジメントの さらなる強化へ 2019 年 1 月 1 日、モントリオール議定書キガリ改正が発効されてから、約 1 年 が経過した。きたる目標達成に向け、国内ではノンフロン製品導入の促進を進め る他、フロン機器の廃棄に関する規制強化に努めてきた。東京都が同機器に対す る補助金の交付を始めたことも、記憶に新しい。政策動向セッションでは、そう した行政による法整備や、国際的な注目を浴びる炭化水素の充填量引き上げにつ いて、最新動向が発表された。

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 25

国際的な「ライフサイクルマネジメント」を 環境省の地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室の室長である 倉谷 英和氏は、同省で取り組むフルオロカーボン対策の国際展開 と、新たに発足した「フルオロカーボン・イニシアティブ」につ いて発表した。International Energy Agency が 2018 年に発表 した試算では、世界のエアコン普及数は 2050 年で約 56 億台ま で増加する見通しとされている。日本国内ではフロン排出抑制法 など、代替フロンの廃棄時の管理体制構築に注力してきた。この 枠組を、世界規模に広めていくことが重要である。「製造から廃棄 まで、ライフサイクル全体にわたる総合的な対策が重要です」。将 来的にストックされるフロン類に対処するため、日本が旗振り役 となり国際的なイニシアティブが発足されたのである。

は 39% にとどまり、過去 4 年を見渡しても、同水準で推移して いる。この現状を是正するため、改正内容には機器廃棄時や建物

2019 年 12 月 10 日には、スペイン・マドリードにて開催された COP25 の日本パビリオンにて、設立セレモニーを実施。小泉 進 次郎環境大臣も出席のもと、11 の賛同国・機関および 10 の賛同

解体時に伴う機器廃棄において、ユーザーおよび解体業者等に関 係書類の保存義務を設け、違反者には直接罰を導入するという体 制に踏み切ったのである。

企業・団体を集めることとなった。今後イニシアティブではフロ ン類排出抑制計画の策定や実施協力、優良事例の共有などの活動

現存するフロン機器の管理体制強化とともに、経済産業省は「脱

に従事する。イニシアティブはさらに、国・企業・団体と幅広く

フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導

賛同を募りつつ、フロン対策の国際展開と関係者間の連携強化を

入加速化事業」の補助交付体制を維持。またトップランナー指定

進める予定だ。

品も、対象製品を拡大し制度の推進を目指す。

入り口・出口両面での対策強化

東京都発の補助金制度で促進図りたい

続いて登壇した経済産業省製造産業局 化学物質管理課 オゾン層保

東京都 環境局 環境改善部 環境保安課 課長代理(フロン対策担当)

護等推進室 課長補佐(国際担当)の下京田 孝氏は、国内を中心と

の金子 ちひろ氏からは、都が 2019 年 12 月に策定した「ゼロエミッ

したフロン類対策の動向を報告した。日本のフロン対策は、大き

ション東京戦略」について、概要と進捗状況が発表された。2014

な 2 つの柱が支えている。1 つがオゾン層保護法、もう 1 つがフ

年度における都内の代替フロン排出量は、約 3,900 万 t-CO2 であっ

ロン排出抑制法である。機器全体のライフサイクルで言えば、オ

た。同戦略では、2030 年に排出量を 2014 年度比で 35% 削減、

ゾン層保護法が上流を、フロン排出抑制法が中流~下流をカバー

2050 年には排出量ゼロを目指すとされている。目標達成に向け

する形である。

た対策として、金子氏は大きく「機器廃棄時のフロン放出防止の 徹底」「フロン講習会の開催」「ノンフロン機器等の導入促進」の

いずれもここ数年で法改正が進み、オゾン層保護法は 2018 年の

3 種類に取り組むと話した。

改正で代替フロンを規制対象に追加、2019 年 1 月 1 日に施行さ れた。フロン排出抑制法も 2019 年に法改正され、2020 年 4 月

そのうちの 1 つである「ノンフロン機器等の導入促進」は、2019

1 日施行を迎えた。経済産業省は機器廃棄時のフロン回収率目標

年度に 5,000 万円の予算を設け、各事業者に導入補助を実施した。

を、2020 年 50%、2030 年 70% に掲げる。しかし 2018 年実績

補助対象者は、中小事業者及び個人の事業者。省エネ型ノンフロ ン冷凍冷蔵ショーケースの導入に対して、1 台あたり 500 万円(1 事業者あたり 1,500 万円まで)を限度と定めた。2019 年 12 月 末時点で交付が決定したのは 25 台。金子氏は、2020 年度も同額 にて補助事業を継続することが決定していること。今後さらに、 同制度に対する周知徹底を行なっていくと話した。

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イベントレポート

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1/ 環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 フロン対策室 室長 倉谷 英和氏 2/ 経済産業省製造産業局 化学物質管理課 オゾン層保護等推進室 課長補佐 下京田 孝氏 3/ 東京都 環境局 環境改善部 環境保安課 課長代理 金子 ちひろ氏 4/ 国際電気標準会議(IEC)SC61C 小委員会委員長 マレック・ジグリチンスキ氏

炭化水素の充填量引き上げの影響を注視

スキ氏は語った。そうして練られた改正案 IEC 60335-2-89 の第

本会議では、昨年に続き国際電気標準会議(IEC)SC61C 小委員

過半数の賛同を得られたことは周知の通りである。「今後、欧州、

会委員長のマレック・ジグリチンスキ氏も登壇。昨年、業界を

北米、日本、豪州の各国の製品基準も、この決定に追随していく

大いにわかせた炭化水素の充填量引き上げに関して、採択まで

こととなるでしょう。今後は各国の規制動向が、どれほどスピー

の経緯が語られた。IEC の SC61C は 2014 年、可燃性冷媒の充

ディに行われるかに注視していきたいです」

3 版が、2019 年 6 月 20 日に発行。FDIS(最終国際規格案)として、

填量に関する議論を行うために立ち上げられた。既存の充填量制 限 150g から 500g に引き上げることは、より大きな冷凍冷蔵器 ショーケースに炭化水素を使用できることとなる。

炭化水素に関するニュースの影響か、ATMOsphere Japan2020 の後に開催されたスーパーマーケット・トレードショー、HCJ の 両展示会にて、多くの炭化水素製品の参考出展が見られた。安全

「しかしながら、充填量を引き上げても、従来の規制と同等の安全 性が求められます。議論だけでなく試験も行いながら、安全性を

性の確保を大前提として、国内で充填量引き上げの波が広がれば、 さらなるラインナップ拡充が見られるかもしれない。

確保するために必要な要件を検討してきました」と、ジグリチン

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イベントレポート

自然冷媒を軸に、 進化し続ける高効率システム 自然冷媒ソリューションの「生産」という入り口を担う、メーカー各社。数ある 事業者の中でも、「業界リーダーセッション」では、国内の自然冷媒市場に多大に 貢献してきた 4 社が登壇した。キガリ改正の発効から 1 年。エンドユーザーにも 自然冷媒という選択肢が浸透している傾向にあり、メーカーは冷媒選択という観 点から、自然冷媒を前提としたより高効率なシステム開発が求められている。一 歩先のソリューションを追い求めるメーカーのリーダー達は、これからどんな未 来を描こうとしているのだろうか。

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 29

50 年以上の歴史が培った技術

CO2 冷凍機の開発は、「大容量化」と「COP 向上」の 2 つを軸に

パナソニック株式会社アプライアンス社 コールドチェーン事業部

り、この流れをさらに加速させていきます」と、冨永氏は説明す

長の冨永 弘幸氏は、同社の事業概要と CO2 機器の開発状況に言及

る。水冷式や排熱利用といったバリエーション拡大にも力が入る。

した。創業以来、50 年以上にわたりコールドチェーン事業に取り

2019 年にハマ冷機工業株式会社と開発した、CO2 水冷式内蔵型

続けられてきた。 「現在は 80 馬力のラックシステムを準備してお

組んできた同社は、食品を安全に消費者の元へ運ぶことをミッショ

ショーケースはその事例の 1 つだ。パナソニックは技術開発を通

ンに、事業活動を続けてきた。パナソニックの代名詞とも呼べる

して、CO2 のプロダクトレンジをさらに広げていき、産業分野も

CO2 機器は、2010 年より発売を開始。2015 年に業務用冷凍・冷蔵

含め幅広いニーズに対応していきたい考えだ。

ショーケースメーカーの Hussman を傘下に入れ、2020 年 2 月時 点で累計 4,200 店舗に 12,000 台の CO2 導入を実現している他、海 外でも 700 台のパナソニック製 CO2 機器が稼働している状況だ。

1/

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4/

1/ パナソニック株式会社アプライアンス社 コールドチェーン事業部長 冨永 弘幸氏

3/ 株式会社前川製作所 ソリューション事業本部部長 江原 誠氏

2/ 日本熱源システム株式会社 代表取締役社長 原田 克彦氏

4/ フードテクノエンジニアリング株式会社 執行役員営業本部本部長 重里 広幸氏

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イベントレポート

CO2 システムの認知向上を実感した 1 年

横吹き循環流型の最新式エアカーテンを使用することで、外気侵

日本熱源システム株式会社 代表取締役社長の原田 克彦氏からは、

高く、庫内全体の運転効率を改善可能だ。「年々増加する自然冷媒

同社の主力ユニットである「スーパーグリーン」について、納入

へのニーズに対して、最適なシステムを提供していきたいです」

入と冷気漏えいをどちらも防止できる。平均遮断効率も 75% と

状況と新機種が発表された。産業用分野に向けて開発された「スー パーグリーン」は、2012 年に開発。以来 2020 年 2 月までに、 全国 170 台以上が納入されている。原田氏によれば、2019 年後

ノンフロンの啓蒙活動、地域から全国へ

半より、エンドユーザーの自然冷媒への関心は強くなっていると いう。R22 の国内生産が 2020 年 1 月 1 日よりゼロとなることも、

フードテクノエンジニアリング株式会社はエンジニア業者とし

その要因の一つだろうと同氏は推察する。 「スーパーグリーン」は

て、食品加工工場に特化した知見を活かし、環境対応型のソリュー

C 級と F 級で、それぞれ 30 馬力、60 馬力の計 4 機種を揃えてい

ションを日々開発・提案している。2017 年には自然冷媒の特性や

たが、新機種として 90 馬力の F 級を追加した。新機種は 2019 年

COP、制御方法を学べる場所としてオープンラボ・FTE アカデミー

10 月、アサヒグループ食品株式会社の岡山工場で稼働している。

を開設。同社の執行役員営業本部本部長を務める重里 広幸氏は、 「同 アカデミーでは、 全国から就業体験を受け入れています。アカデミー の活動を通じて、地元から日本および世界へ環境・エネルギーのソ

日本熱源システムのノンフロン機は、 「スーパーグリーン」だけで

リューションを発信できる企業になれるよう努めています」と話す。

なくフリーザー、ブラインチラーも活躍中だ。「40 ℃という猛暑 の中でも、CO2 機器は R22 以上の省エネ効率を実現しました。環 境と省エネ、どちらも両立できることをさらに周知したいと考え

アカデミーの検証実験は主に 4 種類の方法で取り組む。

ています」。同社は炭化水素ショーケースにも力を入れており、冷 凍機メーカーの Freor 製内蔵ショーケースおよびウォータールー プシステムの納入にも力を入れている。 「今後開催される展示会で は、これら自然冷媒機器を強く提案していきます」

水冷式・空冷式療法の環境実験室にて、季節環境を

人工的に作った上での効果的な制御プログラムの策定 ■

ロータリー、レシプロ両タイプの冷凍機の運転特性や

脱フロン・CO2 排出量削減に尽力

相違点の研究

世界を取り巻く環境変化は、深刻な状況にある。IPCC(気候変動

に関する政府間パネル)のデータによれば、2050 年までに、温

制御プログラムへの活用

フリーザー・冷凍機の実機ベースの運転データ収集と、

室効果ガスなどのもたらす気温上昇を 1.5℃以内に抑えなければ、 人々の生活基盤が大きく損なわれてしまうという。株式会社前川

2019 年度に設置した、本社テストルームの加熱冷却

製作所 ソリューション事業本部部長の江原 誠氏は、持続可能性

スパイラルフリーザー設備について、排熱回収システムを

を前提とした事業活動は、企業が負うべき社会的責任であると説

導入した上で実機ベースのデータ収集

明。2019 年 12 月までで、同社は日本に 2,015 台、アジア・オー ストラリアに 107 台、北米に 6 台と累計 2,128 台のアンモニア

/CO2 冷凍機を納入。2019 年までで、R404a との比較で累計約 115 万 t-CO2 の削減に貢献してきた。同社はアンモニア /CO2 だ けでなく、CO2 や空気冷媒にも対応している。「サイズや温度、

「一社のみの活動にとどまらず、産学で連携をしながら、自然冷媒 の研究開発を進めていきたいところです」と、重里氏は話した。

運転条件などに応じて、最もエンドユーザー様に貢献できる冷凍 機をご提案します」 登壇者の発表後は、簡易的なパネルディスカッションも実施。冷 脱フロンの技術開発を進める一方で、同社は冷蔵倉庫運用時の

凍製造倉庫や食品加工工場では、自然冷媒採用だけでなく IoT に

CO2 排出量削減に向けたソリューション開発にも熱心だ。具体的

よるシステムコントロールも、注目されている分野である。4 社

には、 「躯体防熱」「外気侵入・冷気漏えい対策」「デフロスト」「結

は社内での技術開発を踏まえたうえで、主に遠隔システムや制御

露防止」「高性能な冷却設備」の 5 点に取り組んでいる。例えば

開発の開発、精度向上が運転効率に大きく影響すると語った。

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イベントレポート

社会的責任に向き合う 事業者の挑戦 自然冷媒市場の拡大を大きく左右するのは、機器を使用するエンドユーザーの動向 である。エンドユーザーパネルでは、業務用分野・産業用分野それぞれから、自然 冷媒機器導入に尽力してきた企業が登壇。リーディングカンパニーから新規導入を 検討する企業まで、多種多様な立場にある登壇者が、それぞれの活動を発表した。

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 33

気候変動リスクへの警告と宣言

この状況に際して、ローソンは 2019 年、2030 年そして 2050

CVS(コンビニエンスストア)にて、ノンフロンの取組の牽引役

30%、2050 年 に 100% 削 減 す る と 正 式 に 宣 言 し た( と も に

として活動を続ける株式会社ローソン。開発本部本部長補佐の宇

2013 年比)。この目標達成に向け、ローソンはパナソニック他複

都 慎一郎氏は、発表の冒頭にて国連気候変動に関する政府間パネ

数のメーカーを中心に、2019 年 2 月までに 3,700 店舗に CO2 を

年 に 向 け た 各 取 組 み を 発 表。 自 社 の CO2 排 出 量 を 2030 年 に

ル(IPCC)の発表した報告書を引用。報告書では 2030 年から

採用してきた。同年 9 月には、CO2・炭化水素冷媒による「完全

2052 年の間に、気温上昇が 1.5℃上昇すると予想。そこに大きく

ノンフロン店」として、慶應義塾大学 SFC 店をオープン。11 月

寄与する HFC 削減の対策が遅れるほど、目標に対するギャップ

15 日には、CO2 内蔵型のショーケースを使用した店舗を中国・

が拡大すると警告した。

上海にオープンさせた。「2021 年には、ノンフロン導入店舗数が

4,000 店以上となる見通しです。『新規店には自然冷媒』の姿勢 を貫きつつ、既設機器をどう更新していくかが、2030 年の目標 達成で最も重要だと考えています」

1/

2/

3/

4/

1/ 株式会社ローソン 開発本部本部長補佐 宇都 慎一郎氏

3/ 日本チェーンストア協会 執行理事の増田 充男氏

2/ メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社

4/ 株式会社エー・ピーカンパニー 執行役員 横澤 将司氏

マネジメント本部 アセットマネジメント部マネージャー 船守 健司氏

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イベントレポート

大規模導入で実感した「技術と経済性」の実現

社会価値と経済価値の両立を目指す

メトロ キャッシュ アンド キャリー ジャパン株式会社は、既存店

今回のエンドユーザーパネルでは、今後ノンフロン機器導入を検

に AHT 社製プロパン内蔵ショーケースを 200 台導入。導入先は

討していきたいという、意欲ある企業も登壇してくれた。飲食店・

川口安行店・千葉店・多摩店の 3 店で、いずれも店舗営業を止め

食品販売店の経営、養鶏場・牧場経営など、広く食品に関する事

ずにショーケースを設置できた事例として、大きな注目を集めた。

業を展開する株式会社エー・ピーカンパニーである。同社は生産

「これだけの規模の導入は、日本でも初の事例でしょう」と、マネ

から加工流通、販売までを一環して行う六次産業モデルを通じて、

ジメント本部 アセットマネジメント部マネージャーの船守 健司

生産者・販売者・消費者全体で「食産業における ALL-WIN の達成」

氏は語る。

を目指す。その一環として、乱獲や気候変動によって将来的に魚 が穫れなくなる未来を啓蒙するため、「四十八(よんぱち)漁場」 などを経営。後継者不足・高齢化・低収入・資源枯渇と多くの問

今回の大規模導入は、低炭素社会の実現と省エネという「技術と 経済性」が両立したことで実現を果たした。「既存の R404 ショー

題を抱える漁業者に、技術継承や雇用創出、フェアトレードによ る収入安定化を行っている。

ケースは、セントラル方式の冷ケースでした。内蔵型ショーケー スは配水管工事が不要で、ショーケースに電源を供給するだけで す。結果として店舗営業を止める事なく、電源準備と一部売り場

執行役員の横澤 将司氏は、同社が社会価値と経済価値の両方を実

の閉鎖のみで、入れ替え工事を完了できました」。仮にショーケー

現できる、CSV 企業を目指していると説明。「私達は未来や自然

スが故障しても、予備と交換するだけなので現場での技術者も不

に対して、大きな社会的責任を有しています。しかし一事業者で

要であり、取り回しのメリットも大きい。プロパン内蔵ショーケー

できることは、ごくわずかです。関係各社の皆様と協力して、コ

スの導入では、政府の補助金も活用。電気代も、1 店舗あたり

レクティブインパクトを生みたいと考えています」。同社は 2020

58% 削減できているという。「省エネ型のノンフロン機器導入は、

年 3 月末にオープンする新店舗では、自然冷媒冷蔵庫を検討。検

あくまで手段の一つです。しかし技術と経済性をクリアできれば、

討の末今回は導入を見送ったが、冷媒切り替えは今後も前向きに

LED 同様に加速度的な普及が期待できます。私達も既存の古い施

検討中だという。

設・ショーケースに目を向け、今後も計画を練りたいところです」

スーパーの脱フロン化を進めるための課題 日本チェーンストア協会は 1967 年に設立。チェーンストアの健 全な発展と普及を図ることにより、小売業の経済の改善を通じて、 国内の流通機構の合理化・近代化を促進するとともに、国民生活 の向上に寄与することを目的としている。執行理事の増田 充男氏 は、昨今の国内食品流通小売の変化として、消費者ニーズの多様化、 少子高齢化、ネットビジネスの進化を挙げた。環境の変化に伴い、 各小売店舗も多様化が求められているが、そのうちの一つに数え られる設備面の更新について、会員社の歩みはこれからだという。

「スーパーは現在、人件費高騰や 2019 年 5 月に制定された環境 省の『プラスチック資源循環戦略』など、一つひとつへの対応に 迫られています。冷媒転換の優先順位は、低いのが現状です」。イ ニシャルコストという課題には、補助金という対策が政府から提 示されているが、多くの店舗はレイアウト確定までに時間がかか るため、補助金の申請が難しい。「脱フロンを本格化するに向けて、 政府には補助金の運用改善、およびロードマップの作成をぜひお 願いしたいと考えています」

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35 イ ベ ン ト レ ポ ー ト //

自然冷媒宣言をさらに推し進める

初導入の水冷式内蔵型ショーケースを実現

2019 年 2 月時点で、アジア 14 か国に 21,996 店を展開するイ

株式会社東急百貨店の事例は、前号で紹介したことからも記憶に

オン株式会社。同社は、2018 年 3 月に「イオン脱炭素ビジョン

新しいだろう。2019 年 11 月 1 日に開業した、渋谷スクランブル

2050」を発表。2030 年までに、CO2 排出量を 35% 削減。2050

スクエア。その地下 2 階には、パナソニックとハマ冷機と協同で

年までに、総量ゼロの目標を掲げた(ともに 2010 年比)。2011

開発した、国内初の CO2 水冷式冷凍内蔵型ショーケースが設置さ

年 11 月には「イオン自然冷媒宣言」を打ち出し、2015 年度以降

れている。東急百貨店がノンフロン冷凍機を導入したきっかけは、

の新店舗すべてに自然冷媒を採用し、既存店への切り替えも進め

2011 年度の経済産業省による実証事業まで遡れる。同事業では

ていくとしている。イオンは 2020 年 2 月時点で、GMS(総合スー

パナソニック、ハマ冷機と協力し、CO2 別置型ショーケースを設

パー)や食品スーパー・ディスカウントストア、小型店、CVS(コ

置。地下に食品売り場があるという百貨店ならではの課題に対し

ンビニエンスストア) 、ドラッグストアなど合計 635 店に、CO2

て、地上に冷却塔を置いた水冷式の CO2 別置型ショーケースの国

機器を採用した。

内初導入を実現。

2019 年 7 月にオープンしたイオンスタイル岡山青江には、福島

そして今回、渋谷スクランブルの事例に至ったのである。「新しく

工業の CO2 ショーケースを約 100 台、三菱重工サーマースシス

導入したノンフロンショーケースは、冷媒封入量を HFC の既存

テムズの CO2 冷凍機を 10 台導入。「私達はこれまで、パナソニッ

システムに比べ、約半分に抑えられます。フロア全体に機器を導入

ク製の CO2 機器を設置しました。他メーカーの製品設置は、今後

したならば、CO2 削減効果は約 43t-CO2/ 年まで期待できるでしょ

柔軟に機器導入するための大きなきっかけとなりました」と、環

う」と、施設・店舗環境計画部 施設計画担当統括 マネージャー 田

境・社会貢献部部長、鈴木 隆博氏は話す。今後イオンは、新規店

村 達也氏は説明する。今後も百貨店ならではの店舗運営の課題を解

の CO2 導入拡大、プロパン(R290)内蔵ショーケースの導入検討、

決しながら、ノンフロン導入を検討していきたいと同氏は説明した。

HFC 削減の中長期計画策定、R22 の計画的転換、機器廃棄時のフ ロン類引き渡しの徹底を通じて、2030 年の中間目標達成に臨む。 海外での取組みについても、国内実績を携え 2020 年中に計画・ 検討したいと鈴木氏は説明した。

Spring 2020 // Accelerate Japan


36 //

イベントレポート

総合物流センターに、ノンフロン続々と

これは私達の倉庫にとって、約 6 年相当の稼働時間に相当します。

日本国内の物流を支える、国分グループ本社株式会社。同社は環

外も、数々の技術的な裏付けが導入を大きく後押しした。

従来のフロン機では考えられません」と、鈴木氏は説明。それ以

境負荷低減や効率化実現の観点から、ドライ・チルド・冷凍・生 鮮と個別に機能させてきたセンター体制を、三温度帯総合物流セ ンターに統合し、物流改善を実現してきた。同社の総合物流セン

実際に「スーパーグリーン」を設置したところ、2019 年で 30%

ターの構想は、2016 年の西東京総合センターから始まっている。

の省エネを達成。水道料金も約 60% 削減。「2018 年 9 月に直撃

センターにはアンモニア /CO2、CO2 単独冷媒をそれぞれ採用し てきた。2019 年度に開設した関西総合センターでは、日本熱源

した台風の影響で、センターは 61 時間稼働が停止してしまいまし た。それでも平均的な温度上昇は 4.5℃にとどまり、冷媒漏えいも

システムの「スーパーグリーン」を採用。「CO2 採用のセンター

1 台はゼロ。もう 1 台は約 10kg に抑えられたのです」と、期せず

としては、おそらく日本一大きな拠点だと思います」と、物流統

してトラブル発生時の安全性を、証明する結果が得られたという。

括部 戦略推進担当部長の本橋 明夫氏は説明する。2020 年度には、 前川製作所のアンモニア /CO2 冷凍機を採用した沖縄浦添流通セ ンターの開設が予定されている。

着々と進む、倉庫のノンフロン化 一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会は「安全と地球環境問題および資

既存のフロン機を使用した相模原流通センターと、CO2 冷媒を採

源エネルギー問題への取組みの推進」を基本姿勢の一つに掲げ、

用した川口流通センターで比較したところ、冷蔵で年間 35%、冷

11 月 27 日には協会関係者、メーカー各社を招いた「最新省エネ

凍で年間 45% の省エネにつながっている。「8 月∼ 10 月の夏場

冷凍機器技術セミナーと相談会」を開催。冷蔵倉庫関係各社に、

では、消費電力に大きい差は出なかったものの、年間では大きな

自然冷媒市場の現状と未来を共有した。協会が独自に行っている

省エネを達成しています」。補助金の存在も加味して、10 年ほど で投資回収できると国分グループは試算。「とはいえ、補助金制度 がいつまでも続くわけではありません。メーカーによるコスト低

調査によると、2010 年には 80% 以上あった R22 の使用率は、

2018 年には 58.2% にまで減少している。自然冷媒も、2012 年 に 17.4% だったのが 2018 年で 31.8% にまで増加した。

減が、重要だと考えています」 「2014 年から、R22 は年 3.7% のペースで減少しています。この

平時・緊急時どちらにも安定稼働

ペースが続くと、2035 年には R22 使用率がゼロになる試算です」

冷凍冷蔵倉庫を運営する浜松委托倉庫株式会社からは、代表取

媒の内訳はアンモニア /CO2 が約 60%、アンモニアが 34%、残り

締役の鈴木 健一氏が登壇。1996 年に設立した米津コールドセン

が CO2 直膨であり、アンモニア /CO2 の普及が目立つ。電力使用

ターを、R22 から CO2 に更新した事例を発表した。同センター

の原単位の推移も、2020 年は 153kWh/ 設備 t を目標としていた

と、環境安全委員会副委員長の小金丸 滋勝氏は説明する。自然冷

に は 7,751m3 の F1 級 倉 庫 と、1,107m3 の C2 級 倉 庫 が あ り、

が、2018 年度で 148.8kWh/ 設備 t とハイペースで進む。一方で、

スクリューコンプレッサー、スクロールコンプレッサーの水冷式

今後ノンフロン普及を左右する中小企業の財政基盤の脆さについ

R22 冷凍機を、2 台ずつ使用していた。同社は設備更新に伴い、

ても、金丸氏は指摘した。「補助金が重要であるという認識は、今

67.8kW の冷却能力を持つ日本熱源システムの「スーパーグリーン」

後も続くことでしょう。同時に、メーカー各社にはコストダウン

を 2 台採用した。ノンフロン機を選ぶに当たり、同社は使用冷媒以

をぜひ、進めていただきたいと思います」

外に、サイズメリットや利便性を検討。 「『スーパーグリーン』は、 オーバーホールのインターバルに 4 万時間という猶予があります。

Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 37

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1/ イオン株式会社 環境・社会貢献部部長 鈴木 隆博氏 2/ 株式会社東急百貨店 施設・店舗環境計画部 施設計画担当統括 マネージャー 田村 達也氏 3/ 国分グループ本社株式会社 物流統括部 戦略推進担当部長の本橋 明夫氏 4/ 浜松委托倉庫株式会社 代表取締役 鈴木 健一氏 5/ 一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境安全委員会副委員長 小金丸 滋勝氏

Spring 2020 // Accelerate Japan


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イベントレポート

(左より)前川製作所 技術企画本部 執行役員 町田 明登氏、国分グループ 本橋氏、イオン 鈴木氏

『アクセレレート・ジャパン』賞 3部門で功労者達を表彰

ATMOsphere Japan2020 では昨年に続き、自然冷媒市場の成長に貢献した、企 業・個人を讃える『アクセレレート・ジャパン』賞の授賞式を開催した。今回も 事前投票と当日のリアルタイム投票を活用しながら、3 部門で表彰を行った。

Accelerate Japan // Spring 2020


39 イ ベ ン ト レ ポ ー ト //

著しい功績を残す企業を、3 部門で表彰

優れた自然冷媒技術・機器を開発した企業に贈られる「イノベー

今回の『アクセレレート・ジャパン』賞は、意欲的な自然冷媒機

前日・当日の関係者からの投票で決定するという形式を採用して

器の導入に尽力したエンドユーザーを称える「業務用(小売)部門」

いる。本年度は 700 票以上の意見を集め、その結果、株式会社

ション オブ・ザ・イヤー」は、ノミネートされた 6 社に対して、

「産業用部門」、そして特筆すべき技術開発で市場を牽引したメー

前川製作所が受賞する結果となった。同社は主に産業用冷凍冷蔵

カーへ贈る「イノベーション オブ・ザ・イヤー」の 3 部門を対象

分野にて、高効率なアンモニア /CO2 冷凍機「NewTon」を提供。

として表彰した。「業務用(小売)部門」を受賞したのは、イオン

近年は CO2 直膨のコンデンシングユニットの開発も進め、さらに

株式会社。同社は 2011 年に「自然冷媒宣言」を宣言以来、複数

幅広いニーズを捉えたラインナップ拡充が進んでいる。技術企画

メーカーの自然冷媒ショーケース・冷凍機を採用することで、市

本部 執行役員の町田 明登氏は受賞に合わせ「このような映えあ

場活性化に貢献してきた。環境・社会貢献部 部長の鈴木 隆博氏は、

る賞をありがとうございます。私達は 20 年近く、業界に先駆け

「社内のグループサステナビリティを担当する立場として、受賞を

てアンモニア開発を進めてきました。ようやく CO2 直膨の開発に

とても光栄に思います。とはいえ、取組みはまだ道半ば。引き続

も着手できましたが、今後もエンドユーザーのニーズの多様化に

き自然冷媒導入を進めてまいりたいと思います」と語った。

応えるため、ますます精進してまいります」と語った。

「産業用部門」に輝いたのは、国分グループ本社株式会社。同社は

今回受賞した以外にも、多くのエンドユーザーが精力的な自然冷

環境負荷低減・物流効率化の観点で、2016 年に総合物流センター

媒機器導入を推進し、また多くのメーカーが、それぞれの担当分

設立をより続けてきた。各センターには CO2、アンモニア /CO2

野で鎬を削るような技術開発に取り組んでいる。2020 年の動向

の冷凍機を大規模に導入。2019 年度には CO2 単独冷媒を採用し

もつぶさに見つめ、彼らの躍進を追いかけていきたい。

た物流拠点としては、日本最大級である関西総合センターが開設。

2020 年は沖縄にセンター設立が予定されており、「新設センター では必ず自然冷媒を採用する」という方針を、ここまで貫き続け てきた。登壇した本橋氏は「名誉ある賞をいただき、深く感謝い たします」と受賞の喜びを口にした。

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40 //

イベントレポート

自然冷媒に さらなる付加価値を 「技術ケーススタディ」では、国内外から自然冷媒技術のリーディングカンパニー 達が登壇。近年新製品や新事例が次々と紹介され、自然冷媒という選択肢が国内 でも主要な選択肢として認知され始めている。そこで求められるのは、自然冷媒 という名目以上の、効率性や利便性だ。登壇したメーカー各社の開発動向からは、 環境性と経済性を両立させるソリューションが多数発表された。

Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 41

フリーズドライ食品製造の革新

大型化と高効率化で新たな付加価値を

年々ニーズが高まっている、国内のフリーズドライ食品。日本食

パナソニック株式会社アプライアンス社は田部井 聡氏が登壇し、

糧新聞の調べによれば、味噌汁・スープといった商品の生産量は、

国内外の CO2 冷凍機の納入状況、CO2 ファミリー構想に加え、

2013 年~ 2018 年で約 40% の伸びを見せる。同製品の製造には、

CO2 トランスクリティカルシステムのラインナップの拡充につい

調理・重点・凍結・真空凍結乾燥・包装の 5 工程を要するが、株

て発表。同社の CO2 冷凍機は、スーパーマーケットやコンビニエ

式会社前川製作所は真空凍結乾燥の領域にて、アンモニア /CO2

ンスストアを対象とする小型容量からスタートした。その後パナ

の高効率ソリューションを提案する。真空凍結乾燥機は製品をト

ソニックは、「大容量化」と「高 COP の実現」という、2 つの軸

ロリーに積み、40 度~ 120 度に加熱。冷却設備から伸ばした -40

で開発を推進。大容量化については、2 馬力から 10 馬力、20 馬

度の配管、通称「コールドトラップ」にて、水分をあつめることで

力、30 馬力と開発が進み、2020 年度には 80 馬力のラックシス

真空状態を維持しつつ、製品の乾燥を促す設計だ。真空凍結乾燥機

テムの市場投入も予定している。「テストでは 40℃に迫る日本特

は、乾燥に欠かせない真空度の安定が不可欠である。従来の代替フ

有の温度下も、問題ない性能を発揮しました」と、田部井氏は話す。

ロンを使用したシステムの場合、冷凍機油の存在や、経年劣化によ

今後開発を進める予定のモジュール化も含め、倉庫や食品加工工

る不純物発生で、効率阻害や故障トラブルのリスクを抱えていた。

場などをターゲットに、新たな市場を開拓したい考えだ。

登壇した佐藤 日向子氏によると、アンモニア /CO2 はこれらの問

高 COP の実現については、2020 年度販売予定の水冷式システム

題を一挙に解決できるという。「本システムは、コールドトラッ

が挙げられる。水冷ガスクーラーを採用して運転効率の安定化を

プ内を純粋な CO2 のみで運用するため、不純物が入りません。ま

可能と、都市型施設や狭所設備、もともと水冷式の設備を保有す

た CO2 は高圧により、配管内に空気が侵入せず、他冷媒よりも

るエンドユーザーに対する付加価値向上となる。 「今後は排熱回収

温度変化の制御性に優れています」。同社製品である「NewTon」

のシステムの開発も、準備しているところです」。CO2 を中心と

を活用したシステム運用では、R22 の従来型システムとくらべ、

するノンフロン開発で、リーダーシップを取り続けるパナソニッ

51.5% の省エネ効率で運用が可能である。また「NewTon」と真

ク。来年度の ATMOsphere では、続々と新製品の納入事例を聞

空凍結乾燥機は、CO2 レシーバーを経由したセントラル方式で稼

けるだろう。

働するため、乾燥機の運用状況に合わせた稼働率のコントロール はもちろん、冷凍機 1 台が故障した場合のバックアップにも強い。 「私達は、今後も省エネ性能や環境配慮、故障時の対応などエンド ユーザーの要望を満たせる、ソリューションを提案し続けていき たいと思っています」

Spring 2020 // Accelerate Japan


42 //

イベントレポート

水冷式 CO2 システムの課題に挑戦

FTE アカデミーの実証実験では、熱負荷の変動を加えながらも、 庫内温度を -35 ℃で維持することに成功。そのうえで、54 ℃の

フードテクノエンジニアリング株式会社は低コスト、安定冷却・

温水を 40L/m 回収可能という結果を得た。COP も、冷却性能

凍結、おいしさを損なわないという 3 つの柱を実現できる、冷凍

のみでは 1.38 だったのに対し、排熱回収を含むと 2.84 まで改

食品製造ソリューションを模索している。青山 泰介氏は、「食品

善。本社テストでは、55 ℃の温水を 6L/m 回収し、そのまま加

工場で水冷式 CO2 冷凍システムを導入する場合、2 つの問題を解

熱側のボイラーに供給することで、ほぼ 100% の熱回収を実現。

決する必要があります。1 つは始業~終業まで大きく熱負荷が変

テスト機を CO2 冷凍サイクルに用いることで、20kW の省エネ

動する現場で、安定した冷却性能をつくること。もう 1 つは、水

や COP0.75 上昇できるという。ボイラーの使用燃料も削減され、

冷式システムで発生する排熱回収と温水消費とのバランス調整で

CO2 を 34.5t/ 年削減できると青山氏は説明した。 「ぜひエンドユー

す」と話す。そこで同社では、2017 年 1 月、FTE アカデミーに実

ザーとメーカーの皆様には、私達のテスト成果を活かし、その成

験用のインピンジメントフリーザーを設置。また 2019 年 5 月には、

果を体感いただければと思います」

本社にスパイラルフリーザーを設置して、それぞれで実機ベースの 検証を行なった。ちなみに前者は有限会社柴田熔接工作所の CO2 冷凍機、 後者はパナソニックの CO2 冷凍機とそれぞれ接続している。

1/

3/ 2/

1/ 株式会社前川製作所 佐藤 日向子氏 2/ パナソニック株式会社アプライアンス社 田部井 聡氏 3/ フードテクノエンジニアリング株式会社 青山 泰介氏

Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 43

CO2 、プロパン両冷媒のソリューションを加速

ロシアで証明された内蔵型システムの利点

世界に先駆けて電子膨張弁を開発してきた Carel は、日本法人で

炭化水素内蔵型のコンプレッサーで、家庭用・業務用分野で多く

ある CAREL Japan の代表取締役、関口 忠夫氏が登壇。中国にお

のシェアを獲得する Embraco。本会議ではギリアーミ・フィゲ

ける、プロパン・CO2 ソリューションの事例を発表した。まず紹

レード氏が登壇し、ロシアの小売店舗における事例と成果を発表

介されたのは、CO2 に対応した COP 効率を向上させるエジェク

した。同社が納入したのは、ロシア国内で 500 店舗以上を展開

ターである。同製品は中国・深州のエンドユーザーに対して、ア

するスーパーマーケットチェーン、Verniy。なお設置には、現地

ジア初のシステム納入を実現。Carel 製のエジェクターを内蔵し

OEM の CRYSPI が担当している。導入店舗は店舗面積が 400㎡、

た CO2 トランスクリティカル冷凍機は、現在はショーケースとつ

売り場面積が 280㎡であり、R404a の別置型システムを採用して

ないでのデータ検証を開始したところだという。「夏場の高温時で

いた。店舗は機器設置に際して、コストダウン、メンテナンスの

も、エジェクターにより高 COP を維持できるかが焦点となるで

簡便化、レイアウトの柔軟性を求めていた。そして Embraco は、

しょう」と、関口氏は話した。日本国内でも 2019 年の CO2 関連

内蔵型コンプレッサー「Plugʼn Cool」を提案したのである。

製品の売上は、前年比で 50% 増となっており、検証結果が Carel の CO2 ソリューションの拡大に大きく影響することだろう。

2019 年 12 月に店舗改修され、12 台のショーケースが設置。そ の工事期間はわずか 2 週間であったが、取り回しのしやすさによっ

プ ロ パ ン 機 器 に つ い て は、 中 国・ 青 島 の 設 置 業 者 と 協 力。

て短期間内での設置を実現できた。設置の容易さはもちろんのこ

embraco 製のコンプレッサーに、同社の BLDC コントロールシ

と、配管設備がなく漏えいリスクもないので、メンテナンスコス

ステムを備えたショーケースが設置された。定速コンプレッサーと

トを大幅に削減。従来システムより 34% の省エネ効果にもつな

同じ環境下でテスト運転をすると、食品温度、庫内温度ともに安定

がった。さらに Verniy は、インバーターテクノロジーにより内

しただけでなく、約 25% の省エネ効果も得られたという。 「CO2 だ

部温度制御も容易になったと、多くのメリットを得られていると

けでなく、プロパンも日本市場で伸びを見せています。私達のビジ

フィゲレード氏は説明。CRYSPI もまた、既存の別置型システム

ネスは電子膨張弁を中心に展開していましたが、同コントローラー

とほぼ同じコストで、ランニングコストははるかに優れているた

も日本国内での展開を進めていくつもりです」

め、導入初日から高い経済効果を実感できたと語る。「現在はア メリカ、ブラジルでもケーススタディを実施しています。日本で もパートナー企業の皆様と一緒に、共同開発プロジェクトを進行 中です」と、フィゲレード氏は語った。

Spring 2020 // Accelerate Japan


44 //

イベントレポート

ニーズを押さえた新製品、開発進む

さらに日本熱源システムは、CO2 単独冷凍機「スーパーグリーン」 の新たなソリューションも拡大中だ。1 つは大気中に放出してい

最後に登壇したのは、日本熱源システム株式会社の黒石 広明氏。

た排熱を、温ブラインの熱源として利用できる排熱利用型。同シ

同社は 2019 年より、新製品として CO2 ブラインチラーを販売し

リーズは 2020 年 1 月から運用を開始し、随時データを検証中だ

た。ブラインの取り出し温度は -30 ℃~ +5 ℃で、主に空調や冷

という。もう 1 つは、C 級・F 級の運転をスイッチできるタイプ。

凍冷蔵倉庫、フリーザー、製氷機に対応。用途も食品向上に限ら

両者を交互に利用したいというニーズに対して、1 台でコストや

ず、化学工場や製薬会社などにも向いている。主な実例としては、

エネルギーのロスを避けられるようにと開発された。また 2 年前

2019 年 1 月に納品したアサヒビール株式会社博多・工場、同年

からは、C 級・F 級を同時稼働できるタイプも運用を開始してい

10 月の芳雄製氷冷蔵株式会社、2020 年 2 月に納品されたばかり

るという。加えて、日本熱源システムはパラレルコンプレッショ

の宮下製氷冷蔵株式会社などである。納品から 1 年が経過したア

ンとエジェクターシステムを搭載した、次世代型のユニットも開

サヒビールでは、40℃近い夏場の福岡市内でも、一定の温度供給

発・検証しているところである。「来年この場所で新製品として紹

を実現。「年間の COP は、平均 1.65 を記録しました」と、黒石

介できるよう、今年度中に実験と検証を重ねてまいります」

氏は言う。ブラインチラーの要ともいえる温度供給の安定性も、 現場でのデータで証明できたという。

1/

3/ 2/

1/ CAREL Japan 代表取締役 関口 忠夫氏 2/ Embraco ギリアーミ・フィゲレード氏 3/ 日本熱源システム株式会社 黒石 広明氏

Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 45

環境配慮と経済性の両立。ATMOsphere2020 では、この言葉を

ロジャパンといった小売業に従事する事業者が、多数登壇してく

強く意識させる発表が目立った。CO2 ブラインチラーや高効率の

れた。またエー・ピーカンパニーのように、今後意欲的に自然冷

冷凍機開発に邁進する日本熱源システム。ニーズが増加し続ける

媒機器の導入に踏み切りたいというエンドユーザーが参加してく

フリーズドライ食品の製造プロセスに、アンモニア /CO2 採用の

れたことも、未来に向けた明るい材料となるだろう。綿密なスケ

省エネ型ソリューションを提案する前川製作所。グローバルに通

ジュールで自然冷媒機器設置を続ける国分グループや、協会全体

用する CO2 システムの開発と、他メーカーとの連携体制の構築に

で自然冷媒の啓蒙活動に臨む環境安全委員会といった、産業用分

奔走するパナソニック。自然冷凍の用途拡大に尽力するメーカー

野でのリーダーの存在も心強い限りだ。

各社の技術開発には、エンドユーザーにとって見落とすことので きない省エネ性という課題と、真摯に向き合っている様子があり ありと映った。

新型コロナウイルスの影響で、大半の企業・団体は事業計画の大 幅な軌道修正が求められることだろう。それでも、今回の発表で 見られた未来への投資が、自然冷媒市場の前身に大きく貢献する

研究・開発の現場で生まれた機器を使う、エンドユーザーの輪に

ことは間違いない。本誌としても、今まで以上にこの歩みを注視

も広がりが見えている。本会議では自然冷媒導入のリーディング

していきたい。 TS,DY

カンパニーであるローソンやイオンをはじめ、東急百貨店、メト

訂正とお詫び 『アクセレレート・ジャパン』26 号にて、下記のように誤った表記がございました。 ここに深くお詫びし、訂正させていただきます。

30P 本会議プログラム 業界リーダーセッションにて 誤)ソニック株式会社 アプライアンス社 正)パナソニック株式会社 アプライアンス社

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イベントレポート

炭化水素製品の初披露、続々と スーパーマーケット・トレードショー 2020 2019 年 2 月 12 日〜 2 月 14 日の 3 日間、千葉県・幕張メッセにてスーパーマー ケット・トレードショー 2020(主催 : 一般社団法人新日本スーパーマーケット協会) が開催された。国内外の小売業・卸・商社・中食・外食から 2,326 社・団体が参加し、 合計 3,577 のブースでそれぞれの製品・サービスを披露した。新型コロナウイルス の影響も心配されたが、3 日間で合計 80,428 名の来場者を記録。本誌が注目する 小売店・食品倉庫等をターゲットとするエリアでは、前年にも増して多くの自然冷 媒ソリューションが見られた。なかでも注目したのが、炭化水素冷媒の飛躍である。 文 : 佐藤 智朗、岡部 玲奈

AHT 社のショーケースを参考出展 ダイキン ダイキン工業株式会社のブースでは、昨年も展示した冷凍ストッ

欧州では水冷式かつブラインを採用したウォーターループシステ

カーの大容量タイプを新たに展示。これまでの 150L、200L、

ムでの運用も多い。ダイキンが 2018 年 11 月に AHT 社の買収を

300L、400L、550L の 5 クラスから、さらに 600L、750L クラ

発表して以来、同社製品を大々的に出展したのは今回が初めてだ。

スの 2 種類をラインナップとして加えた。いずれも最大 -23℃まで

あくまで参考出展という形だが、プロパンショーケースの欧州市

冷凍可能で、400L クラスまではイソブタン(R600a) 、500L 以上

場以外での可能性を図ることが目的の 1 つだという。AHT 社の

はプロパン(R290)を採用。現状の充填量規制に合わせ、すべて

ショーケースはオーストリア、アメリカ、ブラジル、中国に大き

「納入先は のラインナップが 150g 以下の充填量に対応している。

な生産拠点を持つ。多段ショーケースを生産しているのは、販売

温泉旅館や飲食のバックヤードが中心です。その他には農家や離島

先の中心地であるオーストリアとアメリカ。「今回の出展を機に、

の個人ユーザー様など、食料の大量かつ長期保存を求める層にも受

アジア市場での可能性を模索していきます。エンドユーザー様か

け入れられています」と、低温事業部 営業部 冷設システムグルー

らの声も集めつつ、好意的な反応が多ければ、中国拠点での製造

プの有井 哲二氏は語る。7 種類のラインナップからの拡充は、展示

を打診することも視野に入れる必要があるでしょう」。有井氏によ

会でのエンドユーザーからの声を反映させていきたいという。 「現

れば、来場者からの反応は良好であるという。ダイキンの 2020

状、想定できるものではスリムな家庭用冷蔵庫に近いタイプなどが、

年度は、設置もしやすい内蔵型の自然冷媒ショーケースの可能性

追加ラインナップの可能性として想定できます」 。サイズのニーズ

を、探る 1 年となることだろう。

には極力応えていきたい一方で、-18℃以上など温度帯が上がると、 食品の長期保存に悪影響があることも見逃せない。サイズと温度帯 の両立を大前提に、今後技術開発を進めていく予定である。

今回、ダイキンのブースではもう 1 つ特筆すべき展示が見られた。

AHT 社が展開する多段ショーケース「VENTO GREEN(ベント グリーン)」である。同機種はプロパンを採用。VENTO シリーズ は累計約 68,000 台(2020 年 2 月時点)納品されているが、う ち 23,000 台を「VENTO GREEN」が占める。なお納入先は、ほ とんどが欧州市場である。空冷式、水冷式両方に対応しているが、

Accelerate Japan // Spring 2020


47 イ ベ ン ト レ ポ ー ト //

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1/ ダイキン工業株式会社の冷凍ストッカー 2/ AHT 社の多段ショーケース「VENTO GREEN」

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イベントレポート

ウォーターループの利便性をさらに広めたい

ムではないが、一方でウォーターループシステムの一般への浸透

日本熱源システム

通じてさらに認知度を高めていきたいところだ。

度は、決して高くはない。日本熱源システムとしては、展示会を

日本熱源システム株式会社は、昨年同様に冷凍機メーカー、Freor の提案するウォーターループシステムと、同社のプロパン内蔵 ショーケース「JUPITER(ジュピター)」「PLUTON(プルトン)」 「ERIDA(エリーダ)」など各種モデルを展示。代表取締役社長の 原田克彦氏は、来場者の反応から昨年と比べ、プロパン冷媒に対 する抵抗はなくなっていると感じる。「他社でも内蔵ショーケース の展示が増えていることで、私達も訴求しやすくなった気がしま す」。プロパン内蔵システムという利便性を提案しつつ、ウォーター ループシステムを採用することで店内の排熱利用を有効活用しや すくなり、さらなる省エネにつながることを訴えていきたいとい う。暑寒など地域特性に関わらず、水道配管の要領で利用できる 簡便性も、ウォーターループの利点だ。技術的には難しいシステ

展示ブースに訪れるのは、小売店などエンドユーザーだけではな い。本誌が原田氏を訪問した際には、設備会社の関係者が同氏の 説明を受けているところだった。「メーカーである私達の力だけで は、納品数を増やすことはできません。各地域で店舗設計・設営 工事にあたる事業者の方々にも、このシステムを知ってもらうこ とは非常に重要です」。メーカー、設備会社、エンドユーザーの三 方良しが、システム普及の大前提だと原田氏は考えている。2020 年度を通じて周知徹底とともに、着実に納入実績を作っていくこ とが日本熱源システムの方針だ。すでに複数社から、本格的な導 入に向けての相談を受けていると原田氏は話してくれた。

1/ Freor の多段ショーケース「JUPITER(ジュピター)」シリーズ 2/ Freor の島型ショーケース「IDA(イーダ)」シリーズ 3/ パナソニックの炭化水素卓上ショーケース 4/ パナソニックの CO2 平型ショーケース

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イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 49

炭化水素、CO2 ショーケースをさらに拡大 パナソニック パナソニック株式会社 アプライアンス社およびパナソニック産機

「ハマ冷機とともに、この課題をクリアしつつノンフロンを採用 するという技術開発に取り組めたのは、パナソニックにとってい い経験となりました」 。同製品の販売元を務めるハマ冷機は、2020 年度ロットなどまとまった形での発注・納入を目指したいと語った。

システムズ株式会社の出店エリアでは、例年どおり屋外一体型の

CO2 冷凍機が出迎えてくれた。さらにブースでは、CO2 内蔵型の 平型冷凍ショーケースと、初の出展となる炭化水素の内蔵型ショー ケースが展示された。炭化水素のショーケースは、卓上型にはイ ソブタンを、縦型ショーケースにはプロパンをそれぞれ採用して いる。「開発の方向性として、内蔵型・別置型それぞれに考慮すべ き点はあります。しかしいまのところ、小型ショーケースは炭化 水素のラインナップを広げていく予定です」と、アプライアンス 社 冷凍機システム統括部長の大西 学氏は説明する。ちなみに内蔵 型のショーケース、オープンショーケースに関しては、現状「3 尺」 を CO2 と炭化水素のどちらを採用するかの境界線として捉えてい るという。「現状の充填量規制も加味すると、炭化水素ショーケー スは、消費電力 1,100W 程度のサイズが限界ではないでしょうか」

内蔵型のショーケース開発を進めているのは、省エネや設置条件以 外に、安全性の確保という点でもメリットがあるという。内蔵型は

1 台にコンプレッサーとエバポレーターなど、各部品がすべて含ま れている。故障時の対応も、パナソニック一社でまかなうことが可 能だ。充填量を意識して、内蔵型でできる冷却能力の上限を目指し て開発し、水冷式によるウォーターループシステムなどトータルソ リューションにどう対応していくか。この 2 つが、パナソニックの ショーケース開発のチャレンジになるだろうと大西氏は話した。

またブース内では、本誌でも紹介した株式会社東急百貨店に納入 した、ハマ冷機工業株式会社と共同で開発した水冷式の CO2 冷蔵 ショーケースも展示。地下に販売エリアがあり、冷却塔や配管長 など、環境負荷の高い設備条件で、安全性の高い運転を実現する。

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Spring 2020 // Accelerate Japan

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50 //

イベントレポート

新メーカーの投入で、市場拡大を狙う

社である。1949 年に創業した LIEBHERR 社は、小型のタワーク

レイテック

家庭用冷蔵庫、そして冷蔵冷凍ショーケースまでビジネスエリア

例年では AHT 社のプロパン内蔵の島型ショーケースを展示して いる、レイテック株式会社。今回も AHT 社の人気シリーズであ る「SINGAPORE(シンガポール)」をはじめ、多くのラインナッ プを展示。来場者からの反応も上々で、同社が販売するプロパン 内蔵ショーケースの認知度が非常に高まっているという。商品戦 略部 部長の加藤 昌彦氏は、 「来場された新規のお客様からも、 『こ のシリーズを近隣のスーパーでみかけたよ』とお声がけいただき ました。納品台数も毎年右肩上がりで推移しており、導入地域は 日本全国へ広がっています」と語る。商品 PR に関しても、特別 な宣伝活動をせずとも、お客様からの口コミで評判が広がるなど 好サイクルが回り始めているところだ。プロパン内蔵型の取り回 しのよさ、ケースから商品が見えやすい視認性の高さから、多く

レーン発明から事業を開始。建設機械製造のノウハウを活かし、 を開拓しつづけてきた。シンプルなデザインと堅牢な設計、フレー ム一体型のハンドルなど、堅実かつデザイン性の高いものづくり が特徴的だ。 冷媒は圧縮効率を考慮し、 小型製品にはイソブタンを、 大型にはプロパンを採用している。レイテックの主力製品と同様 に、すべて内蔵型であることも大きな特徴の一つだ。「AHT 社の 製品は、サイズ的にスーパーマーケットを主なターゲットとして います。LIEBHERR 社はより小型かつ安価なため、コンビニや道 の駅など、小規模の小売店が主なターゲットです」。AHT 社の製 品とターゲットをすみ分けしつつ、これまで AHT 社を導入した エンドユーザーに対して、ストッカーなど一部の製品導入を提案 する。LIEBHERR 社の取り扱いは、レイテックにとって複合提案 ができる体制を整えることになったのである。

の支持を集めている。 同タイプのショーケースは、国内に 4,000 ~ 5,000 台ほど活用さ 本展示会では、同社は AHT 社と別に、もう一つ別のメーカーの ラインナップを大々的に展開。それがレイテックが日本市場の独 占代理店となった、ドイツのショーケースメーカー・LIEBHERR

れていると加藤氏は試算。2020 年度は LIEBHERR 社を新たにラ インナップとして追加したことで、シェアをさらに伸ばしていき たい考えだ。

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1/ LIEBHERR 社のプロパン内蔵島型ショーケース 2/ AHT 社のプロパン内蔵島型ショーケース 3/ IARP のプロパン内蔵デュアルショーケース 4/ IARP のプロパン内蔵島型ショーケース

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Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 51

北海道、四国など地方で実績増やす カノウ冷機 2019 年度は前年度比で、約 50% の導入台数増加を達成した株 式会社カノウ冷機。IARP 社をはじめとしたプロパン内蔵の島型 ショーケースが多く並ぶ中、本展示会では島型ショーケース・リー チインショーケースに加え、デュアルショーケースを新たに展示。 デッドスペースになりやすい島型ショーケースの上部にも、商品 を陳列できる設計となっている。 「デュアルショーケースは上段と 下段がそれぞれ独立しているので、店舗レイアウトや運営方法に合 わせた設置が可能です」と、専務取締役の平山 義明氏は説明する。 他製品と同様にプロパンを採用しており、スイッチで冷凍(-25℃) と冷蔵(-1℃~ 5℃)の 2 温度帯で使用できる設計だ。同ショーケー スは 2019 年末より販売を開始したが、北海道のホテルに導入した ところ好評を博したという。その影響で、現在は函館市内のエンド ユーザーと、導入にむけた商談をしているところだ。

甲府市内の小売店舗でもデュアルショーケースの納品が決定。

2019 年度、2020 年度と地方を中心に、好調を続けている。「本 日は展示会にて、北九州市の小売店舗様からもお声をかけていた だきました。この好調をキープしつつ、2020 年度は 500 台以上 の売上を目指していきたいところです」

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Spring 2020 // Accelerate Japan


52 //

イベントレポート

プロパンのコンデンシングユニットを参考出展

最適な充填量も探りながらノンフロン拡充へ

三菱電機

サンデン

本展示会では、来場者の反応を見るために炭化水素ショーケース

サンデン・リテールシステム株式会社のブースでは、2 つの炭化

を「参考出展」する事業者が多く見られた。三菱電機株式会社も、

水素ショーケースが参考出展されていた。1 つはイソブタンの卓

その一社である。同社はプロパン内蔵の多段ショーケースを参考

上ケース、もう 1 つはプロパンの飲料ケースである。いずれも内

出品。それに加えて、プロパンのインバータコンデンシングユニッ

蔵型であり、コンビニエンスストアなど室外機を置けない店舗に

トを搭載したリーチインショーケースも参考出展した。展示され

も対応できる形となっている。コールドチェーン事業部 商品企画

たショーケースは R410a を使用しているが、ショーケース上部

部の石井 希一氏によれば、飲料ケースなど多段ショーケースに関

にプロパンの圧縮機ユニットを搭載することで、そのまま運転す

しては、充填量の最適化も含め調整を進めているとのことだ。「今

ることができるという。基本的な外形は HFC と変えず、制御部

回展示したショーケースは約 3 尺のサイズですが、これまでの規

も同じままでプロパンを採用できるのが、大きなメリットである。

制範囲内である 150g 以下でも冷えるのか、逆にそれ以上の充填

展示された圧縮機であれば、多段ショーケースなら 4 尺、平型

帳が必要かも、現在テストを進めています。安全性とコストが両

ショーケースなら 6 尺までは対応できると同社は試算する。

方担保できる最適な充填量で、市場へ投入していきたいところで す」。IEC にて決定された充填量引き上げに対して、国内の規制や

ラインナップ拡充のカギを握るのは、IEC の国際規格とリスク管 理とのバランスだ。可燃性冷媒の充填量が 150g から 500g に引

法整備が出揃うタイミングを測りつつ、ノンフロンショーケース のラインナップをそろえていきたいところだ。

き上げられたとはいえ、公益社団法人日本冷凍空調学会が進める リスクアセスメントの動向や、実際に現場で使用するための環境

スーパーマーケット・トレードショー 2020 では、参考出展も含

整備も必要となる。既存の充填量 150g 以下でどこまでの製品を

め「国内初出展」となる炭化水素製品が非常に多く見られた。日

カバーできるか確かめる必要もあるという。2020 年度からカタ

本のノンフロン市場では、CO2 が一歩先んじていたところ、内蔵

ログに掲載して販売するという方法は取らず、技術開発と認知度

型ショーケースを中心に「炭化水素一色」と呼べるほどの広がり

向上を並行して行いながら、安全性を担保していく予定だ。

を見せつつある。150g から 500g への充填量規制の引き上げも、 この勢いに大きな拍車をかけるかもしれない。2020 年度は、多 くの炭化水素導入事例を目にすることができるだろう。 TS,RO

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1/ 三菱のプロパン内蔵多段ショーケース 2/ サンデンのイソブタン内蔵卓上ショーケース 3/ サンデンのプロパン内蔵多段ショーケース

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Accelerate Japan // Spring 2020


R744(CO2)冷媒対応のユニットクーラーを新開発

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イベントレポート

炭化水素ソリューション拡大 2020 年 2 月 18 日〜 2 月 21 日にかけて、幕張メッセにてホテル・旅館・観光・各種 施設の日本最大級の商談専門展示会「HCJ2020」が開催された。本年は新型コロナ ウイルスによる影響を受け、来場者は 40,255 名にとどまることとなった(前年度は

67,171 名)。それでも開催期間中は天候にめぐまれ、連日 10,000 名以上の来場者を 記録。先に開催された「スーパーマーケット・トレードショー 2020」と同様に、本展 示会も多くの炭化水素ソリューションの進歩を、改めて目の当たりにすることとなった。 文 : 佐藤 智朗、岡部 玲奈

Accelerate Japan // Spring 2020


イ ベ ン ト レ ポ ー ト // 55

イソブタン採用の業務用冷蔵庫を初展示 ホシザキ ホシザキ株式会社はブース入り口そばの展示エリアにて、イソ ブタン(R600a)を採用した「HR-120AT ノンフロン仕様冷蔵 庫」を参考展示。冷蔵庫は定格内容積が 819L あり、温度設定範 囲は -6~12 ℃。冷却時の消費電力は 182W で、年間消費電力量

440kWh/ 年のスペック性能を持つ。同社の炭化水素業務用冷蔵 庫をはじめとしたノンフロン製品は、2019 年 9 月にオープンし た慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス内のローソンにて本格導入さ れた。本社営業部 広告宣伝課の奥田 祐氏は、2020 年 2 月時点 で冷蔵冷凍庫、製氷機、スシケースにて、炭化水素冷媒を用いた 技術開発および展開準備が完了していると話す。本社所在地の愛 知県を中心に、現在メディア各所にてプレスリリースを出したほ か、公式 HP でも発信をしている最中である。開催に先立ち行わ れたプレリリースでも、競合他社から多くの見学者が来訪したと、 奥田氏は話した。IEC での充填量引き上げのニュースについては、 現状の 150g 以内の充填量を想定した上で、社内独自にリスク評 価をしつつ開発を続けている。

同社はすでに欧州市場へ、多くのプロパン、イソブタン(R600a) 製品を納入した実績がある。海外向けの製品開発も、日本の生産 拠点で生産してきた(アメリカ市場については、現地工場で製造・

1/

販売している) 。ノンフロンの開発ノウハウは、十分に備えていた と言える。また同社は海外のエンジニアとの技術交換会を行う過 程で、欧州のエンジニアを中心に、炭化水素は決して安全性が低 いわけではなく、むしろ当たり前に浸透している現状を目の当た りにしてきた。一方日本では、漏えいセンサーの取り付けに関す る議論や、ユニットの配置制限など安全性を重視したい市場文化 が根強い。環境配慮はもちろん、約 1 年間、日本市場独自の事情 を踏まえた技術開発を経て、同冷蔵庫が発売されたのである。「将 来的に R404a 等 HFC の価格高騰が避けられない中、炭化水素以 外の冷媒も意識しながら、まずは意識が高いエンドユーザー様を 中心に、ノンフロン機器を浸透させていきたいです」と、奥田氏 は述べた。本誌では約 8 年に渡り、ホシザキの自然冷媒機器開発 の動向を見守ってきた。この 1 年でローソンに続く心弾む事例の 報告が、待ち遠しいばかりである。

省エネかつローコストの新製品、続々と ジェーシーエム プロパン、イソブタンの冷凍ストッカーやタテ型ショーケース、 卓上ショーケースなどバリエーション豊富な商品を展開する、株 式会社ジェーシーエム。着々と提携メーカー、生産工場を増やし ている同社は、毎年新たなラインナップを揃えて展示会を賑わせ ている。本年はすでに市場へ投入している、対面冷蔵ショーケー スを初展示した。「菓子販売など対面販売を行う小売店舗には、高 いニーズを秘めている商品でしょう。市場相場でも低い水準で商 品を提供しています」と、専務取締役の馬 笑波氏は説明した。エ ンドユーザーからのニーズを反映し、スピード感を持って商品開 発に努めているのがジェーシーエムの大きな特徴といえる。 ブー スではもう 1 つの新製品である、デュアル型冷凍ショーケースも 実物を展示。上下の棚を分割できることで、エンドユーザーの細か なニーズにも応えられる形となっている。同社は常に、環境配慮の みならず省エネ性能も意識した製品のアップデートを続ける。卓上

1/ ホシザキのイソブタン冷蔵庫 2/ ジェーシーエムの炭化水素ショーケース 2/

Spring 2020 // Accelerate Japan


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イベントレポート

ショーケースはインバーターを内蔵することで、フロン類と比較し て 15% ~ 20% の省エネを期待できる。大半のショーケース、冷蔵 庫が経済産業省・資源エネルギー庁の指定するトップランナー制度 に指定されていることからも、その姿勢がよく見えるだろう。

新たにラインナップとして加えたタテ型冷蔵ショーケースは、さ らなる安全性も追求している。ショーケースに備え付けのファン は、24 時間稼働することで冷媒が漏えいした場合でも、空気が 循環して拡散しやすいようにした。結露防止と反熱効果が高い特 殊ガラスを採用するなど、旧バージョンの冷蔵ショーケースより 高い省エネ効率を実現した。「近年は LED の採用など、省エネ対 策は決して珍しくありません。今できる最大効率の機器を作りつ つ、エンドユーザー様の手に取りやすい価格であること。それ以 外の商品は作らないというのが、 弊社の新製品開発の大前提です」 。

世界各地から約 30 年ノンフロンを

ジェーシーエムはこの姿勢を貫くことで、業務用冷蔵庫の分野で

ダイレイ

もノンフロンかつ省エネというポジションを確固たるものとして

低温~超低温の冷凍ケースを製造・販売する株式会社ダイレイ。

きた。ジェーシーエムは今後、対面冷蔵ショーケース、タテ型冷

同社は日本だけでなく中国、オーストリア、デンマーク、ドイ

蔵ショーケース、卓上型冷蔵ショーケースを中心としたz新ブラ

ツ、ブルガリアなどの拠点で、製造・販売している。AHT 社など

ンド「RIT」を立ち上げ、オンラインでの販売体制も整えていく

の製品を扱い、約 30 年前からノンフロン製品を取り扱ってきた。

とする。「『RIT』はこれからのネット発展に備え、既存の JCM ブ

-25℃の「無風冷凍ショーケース」、-60℃の冷凍ケース「スーパー

ランドとは別に打ち出した製品です。国内で将来的に価格競争が

フリーザー」、-80℃の「ドライコールド」の一部で、プロパンな

起きれば、代理店の皆様と協力しつつ、インターネットの強みを

ど炭化水素を採用している。納品先もスーパー、寿司屋、和食店、

生かしてこのブランドで対抗していく考えです」と、 馬氏は語った。

ホテル厨房、レストラン、水産仲卸など非常に幅広い。「社の方針 として、時代の要請に応えていきたいという思いを抱いています。 だからこそ、コストはかかるもののノンフロンという提案を続け てきました」と、営業部次長の小幡 真弘氏は語る。製品ラインナッ プにはプレハブなど HFC 使用のものも残っているが、今後ノン フロンへの切り替えも検討中でだという。

展示会では、3 社以外にも株式会社グローバル、双日マシナリー 株式会社の炭化水素採用のワインセラーも見られた。消費者にとっ て見える部分、見えない部分それぞれで炭化水素のソリューショ ンが浸透しつつある。新製品の国内外への市場開拓も含め、今後 の事例報告が待ち遠しい。

TS,RO

ダイレイのプロパン内蔵型冷凍ショーケース

Accelerate Japan // Spring 2020


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市場動向

CFC や HCFC に続く第 3 世代冷媒である HFC が普及。そして 2016 年 のモントリオール議定書キガリ改正の下での国際的な HFC 段階的削減 は、より環境に優しい代替品として自然冷媒の台頭を引き起こした。し かし一方で、HFC から HFO(ハイドロフルオロオレフィン)として 知られる第 4 世代のハロゲン化冷媒にも引き継がれている。はたして

HFO は HFC の代替品として機能するのか、それとも前者と同じ規制の 運命に苦しむことになるのだろうか ? 文 : マイケル・ギャリー、桃井 貴子

Accelerate Japan // Spring 2020


市 場 動 向 // 59

第 4世代冷媒

HFOの

たどるべき道 HFO に対する数々の懸念 最も一般的に使用されている HFO、R1234yf は世界中の政府環 境機関の承認を受けている。しかし、 R1234yf は GWP が 4 と低く、 オゾン層を破壊しないものの、環境と人間の安全性に関してはい まだ疑問が提起されたままだ。R1234yf は大気寿命が最大でも 2 週間あり、分解後は耐久性の高いトリフルオロ酢酸(TFA)にな る(R134a の 7% ~ 20%、および別の HFO である R1234ze(E) の 10% 未満が TFA に分解される)。TFA は降雨によって「酸性雨」 とした形で地上に降り注ぎ、河川や湖、湿地、海などの水域に蓄 積する。水域では TFA はカルシウムやナトリウムなどのミネラル と反応して、トリフルオロ酢酸塩を形成する。TFA が環境に害を 及ぼす可能性について多数の研究が行われているが、多くは TFA の蓄積は非常に少ないため、近い将来に環境と人類に脅威を与え ることはないとされる。しかし、量が多ければ破壊的な物質にな る可能性を持つことも否定できない。TFA そのものは吸入すると 有害であり、重度の皮膚火傷を引き起こす。また 1 mg / l に近い 低濃度では、一部の水生生物にも有毒だ。

国際環境 NGO のグリンピースは TFA に関して、「TFA 蓄積の許 容範囲については十分な知見がない」という立場だ。同団体のシ ニア政策コンサルタントであるジョン・マテ氏はさらに、「HFO および他の TFA を生成する物質の生産ピーク、および TFA の環 境への長期的な寄与が完全に理解されるまで、HFO の利用拡大 を防ぐ必要があります」と付け加えた。別の NGO である環境調 査エージェンシー(EIA)もまた、分解後の TFA の潜在的な影 響について懸念を表明している。欧州連合(EU)では、気候行 動総局長であるフィリップ・オーウェン氏が、2017 年のモント リオール議定書第 29 回締約国会議で R1234yf の TFA への分解 については、「さらなる研究と評価を必要とする懸念事項」だと 表明した。だが、2018 年のモントリオール議定書環境影響評価 パネル(EEAP)には「TFA は人間や環境にリスクをもたらすと は予想されていない」と示された。オーウェン氏は「11 月に行 われる次回報告書の参照条件の交渉では、TFA がモントリオー ル議定書の EEAP で引き続き対処されるよう努力する」と話す。

EU 最大の加盟国であるドイツは、R1234yf に慎重な目を向けて いる。ドイツ環境庁は「環境の観点から、R1234yf 冷媒は総合 的に満足できる解決策ではない」と述べている。

Winter 2020 // Accelerate Japan


60 //

市場動向

HFO排出予測

2050

2075

2100

非5条国(先進国) 54,923

228,641

232,222

234,585

5条国(途上国)

24,728

860,582

876,971

867,477

合計

79,651

1,089,223

1,109,193

1,102,062

(単位:メトリックトン)

ノルウェーの研究による TFA の評価では、生物および人の健康へ の予測される毒性リスクが低いだろうと結論づけられたが、一部例 外もあったという。それは、非常に敏感な藻類(淡水緑藻)への 影響である。ノルウェーの研究では、水生生物群集に対する TFA

2025

HFO がグリーン冷媒と呼ばれる 日本への提言

の影響の分析で、EUSES(欧州連合物質評価システム)を使って、

2015 年、日本ではフロン使用製品にフロンが使われていること

PEC(予測される環境濃度)および PNEC(予測される影響なし

を「見える化」する必要があるとの議論から、「フロンラベル制

濃度)の基本分析を行った。すると、マラウイとチリの土壌およ

度」が導入された。この中で、ノンフロンとして表示されるもの

びドイツの地表水における予測される TFA の上部環境濃度は、そ

には、CO2 やアンモニアなどの自然冷媒と HFO(HFO1234yf、

れぞれ 0.0075 mg / l、0.0094 mg / l、そして 0.14 mg / l に相

HFO 1234ze、HFO 1234ze 等)が同等に位置付けられたのである。

当することが判明した。淡水緑藻の場合、これらは PNEC で「最

現時点でこれらの冷媒は、「フロン排出抑制法」の対象にも加えら

も毒性がある」と判断される 0.0062 mg / l よりも高い数値であ

れず、回収破壊も対象外とされている。

る。この結果から、報告書は「HFO の使用には環境リスクが存在 することと等しい」と示された。

また今年 6 月に政府がまとめた「パリ協定長期低排出戦略(長期 戦略)」では、フロン対策の位置づけとして、「世界に先駆けてオ ゾン層を破壊せず温室効果も低いグリーン冷媒と、それを用いた 機器技術を確立し、世界のフロン類対策を技術でリードする」と 示された。ここでいう「グリーン冷媒」とは自然冷媒および HFO の両方を指すと政府は説明している。さらに「長期戦略」では、 「グ リーン冷媒技術の開発・導入」を推奨し、「世界に先駆けてグリー ン冷媒市場を創出し、フロン類使用製品のグリーン冷媒化を加速 する」とも示している。

しかし、ここまでに上述されたことをふまえれば、HFO を制限な く増産させるのではなく、HFO やその分解後の TFA に関する毒 性評価や環境影響をすすめ、それが完全に解明されるまでは、予 防原則に基づき、最低限の利用に留めるべきであろう。

MG,TM

グリンピース シニア政策コンサルタント ジョン・マテ氏

Accelerate Japan // Spring 2020


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