5月/ 6月版『アクセレレート・ジャパン』へようこそ!

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日水物流、倉庫業界の未来に 変革をもたらした挑戦 サブミラーの自然冷媒の勝算 市場への刺激 パナソニックアプライアンス& 前川製作所、社長独占インタビュー

沖縄県から地球の 未来を変える ユニオンの変革スピードと自然冷媒への熱意



アクセレレート・ジャパン 創刊者兼出版者 マーク・シャセロット

巻き起こる自然冷媒間での競争 自然冷媒、それは GWP の低い冷媒にスポットがあたる今、市場にとってなくてはな らないソリューションです。そのソリューションを提供するために技術開発に励む各 メーカーや、実際に導入して経験や課題点を共有するエンドユーザーを本誌では主に 取材していますが、それは単に情報共有という目的のためだけではありません。彼ら がフロン撤廃というミッションのもとで一つに団結することも大事ですが、市場を活 性化する競争を生み出すためには、時にお互いを刺激し合うことも重要です。 今、 「競 争」は同業者の中で起きているだけでなく、自然冷媒間でも巻き起こっています。技 術革新が進み、冷媒の用途が広がることで市場に参画するメーカーの数は増え、エン ドユーザーにとっては選択肢が増えます。これは市場開発のためになくてはならない 要素だと言えるでしょう。 私自身、shecco として 15 年以上、自然冷媒の可能性を唱え続けてきましたが、年月を 重ねるたびに賛同の声が増え、同時に様々なソリューションを世界各地で目にしてき ました。日本ではエコキュートの恩恵を受け、CO2 冷媒の認知度は上がり、CO2 冷媒を 使った技術開発が数多く行われてきました。その中で、あえて CO2 ではない別の自然 冷媒を使って技術開発をしてきたメーカー、前例がなくともそのような新技術を導入 し、自らが先駆者となることを買って出たエンドユーザーの挑戦心に、心から惜しみ ない拍手を送ります。今号の表紙には昨年、環境省が行う補助事業で業界初の炭化水 素冷媒ショーケース導入にて申請をし、補助金を交付されたユニオンを迎え、これか らもユニオンのような挑戦者が新たに出現することを我々は強く望んでいます。また、 CO2 ヒートポンプのエコキュートが日本では浸透する中、あえて炭化水素という新た な選択肢を市場に与えるノーリツの今後にも期待を寄せています。主に産業用分野の 大型機器に使用されてきた自然冷媒のアンモニアは、充填量の削減および機器自体の 小型化が現在進んできたことで、産業用・業務用の間にある垣根を越えるかもしれま せん。新たな可能性を生み出すことは、さらなる競争を生み出すことと同じです。5 月 に日本で開かれた G7 環境相会合では、共同宣言で HFC の段階的削減の支持が表明さ れましたが、我々は、HFC の削減に対してすでに取り組んでいた企業・団体と共に今 後も歩み続け、この競争がますます渦を巻くために日々活動していきたいと思います。 ご意見・ご感想はこちらまで。marc.chasserot@shecco.com

MC

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#5, MAY / JUNE 2016

ADVANCING HVAC&R NATURALLY アクセレレート・ジャパンについて 自然冷媒に関する情報発 信 の 世 界 的エキスパートsheccoがお届けするアクセレレ ート・ジャパンは、 あらゆるHVA C&R分野で自然冷媒ソリューションを取り扱う、最も革 新 的 なビジネスリーダーの 皆 様を 対象とした日本初隔月刊 誌です。

@AccelerateJP

http://acceleratejapan.com

P03

巻き起こる 自然冷媒間での競争

P14

P10

歴史に学び 自然冷媒へジャンプ!

P12

フロンの回収破壊 地球規模での実施

P18 サブミラー

ヒートアップするスペインの CO2トランスクリティカル市場 自然冷媒の勝算 市場への刺激 グロー バ ル 規 模で 展 開 する会 社 全 体で、新 規 に 投 入 するビー ル 用 冷 蔵シス テムに自然冷媒プロパン冷媒を採用している。

P28

ユニオン

沖縄県から地球の 未来を変える 自然冷媒への熱意 沖 縄 県 内 で 店 舗 数 を 増 や し て き た 、ス ー パ ー マ ー ケ ット チェ ー ン の ユ ニ オ ン 。全 店 舗 か ら R 2 2 冷 媒 の 設 備 を 撤 去 す る な ど 、彼 ら の 環 境 配 慮 に 関 す る 取り組 み 、そして 自 然 冷 媒 の 導 入 に 対 す る ス ピ ード 感 と 普 及 率 は 、日 本 屈 指 で あ る 。

お 詫 びと訂 正

2 0 15 年 12 月 に 発 行 の「 アクセレレ ート・ジャパ ン」 第 2 刊 の サン デ ン C O 2 コン プ レッ サ ー 市 場 を 拡 大 へ 、 という記 事 の 中 で の P 4 7 の C O 2 コン プ レッ サ ー 生 産 量 推 移 の 図 で 2 0 17 年「 1 . 2 0 0 万 台 」 と 記 載して おりました が 、 正しくは「 1 0 0 万 台 」 の 誤りでした 。 ま た 、 同じく 2 0 1 6 年 3 月 発 行 の 第 4 刊 の 記 事 、 第 3 回 AT M O s p h e r e A s i a 2 0 1 6 開 催レポートの P 3 3 に お きまして、 サン デ ン の C O 2 コン プ レッサ ー に つ いて、「 世 界 各 国 で 15 0 0 万 台 以 上 の C O 2 コン プ レッサ ーを 販 売して おり」 と 記 載 致しました が 、 正し くは「 世 界 各 国 で 15 0 万 台 以 上 の C O 2 コン プレッサ ーを 販 売して おり」で す。 関 係 者 ならび に 読 者 の み な さ まに 、お 詫 びして 訂 正 致しま す。( アクセレレ ート・ジャパ ン 編 集 部 )

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P36

ISSUE#

日水物流

出版元 / 発行元

創刊者兼出版者

倉庫業界の未来に変革をもたらした挑戦

P42 HFC冷媒の削減に対する CGFと各社の取り組み

P48 パナソニックが ハスマン社を買収 CO2冷凍冷蔵技術に自信

P52

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shecco Japan 株式会社 acceleratejapan.com

マーク・シャセロット

marc.chasserot@shecco.com @marcchasserot

インターナショナル ヤン・ドゥシェック 編集者 jan.dusek@shecco.com 編集者

岡部 玲奈 佐橋 縁

執筆者

岡部 玲奈 佐橋 縁 ロバート・デビッドソン ピラー・アレウ アンドリュー・ウィリアムス マーク・ハムストラ

翻訳者

藤本 敬 笠原 志保

広報マネージャー

ヤン・ドゥシェック

デザイン

工藤 正勝 メディ・ボージャー シャルロッテ・ゲオリス

写真

ベン・ビーチ スコット・シャセロット

Twitterのフォローはこちら @AccelerateJP

前川製作所の グリーンイノベーション

P56

前川製作所

進化する NH3 /CO2 冷凍機の 安全性とイニシャルコスト

P60

ノーリツ

戸建用 ハイブリッド給湯器を フルモデルチェンジ

P58

「食」を支える FOOMA JAPAN 食×自然冷媒の 最新技術に期待大

情報配信をご希望の方はこちら

acceleratejapan.com

アクセレレート誌は、アメリカ・ニューヨークからベ ルギー・ブリュッセル、そして東京まで、幅広いオフ ィスネットワークを持っています。本誌上で寄稿者 により示される見解は、必ずしも本誌発行元の見解 を表 すもので はありません 。本 誌 に 掲 載 する内 容 の 正 確 性 につ いては 万 全を期していますが、掲 載 内容の誤り・脱漏により発生するいかなる影響につ いても、発行元は一切の責任を負いません。 アクセレレート誌はsheccoJapan株式会社が発行 しています。無断複写・転載を禁じます。著作権者か らの 書 面 による事 前 の 許 可 なしに、本 誌 の 全 部ま たは一部を複写・複製することを禁じます。

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イベントスケジュール in アジア 2016 年 6 月 - 2016 年 7 月 6 イベント

期間

Food & Hotel Myanmar 2016

June 1-3

Iraq HvacExpo

June 1-4

Erbil, Iraq

Asean Sustainable Energy Week 2016 (ASE)

June 1-4

Bangkok, Thailand

FOOMA JAPAN 2016 国際食品工業展

6月7日(火)〜10日(金)

東京

https://www.foomajapan.jp/2016

India Warehousing Show 2016

June 8-10

New Delhi, India

http://indiawarehousingshow.com/

Food Hospitality World (FHW) India FHW Bengaluru 2016

June 9-11

Bengaluru, India

http://www.fhwexpo.in/

17th International Conference on Green and Sustainable Technology (GSUS)

June 14-16

Singapore

VICB 2016 Vietnam International Construction & Building Exhibition

June 14-16

Ho Chi Minh, Vietnam

http://www.construction-vietnam.com/vicb/home.php

RAHV VIETNAM 2016 International Exhibition on Refrigeration, AirConditioning, Heating & Ventilation Systems

June 14-16

Ho Chi Minh, Vietnam

http://www.construction-vietnam.com/vicb/home.php

ProPak Asia

June 15-18

Bangkok, Thailand

http://www.propakasia.com/

23rd Busan International Food Expo 第 23 回釜山国際食品大展 (BOFAS 2016)

June 22-25

Busan, South Korea

http://bofas.com/bfs_eng/sub01_02_ jap.php

LOGMAT 2016

June 24-26

Chennai, India

イベント

期間

場所

Asia Cold Chain Show (ACCS)

July 6-8

Bangkok, Thailand

http://www.asiacoldchainshow.com/

ASIA WAREHOUSING SHOW 2016

July 6-8

Bangkok, Thailand

http://asiawarehousingshow.com/

CleanEnviro Summit Singapore

July 10-14

Singapore

http://www.cleanenvirosummit.sg/

6TH INTERNATIONAL EXHIBITION ON PRODUCTS, TECHNOLOGIES OF ENERGY SAVING & GREEN POWER - ENERTEC EXPO 2016

July 20-23

Ho chi Minh, Vietnam

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月のイベント情報

/ Accelerate Japan May - June 2016 /

場所

LINK

Yangon, Myanmar (Burma) www.foodhotelmyanmar.com http://www.iraqhvacexpo.com/ http://www.entechpollutec-asia.com/

http://www.singaporeicrets17.com/

http://www.logmat.in/

月のイベント情報 LINK

http://vietnam-ete.com/enertec-expo.html


business case AMERICA

June 16 & 17, 2016 – Chicago Join us for the natural refrigerant event of the year! Hot topics at the conference will include...

SCALING CO

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REFRIGERATION

HYDROCARBONS FOR AMERICA

REINVENTING AMMONIA REFRIGERATION

F O R M O R E I N F O R M A T I O N V I S I T: ATMO.ORG/AMERICA2016

T O B O O K Y O U R T I C K E T S V I S I T: ATMO.ORG/AMERICA2016/REGISTRATION

F O R Q U E S T I O N S A N D S P O N S O R S H I P R E Q U E S T S C O N TA C T U S A T: INFO@ATMO.ORG


イベントスケジュール in ヨーロッパ 2016 年 6 月 - 2016 年 7 月 6 イベント

期間

場所

WTT-Expo 2016

June 1-2

Karlsruhe, Germany

SEPAG 2016

June 7-9

Valence, France

June 15-17

Madrid, Spain

ENVIRONORD 2016

June 15-16

Lille, France

http://www.salon-environord.com/

CLOUD & DEVOPS WORLD

June 21-22

London, UK

https://cloudanddevopsworld.com/#pane4

POWER-GEN Europe Renewable Energy World Europe

June 21-23

Milan, Italy

http://www.powergeneurope.com/

FACILITIES SHOW 2016

June 21-23

London, UK

http://www.facilitiesshow.com/

ICCRT 2016 1st IIR International Conference of Cryogenics and Refrigeration Technology

June 22-25

Bucharest, Romania

GENERA 2016 Energy and Environment International Trade Fair

7

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月のイベント情報 LINK http://www.wtt-expo.com/en/home/homepage.jsp http://www.salon-sepag.fr/ http://www.ifema.es/genera_06/

http://iccrt2016.criofrig.ro/

月のイベント情報

イベント

期間

場所

The 14th International Conference of Indoor Air Quality and Climate

July 3-8

Ghent, Belgium

13th International Conference on Protection and Restoration of the Environment

July 3-8

Mykonos island, Greece

The European Conference on Sustainability, Energy & the Environment 2016

July 7 -10

Brighton,UK

http://iafor.org/conferences/ecsee2016/

iEMSs 2016

July 10-14

Toulouse, France

http://www.iemss.org/sites/iemss2016/

ICEECE 2016 : 18th International Conference on Energy, Environmental and Chemical Engineering

July 11-12

Stockholm, Sweden

https://www.waset.org/conference/2016/07/stockholm/ ICEECE

INNOPROM

July 11-14

Stockholm, Sweden

http://www.innoprom.com/en/

IREEC 2016

July 11-13

Ekaterinburg, Russia

8th International Congress of Environmental Research

July 27-28

Madrid, Spain

/ Accelerate Japan May - June 2016 /

LINK http://www.indoorair2016.org/

http://pre13.civil.auth.gr/

http://www.warponline.org/viewjc.php?id=c11&page_id=54 http://www.icer16.jerad.org/


イベントスケジュール in アメリカ

2016 年 6 月 - 2016 年 7 月

6

月のイベント情報

イベント

期間

場所

ATMOsphere America 2016

June 16-17

Chicago, IL

http://www.atmo.org/events.details.php?eventid=44

Global Cold Chain Expo 2016

June 20-22

Chicago, IL

http://www.globalcoldchainexpo.org/

IDEA 2016 : embracing change

June 20-23

St Paul, MN

http://www.idea2016.org/

June 20-23

Chicago, IL

http://www.fmiconnect.net/

June 25-29

St. Louis, MO

June 29-30

Boston, MA

FMI Connect The Global Food Retail Experience ASHRAE 2016 Annual Conference

LINK

www.ashrae.org/stlouis

NEBFM 16 Northeast Buildings & Facilities Management

http://www.proexpos.com/NEBFM/index.php

Show & Conference 2016

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月のイベント情報

イベント

期間

場所

LINK

2016 Purdue Conferences Compressor Engineering, Refrigeration and Air Conditioning, High Performance Buildings

July 11-14

West Lafayette, IN

https://engineering.purdue.edu/Herrick/Events/Conferences

Intersolar North America

July 11-14

San Francisco, CA

Build Expo 2016

July 13-14

Houston, TX

IFT16

July 16-19

Chicago,IL

PMA Foodservice Conference and Expo

July 29-31

Monterey, CA

https://www.intersolar.us/en/home.html http://buildexpousa.com/index.html http://am-fe.ift.org/cms/ http://www.pma.com/events/foodservice

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ゲストコラム /

歴史に学び、自然冷媒へと カエル飛びしよう ! 寄稿 : 桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)

がフロンによる環境問題に取り組み始めてか

転換が進められた。HFC134a の冷媒を使った冷蔵庫な

ら 20 年もの歳月が流れた。当時はオゾン層破

どは、地球のことを両手でつつんで守るようなマーク

壊が加速していた時期で、モントリオール議

がシールとなって貼り付けられ、「代替フロンは環境に

定書のもと CFC は全廃され、HCFC も段階的削減の対

よい」と印象づけられてきた。当時、欧州でグリーン

象とされた。当時、フロンは機器の廃棄時などにその

フリーズが登場して脚光を浴びたが、日本では家庭用

全量が大気中に放出され、制度上の措置もなく野放し

冷蔵庫の使用冷媒が自然冷媒に切り替わったのは欧州

だった。市民感覚で見ると全量放出が野放しにされて

での発売から 10 年後のことだった。

いる状況はおかしい、と回収破壊を義務づける法制化 を求める運動が巻き起こり、そこに参画したことが私

今、オゾン層破壊の問題が完全に解決したとは言いが

の活動のはじまりだった。

たいが、オゾン破壊の危機的な状況は回避できたとさ れ、モントリオール議定書の成果として語られてい

10

一方、その当時のフロン問題に対する日本政府の方針

る。しかしながら、人類が直面する最大の危機である

といえば、オゾン層破壊物質の生産規制実施のために、

“ 気候変動 ” が現実のものとなって迫ってきている。も

代替物質への転換を強力に推奨していた。洗浄剤やス

はや決して将来世代の問題ではなく、今現実に起きて

プレーでは「脱フロン」が進む一方、冷媒では「自然

いる問題である。地球の平均気温はここ数年、毎年の

冷媒」ではなく HFC への転換が推進された。HFC が

ように記録を更新し、科学者の予測を上回る勢いで北

強力な温室効果ガスであることは当時から明白だった

極海氷が融解し、グリーンランドをはじめとする氷河

が、カーエアコンや冷蔵庫は HFC134a へ、エアコンは

の減少、熱波や干ばつ、集中豪雨などの異常気象も世

HFC410A へといった具合で「代替フロン」へと急速に

界各地で次々と報告されるようになった。小島嶼国は

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/ ゲストコラム /

海面上昇によって国自体の存続が危ぶまれ、各地で続

た温室効果ガス削減目標の深掘りや再エネ・省エネな

く異常気象の影響は経済全体にも影響を及ぼし、さら

どエネルギー分野に関連したトピックスで成果を挙げ

には例えばシリアで起きているような紛争の引き金に

られなかったことの裏返しだと感じている。

なっていたりもする(シリアでは 2006 年から 2010 年 に大干ばつに見舞われ、農業に大打撃を与えた)。

さらに言えば、実際のところ、今の日本政府や業界団

地球温暖化の要因は人間活動によるもので、その大部

体の HFC 削減強化の方針としてとられているのは、エ

分は化石燃料を燃やすことによる CO2 の排出である。

アコンの冷媒を HFC410A から HFC32 へ、カーエアコ

そして、HFC も CO2 の数千倍もの温室効果がある。こ

ンは HFC134a から HFC1234yf へと「より GWP 値の低

こで考えなければならないのは、かつて国内政策とし

い物質」への転換だ。2014 年 4 月に全面施行となった

てオゾン層保護のために HFC への転換が推奨されたこ

「フロン排出抑制法」も基本的にはこの動きを推奨する

とは果たして良いことだったのかということである。

施策となった。また、同法を後押しする施策として昨

HFC に切り替えずに一足飛びに自然冷媒への転換を目

年決定した「フロンラベル制度」は、GWP10 以下程度

指していれば、気候変動への影響をわずかながらでも

であれば、HFC であっても自然冷媒と同じ扱いで「ノ

回避できたのではないだろうか。

ンフロン」と表示ができる。今度は、低 GWP の HFC が「環境に良いもの」であるかのような印象を消費者

また、現在、HFC が強力な温室効果ガスであることか

に与えかねない措置である。

ら、段階的に削減していく、というのが世界の潮流だ。 オゾン層保護のためのモントリオール議定書締約国会

自然冷媒と HFC1234yf のような低 GWP の F ガスでは

合では、2009 年に米国・カナダ・メキシコの共同提案

明らかに性質が違う。前者は自然界にも存在する物質

として「HFC の段階的削減」が提出された(北米提案)。

だが、後者は人工的に作られた化学物質で燃焼すれば

この時は中国やインドなどの強力な反対で合意には至

フッ酸など毒ガスを発生する。また、分解後のフッ素

らなかったが、2013 年には米国のオバマ大統領と中国

化合物による人体への健康影響や環境影響などのリス

の習近平国家主席の米中会談で HFC 規制の合意に至っ

ク分析が充分に行われているとはいえず、さらなる環境

ている。日本のメディアではほとんど話題にされなかっ

問題を引き起こしかねないリスクが多分に考えられる。

たが、私たちの間では極めて明るいニュースとして受 け止められた。さらに EU では 2013 年に F ガス規制を

ここで思い起こしたいのは、先にオゾン層保護対策と

強化し HFC の段階的削減を導入、日本でも「フロン回

して HFC への転換を促した結果、気候変動のリスクを

収破壊法」の大改正で「フロン排出抑制法」が成立し、

加速化させ、そしてビジネスに二重投資を迫っている

HFC 規制に対応している。オゾン層保護対策が終わっ

という現実である。だからこそ今、HFC 削減強化のチャ

たら次は HFC 規制へとめまぐるしく変化するフロン対

ンスを活かし、自然冷媒へと向かう方が環境影響を低

策に、ユーザーは振り回されてきた。

減させるだけでなく、経済面においても二重投資のリ スクを低減するなど長期的なメリットは大きいはずだ。

少し話は飛ぶが、つい先日にあたる 2016 年 5 月に富 山市で開催された G7 環境大臣サミットの結果として、

近年、shecco が活動しているように自然冷媒ビジネ

日本の大手新聞社は「HFC 規制で合意」などと大々的

スを後押しする動きが生まれ、自然冷媒導入の事例

に報じたが、こうした既定路線を改めて確認した程度

が増え、そのネットワークが拡大していることを心

のものと私は受け止めている。2009 年の「北米提案」

から歓迎し、引き続き同じ方向を目指していきたい

や 2013 年の「米中会談での HFC 規制合意」の方が遥

と考えている。 TM

かに意義深いが、これらを報じなかった大手各紙が、 「G7 環境大臣会合」の “ 成果 ” として報道するのは、 気候変動政策の本丸である「パリ協定」の実施に向け

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ゲストコラム /

自然冷媒代替のための前提条件 : フロンの回収破壊の地球規模での実施 寄稿 : 笠井俊彦 元環境省フロン対策推進室長

地球温暖化係数で重み付けした放出量(CO

2

10 億 t CO2eGT Gt/ 年

換算)

モントリオール議定書なし IPCC CO2 排出シナリオ範囲

30 2.0

HFC 類

京都議定書削減目標

HCFC 類 CFC 類 , ハロン , 他

20

10

0 1950年

少 1970年

1990年

2010年

2030年

2050年

出典:UNEP「オゾン層破壊の科学的評価 2010」より

C

O2 換算で毎年 20 億 t 以上の排出がありながら世

温暖化対策のためのフロン対策というと、国際的には

界でほとんど手をつけられていない問題があり

HFC の生産使用規制だけが議論されているようですが、

ます。それは、既存の機器からの CFC,HCFC,HFC

現在、途上国で大量排出されている CFC,HCFC の回収

の排出です。上の図は、国連環境計画 (UNEP) オゾン層

破壊を 1 日でも早くやらないと累積の温室効果ガス排

事務局科学評価パネルがまとめた報告書「オゾン層破

出量が増えていき、大きな負担になってしまいます。

壊の科学的評価 2010」に掲載の、温室効果で換算した

グラフ上の 1980 年代を見れば大変な量の CFC が排出

CFC,HCFC,HFC の世界全体での排出の現状と予測です。

されています。このことを踏まえ、先進国は、現在の 新興国、途上国でのフロン回収破壊システムの整備を

機器に充填されたフロンが使用中又は廃棄の際に放出

支援・協力しなければなりません。

される問題は「バンク問題」と呼ばれています。2050 年に向けて排出が急増していくのは地球規模で機器の

日 本 は 世 界 に 先 駆 け て、CFC,HCFC,HFC を 一 体 と し

数が増えていくためであり、これを防ぐために自然冷

て 扱 い、 回 収 破 壊 す る 仕 組 み を 作 り ま し た。2015

媒への転換は非常に重要です。ただ、2010 年代では、

年からは使用中の漏えいなどについても管理を強化

CFC,HCFC の排出がかなりありますが、これらは新興国、

し て い ま す。 直 ち に 日 本 か ら 新 興 国、 途 上 国 へ の

途上国での既存の機器から排出が大部分です。既存の

CFC,HCFC,HFC 一体となった回収破壊システムの整備

機器からの CFC,HCFC の回収破壊をせずに自然冷媒へ

を呼び掛け、支援・協力していかなければ、地球規模

と転換することは CFC,HCFC の排出を促進しているこ

での排出は止まらないでしょう。一緒にやろうという

とになります。ですから、自然冷媒への転換を進める

途上国との実績を持って、国際的な枠組み作りを進め

ためにもフロンの回収破壊の仕組みを新興国、途上国

て行くべきです。 TK

に根付かせなければなりません。回収破壊の仕組みの 整備は HFC 対策の前倒しにもなります。

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/ Accelerate Japan May - June 2016 /


THE POWER OF BRAINS A machine is only as good as the engineer who built it CD 300

CD 400

CD 200

CD 500

THE FLAGSHIP SOLUTIONS FOR CO2 TRANSCRITICAL APPLICATIONS CD Range results from more than a decade of experience and more than 12.000 running transcritical compressors on the field. Reliability and efficiency make these compressors the natural solution for sustainable HVAC&R market. Dorin naturally broaden the Range with the CD500, a 6-pistons Range that takes the maximum displacement of Dorin CO2 Transcritical Compressors from 30,23m3/h to 53,20 m3/h. Dorin Dynamic Innovation goes on meeting the most updated requirements of its customers.

OFFICINE MARIO DORIN SINCE 1920

www.dorin.com | dorin@dorin.com


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業 界 ニュース /

ヒートア ップ す る スペインの CO 2 トランスクリティカル市 場 と COOL な店舗 スペインでは、政治・経済の情勢を受けて最先端の CO 2 トランスク リティカルシステムを導入あるいは検討する小売業者が増加を続け ている。バルセロナで開催される今年の ATMOsphere Europe を前 に、『Accelerate Europe』はスペインで新境地を開拓している小売 業者に注目した。 文 : ロバート・デビッドソン、ピラー・アレウ

ヨーロッパには、製品冷却に CO2 トランスクリティカ ルシステムを使用する店舗が 5,500 以上存在する。こ の数字は年々増加しているが、市場導入率に関しては 北と南で明らかな隔たりがある。この南北を分ける境 界線こそが一般的に『CO2 赤道』とも呼ばれ、31.1℃ の臨界点を超えると効率が低下するという CO2 の熱物 理的原理に基づいているものだ。 北部の気候では主流となっている CO2 ブースターシス テムも、スペインやイタリア、ギリシャといった地中

CO 2 トランスクリティカルの強化と

海諸国においては、この非効率性のため、以前はその

各スペイン企業の反応

適応性に対し疑念が持たれていた。しかし、徐々にこ の非効率性を緩和する先進技術が勢いを増してきてい る。パラレルコンプレッサー、エジェクタ、断熱式ガ スクーラーなどの技術の採用によって、スペインを中 心とした温暖気候地域での CO2 技術の進化を目の当た りにすることができるのだ。

スペインにおける CO2 の使用そのものに関して言えば、 『Accelerate Europe』(ヨーロッパで 目新しくはない。 発行する本誌の姉妹誌)の調査でも、対象となった小 売業者の半数以上が、過去に CO2/R134a カスケードシ ステムを使用した経験があると答えている。より進化 した CO2 トランスクリティカル技術への移行、という のが比較的新しい現象である。2015 年には CO2 トラ ンスクリティカルを導入すると決断したスペインの小 売業者であるコンサム(Consum)の開発部設備管理 責任者、カルロス・レラゾン氏は次のように語った。「私 たちは 2014 年に、CO2 サブクリティカルシステムを 備えた新店舗をオープンしました。そして 2015 年に

14

/ Accelerate Japan May - June 2016 /


/ 業 界 ニュース /

ハイバー・スーパーマーケットの 店 内

はさらに一歩進んで、可能な限り CO2 トランスクリティ

R134a などの高 GWP ハイドロフルオロカーボンの段階

カルシステムを使用することを決めたのです」

的廃止とそれに伴う課税による推進力もさることなが ら、改良されたエネルギー効率の将来性もまた、新た

スペイン全土でこのような採用が後押しされた要因の一

なソリューションを模索する小売業者を大いに魅了し

つに、最近実施された F ガス類への課税がある。2014

ている。ハイバー・スーパーマーケット(Supermercados

年 1 月より施行されたこの課税制度では、ハイドロフ

Hiber)のジェネラルマネージャー、ガブリエル・ルイ

ルオロカーボンを含む、地球温暖化係数(GWP)150 以

ズ氏による説明を引用すると、「CO2 技術の成果は、投

上のフッ素系温室効果ガスが対象となっている。これ

資回収期間が比較的短く、機器の寿命が長いスーパー

は自社のスーパーマーケットシステムでハイドロフル

マーケットにとって非常に魅力的です。従来機器と比

オロカーボンを使用している小売業者にとっては、甚

較し約 30% も省エネである上、投資の回収も 3 年と短

大なコスト増を意味する。オーシャン・スーパー・ス

期間でできます」ということだ。

ペイン(Auchan Super Spain)の技術ディレクターであ るガブリエル・ロメロ氏は、2015 年の取材に対し「ス

(注 1)オーシャン・スーパー・スペイン に関しては本誌 1 号を参照 : https://issuu.com/shecco/docs/accelerate_japan__1/53?e=0

ペインの新たな F ガス税により、300 万ユーロのペナ ルティに直面する可能性がある」と述べている(注 1)。 p.16 へ 続 く

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業 界 ニュース /

スペインでの普及拡大に伴う イノベーションの高まり スペインへの CO2 トランスクリティカル技術流入が 続くなか、市場でも徐々にこの技術に関する知識が深 められてきた。飲食店向けの業務用食材を販売するマ クロ社(Makro)の冷凍冷蔵システム導入責任者のホ セ・マリア・デ・サントス氏は「トランスクリティカ ルの導入は思われている程には複雑ではありません。 CO2 トランスクリティカルブースターシステムの性能 を知ってしまえば、他のシステムとの最大の違いは作 動圧力の高さだけなのです」と言う。このように人々 が熟知することでそのシステムに対する信頼は増し、

CO2 技術者と研修の不足

先進技術を利用するようになる。マクロ社は、より新

市場の理解は着実に深まり、小売業者は新技術を試し

しく進んだシステムに対する関心を高めている。同氏

ている。にもかかわらず、CO2 トランスクリティカル

は「現在、マドリッドのマクロ・バラハス店に導入し

が将来を約束された技術であると言うには時期尚早で

たパラレルコンプレッサーを備えたシステムは、その

あるのは、なぜだろうか ? マクロ社の答えはこうだ。

性能を検証中です。また、エジェクタ付きシステムの

「この技術には、まだまだ課題がありますし、さらに、

進化に関しても性能を見定めるべく、大いに注目して

CO2 を扱うに足る熟練技術者が足りません」

います」と続けた。 コンサム社も同様の問題に直面してはいるが、積極的 暑さの厳しい南端を含むスペイン国内のあらゆる地域

に対処している。同社は、業界が一致団結して CO2 ト

で、CO2 トランスクリティカルシステムの試験を実施

ランスクリティカル技術により良い市場環境を作るべ

したことで、コンサム社は一歩先を行っていると言

きだと考え、システムサプライヤーとの協力で 4 種の

えるだろう。スペイン南東部のムルシア州で導入し

内部研修を設定したのだ。「最も困難なのは、設置業者

た CO2 トランスクリティカルシステムは、今後の出店

やメンテナンス担当者に対する研修です。彼らの多く

に向けてシステムの有効性を検証するために利用され

はまだ研修不足か、この種の設置に携わる機会に恵ま

る。同社によれば、 「データを収集し、省エネ性を分析す

れていません。3 年か 4 年、少し時間がかかるでしょ

ることで、この取り組みを続けるべきか、あるいは特定

うね」とコンサム社では考えている。

の緯度までに制限するべきか判断することができます」 トレーニングされた技術者の不足や、スペイン南部で の普及を左右する効率性試験データの不足という潜在 的な制約があることで、CO2 トランスクリティカルシ ステムは、未だに普及前夜である。いずれ、これらの 課題が克服されれば、いよいよ南部が北部に追いつく 姿を目撃できる時が来る、つまり CO2 が大陸全土で標 準となる日が来るであろう。 RD&PA

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

自然冷媒 の 勝算 市場へ の 刺激 大手醸造会社のサブミラー(SABMiller)は、グローバル規模で展開する会社全体で、 新規に投入するビール用冷蔵システムに自然冷媒プロパン冷媒を採用している。 文 : アンドリュー・ウィリアムス

アンドレ・フォウリー氏 サブミラー 水の安全保障・環境価値部門

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

世界第 2 位の収益を誇り、ロンドンに拠点を置くサブ

ナストロアズーロ、地ビールのピルスナーウルケル、

ミラー社は、その利用する資源も莫大である。しかし

キャッスル、ティスキエ、レックなどがある。同社は

同社は、それらの資源を持続可能な方法で組織化しな

また、コカ・コーラ社の主要ボトリング企業でもある。

ければならないという責任をも同時に認識している。 同社のカーボンフットプリントにおいて冷凍冷蔵は 「我々は、バリューチェーン全体におけるカーボンイ

18%~20% を占めており、2020 年までにバリューチェー

ンパクトを測定します」と、同社の水の安全保障・環

ン全体の炭素排出量を 2010 年比で 25% 削減するとい

境価値部門を率いるアンドレ・フォウリー氏は述べた。

う同社が目指す動きの中で、自然冷媒は中心的な役割

「農業、つまり我々が購入する大麦、麦芽、ホップをき

を担っている。

ちんと見ています。麦芽の製造過程を、醸造過程、製 品の冷蔵・パッキング過程を調べ、流通過程、そして

サブミラーは、2020 年までに店舗での瓶ビール用冷

廃棄についても調べます」フォウリー氏はロンドン近

蔵システムの購入を 100%HFC フリーで、主に自然冷

郊の彼の事務所で『Accelerate Europe 』(本誌姉妹誌)

媒プロパンを使用すると公約している。サブミラーが

の取材の際、このように語った。

展開する全市場における冷蔵システムの新規購入率 は年間約 1 万台である。ヨーロッパで始められたこ

1885 年、南アフリカの醸造メーカーとして設立された

の取り組みでは、ポーランドの小売ネットワークに

サブミラーは、今や FTSE100 種総合株価指数の銘柄に

約 8000 台のプロパン冷蔵システムを新規投入し、そ

含まれ、6 大陸 80 か国以上で約 7 万人の雇用を生み出

の後この戦略を拡大した。昨年ヨーロッパで新規購入

している。 サブミラーの製品には、国際的な高級ブ

した冷蔵システムの約 90% が HFC フリーであった。

ランドであるミラージェニュインドラフト、ペローニ、

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この醸造業界巨大企業は合計約 90 万台の冷蔵システムを所有し ているが、彼らのように大きな多国籍企業による自然冷媒採用の 戦略決定は、重要な転換点となりうる出来事である。このような 計画を進めながら、フォウリー氏は勢いを維持することの重要性 を強調した。「課題はいくつかありますが、我々の公約に向かう取 り組みは軌道に乗っていると言えるでしょう」 同氏は市場が急速に動くことを予測している。「サプライヤーが 1 つか 2 つのモデルを出せば、競合他社はにわかに同様のモデルを 出さねばというプレッシャーに晒されます。そしてそういった流 れにより、彼らはさらに確信を深め、メンテナンス業者は迅速に 業界を支えるべく対応するでしょう」 例えば、サブミラーが最も多く自然冷媒機器を配置しているポー ランドにおいては、すでに市場で最も高性能で最も価値の高い冷 蔵システムでは自然冷媒を使用しているという段階に達している。 サブミラーによる全パイロットプロジェクトにおいて、必要な技 術的知識とメンテナンスが整えば、自然冷媒には実用性があるこ とが確認されている。「この点に関し、我々はサプライヤーと綿密 に連携して取り組んでいる」と同社は、所属するパリ拠点の業界 団体、コンシューマーグッズフォーラム(CGF)発行の文書「リ フリジェレーション」の中で述べている。 また、サブミラーは営業担当者や小売業者向けにわかりやすいガ イドやトレーニングツールを開発し、冷蔵システムの安全かつ持 続可能な運用について指導している。同社は「冷蔵システムの配置、 条件、運用に関する有益なヒントを与えることで、ビールの冷蔵 の最適化と、小売業者にとっての省エネ・コスト削減を確実にし ます」と、同じく CGF の文書で説明している。 同社は冷凍冷蔵機器での自然冷媒採用に関して、財務面での事例 を作ろうと熱心に取り組んでおり、フォウリー氏は、冷蔵システ ムに自然冷媒を使用することでより安い金額で運用できると確信 している。同社は現在、サプライヤーと小売業者からデータを収 集し、これを実証しようとしている。「非常に励みになるデータが 集まっています。自然冷媒は間違いなく、小売業者のコスト削減 につながりますし、同時に、CO2 も削減できるのです」 p.22 へ 続 く

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

世界が向かうべき方向へ HFC の廃止を選択したサブミラーであるが、果たして 100% 自然冷媒だと決める前に、合成冷媒などの他の 選択肢は検討しなかったのだろうか。フォウリー氏の 答えは「ノー」だ。つまり、そのような選択肢はもと もとなかった。「やるなら完全に HFC から撤退しよう というのが、我々の決断でした。CFC での経験を繰り 返す必要などあるでしょうか。世界が向かうべき方向 性は非常に明確です」 公式に、同社の方針は『HFC フリー』である。それは、 低 GWP の合成冷媒(HFOs)も使用しない、というこ とを意味する。 「徐々に議論が高まる中、我々は自然 冷媒について語ることの価値を認識しました」と同氏 は言う。 「自然冷媒は市場でその価値を伸ばせるでしょ う。そしてまた、世界が向かうべき正しい方向でもあ ると考えています。だからこそ、自然冷媒について語 るべきです」 現在、サブミラーはビール専用の業務用冷蔵システム にプロパンを採用する方針だ。これは、小売業者がプ ロパンの扱いを熟知しているためである。しかし、中

には CO2 冷媒を使用したショーケースを使用したいと いう業者もいる。とりわけ、ソフトドリンクを入れる 場合に多く、小売業者の判断による場合もあれば、清 涼飲料水サプライヤーの要請による場合もある。そこ で、サブミラーは特定の冷媒を小売業者に強要するこ とはしないと決め、「冷媒が CO2 であろうとも全く問 題ありません」とフォウリー氏は言う。「ただ、自社で 購入する場合には、プロパンを選ぶ、ということです」 サブミラーは全醸造所で、産業用冷凍冷蔵用に、ま た別の自然冷媒であるアンモニアを使用してい る。「かつては醸造所のいろいろな場所で異なるア ン モ ニ ア シ ス テ ム を 使 っ て い ま し た。 今 で は よ り 集 約 的 に 管 理 す る こ と が で き る よ う に な り、 効 率 性 を 確 保 し て い ま す 」 と フ ォ ウ リ ー 氏 は 述 べ た。 市場規模のより大きい小売の分野においては、サブミ p.24 へ 続 く

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

Refrigerants, Naturally! への参加 ラーはサービスプロバイダーと直接契約をし、各冷凍

最近、サブミラーは Refrigerants, Naturally! の 5 番目の

冷蔵システムにその電話番号が明記されている。彼ら

メンバーとなった。店頭における冷凍冷蔵システムで

はサブミラーに代わってメンテナンスを行い、冷蔵機

使用される有害な温室効果ガスを、気候にやさしい自

器のあらゆる問題を解決する。

然冷媒に変えることで地球温暖化とオゾン層破壊に歯 止めをかけようという国際企業主導の取り組みである。

多くの食品小売業者にとって、流通面もまた冷蔵フッ トプリントには大きく影響する。しかしサブミラーは、

この団体では、サブミラーのほかに、レッドブル(Red

流通には着手しないという戦略的決断をした。「通常、

Bull)、ペプシコ(PepsiCo) 、コカ・コーラ・カンパニー、

我々はビールを冷蔵輸送しません。そして多くの場合、

ユニリーバ(Unilever)が支援パートナーであるグリー

我々は輸送手段を所有してさえいないのです」と同氏

ンピースおよび国連環境計画(UNEP)と協力している。

は説明した。実際、同社はビールを冷たいまま輸送す

その目的は、自然冷媒を、安全で信頼性が高くかつコ

ることはエネルギーの無駄遣いであると考えており、

スト効率の良い方法で、選ばれるべき冷却技術にする

やめさせることに対しても積極的だ。「いったん荷降ろ

ことにある(注 1)。

しすれば、またすぐにぬるくなってしまいますから」 とフォウリー氏は言い、かつてアメリカではビールの

世界規模のパートナーと協力して地球が直面する課題

冷蔵輸送がよく行われていたが、「しかし徐々に変わっ

に取り組むことの重要性を、フォウリー氏は強調する。

てきたのです」と彼は付け加えた。

「我々が投資する持続可能な開発に関するほとんどす べての分野においては、問題もその解決策も、一企業 だけでは手に負えない規模である、と認識しているか らです」と同氏は説明する。

(注 1)Refrigerants, Naturally! の自然冷媒に対する取り組みについては本誌 1 号を参照 : http://issuu.com/shecco/docs/accelerate_japan__1/15?e=4239849/14823597 p.26 へ 続 く

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

「自然冷媒は市場でその価値を伸ばせるでしょう。 そしてまた、世界が向かうべき正しい方向でも あると考えています」 Refrigerants, Naturally! 傘 下 で 他 の 大 手 多 国 籍 ブ ラ

わけではない。「しかし、たとえ適切なスケジュールが

ンドが持続可能な事業経営を進めていくのを間近に

いつであろうとも『我々は世界にこういった規制を求

見たことは、他社がいかに障害を乗り越えるかを知

めています』というものを示す、ということは可能だ

るうえでも、またサブミラーの持続可能性対策に対

と思いますし、きっと影響力を発揮するでしょう」と

する従業員の意識を高めるうえでも特に役立ったと、

フォウリー氏は述べた。また、各企業においてもモン

フォウリー氏は言う。

トリオール議定書に HFC の段階的削減を含めるよう声 をあげてもらうことも、大きな前進となる。

こういった点では CGF もまた有益である。2010 年、消 費財のメーカーと小売業者 400 社をまとめる CGF が、

フォウリー氏はまた、企業から出される方針や意見

大多数の冷凍冷蔵システムで使用されている HFC は強

は、彼らの行動がどのように受け止められるかにつ

力な温室効果ガスであると認め、それらを自然冷媒へ

いて注意を払わねばならないことを指摘した。これ

と転換するプロセスの開始を誓う決議を採択した。フォ

により、強い規制を求めることに慎重となる企業が

ウリー氏は最近、CGF の冷凍冷蔵作業部会の会長に就

出てくる可能性もあるからだ。それでも彼は、企業

任した。 「この作業部会には、商品のより持続可能な冷

に決断力をもって行動させるには、規制措置が重要

蔵冷凍のためにいかに環境を改善するかを探究してい

な役割を果たすと信じて疑わない。例えばヨーロッ

くという、明確な方針論理があります」と彼は言う。

パでは、EU の F ガス規制が企業の意識を HFC の段

2010 年の決議では、世界最大手企業の何社かが「2015

階的廃止へと向かわせた。「ヨーロッパの企業がほか

年以降、HFC 冷媒の段階的廃止を開始し、店舗用機器

より進んでいる理由はただひとつ。ヨーロッパにお

や大型冷凍冷蔵システムの設置段階で新規購入が合法

ける規制の動きが早かったのです」

かつ可能な場合、HFC を含まない冷媒、つまり自然冷 媒を選択肢として 置き換える」ことを誓約した。

昨 年 12 月、 パ リ で の COP21( 国 連 気 候 変 動 枠 組 条 約第 21 回締約国会議)において、キャリア(Carrier

話を進め、今年までのことに関して言えば、CGF 加盟

Commercial Refrigeration)、 ド リ ン(Dorin)、 エ バ プ

企業が世界中で導入した低炭素冷凍冷蔵システムの数

コ(EVAPCO)、ユニリーバ、コカ・コーラ・カンパニー

は、4,000 店舗以上のスーパーマーケットで、アイス

など自然冷媒に関わるメーカーおよびエンドユーザー

クリーム用・飲料用冷却システムは 400 万台にのぼる。

が、約 200 国が合意した歴史的な気候に関するパリ協

そのほとんどで自然冷媒が使用されている。そして 1

定を大筋で歓迎した。これらの企業は HFC の使用を減

月、加盟各社は気候に悪影響を及ぼす CFC に代わって

らし、地球規模の気温上昇を 2℃以内に留めることに

自然冷媒の使用を検討することに合意した。

ビジネスチャンスを見出している。フォウリー氏もこ の熱意には共感しているが、持続可能な冷凍冷蔵の持

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サブミラーは両団体のパートナーと協力し、どの方針

つ意味に対してはもっと慎重だ。同氏は、パリでの冷

プロセスが最も推進に役立つかを確かめようとしてい

媒に関する議論が十分でなかったと感じている。だが、

る。厳密な方法、日程、目標に関し、全員が賛成する

各国政府も COP21 で合意した世界目標を達成するため

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の国家計画を考案せねばならない。今、新たなチャンスの扉が開こうとしてい るのかもしれない。「各国政府がそこに至るためにそれぞれの目標を達成せ ねばならないという事実は、非常に重要です。願わくは、そのうち彼らが冷 媒に何らかのチャンスを見出してくれればよいのですが」とフォウリー氏は 言う。世界の主要経済国から成る G20 は、参加国の過半数以上の政府が強 力なアクションをとることを支持しており、HFC の段階的削減にさらに期 待できることを同氏は示唆している。もしも、世界のトップ 20 企業の CEO が、政治的合意に同調して同様の宣言を発表したとしたら、「かなりの影響 力を持つでしょう」と同氏は述べた。 フォウリー氏は、サブミラーの経験を他社の同じ立場の人々と共有することで、 彼らが自然冷媒に取り組む刺激になれば、と願っている。「それはこの自然冷 媒への道のりにおいて重要な部分なのです。刺激し合い、挑戦する。そしてそ れに留まらずまた学び合い、合意を見出すのです」 AW

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沖縄県から地球の未来を変える

ユニオンの変革スピードと

自然冷媒への熱意 沖縄県内で店舗数を増やしてきた、スーパーマーケットチェーンのユニ オン。全店舗から R22 冷媒の設備を撤去するなど、彼らの環境配慮に関 する取り組み、そして自然冷媒の導入に対するスピード感と普及率は、 日本屈指である。チャレンジ精神を持って市場を切り拓く、その活動の 根底にある思いとその実績とは ? 文 : 佐橋 縁、ヤン・ドゥシェック

佐喜真 保氏 野嵩商会 部長

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全店舗の設備から R22 を撤廃 沖縄県で株式会社野嵩商会が 18 店舗を運営する “ ロー

国内の多くのスーパーマーケットでは R22 の設備を使

カルスーパー ” のフレッシュプラザ ユニオンは、沖縄

用は続いており、このような早期の決断と実行はもっ

の食文化を大切にするというそのモットーの通り、店

と周知もしくは模倣されるべきと言えるかもしれない。

内には他県では見かけないような食材も並ぶユニーク

そして今年 1 月に、そのうちの 10 店舗において自然

な品揃えが魅力の一つである。しかし、温暖な地域に

冷媒機器が全て導入されたのである。同氏は地球環境、

属する沖縄県から発信されるべきメッセージは別にあ

特にオゾン層について、どの破壊物質が、どれ程の時

る。彼らは、店舗内のショーケースすべてを自然冷

間をかけてオゾン層への影響を与えているのか、そし

媒機器へと変換すべく動き始め、2016 年 1 月までで

て各自然冷媒の特性などに関して独学とはいえ、非常

10 店舗において、R290(炭化水素)冷媒使用のプラ

に熱心に勉強していた。常に最新の情報や知識を得よ

グインショーケースの導入を完了したのだ。その経過

うとする姿勢と、環境に対する前向きな取り組みが、

を見ながらにはなるが、将来的には全店舗で自然冷媒

同社の自然冷媒採用の大きな推進力になっていること

のみを採用することを視野に入れての計画である。現

は疑いようがないであろう。その取り組みと決断のス

在、ユニオンで使用している標準的な冷凍冷蔵設備は

ピード感は、4 年ほど前に、沖縄県で初めて米国ハス

R404a 冷媒使用機器であり、「我々の 18 店舗のうち、

マン社のリーチイン冷凍ショーケースを導入したとい

今、最後の店舗を改装しています。この改装が終われば、

う実績からも窺える。

R22 を使っている店舗はなくなります」と、野嵩商会 の部長を務める佐喜真 保氏は誇らしげに語った。まだ、

「省エネになった分は、 値引きしてお客さんに還元できます」

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沖縄という地で自然冷媒機器導入を 進めるまで 佐喜真氏は、フロンのオゾン層への影響について勉強 するにあたって、沖縄県の地理的条件や、県の歴史的・ 経済的な背景も考慮する必要があると語った。同氏は 「昔は、県内には小さな店が多く、しかも冷蔵庫の設 備がないところが多かったのです。それに、沖縄県の 気候は暑いんですが、空調の普及は比較的最近なので す」と言った。その結果、近年、規模の大きい店が増 え、冷蔵設備の完備、クーラーの普及によってフロン の排出量が増加したことでオゾン層への影響が大きく なったのではないか、と同氏は分析している。さらに、 オゾン層が破壊されることでの人体への悪影響を考え ると、観光地として人気の沖縄県の集客の減少にもつ ながるのではないかという懸念もあったという。この ように、何も考えずにフロンを垂れ流すべきではない、

オゾン層について語る佐喜真氏

と考えていた佐喜真氏にとって、カタログ上では知識 を得ていた自然冷媒機器の実物を見るべき機会が訪れ

ならないリスクやコストの上限もあったことから、レ

た。2 年前、東京の展示会へ同社の社長、仲村明氏と

イテック株式会社が販売するオーストリアのメーカー

足を運び、そこで本格的にどの機器を自社に導入すべ

AHT(AHT Cooling Systems)社製の R290 プラグイン

きかという比較検討を行った。ユニオンにとっても新

ショーケースの採用を決めたのである。導入にあたっ

たな挑戦となる、機器の導入においては考えなければ

ては環境省の平成 27 年度「先進技術を利用した省エ ネ型自然冷媒機器普及促進事業」によって補助金を交 付された。これは、2005 年より始まり、2015 年度ま でで累計 1333 件もの事業に交付されてきた環境省の 自然冷媒機器の導入補助事業の中で、初めて炭化水素 冷媒機器に対して申請し、採択された事例でもあった。 R290 ショーケース市場を活性化させるきっかけとなっ たと同時に、今まで CO2 ショーケースしか選択肢がな かったユーザーに対して、別の道があることを指し示 したのである。補助金を活用して炭化水素冷媒機器を 導入したことに関して佐喜真氏は、R22 などの従来機 器や HFC 機器を購入する場合と比較して、補助金が あってもイニシャルコストは増加するが、その分の省 エネ、電気代の削減を考えれば十分に短期間での回収 が可能であると見込んでいる。逆に導入しないという 選択については、 「そのまま替えずに、長い間高い電気 代を払っていても仕方ないし、地球環境にも悪いです から」と語り、さらに「省エネになった分は、値引き してお客さんに還元できます」と続けた。 p.32 へ 続 く

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

「もっと普及させたい」を叶えるために ユニオンの 18 の店舗規模は、平均して同じように約

あれば「どんどん、うちの店に見学に来てほしいです

824㎡前後の大きさであるためレイアウトはほぼ同じ

ね。他社にも、ほかのスーパーさんにも」と、業界が

となる。所持するショーケース数は、別置型 40 台に

一体化するその重要性について佐喜真氏は語った。そ

加えて R290 プラグインショーケースの入れ替えが完

の一方で、同社が新たにショーケースを入れる際に

了した 10 店舗を入れると、現在約 50 台ほどが稼働

最も強く気にしていた点だ。導入予定の R290 ショー

しているが、その店舗が更に増え、同社の残りの 8 店

ケースが、扉付きであったという点である。ショー

舗だけではなくその他の県内、国内ユーザーへと広が

ケースに扉がつくことで高い省エネ性が実現できるの

ることで、5000 台、5 万台とその数が増えることを

であるが、そのことによって、消費者の購買行動への

佐喜真氏は強く期待している。だからこそ、消費者一

影響はないのか、売上の数字に影響はないのかという

人ひとりにも同社の取り組みを発信し、理解される

ことが懸念点だったという。しかし現在のところ、ま

ことを望んでもいる。これは、その消費者がエコま

だ導入からの期間が短くはあるが、売上の数字にマイ

たは省エネに関心を持つことで、ユニオンだけで買

ナスの変化がないため、同社では残りの 8 店舗にも同

い物をしてほしい、自社を選んでほしいという思い

ショーケースを導入することに前向きではあるが、も

だけでは決してなく、「ユニオンでやっていることを

し県内の同業他社でも同じく扉付きのショーケースが

なぜ他社ではやっていないのか ?」という疑問が、同

導入され、そのことが省エネにもなるという理解が

業他社への刺激となり彼らを動かすきっかけになって

消費者にも浸透すれば「我々が、もうそのことを心

ほしいと考えているからである。普及につながるので

配する必要もなくなるんです」と佐喜真氏は笑った。

R 2 9 0 使 用 の A HT 製プラグインショーケース

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そして、「何よりも、普及のための一番の壁はコスト、

うとも語っている。また、メーカーに対しては、コス

イニシャルコストですね」とエンドユーザーにとって

ト削減はもちろんのこと、より積極的な自然冷媒の採

一番の課題についても語った。本誌においても、これ

用を望んでいると言い、特に国内メーカーでの製造が

まで自然冷媒機器の導入に前向きで、業界に変革をも

増えることを希望している。国内メーカーと強調した

たらそうとする様々な企業に取材する度に、この “ 壁 ”

理由として、発注から納入までの時間などの利便性や

の存在は浮き彫りになってきていた。補助金があるう

メンテナンスのサポート体制以外にも、「海外生産であ

ちは、イニシャルコストはさほど大きな問題ではない

れば、その運輸においても CO2 が排出されますからね」

が、それがなくなった時にその壁は大きく立ちはだか

と、地球環境への影響を指摘した。ヨーロッパ、アメ

るものとなるだろう。省エネによるランニングコスト

リカでは導入が進んでおり、今回初の補助対象となっ

の削減を計算に入れても、回収まで長い年月がかかっ

たものの、まだまだ日本では導入が遅れている炭化水

てしまい、投資対象として適当であるとは言えなくな

素機器は、価格が日本では HFC 機器に比べて約 2.5 倍

るのが現状である。佐喜真氏はまずは国に対して、補

と高額な点も、需要と供給のバランスによるものでは

助金の継続、もし廃止をするにしてもコストとのバラ

あるが、 「なぜ高いのか。なぜ数が出ないのか」と疑問

ンスを考えて緩やかに、減額をしていくなどの配慮を

を投げかけた。「自分達にプレッシャーを与えるわけで

してもらうことが必要であると述べた。別の側面から

はないですが、R22 の機器などへの規制やペナルティ

考えれば、フロン系の機器を使い続ける企業に対して

があることで我々エンドユーザーにも動きが出てくる

は、何らかのペナルティを課す必要も出てくるであろ

ということは考えられます」と予測した。

「どんどん、うちの店に見学に来てほしいですね。 他社にも、ほかのスーパーさんにも」 p.34 へ 続 く

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

新店舗では自然冷媒導入が必然 現在、18 店舗を抱えるユニオンでは今後さらに 1 店舗、また翌年にも 1 店 舗と新たな店舗展開を予定しているという。扉付きショーケースに関する懸 念もそれほど強くなくなりつつあり、新たな店舗では自然冷媒を採用した ショーケースを導入することを当たり前に考えている、と佐喜真氏は述べた。 彼は今後も、海外の動向や HFO 冷媒についての勉強も進めていきたいとし、 多くの情報を得たいと考えている。そしてまた、同社の取り組みについての 発信をより積極的に進めていきたいとして、消費者のみならず様々なステー クホルダー、業界全体、社会全体で知識と意識を共有することで、環境にや さしい店舗をつくり、そしてそのことが「よい地球」を守っていくことにつ ながるのだと、その姿勢を明らかにした。沖縄県の地域密着型のスーパーで ありながらその枠組みにとらわれることなく、世界を自ら変えていこうとす るその志は強い。幾つかの検証や段階を得て自然冷媒機器といった自分達が 出した答えを基に、未来へ向かって突き進んでいるようだ。 YS&JD

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

倉庫業界の未来に 変革をもたらした挑戦 業界初大型アンモニア / CO 2 機器の導入とその可能性

全国に 17 拠点の物流センターを持つ日水物流は、冷凍冷蔵倉庫 においての自然冷媒への切り替えを早くから推進した先駆者で ある。初の大型機器導入から、 「より効率の高い自然冷媒機器を」 と常に積極的に業界をリードする姿勢を見せてきた。 文 : 佐橋 縁、ヤン・ドゥシェック

古川 道則氏 日水物流 設備管理部 部長

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

大 阪 舞 洲 物 流センター

第 1 号機を導入した業界のパイオニア まいしま

2016 年 4 月、日水物流が大阪の舞 洲にオープンさせたのは、自然冷媒ア ンモニア / CO2 冷凍機を導入した同社では 3 拠点目となる物流センターで ある。今でこそ、アンモニア / CO2 冷凍機の採用数は国内でも珍しくなく なっているが、2008 年 4 月、日水物流が神奈川県の川崎物流センターに 導入したのが自然冷媒アンモニア / CO2 システム「NewTon」の第 1 号機 であった。そのため当時では、国内外を含め多くの業界関係者が見学に訪 れ、広くアピールする機会になったと日水物流で設備管理部の部長を務め る古川道則氏は語った。日水物流がこの第 1 歩を踏み出すことに決めたきっ かけは、モントリオール議定書に基づいた 2020 年の HCFC 全廃を見据え てのことであった。川崎の倉庫を新設するタイミングにおいて日水物流が 冷媒として検討の俎上に載せたのは、アンモニア / CO2 二元式、アンモニ ア直膨式、そして代替フロンの 404A であり、省エネ性と安全性を評価し て「これからは自然冷媒だ」という方針の下、アンモニア / CO2 システム が選ばれた。国内で前例がない中で、大型のアンモニア / CO2 冷凍機を導 入することへの不安はなかったのだろうか ? 古川氏は、その問いに対して 「大型の機器という点では初でしたが、アンモニア / CO2 の冷却ユニット自 体では実績を確認していましたので、安全性に関して不安はありませんで した。アンモニア直膨式については、フロン以前にも使用していましたが、 そこでの漏えいの経験も踏まえ、省エネ性、技術の先進性、安全性という 観点から自然冷媒を採用するに至りました」と答えた。その背景には「企

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業としての社会的責任を果たしたい」という思い、その根幹となる自然環 境の保全と持続可能性の高い技術体質への転換を図るという、会社として の企業方針もあった。 日水物流にとっても、そして同システムのメーカーにとっても、初の試みと なる川崎での導入事例では、「協働し、よりよいものを作り上げていこう」 というお互いの前向きな姿勢と自然冷媒の普及に向けた強い思いがあった。 運転状況データはメーカー側でも同時に確認ができる遠隔監視システムがあ り、省エネやメンテナンスなどに関するフィードバックを定期的に行ってい たことで、初期に起こりうる不安定な箇所も改善され、「安全性は向上して きています」と古川氏は語った。古川氏は自他ともに認める「新しいもの好 き」で、情報収集に熱心かつ好奇心旺盛な人物であり、それは「よいものを 積極的に取り入れていく」という企業の姿勢とも合致している。そのことが 具体的に表されたようなエピソードがある。第 1 号機において『クーラーファ ンのインバータ制御』動作は採用されていなかったが、日水物流側で、従来 のフロン系機器の実績を鑑みて、アンモニア / CO2 システムでも実用可能で はないかというアイデアに至った。改造することによるダメージの可能性も 同システムであれば低いという予測に基づき、メーカーとも相談をしながら 自社でインバータを設置して回転数を下げることで、さらなる効率の良さを 模索した。その結果、年間 8 万 kW の削減が実証され、4 月にオープンした 大阪舞洲物流センターではこの機能はデフォルトで備えられているという。 p.40 へ 続 く

ニッスイグル ープ のグローバルネットワーク

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エンド ユ ー ザ ー インタビュー /

業界を取り巻く環境 冷凍冷蔵倉庫は、例えばコンビニエンスストアなどと違って一つ ひとつの建物が大きく、また冷媒を使用する機器の規模も非常に 大きい。そのため、工事も大掛かりなものであるのと同時に、か かるコストも莫大である。業界の多くの企業ではフロン系機器を 使用し続けているのだが、特に中小企業にとっては導入コストが ネックになってしまうことは否めないのだと言う。業界を動かす ためにも政府からの補助金の役割は大きく、日本冷蔵倉庫協会で は補助金に関する継続要望も関係省庁に出し続けている。 また、同社における自然冷媒への切り替え計画は、「スクラップ & ビルド」のタイミング、つまり各倉庫において営業を続けなが らの機器入れ替えではなく、新設もしくは倉庫自体を取り壊して 再建設する際の切り替えを基本としている。その理由としては、 現在稼働している機器を止めずに工事を行う場合、新しい機器の 導入に際して配管を含め機器の設置場所が限定されてしまうこ と、そして実際に施工をする場合、作業者にとって作業環境が低 温過ぎることで工期も長くなりコスト面では不利になってしま うことがあげられる。よって「そのような選択は、現実的ではな い」と古川氏は語った。これからは「自然冷媒しかない」という 日水物流にとってさえも、現在 R22 冷媒の機器が稼働している 既存の倉庫すべてで自然冷媒機器の導入に至るまでは、今のまま では 30 年程という中長期計画で地道に転換していくという長い 時間を要するものとなってしまう。またフロン全廃の目標年であ る 2020 年を過ぎても、2030 年頃までフロンの供給自体は続く こと、その後も備蓄のフロンや再生フロンが使用可能なことを考 えると、まだしばらくフロン系機器で運用していく企業は存在す るのではないか、と古川氏は業界の動向を懸念している。しか しながら、同氏によれば同業他社との情報交換においては「スク ラップ & ビルドのタイミングでは自然冷媒に」という声が多数 派だという。同社が導入したような自然冷媒アンモニア / CO2 冷

大阪舞洲物流センター 導入されたアンモニア / C O 2 冷凍機

凍機に関しても、現在は 1000 台以上が国内市場で普及しており、 「省エネ性・安全性も担保されて、今後は自然冷媒が主流になっ ていくでしょう」と古川氏は述べている。

「省エネ性・安全性も担保されて、 今後は自然冷媒が主流になっていくでしょう」

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さらなる普及のスピードアップに向けて 昨年、フロン排出抑制法が改正されたことで、その管理が厳しく なったことは「自然冷媒の転換への判断材料の起爆にはなる」と 古川氏は分析している。また、第 1 号機導入時には、フロン系 機器に比べて 1.5 倍程度だった導入コストも現在では 1.2~1.3 倍 くらいまでに下がってはきているものの、まだ自然冷媒を扱う メーカーが少ないという状況に変わりはない。そのため、製造す るメーカーが増加することで競争が生まれて、コスト面にも変化 が訪れることを強く要望していると古川氏は語った。また、日水 物流ではアンモニア / CO2 システム以外にも検討をしてはいるも のの、安全性を考えて導入には至っていない。今後、CO2 のみの 大型機器に関しては高圧ガス保安法による規制が緩和されるこ と、さらにコスト面でも納得できる状況になれば導入を考えたい としている。古川氏は「常に新しい技術を取り込んだ機器を運用 していきたい」と、技術革新への期待とチャレンジ精神を強く表 明した。そのため、同社では新たな技術に対応していけるように 技術担当者の育成には非常に積極的である。メーカーや高圧ガス 保安協会が主催する技術や冷媒の取り扱いに関する講習の受講 の推進、自社でも技術担当者に向けて独自の講習会を設けて公的 資格取得も推し進めている。さらに今後は、「業界団体でももっ と技術者育成の場を設けてもらえるようにしたいと考えていま す」と古川氏は期待を込めて語っている。 冷却設備単体において、同社のデータによれば R404 系の機器と の比較で川崎物流センターでは 23%、さらに大阪港物流センター では 53% という高いエネルギー削減率の効果を達成している。 このように、効果が出ている機器や取り組みに関しては業界各社 での連携のもと、お互いにプレゼンテーションや見学をする機会 があると言う。先駆者として、まずは第一歩を踏み出した後は、 業界全体の変革に向けてますます精力的に動く同社。業界での 自然冷媒への方向性は定まりつつある今、補助金継続の要望や、 メーカーに対する技術革新の期待など、その歩みが止まることな く前進し続けられるようにと、これからも挑戦と情報の発信を進 めていくことだろう。 YS&JD

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イベント リポ ート /

HFC冷媒の削減に対する CGFと各社の取り組み 300人が参加した Japan Day 2016 開催レポート 文 : 岡部玲奈

The Consumer Goods Forum(以下 CGF)が主催する年次イベント「Japan Day」が 4 月 20 日にホテルオークラ東京にて開催された。参加者 300 人を迎え、地球環境保護に 重きを置いた「サステイナビリティ(持続可能性)」をテーマとして開かれ、環境問題 に対するさまざまなトピックを、それに取り組む各企業の代表者たちが講演から学び、 意見を交換する場となった。 p.44 へ 続 く

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/ イベント リポ ート /

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イベント リポ ート /

C

ともながてつ

GF Japan のジェネラル・マネージャー、朝長哲

に低炭素社会へ向けた「イオン自然冷媒宣言」を発表

氏からのオープニング・スピーチに続き、サス

したイオングループを代表して、グループ環境・社会

テナビリティ・ピラー責任者のイグナシオ・ギャ

貢献部の部長 金丸治子氏が同社の取り組みと実績を発

ビランから、CGF の地球環境保護に対する活動のこれ

表。2015 年度以降にオープンする新店舗すべてにおい

までの成果と今後の活動が発表された。その後、 「パー

て自然冷媒 CO2 を採用し、現在は 45 店舗にて導入。今

ム油の持続可能な調達について」「HFC 冷媒の削減に

後も既存の約 3,500 店舗においても順次自然冷媒に切

ついて」 「大豆利用状況測定の枠組みについて」といっ

り替えることを発表した。しかし、CO2 は高圧ガスで

た 3 つのセッションに分けて、サステイナビリティに

あり、高圧ガス保安法により冷凍機の馬力数には制限

対する各企業の取り組みが紹介された。HFC 削減に対

がかかるため、国内では冷凍能力 3 トン以上のような

するセッションでは、これまで 15 年以上にわたり自

高馬力の機器設置が現状難しい。イオンのような大型

然冷媒市場の活性化のために活動してきた shecco か

スーパーでは、1 店舗につき約 50 〜 150 台の冷蔵・冷

らは HFC が今なぜ問題とされているのか、それに対す

凍ケースの設置が必要となるわけであるが、高圧ガス

る世界の規制や動き、それに替わる冷媒として地球温

保安法の適用除外にするために設備を小規模化すると、

暖化係数の低い自然冷媒に関する基礎知識、そして自

実際は設備の系統数が増えるためコストが増えるなど

然冷媒機器のグローバルな規模での市場動向などにつ

といった、導入時の課題についても共有した。2020

いて講演した。

年までに、国内市場に設置されているすべての自動販 売機 98 万台を自然冷媒に切り替えることを目指すコ

その後、HFC 削減に向けて企業として積極的なイオン、

カ・コーラからは、東京研究開発センター アジアパシ

コカ・コーラ、ローソンの 3 社による取り組みが発表

フィック販売機器開発 取締役の古路寛氏が講演。同

された。これらの企業は地球温暖化の原因の一つとさ

社は 2000 年にグローバルマーケットにおいて冷却機

れる代替フロン HFC の削減をいち早く始め、かつ実績

器の HFC 冷媒の段階的使用停止を発表し、2005 年か

を出している会社である。2009 年に国内小売業とし

ら自然冷媒の使用を開始。そして「現在までの進捗と

て初めて CO2 冷蔵冷凍ケースを導入し、2011 年 11 月

しては、すでに世界市場で 17 百万台の自然冷媒を使 p.46 へ 続 く

イオン・金 丸 氏 による発表

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コカ・コーラ・古路氏による発表


切り換えませんか スーパーマーケットの冷却用途に自然冷媒を選択

低い地球温暖化係数 (GWP) と高温での熱回収能力のある CO²自然冷媒は、スーパーマーケットにエコな冷凍システムを提供します。さらに、超臨界の CO²冷凍サイクルによって回収される熱は、給湯と暖房用として使用することができます。 Alfa Laval が提供する画期的な製品によって、効率よい信頼できる安全なCO²の超臨界やカス ケードシステムを作ることができます。 アルファ・ラバルはCO²への転換の準備ができています。皆様は、準備できていますか? 更に詳しくお知りになりたい方は、下記までお問合せください。

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イベント リポ ート /

用した機器が稼働しており、昨年だけでも 2014 年に

ネスレ、ユニリーバ、マークス & スペンサー、サブミラー

対してさらに 13% の転換が進んでいます」とその実績

など、世界を代表する小売・食品企業を含めた 400 社

を発表した。自然冷媒 CO2 ショーケース導入数で世界

の会員企業で構成される、消費財業界ネットワークの

一を目指すローソンは、「ローソングループ環境方針」

CGF。冷媒に関する CGF 決議(2010 年 ~2015 年)では、

の一つである「低炭素社会の構築に向けて」に即して、

「2015 年以降、新規設備導入について HFC 冷媒使用を

2020 年までに 1 店舗あたりの電気使用量を 2010 年比

段階的に廃止し、非 HFC 冷媒(自然冷媒代替物)に移

で 20% 削減、に向けて省エネ型自然冷媒機器を積極的

行する」とした。そして CGF 理事会は「我々は HFC

に導入している。2016 年 3 月現在、全国 47 都道府県

およびその派生化学物質冷媒が温室効果ガスの排出総

で 1304 店舗に導入を完了した同社の実績は目を見張

量の大部分を占め、またその増大に関与していること

る速さであり、今後は国内だけでなく世界でノンフロ

を認識しています」と公言している。自然冷媒進展に

ン化 No.1 小売り企業を目指す同社の理念を、同社開発

おける欧州と北米間のギャップをなくすために様々な

本部 海外事業本部 本部長補佐の宇都 慎一郎氏から

活動を行ってきた CGF の理念は、自然冷媒市場の発

語られた。3 社とも各社のやり方で取り組んで入るが、

展を促すために活動する shecco のミッションとも合

「HFC 削減」といった目的は共通しており、それを達成

致する。具体的な取り組みとして、CGF の会員企業は

するためにそれぞれの戦略で突き進む姿は、間違いな

2012 年に、米国環境保護庁から自動販売機で HC(炭

く同業他社にとっての道標となっていることであろう。

化水素)冷媒使用に関する重要新規代替品政策(SNAP) 承認を獲得。その後、2015 年には 4 種類の HC 冷媒が、 業務用内蔵型冷蔵冷凍、フリーザー、自販機を含む 6 つの用途での使用を許可されたわけであるが、このよ うに行政に対しても積極的に呼びかけをする CGF は、 まさに自然冷媒市場を活性化させるためのキープレイ ヤーであり、彼らは世界中に会員にもつ小売・食品企 業とともに、今後も HFC 冷媒削減のためにグローバル に活動を展開していくことであろう。 RO

各社の HFC 削減及び自然冷媒に対する取り組み イオン : 本誌 3 号を参照 : https://issuu.com/shecco/docs/aj_3_final_web/28 コカ・コーラ : 本誌 1 号を参照 : https://issuu.com/shecco/docs/accelerate_japan__1/8 ローソン : 本誌 1 号を参照 : https://issuu.com/shecco/docs/accelerate_japan__1/16

ローソン・宇 都 氏 による発表

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自然冷媒をより早く市場へ 過 去 1 5 年 間 に わ たり、市 場 開 発 の ス ペ シャリストで あ る s h e c c o は 、環 境 負 荷 の 低 い ソリュー ション の より早 い 市 場 導 入 実 現 の た め に 日々 活 動して きまし た 。我 々 は 、自 然 冷 媒 を 使っ た 持 続 可 能 な 冷 凍 空 調 技 術 に 焦 点 を 当 て た H V A C & R 業 界 で 、1 0 0 以 上 も の パ ート ナ ー を 世 界 中 で 支 援して い ま す。 弊 社 で は 、大 きく3 つ の 領 域 で 多 種 多 様 な サ ー ビス を 提 供してい ます。 ① オンラインで の 業 界プラットフォー ム や 全 市 場 調 査レ ポ ートといったメディア や 出 版 物 ② 市 場 分 析 やコン サ ル ティング、広 報 サ ー ビス 、特 有 の 国 際プ ロジェクトを 通して行う事 業 開 発 ③ 国 際 会 議 や 国 内ワークショップ などの イベント開 催

企業のソリューション促進 メディアや出版物だけではなく、CO2 、炭化水素、 アンモニア、水といった、 自然冷媒のための世界で有数なオンラインでの業界プラットフォームや、徹底した 市場リサーチ報告書「GUIDEs」を通して、企業のプロモーション活動を促進します。

業界のエキスパートと出会う 自然冷媒をより早く市場へ 導入する方法を見つけるための、政策決定者やエンドユーザー、業界関係者すべてを集わせた我々の国際的なイベント ATMOsphereを通じ、業界の先駆者やエキスパートとの出会いの場を提供します。

事業拡大への支援 問題追跡、SWOT分析、業界・市場動向分析を含めた、我々の適切な市場分析と広報サービスを行います。

100社以上のパートナー Panasonic, GEA, Carrier, SANDEN,Parker, Mayekawa, Danfoss, Hillphoenix,Johnson Controls, Linde Group, Alfa Laval, Emerson, Dorin, Embraco, Bitzer, Grundfos, SWEP, Temprite, Star, Hansen, HB Products,Green & Cool, Carnot, CIMCO, Cubigel, Embraco, Tecumseh, Systemes LMP, Secop, MHI, Carly

連絡先 shecco Japan

shecco Europe

phone: (+81) 3 3287 7330 fax: (+81) 3 3287 7340 email: japan@shecco.com website: www.shecco.com twitter: @shecco

phone: (+32) 2 230 3700 fax: (+32) 2 280 0436 email: europe@shecco.com website: www.shecco.com twitter: @shecco

Our mailing address:

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shecco japan株式会社 〒100-6510 東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング10階 日本創生ビレッジオフィス20

shecco SPRL Rue Royale 15 1000, Brussels Belgium


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メーカ ー インタビュー /

パナソニックが ハスマン社 を 買収

CO2 冷凍冷蔵技術に 自信 様々な事業を手掛ける日本の大手メーカー・パナソニックは、アメリカ、そして世界に 向けて、自然冷媒技術を展開する構えだ。 文 : マーク・ハムストラ、マーク・シャセロット

本間哲朗氏 パナソニック・アプライアンス 社長

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/ メーカ ー インタビュー /

凍冷蔵システム、ショーケース、家電機器、

「パナソニックにとってこれまでの 3~4 年は、CO2 が

その他多くの製品を製造する日本の総合電機

冷媒の主流となり、次世代の冷凍冷蔵技術を担うこ

メーカー・パナソニック株式会社は、業務用

とを証明するための実験期間だったと言えます。そ

冷凍冷蔵分野における CO2 技術に非常に大きな可能性

して今、CO2 には冷凍冷蔵業界で最も支持される技

を見出しており、2015 年末に発表したアメリカの業

術へと成長する可能性があると確信するに至りま

務用冷凍冷蔵機器市場の主力メーカーであるハスマン

した」と本間氏は語る。「日本やアジア諸国のみな

(Hussmann Corporation)社の買収を足がかりに、世

ら ず、 今 後 は ヨ ー ロ ッ パ と ア メ リ カ の 市 場 に 対 し

界に向けて同技術を売り込む計画だ。

ても、我が社の技術を売り込んでいくつもりです」

パナソニックはここ数年にわたり、小型店舗向けの CO2

本間氏は、自然冷媒である CO2 の強みとして、毒性が

コンデンシングユニットを日本や東南アジア諸国で提供

ないこと、地球温暖化係数が低いこと、エネルギー効

している。同社は、 コンビニエンスストアを展開するロー

率に優れていることを挙げた。さらに「パナソニック

ソンの国内店舗に CO2 冷凍冷蔵システムを大規模に提

は、取引するお客様や政府機関と連携して、CO2 技術

供してきたほか、2014 年には、ローソンがインドネシ

を導入した店舗の運営を行っており、CO2 冷凍冷蔵シ

アにて現地企業の協力で出店した店舗にも同システムを

ステムの消費電力は、他の冷凍冷蔵技術に比べ少ない

納入しており、台湾でも実証実験を行っている。今年に

ことが証明されています」と本間氏は続けた。「お客様

入り、 ヨーロッパでも CO2 冷凍冷蔵技術の試験を開始し、

にとっても、CO2 冷媒はコスト面で非常に効果の高い

現在デンマークで実証実験が進行中だ。

技術なのです」

パナソニックの社内カンパニーであるアプライアンス

パナソニックはエネルギー効率に幅広い関心を寄せて

社の社長・本間哲朗氏が、『Accelerate America』の取

いる。本誌の姉妹サイトである R744.com に掲載の記

材に応じ、同氏は大阪府に本社を置くパナソニックが、

事で紹介のとおり、パナソニックは 2015 年、ショー

アメリカ、カナダ、メキシコの食品流通産業や小規模

ケースにガラス扉を設置したことで、電力消費を日本

食品小売ビジネスにおいて、ミズーリ州ブリッジトン

全国の平均値と比較して 20% 以上削減することに成功

を本拠とするハスマン社がこれまで築き上げてきた販

している。ガラス扉の設置実験は、環境省による省エ

売・サービスネットワークを活かし、CO2 冷凍冷蔵技

ネ推進事業の一環として実施されたものである。

術の導入を進めていきたいと話した。

p.50 へ 続 く

/ Accelerate Japan May - June 2016 /

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メーカ ー インタビュー /

小規模店舗に適したシステム 北米の大型業務用設備で既に導入されている CO2 シ

クによる買収はハスマン社とシステムズ LMP 社の提

ステムとは異なり、パナソニックがアジア諸国で展開

携関係になんら影響を及ぼすものではないと話した。

しているトランスクリティカル CO2 コンデンシングユ

アメリカでは、パナソニックがアジア諸国で展開して

ニット技術は、コンビニエンスストアなどの小規模小

きた低馬力の CO2 コンデンシングユニットとは異な

売店舗に適した設計がなされている。パナソニックは

る冷凍冷蔵システムが使われており、その点はパナ

現在、2、10、15、20 馬力の CO2 ユニットを販売して

ソニックも認識している。しかし本間氏は、同社が

いるが、これらを大型小売店舗で使うのであれば、最

持つ技術や開発力が、アメリカでビジネスを展開す

大 20 基程度が必要となると考えられる。

るという同社の新しい取り組みに役立つだろうと自 信をのぞかせた。また同社製品がアメリカ市場に参

パナソニックは今年、小型店舗向けの様々な製品に加

画することで、市場に CO2 技術の価格競争を巻き起

え、30 馬力の CO2 ユニットの試作を開始する計画だ。

こせると考えている。

この計画によって、パナソニックはハスマン社に対し、 2 種類の業務用 CO2 冷凍冷蔵技術を北米市場に売り込

パナソニックでは、日本国内の様々な気候条件の下、

むことを求めていくと本間氏は語る。その技術とは、

業務用冷凍冷蔵システムの稼働に成功してきたこと、

大型設備向けの CO2 トランスクリティカルシステム、

また、インドネシアの小規模店舗へのシステム導入

および小型店舗を運営する小売業や食品事業を対象と

も経験したという実績から、アメリカ南部の温暖な

する CO2 コンデンシングユニットを指す。

地域においてもパナソニックのシステムが効果を上 げるだろうことに自信を深めている。しかしながら、

ハスマン社は、カナダ・ケベック州に本社を置くシス

温暖な気候帯における CO2 冷凍冷蔵技術の効率性に

テムズ LMP(Systems LMP)社と提携し、主に大型小

ついては、疑問の声もあるという。そういった声に

売店舗やその他法人を対象に、CO2 トランスクリティ

対し、「パナソニックでは、CO2 技術に関して、気候

カ ル 技 術 を 2014 年 か ら 提 供 し て い る。 昨 年、 ス ー

による限界はないと考えています」と本間氏は語る。

パーマーケットのアルディ(Aldi)がニューヨーク州

「高温多湿なインドネシアで既に我が社のシステムが

ウェストセニカにオープンした店舗には、ハスマン・

使われており、稼働状況は非常に良好です。パナソ

システムズ LMP 両社によるトランスクリティカルシ

ニックの CO2 冷凍冷蔵システムは、アメリカのどの

ステムがアメリカで初めて導入された。ハスマン社

地域のお客様にも使っていただける技術であると確

の 幹 部 は R744.com の イ ン タ ビ ュ ー で、 パ ナ ソ ニ ッ

信しています」

「CO2 冷凍冷蔵システムの消費電力は、 他の冷凍冷蔵技術と比べ少ないことが 証明されています」

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/ Accelerate Japan May - June 2016 /


/ メーカ ー インタビュー /

「CO2 技術に関しては、気候による 限界はないと考えています」 ハスマン社買収で目指すビジネスのかたち パナソニックはハスマン社のネットワークを活かし、

に買収が完了している。これは、 2015 年に 700 億ドル (約

空調・冷凍冷蔵システムや、店舗の使用エネルギーや

7.7 兆円)の売り上げを達成したパナソニックにとって、

冷凍冷蔵システムの稼働状況を遠隔で監視・制御する

事業戦略の重要な転換の一環である。長年にわたり、家

クラウドベースの技術など、CO2 冷媒以外の技術を市

電や電気通信製品のメーカーとして知られてきたパナソ

場に売り込むこともできるだろう。「アメリカ、カナダ、

ニックは今、その技術資源を B2B ソリューション事業

メキシコのお客様に対し、我が社の技術をお届けする機

の拡大に投入する方向へと向かっている。

会があると信じています。もちろんそれは、ハスマン社 がこれまでお客様との間に良好な関係を築き、素晴らし

B2B、企業間取引に向けたパナソニックの戦略転換に

い販売・施工・サービスネットワークを作り上げてきた

は、食品流通および食品小売産業に重点的に取り組も

からこそです」と本間氏は言う。

うという同社の姿勢が示されていると本間氏は言う。 同社は 2 年を費やし、事業領域拡大に向けた買収先

同氏は完全子会社化されるハスマン社について、親会

を探してきたのだ。そして、製品やサービスを切れ目

社であるパナソニックの支援を受けながら今後も独立

なく提供してきたハスマン社が、パナソニックの理想

した事業体としての運営を継続するとの考えを示した。

に合致したと本間氏は振り返る。「ワンストップでソ

これは、パナソニックがカリフォルニア州を拠点に過

リューションを提供できることは、私たちが追い求め

去 30 年にわたり運営してきた航空機関連ビジネスの成

るビジネスにとって非常に有益であり、ハスマン社は

功例と同様のケースとなる。また、パナソニックはア

それができる立場にありました」と本間氏は説明し、 「ハ

メリカにおける同社の最も新しい事業部に、ハスマン

スマン社はさらに、アメリカに加えメキシコ、カナダ、

社の社名を継続使用する方針だ。「パナソニックには、

オーストラリア、ニュージーランドといった太平洋地

海外でビジネスを展開する上での経験がありますし、

域においても、非常に幅広く深い関係を顧客との間に

現地子会社を独立した事業体として重んじてきた経験

築いています」と、二社の間に地域的な重複がなかっ

もあります」と本間氏は言い、ハスマン社がこれまで

たことを示した。

築き上げてきた顧客との関係を維持する必要性を認識 していると語った。「ハスマン社の現在の経営陣に最大

本間氏は、二社の企業文化には共通点があるとも語っ

限の敬意を払いたいと考えていますし、同社がアメリ

た。「パナソニック、ハスマン社のいずれもがそれぞれ、

カの食品流通・小売業界で成功するために、全面的な

お客様中心のビジネス文化を形成してきました」と同

支援を行っていくつもりです」と本間氏は話す。

氏は言う。「これは素晴らしい共通点ですし、両社の相 性が非常によいと考えています。だからこそ、ハスマ

パナソニックによるハスマン社の買収価格は 15 億 4500

ン社をパナソニックに迎え入れるという決断ができた

万ドルで、買収合意は昨年末に発表され、今年 4 月 1 日

のです」 MH&MC

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メーカ ー インタビュー /

グローバル展開に向け加速する 前川製作所のグリーンイノベーション 5 種の自然冷媒 “ナチュラルファイブ” を用いた取り組み 文 : ジェームズ・ランソン、マーク・シャセロット

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年の 12 月初旬、パリにて開催された COP21(国連気候 変動枠組み条約第 21 回締約国会議)で様々な議論がな される中、前川製作所は、同社が推進する自然冷媒技術

への取り組み「ナチュラルファイブ」の紹介を精力的に行って いた。この取り組みにおける 5 種類の自然冷媒、すなわちアン モニア (NH3 )、二酸化炭素 (CO2)、水、空気、炭化水素は、空調・ 冷凍冷蔵分野で使用されている環境に有害な HFC 冷媒の段階的 廃止を確実に後押しし、HFC 冷媒による気候変動への最も甚大 な影響を軽減するものである。 前川製作所は長年にわたり、環境保全、エネルギー効率向上、 技術革新をその事業の中心に据えてきた。同社の創業は 1924 年、 初代・前川喜作氏が東京に会社を設立し、製氷・冷蔵用の産業 用往復動圧縮機の製作から始まった。父が築き上げた事業を誇 りを持って引き継いだという現在の代表取締役社長・前川正氏 は、「自然冷媒技術への取り組みの原点は、私たちを取り巻く環 境問題を解決することが今世紀中に成し遂げるべき地球規模で のミッションである、という信念なのです」と語る。さらに「元々、 産業用冷凍冷蔵の分野に携わってきた私たちとしては、地球環 境に優しいだけでなく、効率に優れているという観点から自然 冷媒を選択し、ナチュラルファイブの取り組みを進めてきまし た」と同氏は続けた。

鍵となるこれから 5 年間のグローバル戦略 前川製作所が最初の圧縮機の製作に成功してから 80 年あま り。現在、同社は世界 40 か国に事業拠点を持ち、中東、アフ リカ、東ヨーロッパなど、毎年、新たな国際市場への進出を 果たしている。2014 年に、全社での売り上げのうち海外で 6 割、 国で 4 割と初めて海外での売り上げが日本国内の売り上げを 前川正氏 前 川 製 作 所 代 表 取締役社長

上回ったことで、同社の自然冷媒機器がグローバルに波及し ていることを示すターニングポイントを迎えた。「2014 年に 国内外での売り上げが逆転したことで、我が社のビジネスは

「我が社のビジネスは今後ますます、 巨大な海外市場への拡大を続ける ことになると考えています」 p.54 へ 続 く

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メーカ ー インタビュー /

絶え間ないイノベーション 前川製作所は企業哲学である “ 絶え間ないイノベー ション ” を、同社の主力商品である極小充填 NH3 /CO2 冷凍システム NewTon にて、まさに体現している。製 造の大半は日本で行われており、国内での累計販売数 は 850 台を超えている。前川製作所にとって、自然冷 今後ますます、巨大な海外市場への拡大を続けるこ とになると考えています」と前川氏は言う。「海外で の売り上げを伸ばさなければ、地球環境に有意義な 貢献をすることはできません」 「 こ の こ と は、 決 し て 我 が 社 に お い て 国 内 が 重 要 な市場ではなくなったということではありませ ん。 日 本 で は 環 境 保 全 に 向 け た 行 動 が 様 々 な 形 で 進 行 し て い ま す。 そ う い っ た 行 動 を グ ロ ー バ ル に 広 め る こ と は、 地 球 規 模 で 環 境 を 大 き く 改 善 す る こ と に つ な が る で し ょ う。 そ れ こ そ が、 我 が 社 が今後 5 年間で達成を目指すべき目標なのです」 同社は、これまでに培ってきた日本市場での実績を、 世界の顧客とも共有したいと願っている。海外事業の 拡大には当然コストがかかるが、前川氏は、何十年に もわたって日本国内で行ってきたように、顧客をはじ め、各国の産業界や政府機関とも率直な対話を続ける ことの重要性を強調した。 これから開拓するグローバル市場においても同様 の 関 係 を 築 く こ と が、 今 後 5 年 間 の 前 川 製 作 所 に と っ て 最 も 大 き な 課 題 と な り そ う だ。「 関 係 性 を 構 築 す る と い う こ と は、 我 が 社 に と っ て 非 常 に 重 要 な こ と で す。 海 外 に も、 重 要 な お 客 様、 つ ま り 世界をリードするエンドユーザーが多く存在しま す。そういったお客様との間にいかに関係を構築で きるかが、極めて重要なポイントです。海外でビジ ネ ス の 拡 大 を 目 指 そ う と す る な ら ば、 こ れ は 必 須 の課題でしょう」と前川氏はその大切さを語った。 「私たちは日本で進めてきた環境ビジネスに自信を持っ ています。だからこそ海外で今後取引の可能性のある お客様に対しても同様に、日本の企業、前川製作所の誇 る技術を示すことこそ、最善の方法だと考えています。

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媒を使用したカスケードシステムが産業分野で存在を 示しつつある市場を獲得し、成長を実現するためには、 継続的なイノベーションが重要な鍵となる。「NewTon シリーズは、我が社のビジネスにおいて非常に重要な 製品です。日本市場での支持は獲得していますが、世 界においてもスタンダードとなるよう、海外への販売 も継続していかねばなりません」と前川氏は言う。 「今後、さらに多くの製品を海外市場に紹介する取り 組みも必要です。そして、売り上げを拡大しつつ、よ り少ないアンモニア充填量でより高い効率を実現す る、新たな製品の開発も継続していきます」このよ う な 状 況 に 対 応 す る た め、 ア ン モ ニ ア ス ク ロ ー ル 圧縮機を搭載した小型自然冷媒冷凍機「シエラ」を、新 たに業務用分野の市場に向けて 2016 年 5 月 15 日より


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「売り上げを拡大しつつ、より少ない アンモニア充填量でより高い効率を実現する、 新たな製品の開発も継続していきます」 創業 100 周年をさらなる成長の礎に 発売を開始した(注 1)。さらに同社の東広島工場では、

2024 年に前川製作所は創業 100 周年を迎える。同社

NewTon 用モーターの新たな製造ラインが導入される。

は、この記念すべき年をこれまでを振り返る機会とし

「コンプレッサーの改良に取り組んでいきますが、まずは

てではなく、さらなる成長に向けた “ 促進剤 ” として

モーターの効率改善を行います。ラインの増設を(2016

活かそうとしている。「2024 年までに、2014 年の倍

年に)開始し、工場にはクリーンルームを完備します」

となる売り上げ、つまり、2024 年に向けて 2000 億 円の売り上げ達成を目指します。従業員も増員し、環

幅広い産業分野にサービスを提供してきた同社である

境に配慮したビジネスのため、世界中の一人でも多く

が、業務用冷凍冷蔵および産業用空調分野への参入は、

の人との連携をし、進めていきたいと考えています」

前川製作所のビジネスにとって有意義なものとなるだ ろう。「NH3 /CO2 空調システムを導入したビルを建設

同社の企業哲学について、前川氏は今後もその方向性

予定です。それだけではなく、「シエラ」をスーパーや

はほぼ変わらないだろうと強調しながらも、よりよい

コンビニエンスストア向けの NH3 /CO2 システムとして

変化のために望ましい考え方を披露した。「マエカワ

販売していくことも計画しています」と前川氏は語り、

は先駆者であり続けますが、同時にナチュラルファイ

今後の事業計画を明らかにした。

ブの取り組みを前進させるため、様々な企業との連携 を望んでもいます。若い世代によりよい地球環境を託 すために、です」そして、「マエカワが、地球環境の 保全を目指し精力的な取り組みを行う、環境に配慮し た企業として認識されることを願っています」と締め

(注1)アンモニアスクロール圧縮機に関する詳しい記事は本誌 4 号を参照 : http://issuu.com/shecco/docs/160300_aj_4.compressed/74

くくった。 JR&MC

?e=4239849/34819567

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新 製 品 プレスリリース /

ノーリツ 戸建用ハイブリッド給湯器 を フルモデルチェンジ ー業界最高レベル 143% の給湯 1 次エネルギーを実現ー 湯まわり設備メーカーの株式会社ノーリツ(本社 : 兵庫県神戸市)は、給湯一次エネルギー 143%(注 1)を実現した、 戸建住宅用「ハイブリッド給湯・暖房システム」を 2016 年 9 月 1 日(木)より発売する。143% という業界最高 レベルを誇る同システムを、初年度の販売台数で 4300 台を目指す。 文 : 佐橋 縁

界で初めて冷媒として R290 を使用し、昨年末に

来型ガス給湯器と比べてであれば、CO2 排出量は年間

地球温暖化防止活動環境大臣賞も受賞した(注 2)

690Kg-CO2 と、約 51% もの削減が可能であるという。

ハイブリッド給湯器を製造したノーリツより

マーケティング統括部温水企画室室長の小原浩樹氏よ

今回発表されたのは、その現行品からの約 3 年ぶりと

り、現行品から改良された特長として①給湯一次エネ

なるフルモデルチェンジの商品であった。本商品でも

ルギー効率が業界最高レベル、②独自の省エネ機能の

引き続き、自然冷媒である R290 を同量使用している。

向上、③設置性の向上 = 奥行き寸法 550mm の 3 つが

現行品の開発時には、初めての R290 採用ということ

挙げられた。同時に「変わらないこだわり」として挙

可燃性に対する確認、試験に非常に時間をかけたが、

げられたのが、環境に一番やさしい商品としてフロン

今回のモデルチェンジにおいてはすでに安全性は担保

系の冷媒を使用せず、自然冷媒 R290 を使用した点で

されており、確信をもっているとも発表された。

ある。冷媒の封入量は現行品と変わらない 210g。会見 会場には製品の現物も展示され、タンクとヒートポン

発表会見の冒頭では、同社取締役である水野誠氏から、

プの間の配管を通るのは水であり、冷媒はヒートポン

現在、同社製の給湯器は国内 2000 万世帯で使用され

プ内に密閉されていること、エアコンのように設置の

ており、それによる CO2 の排出量は日本全体の約 1.4%

際に冷媒の工事をすることはないという安全面に対し

にあたる 2015 万トンであること、この数字に対し「自

ての説明がなされた。

社製品のエネルギー効率を改良することで、日本全体

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の排出量削減に貢献したい」との明確な方針が述べら

業界トップレベルの効率を実現できた要因として、貯

れた。また、今回は戸建用の製品の発表であったが、

湯タンクの容量を従来の 90ℓから 140ℓへと大きくし

来春には集合住宅向けの製品も発売予定であり、CO2

たこと、およびヒートポンプの稼働率を高めてトータ

排出削減にさらに貢献したいという旨が語られた。従

ル効率を向上させたことがまず挙げられた。さらに新

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スマート制御として放熱をできるだけ少なくし、現行

一般社団法人日本冷凍空調工業会および一般財団法人

品は 48 度と 65 度の 2 温度設定だったところを、46 〜

ヒートポンプ・蓄熱センターが今年 4 月に出したデー

60 度の間で 1 度刻みでの制御にすることで効率アップ

タによれば、2001 年に商品化されて以来、家庭用エコ

させている。そして現行品は通期で固定されていたヒー

キュートの累計出荷台数が今年 3 月末現在で 500 万台

トポンプの出力制御を、外気温により月に合わせ最適

を突破。自然冷媒使用の給湯器といえば CO2 冷媒使用

な運転をさせることでの効率向上により、業界初の給

のエコキュートという選択肢しかなかった市場に対し

湯一次エネルギー効率 143% という数値を実現させた

て、さらなる省エネ、コストダウンとともに炭化水素

という。またタンクを大きくしたことで、製品の奥行

冷媒使用の給湯器という新たな選択肢を提供し続ける

きは 300mm から 400mm と太くなったが、排気の向

ノーリツ。これより、市場に新しい風を吹き込み、自

きを横にしたことで設置スペース自体は約 31% 減少さ

然冷媒間での「競争」を生み出すことで自然冷媒市場

せた。エンドユーザーにとってもメリットはある。最

はさらに活性化されるであろう。 YS

たるものは光熱費の削減で、従来品のガス給湯器と比 べると年間で 10 万 5000 円から 3 万 6000 円と 66% の 削減であり、現行品と比べても年間 7000 円のコスト ダウンにつながる計算だ。また、この製品単体に対し てではないが、経済産業省・資源エネルギー庁の平成 28 年度「住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促 進事業費補助金 ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハ ウス)支援事業」では、要件を満たすことで一戸あた り 125 万円の補助が予定されていることから、その対 象となる可能性も示唆された。 ノーリツによれば、2013 年に発売となった現行品は累 計で 5000 台あまりが市場に出回っている。給湯器の 需要は年間約 350 万台。そのうちのほとんどはガス給 湯器と石油給湯器が占めてはいるが、この数年でハイ ブリッドタイプが次世代製品として注目され始めてい るという。14 年度で 8300 台、15 年度で 1 万台と市場 での規模はまだ小さいが、今後環境配慮・省エネが求 められる社会においてはこの商品が主力になっていく だろうと、新製品に関しては発売から 1 年で 4300 台 という販売目標と併せ、今後の展望も力強く語った。

(注 1) 143% の算出基準は、暖房をのぞく、地域給湯使用時の効率で、「平成 25 年省エネ基準に準拠した算定・判断の方法および解説(Ⅱ住宅)」 における給湯部分の条件を参考にした、ノーリツ調べ。 (注 2) 地球温暖化防止活動環境大臣賞を受賞したノーリツのハイブリッド給 湯器については本誌 3 号を参照 :http://issuu.com/shecco/docs/aj_3_ final_web/66?e=4239849/33052972

戸建住宅用「ハイブリッド給湯・暖房システム」

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新 製 品 プレスリリース /

進化する NH3 /CO 2 冷凍機の 安全性とイニシャルコスト 新型機種 NewTon が市場にもたらすものとは

文 : 岡部 玲奈

4 月 21 日、前川製作所がメディアの前で、同社の自然冷媒 NH3/CO2 冷凍機「NewTon」シリーズの新型機種 4 種 を発表した。同システムは 2016 年 7 月 21 日より本格的に販売される予定である。

海、そしてそこに生きる生物たちの神秘的な映像とい

「冷凍能力を(これ以上)上げることもできなくはない

う演出に続いて、代表取締役である前川正氏、及び取

が、そのためには温度差を減らすために熱交換器のプ

締役を務める宮崎優氏の挨拶があり、そして今回の

レートの枚数を増やす必要がある。ただそうすると冷

新型機種に関する特長が、NewTon 生産グループの八

媒量を増やさなくてはいけなくなる」と説明した。現

下田新一氏より発表された。2008 年より発売を開始

在の市場を見てみると、産業用冷凍冷蔵分野において

し、今では省エネかつ環境配慮型機器として知られる

はフロン系機器に代わるものとして NH3 /CO2 システム

NewTon は、現在日本国内では 850 台以上、海外では

が世界的に標準化しており、その中でいかにアンモニ

約 55 台導入されている。今回の新型機種は、3~4 年

アの冷媒充填量を減らし(注 1)、より安全性を高めるか

ごとにバージョンアップすることを目指した同社の方

に各メーカーは開発に開発を重ねている。「能力を変え

針に即して、2012 年の第 1 回目のバージョンアップ

ずに冷媒量をぐっと減らしてみよう、どこまで減らせ

に続き、第 2 回目のバージョンアップとなる 。冷蔵倉

るか挑戦してみよう」という八下田氏の言葉には、こ

庫用機種である R-3000 と R-6000、フリーザー用機種

の挑戦に自ら立ち向かっていくメーカーとしての前川

の F-300 と F-600 の計 4 機種でバージョンアップされ、

製作所の姿勢が表れているようだ。

その特長としては、アンモニア冷媒充填量の極小化、

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小型化・軽量化、メンテナンス性の向上などが挙げら

会場には、新型機種である R-3000 の実機が設置され

れる。熱交換器と配管のレイアウトを見直したことで、

ており、八下田氏によると現行モデルと比べ高さは

冷凍能力を下げることなくアンモニアの充填量を 25kg

350mm 低く、重さは 800Kg 軽いという。これは荷物

から 21kg へと削減することに成功し、これは、前モ

用のエレベーターに入ることができるほどの大きさで

デルと比較すると 16% の削減である。冷凍能力につい

あり、これにより、輸送・搬入などユーザーが負担す

ては、前モデルと同等だ。八下田氏はこのことに対し、

る工事コストが軽減されるとのこと。「前のモデルだと

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Ne w To n新型機種 R-3000

機器の上まで手が届かなかったのですが、今では届く

ると、国内の NH3 /CO2 システム導入数は現在 1000 台

ようになったんですよ」と、実機を横に説明する宮崎

を超えており、産業用分野では R22 冷媒の全廃に向け、

氏は、小型化によってメンテナンスの効率化はもちろ

自然冷媒機器を導入するといった流れが業界全体とし

んのこと、メンテナンスにかかる費用も抑えることが

ては確かにある。その需要の増加に対して、自然冷媒

できることも付け加えた。

ソリューションを提供できるメーカーの数がいかに増 えていくかが、今後重要となってくるであろう。

機器自体がコンパクトになることに伴い、工事コスト やメンテナンスコストは下げられ、かつマトリクスコ

今回新機種を発表した前川製作所は、初年 1 年間の目

ンバータなどの採用により、製造時にかかるコストは

標台数としては、新型・従来機種も合わせた NewTon

上がっているものの、導入時にかかるイニシャルコス

シリーズで、国内では 400 台、海外では 55 台を目指

トは従来型の金額と変わらないとのことでエンドユー

すという。 アンモニア充填量の低減による安全性の向

ザーにとってもありがたい話である。買い手にとって

上、及びランニングコストを下げることともなった今

一番気になるところはやはりコストダウンの実現であ

回の新型機種の特徴に、市場がどのような反応を示し、

るが、圧縮機、熱交換器などの機器全てを自社で開発

どのように普及していくのかを国内外ともに追ってい

し、製造しているという前川製作所だからこそ、更な

きたい。 RO

る技術開発と性能向上、そしてそれによるコスト削減 に期待できるのではないだろうか。とはいえ、各メー

(注 1): 極小充填アンモニアの可能性については本誌 1 号にあるペガ・

カーの技術開発にはもちろん期待し続けるべきではあ

http://issuu.com/shecco/docs/accelerate_

るものの、やはりメーカーの社数自体を生み出さない

ヘルンヤク教授 japan__1/47?e=4239849/14823597

限り市場に価格競争は生まれない。shecco の調査によ

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開 催 予 定 イベント /

「食」を支える 最新技術が集結 食 × 自 然 冷 媒 の最 新 技 術に 期 待 大 アジアにて最大級規模を誇る「食の技術」に関する総合トレードショー、FOOMA JAPAN。 本年度は「おいしい技術をアップデート。」をテーマとして、2016 年 6 月 7 日(火)~10 日(金) の 4 日間で東京ビッグサイトにて開催される。来場者数も毎年 10 万人規模を記録している ことからも、本年度の更なる盛り上がりを見せるであろうイベントに期待が寄せられる。 文 : 岡部 玲奈

注目は「冷やす」最新技術 一般社団法人日本食品機械工業会によって開かれる同イベントは、今年 で 39 回目を迎え、683 社がブースを構え各自の技術・製品・サービスを 展示する。食というテーマのもと、国内外から数多くの企業、研究機関、 団体が集うことで、最新の技術動向及び市場動向を現地で実際に体感で きることがこのイベントの魅力の一つである。総合展示会ということも あり、食品製造プロセスにおける多彩な製品 ・技術・サービスを、展示 品のみでなく、それぞれの分野を代表する企業・団体からのプレゼンテー ションやセミナーからも学ぶことができる同イベントへの注目度は高い。 様々な食に関する技術がその魅力を発揮するわけであるが、特に本誌が 注目しているのは、食品製造プロセスには欠かせない冷凍冷蔵技術であ る。その中でも現在、フロン改正法によって規制がかかっているフロン 機器に対するソリューションとして、「自然冷媒」をキーワードに技術を 提供する複数の企業だ。 産業分野における自然冷媒技術として主力となるのは、やはり CO2 / NH3 システムである。三菱重工冷熱では「CO2 / NH3 自然冷媒 連続急速凍結・ 冷却装置 サーモウェーブフリーザー」を、前川製作所では NewTon を 今年も展示予定だ。高橋工業、福島工業、神戸製鋼所は「最先端技術で 新たな挑戦 環境と食の未来を支えるフクシマグループ」というコン セプトのもと、共同出展として CO2 冷凍システムが展示されるという。 CO2 技術の成功例として国内需要を伸ばし続ける「エコキュート」など

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F O O MA J apa n 2015の会場風景


/ 開 催 予 定 イベント /

のヒートポンプ技術は、本イベントでは家庭用のみならず、業務用のも のにも数多く出会えることに期待したい。その他の自然冷媒対応ツール、 そしてどのような新技術が今年は来場者を迎えてくれるのか、各社のブー ス、そして各業界の最新情報を得られる各セミナーに注目だ。 RO FOOMA JAPAN 2016 ウェブサイト http://www.foomajapan.jp 出展社プレゼンテーションセミナー タイムテーブル http://www.foomajapan.jp/2016/seminar/exhibitor_presen.php

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A D VA N C I N G H VA C & R N A T U R A L LY

J A P A N

情報入手の先駆け

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自 然 冷 媒 に 関 する 情 報 発 信 の 世 界 的 エ キ ス パ ート s h e c c o が お 届 け す る ア ク セ レ レ ー ト・ジ ャ パ ン は 、あ ら ゆ る H V A C & R 分 野 で 自 然 冷 媒 ソ リュ ー ショ ン を 取 り 扱 う 、 最 も 革 新 的 な ビ ジ ネ ス リ ー ダ ー の 皆 様 を 対 象 とし た 日 本 初 の 隔 月 刊 誌 で す。

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