2024年度 法学部パンフレット

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龍谷大学 法学部 2024

Law Faculty of

From the Citizens' Perspective

「市民に寄り添う人」へ

法学は、人と向き合う学問としては、医学や神学などと並んでもっとも古 い専門分野と言える学問です。龍谷大学の法学部は、特に広く社会的な課 題に取り組むことをひとつの特徴としています。そのための教養や実践力 を身につけるために座学だけでなくフィールドワークなどをとおして市民 視点からの学びに注力しています。

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弁護士 国家 公務員 地方 公務員 企業での 法務部 パラ リーガル 保護 観察官 検察官 司法書士 社会保険 労務士 刑務官 法務教官 行政書士 裁判官 裁判所 事務官 検察 事務官 家庭裁判 所調査官 弁理士 裁判所 書記官 志望にあわせて コース選択 司法コース 学部共通コース 現代国家と法 コース 国際政治と法 コース 市民生活と法 コース 犯罪・刑罰と法 コース 02

学生の取り組み紹介

Understanding SDGs through Traditional Crafts

京都深草の伝統工芸品を通じて

SDGsへの理解を深める

法学部を盛り上げたいと考える学生有志が集う、企画・広報団体「LeD’s(レッズ)」。

学生自らが企画・立案したイベントの運営をとおして、法学部の学びの魅力を学内外へ発信しています。

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法学部の魅力発信と

身近な社会問題の啓発に努める

私たちLeD’s(レッズ)は、法学部の魅力を 学内外へ発信し、多くの方に認知してもら えるよう学生自身が企画・立案したイベン トなどを開催しています。近年注目を集め ているSDGs(持続可能な開発目標)の啓発 や、若者の投票率低下など、身近な社会問 題にも積極的に取り組んでいます。私たち が今回企画したのは、SDGsの啓発活動でし

た。2015年の国連採択以降、その名前は周 知されつつあるものの、SDGsの内容や意義 まで深く理解している人は決して多くあり ません。そんなSDGsについて地域の小学生 にも知ってほしい、楽しみながら理解を深 めてほしいと思ったのが、深草の伝統工芸 品である「竹うちわづくり」イベントを開催 するきっかけでした。

伝統工芸品づくりを通じて SDGsの意義を伝えたい

SDGsに掲げられている17の目標のうち今 回テーマに取り上げたのは、「つくる責任・ つかう責任」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊 かさも守ろう」の3つでした。SDGsと聞く と難しいように思われがちですが、実際は とても身近な問題です。ただ、座学で学ぶと

なると、小学生は退屈に感じてしまうかも しれません。そこで私たちは、竹うちわづく

りのほかにもSDGsに関する簡単なクイズ を用意するなど、楽しく学ぶことに重点を 置き、工夫を重ねました。実際に竹の香りや 手触りを体感しながら製作するなかで、自 作のうちわへの愛着が生まれたのか、大切 に使おうという姿勢が見受けられました。 プラスチック製品を使うのが当たり前に

Ryosuke Ueda

植田 涼介 さん

3年生 (大阪府立佐野高等学校 出身)

なっている小学生が、プラスチックごみを はじめとする環境問題に目を向け、自分た ちに何ができるかを考えるきっかけになっ てくれれば、嬉しい限りです。これからも身 近な社会課題を広く発信し、周囲の方々を 巻き込んだイベントを開催できればと思っ ています。

企画に携わって体感した 準備の大変さと大切さ

このイベントを開催するにあたり、私たち は計画の練り直しからスタートしなければ なりませんでした。というのも、2020年に 蔓延した新型コロナウイルス感染症の影響 を受け、2年間ずっと停滞していたイベント だったからです。企画の対象者が小学生とい うこともあり、感染対策の徹底や保護者へ情 報を周知する手段など、コロナ前までは考え もしなかった課題が山積みで、試行錯誤を繰 り返しました。イベントの周知をお願いする 小学校にも何度も足を運び、校長先生や教頭 先生と協議を重ねたり、申込書の配布をお願 いしたりと、準備だけで半年もの時間を要し ました。しかし、この一連の大変さを味わっ ていなければ、きっと主催者側の苦労を知る ことはできなかったでしょう。一つのイベン トが開催されるまでには、多くの時間と周到 な準備が必要なのだと、身をもって知る貴重 な経験でした。

仲間と困難を乗り越えた経験は 将来への大きな自信となって

小学生向けのイベントながら、企画者であ る私たちも、SDGsへの理解がより深まりま した。同時に、自然資源の活用法や伝統工芸 品の後継者不足など、新たな課題にも気づ

けました。また、今回の体験をとおして、仲 間と協働することの大切さも改めて学びま した。特に準備期間中は多くの課題に直面 して、行き詰まるたびにみんなで相談し、知 恵を出し合ったものです。ともに悩み考え る仲間がいなければ、途中で諦めていたか も知れません。幹部数名を中心に、同じ目標 へ向けて力を合わせたからこそ、実現でき たイベントなのだと、仲間や支え協力して くださった方々への感謝の気持ちでいっぱ いです。この経験はきっと、今後の学生生活、 ひいては、将来においても大きな自信にな ると確信しています。

Tomo Nakahira

中平 朋 さん

3年生

(鹿児島県立鹿屋高等学校 出身)

Momoka Kawakami

川上 桃佳 さん

2年生

(伊丹市立伊丹高等学校 出身)

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「香り」で地域おこしを行う 上市町の取り組みをリサーチ

法政アクティブリサーチは、自分たちで テーマを設定し、行政機関や自治体、企業 にヒアリング調査を行い、成果を学内外 に発信する学生主体の取り組みです。私 たちのグループは、「かおり・においと環 境」という視点からの「まちづくり」に着 目し、調査研究を行うことにしました。ま ちづくりというと観光名所や特産品など 視覚・味覚に訴えるアプローチが一般的 ですが、嗅覚に働きかける地域活性化も 可能なはずです。そこで、間伐樹木を活用 した精油などによる商品開発や体験プロ グラムを通じて「香り文化」の推進に取り

組んでいる富山県中新川郡上市町を、ヒ アリング先に選びました。

まちづくり当事者から話を聞き、 地域活性化のヒントを探る

上市町は、人口減少や少子高齢化、農林業 の後継者不足、未整備森林の増加といっ た問題を抱えています。それらの解決策 の一環として「『香り文化』推進プロジェ クト」を実施し、住民や事業者の方々が連 携してまちづくりをすすめています。今 回その活動を調査することで、地域の特 性や資源を活かした取り組みこそ、雇用 の創出や地場産業の繁栄の鍵であるとわ かりました。特に、ヒアリング調査から学

んだことは大きいと感じます。社会課題 に向き合っている方のお話を聞き、座学 だけでは知ることのできない貴重な知見 を得られましたし、アポイントやメール のやり取り、現地での振る舞いなどの社 会人として必要なマナーも身につきまし た。また、チーム内で自分が何をすべきか 見定める判断力も養われました。一方、こ ちらの事前準備が不十分で聞きたいこと を質問しきれなかったという後悔もあり ます。ヒアリング調査を充実させるには、 「なぜそれを調べるのか」「なぜそれを尋 ねるのか」を考え抜いておかねばならな いと痛感しました。そういった反省点も 活かしながら、今後も引き続き地域課題 に取り組んでいきたいです。

法政アクティブリサーチ

Research Local Issues and Seek Solutions

社会課題の解決をめざす

法政アクティブリサーチは、社会課題を解決する取り組 みに、学生が主体的に参加する授業です。学外の各種団 体や自治体、法人などにヒアリング調査を行い、自分た ちで解決策を模索、提案していきます。今回は、「香り」 とまちづくりについて調査を実施しました。

「香り」の地域振興を調査し、
Keita
鈴木 啓太
2年生 (奈良県立奈良北高等学校 出身) 05
Suzuki
さん

地域の現状を「知ること」が 社会問題を解決する第一歩

日本の各地域には、認識はされているもの の危機感が共有されていない問題や、まだ 認知すらされていない問題など、社会に不 利益をもたらすさまざまな問題が数多く 存在します。そういった事柄を課題として とらえ解決につなげるには、「知ること」 から始める必要があります。私たちは法政 アクティブリサーチを通じ、上市町が直面 している困難を知りました。現地まで足を 運び、企業や自治体の方々にお話をうかが い、地域の取り組みについて理解を深める ことで、課題解決に向けた考え方がおのず と身についたように感じます。

ヒアリング調査で得られた知見を 共有し、社会貢献に活かしたい

上市町のまちづくりの必要性や「香り」と いう資源活用の背景を調査することで地域 活性化への理解が深まり、さまざまな視点 から物事をとらえる力が身につきました。

法政アクティブリサーチでは学生自ら現 地を訪れてお話をうかがいますが、事前に 綿密な下調べをする必要があります。大変 な作業ですが、苦労して得た知見は、今後 の人生でも必ず役立つと思います。ヒアリ ングで役場の方々の思いなどを知り、上市 町により親近感が湧くとともに、地域の問 題を自分事として考えるようになりまし

た。人口減少や少子高齢化による地域衰退

は、全国共通の課題です。私たちがヒアリ ング調査を行い発表することで、少しでも 多くの人や地域に上市町の取り組みが伝 わり、社会課題を解決する一助になればう れしいです。

Ogi 大木 のぞみ さん 2年生 (奈良県立橿原高等学校 出身)
Ono 小野 愛実 さん 2年生 (大阪府立山田高等学校 出身)
Nozomi
Manami
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Hot Topics

法学部の取り組み

11年生の学びを支える クラスサポーター制度

主に2年生と3年生がクラスサポーターになって、1年生前期の「基礎 演習」と後期の「法政入門演習」で1年生や教員をサポートしたり、1 年生と教員との橋渡しをしたりしながら円滑な授業運営をめざしま す。1年生がどんな問題を抱えているか、どんな情報を必要としている かを相手の立場で考えフィードバックするので、サポートする側の私

もプレゼン力やコミュニケーション力が鍛えられていくのを実感でき ました。1年生のサポートにとどまらず、自分自身の成長につながるク ラスサポーター制度は法学部の大きな特徴の1つだと思います。

2学びの成果を地域に還元 学生法律相談部

市民や学生から受ける法的な相談に対し、大学で学んだ法学知識をも とにアドバイスを行います。普段の授業でインプットした知識を実務 としてアウトプットし、相談者の問題解決をお手伝いするのが目的で す。ヒアリングや助言を通じて、法的思考力や課題解決力が向上しま した。なかでも相手の話を引き出す話し方や、傾聴する姿勢、人間力 が特に培われ、これから社会にでるうえで求められる力が身についた と感じています。今後もこの活動をとおして自分自身の能力を高め、 社会でも活用していきたいです。

衣笠 翔也 さん

2年生(大阪府立大塚高等学校 出身)

卒業生による進路選択のサポート 法学部メンターシッププログラム

このプログラムでは、本学法学部卒業生を中心とした社会人がメン ター(相談相手、助言者)となり、社会人として培ってきたキャリアや 学生時代の経験を活かしながら、在学生に対して、進路選択やキャリ ア形成に関する助言を行います。

多様な情報があふれている時代 ですが、メンターから直接助言を 受けることによって、進路選択や キャリア形成の一助、卒業後の姿 を考えるきっかけとなることを目 的としています。

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志水 左近 さん 3年生(京都府立東宇治高等学校 出身)
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4-Year Studies

4年間で何を学ぶ?

法律や政治を基礎から発展まで段階的に 学修することで、無理なく知識を積み上げる

1 年次 2 年次 3 年次 4 年次

1セメスター2セメスター3セメスター4セメスター5セメスター6セメスター7セメスター8セメスター 4 年間の流れ

大学での学び方を 修得する

段階的に学修を深めて 関心があるコースを選択

専門性の高い科目を学び リーガルマインドを育てる

研究テーマを追究し、 卒業研究にまとめあげる

基礎演習

「大学入門科 目」であり、大 学での学び方 を修得します。

法政入門 演習 法学・政治学 の学修に必要な 読解力を養成し ます。

クラスサポーター制度

法政 ブリッジ セミナー 卒業研究へと つながる文章 作成能力を磨 き、専門的な学 びに向けた橋 渡しをします。

法学・政治学入門科目 法学・政治学の基礎を学ぶための基本科目を履修します。

● 法と裁判

● 憲法Ⅰ・Ⅱ

● 民法Ⅰ-A・B

演習Ⅰ

専門教育ゼミナールとして、各自が 希望するゼミを選択。多様なゼミが 開講されます。

演習Ⅱ・卒業研究

「演習Ⅰ」での学修をさらに深める専門教育ゼミナールが 「演習Ⅱ」です。その集大成として卒業研究を作成します。

● 消費者保護のための行政の取り組みと企業の対応

● 刑事法入門

● 日本法制史A

● 現代世界の政治    など

進路にあわせてコースを選択

これまでに 取り組んだ内容

● 最前線の持続可能社会の諸政策を考える

● 社会的問題に関する「市民」の視点と理念論

● 歴史的観光地の「光」と「影」

法律事務実務・法律実務論

法律事務所や司法書士事務所でインターンシップを行い、活きた法律を学びます。

司法コース

六法科目を少人数で学び、教員と学生によるインタラクティブな授業を展開します。

現代国家と法コース

公法科目(憲法、行政法など)を中心に、関連科目として政治学や日本政治を学びます。

市民生活と法コース

民事法科目(民法、民事訴訟法など)や、商事法科目(商法、会社法など)を中心に学びます。

犯罪・刑罰と法コース

刑事法科目(刑法、刑事訴訟法、刑事政策、犯罪学など)を中心に、関連科目とし て矯正・保護課程科目を学びます。

国際政治と法コース

国際法や国際政治関係、地域研究の観点から、国際社会に関するさまざまな問題を 学びます。

学部共通コース

国際関係コース、英語コミュニケーションコース スポーツサイエンスコース、環境サイエンスコース

[取得可能な免許・資格]

● 中学校教諭一種免許状(社会)

[めざす職業・進路]

● 公務員(国家・地方)

● 高等学校教諭一種免許状(地理歴史、公民)

● 本願寺派教師資格(受験資格)

● 司法書士、行政書士、刑務官、警察官、法務教官、保護観察官

● 裁判所事務官、検察事務官、家裁調査官

● 教員(中学校、高等学校)

● 法科大学院(弁護士・検察官・裁判官)

● 企業(法務関係など)

学部サイト
学びの全体像 コースの学び 専攻基礎科目 専攻科目
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法政アクティブリサーチ

Seminars ゼミ紹介

浜井 浩一ゼミ

実例に基づく犯罪と社会復帰の現状を 多角的な観点から考察する

京田 愛花 さん

4年生(岡山県 岡山学芸館高等学校 出身)

私は、犯罪学や犯罪心理学を中心に研究しています。人はなぜ犯罪を犯 し、どのように更生するのか。社会復帰に至るまでの心理に関心を抱い たからです。ゼミではグループに分かれ、犯罪白書をもとにテーマを設 定し、現代の犯罪の特徴や処遇方法をレポートにまとめて発表します。

定期的なメンバーの入れ替えにより幅広い分野に触れることで、自分 の興味対象が絞られ卒業論文につなげていきます。そのような学びを とおして、私が卒業論文のテーマに選んだのは、少年犯罪です。更生や 再教育などを目的とする少年法は、教育法・福祉法の役割も担っていま す。非行少年が罪を犯す理由や再犯を抑止する処遇など、少年犯罪に関

する専門的な学びは、法務教官という夢をもつきっかけにもなりまし た。担当教員の専門的な指導のもとで今後は日本の刑罰に対する国際 的な視点も養い、夢の実現をめざします。

[ゼミで取り扱う学びのテーマ(例)]

[法律系]

● カーボンニュートラルの推進と温泉街の振興

● 南海トラフ地震を見据えた集団移転促進事業の活用について

―住民の津波事前対策の選択肢拡大を図る観点から―

● いじめ自殺事件の重大さを考える~加害者の責任・健全育成に着目して~

データやエビデンスに基づいて 考察し徹底的に事実と向き合う

松下 明日香 さん

4年生(大阪府 大阪教育大学附属高等学校 天王寺校舎 出身)

浜井ゼミでは、犯罪白書などを活用して犯罪が起こる割合や犯罪者へ の処遇方法を調査し、どうすれば犯罪が減るか、再犯を防ぐにはどんな 政策が有効か、自分なりの結論を導き出していきます。研究をすすめる なかで、非行少年や犯罪の当事者に対して自分はいかに勝手なイメー ジをもっていたのかと驚き、少年法に対する考え方も覆されました。少 年院と刑務所の違いや少年への処遇方法を科学的に検証するなかで、 適用年齢の引き下げや厳罰化が必ずしも犯罪の減少に結びつくのでは ないとわかりました。そんなゼミでの学びから、18 ~ 19歳の少年への 処遇が社会に与える影響に着目し、卒業論文は「少年法適用年齢引き下 げは適切であったのか」をテーマに選びました。誰もが無意識にもつ 誤ったイメージや決めつけを取り除き、事実ととことん向き合うこと が犯罪や再犯の減少につながると考えます。

● 再犯防止に向けた就労支援のあり方

● 日本における市民の犯罪に対するパラダイム-犯罪の病因に対する観点から-

● 再審開始決定に対する検察官抗告の検討

● ヤングケアラーに対する日本の今後

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法律や政治は、広く社会的な課題に関わっています。

ゼミでは、実社会の出来事や現象を独自の視点で考察し、実践力を育みます。

教員・ スタッフ紹介

瀬畑 源ゼミ

沖縄の基地問題を巡る

全国紙と地方紙の違いを分析

椿本 知央 さん 3年生(大阪府立住吉高等学校 出身)

近代日本の政治に強い関心があり、日本政治史が専門の瀬畑ゼミを選 びました。特に印象深いのが、全国紙5紙と沖縄地方紙2紙における沖 縄基地問題の取り扱い方をテーマにした、2年次後期の合同報告会で す。各新聞の社説を一つずつ読みながら調査することで、全国紙と地 方紙の違いだけでなく、5紙間・2紙間の論調や立場の差異も発見でき ました。膨大な量の情報を整理して分析する作業は大変でしたが、や り切ったときはとても達成感があり、貴重な経験を得られたと感じて います。その後も沖縄について、歴史や観光産業も含めてみんなで考 察をすすめています。少人数だからこそ時間をかけて輪読や報告、議 論を行える密度の濃さや、瀬畑先生のサポートの細やかさも、本ゼミ の特徴です。これまでの取り組みをとおして身についた幅広い知識や 資料の選び方を、今後の卒業研究にも活かしていきます。

正解のない政治問題を探究し 自分なりの考えを構築したい

沖野 翔太 さん 4年生(大阪府立布施高等学校 出身)

日本政治史を研究するゼミを選んだのは、与党と野党が対立する政治 問題に強い関心をもっていたからです。コースは「現代国家の法」コー スを選択し、ゼミでは、戦前・戦後の歴史問題や、沖縄の米軍基地問題 から派生する日米安全保障条約、天皇制など幅広い領域を学んでいま す。興味深いのは、諸問題に対する論点や主張が、人によって大きく異 なる点です。特に天皇制への意見は、戦前から戦後、そして現代まで変 化があり、時代を超えてさまざまな賛否が存在します。そこに焦点を あて、卒業論文では「天皇制の今後について」というテーマを掘り下げ ていきます。歴史を遡りながら賛否それぞれの主張を考察するなかで、 どのような見解を得られるのか。絶対的な正解のない政治的なテーマ をいかにとらえるのか。ゼミでの学びを活かした柔軟な視点に立ち、 自分なりの考え方を構築したいと考えています。

[政治系]

● 憲法25条と貧困-生活保護制度の問題点に着目して- ● プライバシー権侵害の不法行為における違法性の判断枠組み -最判令和2年10月9日民集74巻7号1807頁判決を中心に- ● 嫡出推定制度の問題点-嫡出否認権を誰に認めるべきか-

● 日本で政権交代が起きないのはなぜか

● 東條英機の人物像―期待と憎しみを背負った努力家

● 宇宙の環境保全と国際協調-スペースデブリ問題を事例に-

● 日本におけるインターネット投票の有効性-投票権保障の観点から-

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Life after Graduation

Graduate's Interview

京都府庁

総務部自治振興課 勤務

Kazuya Maeda

前田 和哉 さん

法律学科 2021年卒業 (京都府立城陽高等学校 出身)

Q.大学時代にはどのようなことに取り組んでいましたか?

行政法を専攻テーマとするゼミに所属し、地方自治法や京都の景観政策について研究してい ました。法学部の広報活動にも力を注ぎ、オープンキャンパスでは学部紹介や模擬裁判を通 じて高校生に法学部の魅力を伝えました。勉学だけでなくこうした課外活動が豊富であるな ど、学生の意欲に応えてくれる制度や支援が充実しているのが法学部の魅力だと感じます。

Q.大学での学びは現在の仕事にどう活かされていますか?

地方公共団体の事業の多くは法律や条例に基づいて施行されるので、大学での法学の知識が 活かされていると感じます。市役所のインターンシップに参加した経験も、公人としての心 構えを知るうえで貴重な機会でした。現在私は地方公共団体の歳入である交付税の算定・交 付・検査を担当し、緊張感とやりがいをもって府内の税財政運営に携わっています。すべての 府民が夢と希望をもって暮らせるよう、今後も府政のために尽力します。

My Background

フィールドワークをとおして、判例 だけではわからない現場の状況を確 認する大切さを学びました。

オープンキャンパスで実施する模擬 裁判の企画長・司会進行役を担当。 学部の魅力をアピールすべく、さま ざまな工夫を凝らしました。

晴れて大学を卒業し、公務員試験も 無事合格。喜びや苦労をともにした 仲間とは、今でも連絡を取り合い、 親交を深めています。

京都全体を支える「縁の下の力もち」 をめざし、府庁での実務経験を通じ て、活躍の幅を広げていきたいです。

大学1・2年生 大学3年生
大学4年生 現在
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Graduate's Interview

高松地方裁判所

丸亀支部 勤務

Yusuke Kagawa

香川 雄祐 さん

法律学科 2018年卒業

(香川県立坂出高等学校 出身)

Q.大学時代にはどのようなことに取り組んでいましたか?

大学時代は法科大学院への進学を視野に、法律に関する授業を幅広く受講しました。憲法 ゼミを選択し、卒業論文では「信教の自由と政教分離の相克問題」について考察しました。 また、実際に弁護士のもとで法曹実務を体験する実務科目も学修し、この経験をとおして、 専門用語や自分の考えを相手にわかりやすく説明する重要性と難しさを実感しました。

Q.大学での学びは現在の仕事にどう活かされていますか?

現在は裁判所内の「司法行政部門」で、会計事務や広報活動などを担当しています。手続き などの複雑さから裁判所の利用に不安を感じる方が多いため、「より良い司法サービスを 提供したい」と常々意識しています。その原点は、大学での学びや経験にあり、当時の経験 は現在の仕事すべてに直結しています。司法に携わる一人として社会の動きに柔軟に対応 し、すべての方が利用しやすい裁判所の実現に向けて今後も努力を重ねていきます。

My Background

大学1・2年生 大学3年生 大学4年生 現在

1年生の授業支援を行うクラスサ ポーター活動に参加。新たな友人が できたり教員とも親睦を深められた り、とても充実していました。

「法律事務実務」の授業における模 擬裁判の一幕。台本なしの一発勝負 のため、チーム一丸となって尋問構 成を連日考えていました。

目標に向けて仲間と切磋琢磨した日々 はかけがえのない思い出です。卒業式 にゼミの先生から卒業証書をいただい たことは、とても感慨深かったです。

司法試験合格という、大学時代から の目標を達成できました。学びや経 験のすべてを、これからも活かし続 けたいと思います。

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Careers

法学部の就職

法学部で学んだリーガルマインドを活かし、

公務員をはじめ、さまざまな分野で活躍

法学部生の進路というと、司法関係の仕事がイメージされがちですが、法学部の卒業生は、さまざまな分野に就職し活 躍しています。それは、法学・政治学の授業をとおして養われるリーガルマインドは、公務員はもちろん金融業や不動

産業、サービス業や卸売・小売業など、多様な業種で幅広く求められることの結果です。とりわけ、本学法学部生は、毎 年5、6人に1人という高い割合で、公務員に就職しています。

20.3% 公務員

「法学部=法曹」ではない

「リーガルマインド」は 身近な課題の解決に役立つ

法学というと、弁護士や裁判官、検事など、一般市 民とは別の世界のように思うかもしれません。し

かし法学に関係することは、私たちのすぐ身近に あり、日常生活に起きるあらゆることが法学に関 係しています。法学部で培われる、現代社会の諸問 題を鋭敏な人権感覚をもって批判的・論理的に分 析する能力(リーガルマインド)は、社会に出てか ら直面するさまざまな課題の解決に役立ちます。

少年犯罪 クレジット カード

英会話教室 の契約 冤罪 法 律 自動車事故 自衛隊の 海外派遣 米軍基地 問題

● NECネッツエスアイ株式会社

● ニッタン株式会社

● アイリスオーヤマ株式会社

● 株式会社キーエンス

● スズキ株式会社

● 株式会社淀川製鋼所

● リンナイ株式会社

● JA全農たまご株式会社

● 島津メディカルシステムズ株式会社

● ダイワボウ情報システム株式会社

● 株式会社モリタ

● 株式会社あさひ(サイクルベースあさひ)

● コーナン商事株式会社

● 株式会社セブン-イレブン・ジャパン

● 株式会社ヤマダホールディングス

● 株式会社京都銀行

● 京都信用金庫

● 京都中央信用金庫

● 株式会社滋賀銀行

● ほけんの窓口グループ株式会社

● 明治安田生命保険相互会社

● 関西電力株式会社

● 富士ソフト株式会社

● 株式会社マイナビ

● 京都府教育委員会

● 厚生労働省(国家公務員一般職)

● 法務省(法務省専門職員、刑務官)

● 国税庁(国税専門官)

● 滋賀県庁

● 京都府庁

● 奈良県庁

● 大津市役所

● 京都市役所

● 大阪市役所

● 滋賀県警察

● 京都府警察

● 大阪府警察

● 兵庫県警察 など

[主な就職先] 法律 学科
就職状況(2021年度卒業生)
アルバイト代 不払い
(2021年度卒業生実績) ※主な就職先は業種順に記載 資格・ 就職情報
土木・建設業 4.9% 製造業 9.3% 卸売業 9.6% 金融業 6.4% 情報通信業 7.0% 教育 2.6% 不動産 5.5% 公務員 20.3% 小売業 12.8% エネルギー 0.3% サービス業 14.0% 運輸業 2.9% 福祉 1.2% その他 3.2% (大学院進学含む) 13

京都市役所

本学主催の気候変動開発会議への参加を通じて、社会課題解決に取り組む 意義を見出したのをきっかけに学生団体を立ち上げました。多くの人と関 わり内省を深めた結果、就職活動の軸が「学生の支援ができる仕事」と明 確になりました。この経験を踏まえ、学生の活動支援に力を入れている京 都市の職員として学生の活動や取り組みを後押ししたいと考えています。

大学や組織の枠を超えて地域や民間企業とも横断的に協働できる基盤づ くりに寄与し、新たな価値の創出をめざします。

4年生(滋賀県立甲西高等学校 出身)

株式会社一条工務店 内定

講義では刑法や犯罪学に関する科目を中心に勉強し、関心の強い分野への 学びを深めていきました。ゼミ活動において多くの発表やゼミ長を経験す るなかで、人前でも臆することなく自分の意見を論理的に伝える力が培わ れました。就職活動でもその力を十分発揮できるよう大学内のキャリアセ ンターを最大限に活用して対策を行ったおかげで、多くの企業の面接を通 過できました。大学で積み重ねた学びを活かし、お客さまに信頼してもら えるビジネスパーソンとなるべく、さらなる飛躍をめざします。

土肥 裕矢 さん

4年生(兵庫県立淡路三原高等学校 出身)

法務省 内定

入学当初から公務員をめざし、計画的に学修をすすめてきました。ゼミで は行政法を専攻し法律や行政の役割について確かな知識を身につけなが ら、法律系資格の取得に向けた勉強も並行していました。学びのなかで身 につけた豊富な法律知識は自信にもつながり、公務員試験でも落ち着いて 自分の実力を発揮できました。大学で得た学びは、人権被害を受けた相談 者の人生を守るべく活かしていきたいと考えています。実務経験を積みな がらさらに資格取得にも励み、より知見を広げていきたいです。

園原 聖 さん

4年生(京都府立鳥羽高等学校 出身)

LINE株式会社 内定

授業では幅広く日本の法律について学び、ゼミでは国際政治学を専攻しま した。海外各国を参考としながら日本政治の発展に必要な施策を模索し、 研究を通じて国際感覚と多角的に物事をみる視野が身につきました。法学 部の学びでは、筋道立ててわかりやすく自分の意見を伝える力も磨かれ、 エントリーシートの記入や面接においても大いに役立ったと感じていま す。一つの見方にとらわれず柔軟な思考で事業に貢献し成長を重ね、幅広 く活躍する人材になりたいです。

中辻 綾 さん

内定
松田 あゆみ さん
4年生(大阪府立登美丘高等学校 出身)
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世界は驚くべきスピードでその姿を変え、 将来の予測が難しい時代となっています。

いま必要なことは、「学び」を深めること。 「つながり」に目覚めること。

龍谷大学は「まごころある市民」を育んでいきます。

自らを見つめ直し、他者への思いやりを発動する。

自分だけでなく他の誰かの安らぎのために行動する。

それが、私たちが大切にしている

「自省利他」であり、「まごころ」です。

その心があれば、激しい変化の中でも本質を見極め、 変革への一歩を踏み出すことができるはず。

探究心が沸き上がる喜びを原動力に、 より良い社会を構築するために。

新しい価値を創造するために。

私たちは、大学を「心」と「知」と「行動」の拠点として、 地球規模で広がる課題に立ち向かいます。 1639年の創立以来、貫いてきた進取の精神、

そして日々積み上げる学びをもとに、様々な人と手を携えながら、 誠実に地域や社会の発展に力を尽くしていきます。

豊かな多様性の中で、心と心がつながる。人と人が支え合う。 その先に、社会の新しい可能性が生まれていく。 龍谷大学が動く。未来が輝く。

You, Unlimited

龍谷大学のブランドストーリー 龍谷大学 法学部

あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、 「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。 それが、龍谷大学の教育のあり方です。

自分自身を省み、人の痛みに感応して、 他者を受け容れ理解する力を持つ。

人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。 そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、 自らの可能性を広げていきます。

深草キャンパス

大阪、奈良、兵庫 から好アクセス

京都市伏見区深草塚本町67

Tel 075-645-7896

hogaku@ad.ryukoku.ac.jp

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※掲載の学年、所属は取材時のものです。

2023年4月発行

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