JAFスポーツ 2021年 春号(第55巻 第2号 2021年5月1日発行)

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2021 SPRING JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] JAF MOTOR SPORTS 第55巻 第2号 2021年5月1日発行(年4回、2、5、8、11月の1日発行) 初栄冠の誉れ 全日本ラリー選手権“初”チャンピオンインタビュー 2020年JAF地方選手権チャンピオン 特集 諦める必要は、ない 山本尚貴選手、不屈の覚悟で掴んだ“2度目の二冠”
Headl シーズンのFIAフォーミュラ1 世界選手権(F1)では、ミック・ シューマッハ選手とニキータ・ マゼピン選手(ともにハース)と共に、F1ル ーキーイヤーを迎えた角田裕毅選手。 2018年に日本のFIA-F4でチャンピオ ンを獲得すると、翌年から活躍の場を欧州 に移し、FIA-F3、FIA-F2を経て、今シー ズンはついにF1参戦のチャンスを掴んだ。 角田選手はFIA-F4でチャンピオンを獲 った時も「F1に、ただ参戦するだけじゃな くて、そこで海外の手強いドライバーに勝 てるようなドライバーになりたい」と貪欲 な姿勢を示していたが、デビュー戦からま さに有言実行という走りを見せた。 フリープラクティス1回目ではトラフィ ックの影響で思うように走れず、思わず無 線で声を荒げるシーンがあった。ただ、逆 に言えば、これが角田選手がF1までステ ップアップできた原動力の一つ。普段は笑 顔を絶やさない好青年という印象だが、い ざマシンに乗ると闘争心むき出しのドライ ビングを披露する。これこそが、今の角田 選手の大きな武器の一つなのだ。 アルファタウリ・ホンダのマシンの調子 も良く、フリープラクティス2回目では7 番手という速さを見せた角田選手は、3月 27日の公式予選では、Q1でいきなり2番 手タイムを叩き出してみせた。Q2ではミデ ィアムタイヤでアタックに臨むが、思うよ うにタイムを上げられず13番手に終わり、 ここでノックアウトとなってしまった。 「少しガッカリしています。Q1でペース は発揮できましたし、Q2での戦略にも自 信があったのですが、最後のアタックで十 分なグリップを得られませんでした。上位 のグリッドでスタートできないのは残念で すが、レースペースがあるのは分かってい るので、レース中に順位を上げられるポテ ンシャルもあると思います」(角田選手の予 選後コメント) Q1で手応えを掴んでいただけに、この 予選結果には悔しさが残った角田選手。し かし、それをバネにして、決勝では素晴ら しい走りを披露した。 F1ルーキーとは思えない 堂々とした追い上げ 3月28日の決勝レース。スタート直後 の1周目、ターン3ではマゼピン選手がク ラッシュしたほか、4周目のターン4では 7年ぶりの日本人F1パイロット・角田裕毅選手が初戦で9位に! 2021年F1グランプリがバーレーンで開幕! フェルスタッペン選手は惜しくも2位に終わる フォト/本田技研工業、RedBull.Content.Pool、Scuderia.AlphaTauri レポート/吉田知弘、JAFスポーツ編集部 今 スタートでの失速もあり、一 時は16番手まで後退した角 田裕毅選手。そこから怒涛 のオーバーテイクショーを 披露して、最終的には9位に まで追い上げてみせた。 Headline モータースポーツ話題のニュース速攻Check! 4

シューマッハ選手がスピンを喫するなど、 ルーキーたちにとっては手厳しいデビュー 戦となった。そんな中、角田選手はスター トダッシュが思うようにいかず、一時は 16番手までポジションを落としたが、目 覚ましい追い上げを見せる。 9周目には、4度の年間王者に輝いた実 績を誇るセバスチャン・ベッテル選手(ア ストンマーティン)をターン1で追い抜く と、26周目には、今季F1に復帰した 2005~2006年のF1王者であるフェル ナンド・アロンソ選手(アルピーヌ)のオー バーテイクに成功した。 さらに中盤の38周目には、2007年チャ

きて嬉しいです。今日のレースでマシンパ フォーマンスの素晴らしさを示せたと思い ます。1周目で慎重になりすぎて、ポジシ ョンをいくつか下げてしまったのは残念で したが、必死で挽回を目指して、レース中 は力強いオーバーテイクをすることができ ました。僕にとっては、フェルナンド(ア ロンソ選手)をパスしたのがアツく感じた 瞬間で、幼い頃から見てきたスーパースタ ーだったので、とてもエキサイトしまし た」(角田選手の決勝後コメント) デビュー戦におけるいきなりの活躍に、 多くのF1関係者から角田選手を高く評価 する声が聞こえている。このままの流れで いくと、史上4人目となる日本人ドライバ ーの表彰台獲得のみならず、その先にある 快挙も見られるかも知れない……。観てい る側は、今後の活躍が増々楽しみになる、 角田選手のデビュー戦だった。

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ァロメオ)をターン4に入るところでアウ
ンピオンのキミ・ライコネン選手(アルフ
トから抜き去った。このように、F1チャン ピオン経験者の3人を始め、このレースだ けで合計8度ものオーバーテイクを決めた 角田選手は、最終的には見事9位入賞を果 たし、デビュー戦でポイントを手にした。 「初めてのグランプリでポイントを獲得で
開幕戦の優勝争いは、初日から速さを見 せたマックス・フェルスタッペン選手(レ ッドブル・ホンダ)がポールポジションを 奪い、開幕戦からホンダPU車両の優勝が 期待された。しかし、レースが始まると7 度王者に輝いているルイス・ハミルトン選 手(メルセデス)が巧みなレース運びを披 露。18周目にフェルスタッペン選手を逆転 してトップに立った。 その後もアグレッシブにトップ奪還を目 指したフェルスタッペン選手は、残り4周 のところでハミルトン選手の攻略に成功し たが、コース外を走りながらの追い抜きだ ったため、再び2番手に下がることになっ てしまう。最後はコンマ7秒後方にまで迫 ったが、逆転には至らず、悔しい2位フィ ニッシュとなった。それでも、最強を誇っ ていたメルセデス勢と互角に渡り合い、今 後の走りに期待が持てる開幕戦となった。 ポールスタートのマックス・フェルスタッペン選手は、ルイス・ハミルトン選手と熾烈な首 位争いを展開したが僅差で届かず2位。しかし、Hondaに200回目の表彰台をもたらした。 チームメイトのピエール・ガスリー選手は5番グリッド からスタート。序盤のSC明けに他車と接触してフロン トウイングを失い、レース後半でリタイアした。 堂々としたレースぶりで、史上初の日本人F1デビュー戦でのポイント獲得! Q2敗退で13番手スタートとなった角田裕毅選手は、9位フィニッシュでアルファタウリ・ホンダにポイント を持ち帰った。日本人ドライバーによるF1デビュー戦でのポイント獲得は、史上初の快挙となった。 5

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付きを即行動に繋げられるよう、JAFとし て進めて参ります。皆様とはできるだけ情 全日本選手権が3月に開幕! 国内モータースポーツが続々始動! 3月25日には第1回モータースポーツ審議会が開催。“仕切り直し”の2021年が始まった フォト/廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 新

型コロナウイルス感染症は、昨 年から国内モータースポーツに 大きな影響を与え、日本政府に よる緊急事態宣言の発出や、JAFによる感 染拡大防止対策のお願いにより、2020年 の春から夏に活動停止状態に陥った。 2021年の全日本選手権は、コロナ禍以 前に予定していた2020年カレンダーを踏 襲する形で開催日程が組まれることにな り、3月13~14日に京都コスモスパーク で開幕した全日本ダートトライアル選手権 を皮切りに、3月19~21日には全日本ラ リー選手権が愛知県新城市で、3月20~ 21日には全日本カート選手権FS-125部 門・FP-3部門西地域が琵琶湖スポーツラ ンドで、そして3月28日には、昨年は開 催自体を見送った、ツインリンクもてぎ南 コースにおける全日本ジムカーナ選手権が 開幕することになった。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症は、 より感染力の強い変異株が発見されるな ど、依然として感染拡大傾向にあるため、 開幕戦を受け持ったオーガナイザーは、感 染拡大防止対策を徹底して参加者を受け入 れ、全日本ラリーと全日本ダートトライア ルについては、無観客での開催となった。

一方で、3月25日には、2021年最初の 第1回モータースポーツ審議会が開催さ れ、国内競技の統轄業務面においても、 2021シーズンが始まった。この第1回審 議会は、JAF本部へのリアル参集とリモー ト形式のハイブリッドで開催され、会場に は各委員の間にパーテーションを設置し て、感染拡大防止策を徹底して行われた。

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リモート参加したJAF藤井一裕会長か らは、JAFモータースポーツ活動への協力 に対する謝辞とともに「モータースポーツ 業界を取り巻く環境が厳しい中、多くの気 報共有しながら、JAFの役割とは何か、モ ータースポーツ業界全体にとって良い動き は何かを真剣に考え、行動する1年にして いきたいと思います」という挨拶があった。 そして、片桐隆夫座長により審議会が始 まり、まずは各部会長から2021シーズン の各専門部会の施策などが発表された。 2021年の専門部会の各施策 課題は“持続性”と“電動車”対応 登録部会からは、ライセンス所持の増進 策やライセンス所持者の保護策、クラブ・ 団体の登録増進策やライセンス講習会の開 催方法の検討などが施策として挙げられた。 安全部会では、コース査察や新たなコー ス特認のほか、ランオフエリアの扱いなど に関する二輪業界の動向把握などを行いつ

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つ、今後の新たな取り組みとして、 モータースポーツの安全に関する基 準や規則の俯瞰的な研究を行うこと が明らかにされた。 メディカル部会では、昨年は見送 られた世界選手権の国内開催を前提 に、FIAが示す感染拡大防止策への 対応検討や、障害のある参加者のた めのライセンス発給と運用に関する 施策の検討を示した。また、技術部 会は、持続性のある競技規則の検討 や、電動車、将来のカーボンニュー トラルへの技術対応、FIA安全規定 の遅滞ない国内への反映といった課 題の検討を明らかにした。 マニュファクチャラーズ部会で は、量産車に環境・安全技術が導入 される状況において、振興に対して メーカーとして何ができるかを、競

ラリー部会では、全日本シリーズの振興 を進め、競技会の運営方法や規則の適正化 を図ることと、第2戦で発生した事故に関 する事実関係を調査し、改めて安全や環境 に対する議論を進めることを報告した。

スピード競技部会は、今年からターマッ クとダートの二つの部会に分割されたが、 まずスピード競技ターマック部会では、オ ートテストの開催促進とガイドラインの見 直しを挙げ、あらゆるタイプの環境対応型 車両の参加促進策と、対応する諸規則の整 備や競技運営方法を、他部会との意見交換 を行いつつ検討する方針を明らかにした。

そして、スピード競技ダート部会では、 オートクロスやツイントライアル、ラリー クロスなどの参加促進を図りつつも、地方 では未だダートトライアルが主軸であるた め、従来の施策を継承しながら、新種競技 の開発なども検討する方向性を示した。 電気・ソーラーカー部会では、昨年から 継続している環境対応型車両のモータース ポーツ参加促進と将来像の検討、そして、 今年で最後となるソーラーカーレース鈴鹿 に代わるEVモータースポーツカテゴリー の検討と推進を施策に挙げた。また、FIA エレクトリック&ニューエナジー委員会 とも連携して、電動車モータースポーツの

今後5年のロードマップも取りまとめる。 カート部会では、環境ニーズの変化に対 応した競技形態の構築と、新規ライセンス を含めた取得促進、参加したいと思う技術 および競技規則の最適化、そして関連製造 者や組織とのタイアップによるカート競技 自体のバリューアップなどを施策とした。

新設されたデジタルモータースポーツ部 会では、デジタルを基盤とする持続的なモ ータースポーツ振興の実現を目的とし、短 期的には、マーケット自体が抱える課題に どう向き合うかを検討・解決し、中長期的 には、振興に繋がる統一規則の整備やピラ ミッド構築の着手を施策として掲げた。 登録部会のウィメン・イン・モータース ポーツ作業部会では、様々な業種や役務に 女性が幅広く関わり、活躍できるよう調 査・研究、議論、アクションを起こすこと を活動の目的とし、大きな活動としては、 参加者やファンを増やすための入口の整備 を実施することを行動目標としていた。 その他、第1回審議会では、リアルとデ ジタルを棲み分けた、新たなモータースポ

技系部会と意見交換・情報共有して 今後の姿を模索する方針を示した。 レース部会では、スーパーフォー ミュラに設置されていたレースディ レクターの役務が今季から「JAF認 定」化されることなどを報告。加え て、欧州で導入されるタイムペナル ティの導入などについて報告した。
ーツ振興委員会の体制の解説や、2022年 の国際格式競技のカレンダー申請や諸規則 の制定、一部改正などに関する審議が行わ れ、原案通り承認されることとなった。 「モータースポーツ審議会」は、自動車競技に関する規則、規定お よび基準の制定と改定、そして国際および国内競技のスポーツ カレンダー登録などについて、JAF会長の諮問機関として、その 諮問に応じて意見具申することを目的とした機関。委員はモー タースポーツ専門部会長と学識経験者らによる定員27名以内 で構成されている。3月25日の第1回審議会は出席者が過半数 を超え成立。各専門部会による施策解説が行われ、2022年の 国際格式競技のカレンダー申請などが承認された。 JAFモータースポーツ審議会、今年最初の第1回会議がリモート開催 2021年第1回モータースポーツ審議会  開催日:2021年3月25日 開催地:JAF本部およびWEB会議 第1回審議会には、JAF藤井一裕会長がリモー トで出席。冒頭で謝辞と挨拶があった。他に坂 口正芳副会長と島雅之専務理事も出席した。 会場では出席した委員の間に大きなパーテー ションが設置され、手指消毒や換気など感染拡 大防止策が徹底された。 7
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2021 春 CONTENTS HEADLINE 4 7年ぶりの日本人F1パイロット・角田裕毅選手が初戦で9位に! 6 全日本選手権が3月に開幕! 国内モータースポーツが続々始動! SPECIAL ISSUE 10 巻頭特集 諦める必要は、ない 不屈の覚悟で掴んだ“2度目の二冠”。山本尚貴選手が振り返る激動の2020年 16 特集 初栄冠の誉れ 全日本選手権“初”チャンピオンインタビュー 2020年JAF全日本ラリー選手権編 25 デジタルモータースポーツ JAF専門部会がついに始動 28 チャンピオンへの軌跡 JAF地方カート選手権&ジュニアカート選手権 2020年の激戦を制した王者たちをクローズアップ!! 40 2020年JAF地方選手権レース総括 FIA-F4/F4/スーパーFJ/フォーミュラリージョナル/ツーリングカー 2020年地方レースを制した王者たちの軌跡 46 JAF地方選手権2020チャンピオン RALLY/GYMKHANA/DIRTTRIAL/CIRCUITTRIAL ラリー&スピード競技の地方選手権タイトルホルダーを一挙紹介! 51 そこに“レーシング”はあるか!? 幾つになっても「競争」ができる! “オヤジ”がレースに挑み続ける理由 56 あいつはスゴイ! 全日本ジムカーナドライバーに聞く、あのライバルの見習うべき凄いトコ TOPICS 34 2021年JAFモータースポーツ委員会名簿 38 2021年全日本選手権審査委員名簿 60 地方発信! モータースポーツ振興への飽くなき取り組み JMRC中部レース部会発!日常でも役立つレスキューのノウハウを学ぶ 63 オートテスト倶楽部 春到来を待ちきれず、全国各地で新たな年のオートテストが始まった INFORMATION 33 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・お知らせ(WEB)一覧 (2020年12月25日~2021年3月25日) JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] 監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/(株)JAFメディアワークス  〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-9野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711 発行人/西岡敏明 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 大槻聡 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/(株)JAFメディアワークス JAFスポーツ編集部 ☎03-5470-1712 COVER/2020年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦 PHOTO/石原康 本誌の記事内容は2021年4月1日までの情報を元にしております。掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。今号から定価を総額表示としました。
諦 は 、 ない 新型コロナウイルス感染症が感染拡大する中で 大きな変化を求められた2020年の国内レース界。 世界的にも、先行き不安な混迷した状況の中で 山本尚貴選手は、信念を貫いて前進し続けた。 ここでは、彼が打ち立てた金字塔の内幕に迫る。 不屈の覚悟で掴んだ“2度目の二冠” 山本尚貴選手が振り返る激動の2020年 フォト/石原康、吉見幸夫、GTアソシエイション、富士スピードウェイ レポート/吉田知弘、JAFスポーツ編集部 10
内モータースポーツの2020年は、新型コ ロナウイルス感染症の感染拡大により、 様々なカテゴリーにおいてイベント開催が 変則的なものになるなど、大きな影響を受けた。コロ ナ禍による様々な制限も生まれ、あまり明るい話題が 多くなかった国内モータースポーツ界だが、シーズン 終盤には前人未到の快挙が成し遂げられた。 その快挙とは、JAF全日本スーパーフォーミュラ選 手権とFIAインターナショナルシリーズ スーパーGT (GT500クラス)という国内トップレースカテゴリー で山本尚貴選手がドライバーチャンピオンを獲得し、 史上初となる「2度目の二冠」を達成したことだ。 しかし、そこに至る道のりは決して簡単なものでは なく、山本選手もコロナ禍で様々な不安を抱えていた という。それでも信念を失うことなく“王座奪還”に 突き進んだ……そんな彼の2020年を振り返る。 国内トップカテゴリーでは11年目のシーズンを迎 えようとしていた山本選手。スーパーGTでは牧野任 祐選手とコンビを組んで100号車RAYBRIG NSXGTで参戦。スーパーフォーミュラには前年に引き続 国 SUPER FORMULA/SUPER GT GT500歴代ドライバーチャンピオン SUPER FORMULAドライバー SUPER GT GT500クラスドライバー 2020年 山本尚貴選手 山本尚貴/牧野任祐選手 2019年 ニック・キャシディ選手 大嶋和也/山下健太選手 2018年 山本尚貴選手 山本尚貴/ジェンソン・バトン選手 2017年 石浦宏明選手 平川亮/ニック・キャシディ選手 2016年 国本雄資選手 ヘイキ・コバライネン/平手晃平選手 2015年 石浦宏明選手 松田次生/ロニー・クインタレッリ選手 2014年 中嶋一貴選手 松田次生/ロニー・クインタレッリ選手 2013年 山本尚貴選手 立川祐路/平手晃平選手 2012年 中嶋一貴選手※ 柳田真孝/ロニー・クインタレッリ選手 2011年 アンドレ・ロッテラー選手※ 柳田真孝/ロニー・クインタレッリ選手 2010年 ジョアオ・パオロ・デ・ オリベイラ選手※ 小暮卓史/ロイック・デュバル選手 ※はJAF全日本選手権フォーミュラ・ニッポン 2020 年 JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権ドライバーチャンピオン 2020 年スーパー GTシリーズGT500クラスドライバーチャンピオン 山本尚貴選手 きDOCOMO TEAM DANDEL ION RACINGから参戦した。 生きるためにどうすればいいか 山本選手は、2020年4月の開幕に向けてテストを 進めていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感 染拡大による緊急事態宣言が発出され、国内レースも 軒並み開催延期となってしまった。この時、今後のレ ース人生を不安視する思いで一杯だったという。 11
体調面の危惧というのもあったので……。レースのこ とよりも、生きるためにどうするかということを優先 に考えていたのが正直なところです。そのため、自分 の気持ちをレースに向けるのが困難な時期でした」。 他のドライバーは、レースが開催されない期間を利 用して、動画投稿サイトを活用したり、オンラインで の交流を図る企画を考えて、モータースポーツファン に少しでも楽しんでもらおうと活動していた。しか し、山本選手はそれを行う余裕はなかったという。 それも、見方を変えれば、レースというものに、そ れだけ純粋に向き合ってきたことの証でもあり、逆 に、大好きなレースができない経験をしたことで、改 めて、自身の中にあった“大切なもの”に気付かされ たそうだ。 「やっぱり僕はレースが好きなんだなと思います。そ れをこのコロナ禍で感じることができました。これだ け好きなことができて、好きなことに熱中できるんだ から、やっぱりやり遂げたいし、(今となっては)やり
元通りに戦えるかどうかの不安 2020年6月になると、モータースポーツ活動再開 やレース開催に向けた動きが本格化して、テストも再 開されていった。これには、山本選手もすぐに気持ち を切り替えることができたそうだが、同時に“ある不 安”も頭をよぎっていたという。 12月18~20日に富士スピー ドウェイで行われたスーパー フォーミュラ最終戦。山本選 手はタイトル争いのライバル である平川亮選手との直接的 なバトルを経て4位フィニッ シュ。優勝した坪井翔選手に は届かなかったものの、山本選 手が3度目の王者に輝いた。 2020年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 12
「当時は、正直、レースはもうできなくなるかも知れ ないなという覚悟が芽生え始めていて、全てにおいて ネガティブに考え込む時期ではありました。テレビや インターネットで新型コロナウイルスに関する情報が 出ていましたが、なかなかプラスな情報が流れること がない状況でした。レースをやる、やらないというこ とよりも、いつ自分が感染してしまうか不安でした し、いざ感染してしまうと生命にも関わる事態になる という危機感みたいなものも当然感じていました」。 「まずは自分たちの身を守ることと、そして、家族の
続けたいという気持ちになっています」。 「もしコロナ禍がなかったら、気付けなかったことは たくさんあるのかなと感じています。コロナ禍によっ て奪われたものがたくさんあるのも事実です。でも、 一度思考を変えれば、やっぱりレースができなくて、 空白となってしまった3~4か月というのは、改めて 自分が好きなことに熱中できているんだな、と思えた 時間になりましたし、自分にとって大切なものは何な のか?ということも考えることができました」。

「変則的なスケジュールに はなりましたが、レースが 再開されることがアナウン スされてからは『またレー スができるんだ』と、素直 に嬉しかったですね。もち ろん、心配事はたくさんあ りましたが、そこからはト レーニングも含めて集中で きました。(コロナ禍への

スーパーGTは7月中旬、スーパーフォーミュラは 8月下旬に開幕することになった。しかし、意気込み とは裏腹に、序盤戦では思うような結果が付いて来な い。スーパーGTでは、開幕戦の富士スピードウェイ ではGRスープラ勢の快進撃に押されて6位に終わ る。スーパーフォーミュラも開幕戦のツインリンクも てぎでは、予選Q2で思わぬ敗退があったほか、決勝 中も不運な接触があり、ポイント圏外でチェッカーを 受けた。少し歯車が噛み合っていないようにも見て取 れたが、当時を振り返った山本選手は、冷静に状況を 分析できていた。 「スーパーフォーミュラに関していうと、クルマの調 子は良かったんですが、開幕戦の予選Q2でトラフィ ックに引っかかってしまって、ノックアウトされてし まったことが結果に大きく影響しました。そこの読み は甘かったので、自分に落ち度があったなという感じ でした。その辺はちょっと足りていなかったです」。 「スーパーGTについては、スープラ勢がテストから 調子良かったですし、開幕戦で何が何でもトップを獲 るというトヨタ勢の意気込みに押し倒された感もあり ました。でも、負けたことによって、自分たちの立ち

対応のため)レースのフォーマットも一部変わったり していたので、作戦の練り直しも必要でした。でも、 しっかりと気持ちを切り替えて、レースのことに気持 ちを入れていくことができましたね」。 「ただ、ここ10年の間に、ここまでレーシングカー に乗らない時期を過ごしたのは初めてでした。そし て、あの時は外出も制限されていたので、十分なトレ ーニング量を積むこともできませんでした。いざ再開 されても、ちゃんと自分が元通りに、普通に走ること ができるかどうかという不安は大きかったです。で も、乗ってみたら、すぐに慣れることができました し、体力面でも、ピークより落ちていたことは否めま せんが、それぞれの開幕戦までにはその辺りも取り戻 すことができました」。
タイトル奪還への強いこだわり 山本選手には、両カテゴリーにおいて、繰り返しコ メントしていたことがあった。それは「最終戦でチャ ンピオン争いの渦中にいることが最も大事なこと」だ。 目先の結果に振り回されるのではなく、チャンピオ 11月27~29日に富士スピードウェイ で行われたスーパーGT最終戦では、最 終周の最終コーナー付近で先頭の37号 車が突如スローダウン。後続の100号車 が逆転勝利を飾った。その100号車もガ ス欠により自走不可能となり、牽引され てピットに戻る展開となった。 諦 は 、 ない 巻頭特集 13 2020年FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT
位置も理解できましたし、“このままではまずい”とい う原動力にもなったので、決して悪い負けではなかっ たのかなと思いました」。
本人としては5年ぶりにF1公式セッションでステア リングを握ったということで、日本のファンから大き な注目を集めた。 幼少の頃から夢見てきたF1への挑戦が実現し、そ こでしか得られない経験も積むことができた山本尚貴 選手。だが、それと同時に、彼にとっての2019年は “国内レースで勝つことの難しさ”を再認識したシー ズンでもあった。スーパーGTでは2度の表彰台を獲 得するも未勝利に終わり、ランキングは8位。スーパ ーフォーミュラも最終戦までチャンピオン を争ったが、連覇を果たすことができずに 悔し涙を流した。 「F1を経験してすごく身になったことも 当然ありましたし、F1に挑戦できたことは すごく良かったなと思います。ただ、同時に2019年 は国内のカテゴリーでチャンピオンを獲ることの難し さを痛感した1年でもありました。目標としていた連 覇を達成することができず、悔しい思いをしました が、2020年に向けてスーパーフォーミュラとスーパ ーGTで再びチャンピオンを獲るためには、しっかり とそこに集中して臨まないといけないなと、強く感じ ました」。 レース中盤には2番手まで浮上するが、その時点で37 号車との差は15秒以上も離れている状態だった。 誰もが“37号車が絶対に有利”と思っていたが、山 本選手はそこから1周1秒のペースで猛追を開始。残 り5周で3秒後方まで迫り、最終ラップまで、諦めず に37号車を追い詰め続けた。それでも、前を走る平 川選手はミスのない走りでトップを死守し、順位が変 わらないまま最終コーナーを立ち上がった。しかし、 37号車がまさかのガス欠……。フィニッシュライン まで500m足らずというところで、100号車が逆転し たのだ。 スーパーGTの歴史に残る奇跡の逆転劇となったの だが、それを実現した分岐点は、2戦前となる第6戦 鈴鹿にあった。100号車は、ライバルのマシンの接触 を受けてリアセクションが大破。マシンはガレージに 戻され、そのままリタイアかと思われた。しかし、残 り2戦のチャンピオン争いも考えて、急ピッチでマシ ンを修復し、再びコースインすることになった。 そこでは、なかなか試すこ とができなかったセッティン グやタイヤのチェックを行っ た。ここで得られたデータ が、1か月後の最終戦に大いに 役立ち、37号車を追い詰める 原動力となっていたのだ。 またスーパーGT第7戦も てぎでも、セーフティカー導入のタイミングが悪く、 トップから1分以上も引き離される展開となり、チー ムも意気消沈となりかけていた。しかし、そこで「諦 めずに最後までレースをしよう!」と声を挙げたのが 山本選手だった。 「(もてぎ大会では)セーフティカー(SC)出動で、優 勝の可能性は消えてしまった感じではありましたが、 もし最後にもう一度SCが入ったら、レースがリセッ 結果を得るために、いつも自身を厳しく 追い込む山本選手。コロナ禍の影響で、最 初のリズムは崩される格好となってしまっ たが、2020シーズンに対する決意と覚悟 は何一つ変わっていなかった。 その姿勢を貫いたことが、2020年のス ーパーGTにおいては、最後の最後で報わ れることとなった。 フィニッシュ直前に、奇跡の逆転 2020年のスーパーGT最終戦をランキ ング3番手で迎えた山本選手。予選から37 号車KeePer TOMʼS GR Supra(平川亮/ 山下健太組)が速さを見せ、決勝でもライ バルを圧倒する展開となった。一方の100 号車は予選7番手から牧野選手が前半で追 い上げを見せて山本選手へバトンタッチ。 2018年にスーパーフォーミュラ とスーパーGTでドライバーチャ ンピオンを獲得した山本尚貴選 手。JAFの申請に基づきFIAの承 認が得られたことで、山本選手へ のスーパーライセンス発給とな り、2019年F1日本グランプリ FP1での走行が叶った。 しさを した 一年」 14
ン獲得のために気持ちを切らすことなく、シーズンの 最後まで戦い抜けるかどうか。実は、これは2019年 の”敗北”で、彼が学んだことの一つだった。 2020年に各シリーズで取材をしていても、山本選 手は例年にも増してチャンピオン獲得を意識しながら レースに臨んでいた印象があった。そこには、2020 年のチャンピオン奪還への強いこだわりがあった。 2018年に初めての国内二冠を達成した山本選手は、 翌年となる2019年には、鈴鹿サーキットのF1日本 グランプリでスクーデリア・トロ・ロッソ(現アルフ ァタウリ)からフリー走行1回目に出走している。日

トされる状況でもありました。チームの雰囲気も、優 勝が遠のいてしまって、トーンダウンしているのが明 らかだったんですが、僕は最後まで諦めてはいません でした。『絶対に最後まで勝つチャンスはあるから、 絶対に諦めないでレースをやってくれ』とチームに伝 えました。逆転は叶わなかったですけど、みんなの気 持ちを途切らせずに3位表彰台を勝ち獲ることができ ました。チームのみんなに感謝したいです」。 この第7戦もてぎ大会で得た、3位表彰台の11ポイ ントがなければ、最終戦での逆転が実現しなかったこ とは言うまでもない。“どんなに難しい状況に置かれ ても、絶対に最後まで諦めない”こと。振り返ってみ ると、山本選手はこの姿勢を貫いて、過去にチャンピ オンを勝ち獲ってきたと言える。その経験が、2020 シーズンでも惜しみなく活かされたのだ。 諦めるのは、負けた後でもいい 「人生において、時と場合によっては、諦めが肝心な 時もあるんですけどね(笑)。でも、僕自身のことで言 ったら、やっぱり勝負事をしている以上、純粋に勝ち たいということと、誰にも負けたくないということ が、何よりも自分の原動力だと思います。諦めるの は、負けた後でもいい。でも、勝つか負けるかが分か るまでは、諦める必要はないと思っています。そもそ も、レースをやっていて“諦めないこと”が自分の中 では当たり前になっていますからね」。 「その根底にあるのは“勝ちたい”、“負けたくない”と

て簡単ではある。ただ、実際にその状況が発生して、 本当に諦めずに頑張り続けることが、いかに困難であ るかは、恐らく多くの人が共感できることだろう。 “諦めない”ということが、難しく大変なことであ っても、山本尚貴選手は挑み続け、成し遂げてきた。 それこそが、前人未到の偉業を成し遂げた最大の要因 なのかも知れない……。

すはシリーズ 〝連覇〞」

もちろん、山本選手の戦いはこれで終わりではな い。また新たな挑戦をするため、そして、さらなる高 みを目指すために、2021シーズンに向かっていく。 スーパーフォーミュラではTCS NAKAJIMA RAC INGに移籍して自身4度目の王座を狙う。スーパー GTでは、引き続きTEAM KUNIMITSUに在籍し、 今度は1号車STANLEY NSX-GTのドライバーとし てタイトル防衛を狙う。日本一になり、国内二冠も経 験したが、実は、まだ成し遂げていないことがある。 それは“連覇”だ。 「スーパーフォーミュラでは2度失敗しています。"3 度目の正直"じゃないですけど、連覇ができる数少な いチャンスの年なので、今年のスーパーフォーミュラ では、今までの失敗を繰り返さないようにしたいなと 思っています。スーパーGTに関しても、調子が良さ そうなので、気を抜くことなく調子を維持できるよう に、自分のモチベーションを高めていけるような行動 をしていきたいと思っています」。 あくまで筆者個人の意見ではあるが、2018年に初 めて国内二冠を達成した時と比べると、2020年の二 冠を獲得した山本選手は、“速さ”だけではなく“強さ” が加わったように感じる。総合的に見ても、国内トッ プドライバーの中では“現役最強”と言っても過言で はないだろう。そんな彼の走りをリアルタイムで観 て、追いかけられることが幸せであるとともに、今度 はどんなレースを我々に見せてくれるのか……。これ からも、山本尚貴選手の活躍から目が離せない。

いう気持ちだけですね。それが結果的に”諦めない” という気持ちに繋がっているんだと思います。ただ、 それは一人のレーシングドライバーとしての思考です けどね……。レースから離れても、僕は何かあったら “諦めないで頑張り続けよう”という気持ちは常々持 っています」。 “諦めない”と、文字にしたり言葉にすることは至っ
「目指
2020年のスーパーGT最終戦富士とスーパーフォーミュラ最終戦富士の表彰台。スー パーフォーミュラ王者が確定した山本選手は、2018年のスーパーフォーミュラ最終戦 鈴鹿大会と同様に、大きなトロフィーを頭上に掲げるパフォーマンスを披露した。 15
全日本選手権“初”チャンピオンインタビュー 初栄冠の誉れ 2020年JAF全日本ラリー選手権編 新型コロナウイルス感染症に伴う措置として 大会の中止や延期が相次いだ全日本ラリー選手権。 3月下旬から約4か月間は活動休止期間となり、 7月末には全4戦、全戦有効として再開された。 ここでは、1戦も落とせない難しいシーズンを戦い抜き、 全日本選手権の初栄冠に輝いた7名の選手による、 “初タイトル”の軌跡を振り返る。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によ り、わずか4戦という短期決戦で争われることになっ た2020年の全日本ラリー選手権。極めて特殊なシー ズンで素晴らしい走りを披露し、JN1クラスのドライ バーチャンピオンに輝いたのが、新井大輝選手だ。 新井大輝選手は、2005年および2007年のFIAプロ ダクションカー世界ラリー選手権(PWRC)チャンピ オン・新井敏弘選手を父に持つ二世ドライバーで、 2014年に全日本ラリー選手権にデビューしたほか、 2016~2018年はTOYOTA GAZOO Racingの若 手ドライバー育成プロジェクトにおいて、フィンラン ド選手権やWRC2に参戦するなど、欧州でのラリー 活動を行っていた。 2019年は独自の活動としてFIA欧州ラリー選手権 (ERC)に参戦したほか、全日本ラリー選手権にも復 帰。WRX STIを駆り6戦のスポット参戦ながらも、JN1 クラスで計3勝を挙げてランキング2位を獲得した。 「本当は、2019年にタイトルを獲りたかったんです よね。最終戦の福島が台風の影響で中止になったので 不完全燃焼ではありました。だからこそ2020年は、 タイトル獲得をより強く意識しました」と語る新井大 輝選手。2020シーズンの初戦はターマックの新城ラ リー。この大会を3位でフィニッシュした。 このリザルトについて新井大輝選手は、「欧州のラ リーと比べると、全日本ラリーは独特の難しさがある
プ力が高いので、すぐにキロ1秒とかキロ2秒とか離 されてしまうんですよ。2020年の新城ラリーは、VAB のWRX STIでは2戦目のターマックだったので、き ちんと完走してデータを取ることを意識していまし た。タイトル獲得のためにはポディウムフィニッシュ フォト/廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部 欧州ラリー選手権での“学び”が最終戦で活きた JN1ドライバーチャンピオン・新井大輝選手 16
んです。全日本で走るコースはコーナーの数が圧倒的 に多いので、セッティングが決まっていないとすぐに 離されてしまいます。特にターマックラリーでは、使 っているタイヤがFIAのラリータイヤに比べてグリッ

しておきたかったので、表彰台を獲れたことは、初戦 としては悪くなかったですね」と振り返る。 その後はコロナ禍によりシリーズが中断。長い休止 期間を経て、2戦目となるラリー丹後を迎えた。 新井大輝選手は、2戦目のターマックでも3位入賞 していたが、「インターバルの間にテストをしていた んですけど、やはり得られるデータが本番とは違って いたのか、SS1の1コーナーでハンドルを切った瞬間 に、持ち込んだセッティングが決まってないことが分 かりました。ノリさん(勝田範彦選手)が止まって3位 になれましたけど、競技中にセッティングをアジャス トできなかったので、耐える一戦でしたね」と語る。 しかし「グラベルはセットアップができていたし、 ドライビングで合わせられると思っていたので自信が ありました」と語るように、リスケジュールされてシー ズン唯一のグラベル戦となった3戦目のラリー北海道 では、シーズン初優勝を挙げてシリーズ首位に浮上。 そして、最終戦となったツール・ド・九州を迎えた。 最終戦・唐津で仕掛けた“心理戦”

はSS6でスピンを喫し、新井大輝選手が逆転した。

これがライバルの焦りに繋がったのか、奴田原選手 はSS6でスピンを喫し、新井大輝選手が逆転した。 「リスクを負っていたのでギリギリの勝負でした。作 戦通り、ヌタさんがスピンしてくれたけど、自分が先 にスピンしてもおかしくない状況でした。でも、ギャ ップが少ないとヌタさんも追って来るので、その後も 逆転の可能性を残さないよう全力で走りました」と語 る新井大輝選手は、続くSS7でもベストタイムをマ ークして後続との差を拡大。こうしてラリー北海道に 続いて最終戦唐津を制した新井大輝選手が、27歳にし て最高峰クラスでチャンピオンに輝いたのである。 全日本ラリーの最高峰クラスにおいて、平成生まれ としては初めてのチャンピオンとなった新井大輝選手。 「2019年にタイトルを獲得できなかったし、海外ラリ ーに挑戦するためにも、全日本のタイトルは必須だっ たので、ホッとしました」と率直な気持ちを語った。 「2020年は4戦しかなかったけど、だからこそポイ ント差が少なかったし、そもそもラリー自体が行われ るかどうかが不透明だったので、モチベーションを保 つことが難しいシーズンでした。それでも、この4戦 は自分でできることは精一杯やれたと思います。新城 ラリーとラリー丹後では結局、詰め切れなかったけ ど、何が悪いのかを洗い出すことができましたし、そ のおかげで残り2戦をうまく戦うことができたんです。 特に最終戦の唐津の勝利は、達成感がありましたね」。 「追い込まれてからでも集中できた」

完全燃焼で栄冠を掴んだ新井大輝選手。その要因に ついて、2019年のERCで得た経験を挙げている。

新井大輝選手は、ERCにはタイヤ開発の目的もあっ て参加していたが、「こういう役割にはデータ収集が

「最終戦がターマックラリーというのは、正直、マズ イなぁという気持ちでした。ポイント差はあまりない し、勝たないとチャンピオンを獲れないと思っていた
る新井大輝選手。最終戦の唐津では、首位の奴田原文 雄選手から約4.2秒差の2番手でレグ1を終えていた。 「試していないセッティングだったんですが、レグ1 では思ったより離されなかったので、これで戦えると
したね」と振り返る。そして「少しでも差を詰められる ように、前の晩と翌日の朝も小坂(典嵩)選手と何度も ペースノートの読み合わせをしました」と語る。 このように、万全の準備で最終戦唐津のレグ2に臨 んだ新井大輝選手は、SS4とSS5でベストタイムをマ ーク。奴田原選手とのギャップを2秒に短縮した。
JN1 Driver
ので、逆にターゲットはシンプルでしたけどね」と語
思いました。勝負はレグ2のファーストループで、5 秒以上離されるとヌタさん(奴田原選手)に余裕が生ま れるし、ここでギャップを詰めることができれば、ヌ タさんにプレッシャーをかけられる。最後は心理戦で
2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 1 ドライバーチャンピオン 新井大輝 全日本ラリーの双璧と言える新井敏弘選手と奴田原文雄選手 に、新世代の急先鋒として独自のアプローチで勝負した新井大 輝選手。それが奏功して、JN1ドライバータイトルを獲得した。 新井大輝選手は、2014 年第7戦のラリー北海道 で全日本ラリー選手権 にデビューした。当時は 田中直哉選手とコンビ を組んだGRB.WRX.STI によるスポット参戦で、 2016年には小坂典嵩選 手とシトロエンDS3.R3 でJN5クラスに参戦。第 8戦岐阜では全日本初優 勝を挙げている。 17
戦通り、ヌタさんがスピンしてくれたけど、自分が先 る新井大輝選手は、続くSS7でもベストタイムをマ 続いて最終戦唐津を制した新井大輝選手が、27歳にし 全日本ラリーの最高峰クラスにおいて、平成生まれ

自分のパフォーマンスを高めるメンタルコントロール が身に付いたんです。2020年の全日本ラリーではその 経験が活きました。実は、3戦目のラリー北海道あたり からプレッシャーを感じるようになったんですが、追 い込まれてからでもラリーに集中することができたん です。ERCでメンタルコントロールを学んでからは、 追い込まれた方が心地良くて(笑)。自分のパフォーマ ンスも上がるようになってきました」と付け加えた。 全日本ラリーに本格参戦してから僅か2年目にして 国内最高峰クラスの頂点に立った新井大輝選手。 2021年については「本当は2020年もERCに参戦す ADVAN.KYB.AMS.WRX[VAB改] 2020年の3戦目にスケジュー ルされたラリー北海道は、全4 戦で唯一のグラベルラリーと なったため、大量得点を獲得で きる天王山にもなった。ここで 優勝して33点を獲得した新井 大輝/小坂典嵩組は、奴田原 文雄/佐藤忠宜組に僅か2.4 点差を付けてランキング首位 に立ち、最終戦となったツー ル・ド・九州.in.唐津に臨んだ。 ドライバーに認めてもらえるラリーをしたい JN1ナビゲーターチャンピオン・小坂典嵩選手 18

必須なので、自分の調子に関係なく、コンスタントに 走ってフィードバックしないといけないんです。それ で意識が変わったんですよね。また、ERCではクルマ やエンジニアと向き合う時間が増えました。その結果 が、良いにせよ悪いにせよ、すぐに反映される態勢だ ったので、ERC参戦は充実していました」と語る。 そして「セットアップが決まらなくても、その中で JN1クラスのドライバーチャンピオン新井大輝選手 をサイドシートからサポートし、最高峰クラスでナビ ゲーターチャンピオンに輝いたのが小坂典嵩選手だ。 「チャンピオン獲得を目指してラリーをやってきたの で、ようやくタイトルを獲れたという思いがあります。 ですが、コロナ禍の影響もあって、祝賀パーティみた いなものが行われることもなかったので、正直、タイ トル獲得の実感が少ないんですよね」と苦笑いする。 そんな小坂選手が、コ・ドライバーとして全日本ラ リーにデビューしたのは2012年。川名賢選手とJN2 クラスに参戦し、その後も2015年には木下聡選手と JN5クラス、2016年には関根正人選手とJN5クラス に参戦。同年のハイランドマスターズでは、全日本ラ リーでは初めて新井大輝選手と組んでJN5クラスに 参戦した。 そして、2017年には中平勝也選手とJN6クラス、 大桃大意選手とJN5クラスに参戦するなど、様々な ドライバーとコンビを組み、2019年には再び新井大 輝選手のコ・ドライバーとして最高峰のJN1クラス に参戦することになった。そして迎えた2020年は、
JN1クラス2年目となったが、その戦いは順調ではな かった。 る予定だったんですが、新型コロナウイルス感染症の 影響で実現できなかったんです。そのリベンジではな いですけど、2021年はもう一度、欧州でラリーにチ ャレンジしたいですね。もちろん、全日本ラリーに参 戦する機会があれば、全力で勝ちに行きますよ」。

方が嬉しかったんですよね」と小坂選手は語る。 しっかりと準備して自信を持って戦えた タイトルを獲得できた要因については「2020年は4 戦しかなく、インターバルも長かったけど、その時間 を利用して昔の大会の映像を観たりして準備ができた んです。実際、最終戦の唐津は、参戦経験の少ないラ リーなのにタイトル争いをしなければならなかったで すからね。土地勘のないラリーに対してしっかりと準 備をしたおかげで、自信を持って戦えました。短いシ ーズンでしたが、学びの多い一年でもありました。そ して、やはりチームの力も大きかったですね。アライ モータースポーツは、2019年から2台体制でタイト ル獲得を狙うようになりました。チームとしてはラリ ーに参戦するだけでも厳しい状況だったと思います が、ターマックのセッティングを少しでも煮詰められ るようにテストを続けました。もちろん、大輝選手が 最終戦の唐津でハイレベルな戦いをしてくれたことが 大きいんですが、それを支えたチーム力もタイトル獲 得に大きく貢献していたと思います」とのことだ。 また、小坂選手は2017年から2018年にかけて、 アライモータースポーツでチームマネージャーを務め ていた経験がある。彼には大きな影響を与えたよう で、「ラリーを俯瞰的に捉えることができるようにな れたので、本当に勉強になりました」と振り返る。 「ですが、ナビゲーターとしては、あらゆる面でパフ ォーマンスが足りません。ドライバーとナビゲーター のバランスで言えば、大輝選手の力が大きくて、”勝た せてもらった”という状態です。2021年も大輝選手と ラリーができるなら“小坂のおかげで勝てた”と思って もらえるようなラリーをしたい。チャンピオンを獲っ た翌年こそ、ドライバーに認めてもらえるようなラリ ーをしたいですね」と小坂選手は意気込む。次世代の ラリーを担う若手コンビの今後の活躍に注目したい。

JN1 Navigator
後も集中力を切らさないようにしていましたね」。 その結果、小坂選手は新井大輝選手とともに最終戦 唐津を制して、ナビゲーター部門で自身初となる栄冠 を勝ち獲ったのである。「ラリーが好きで、全日本ラ リーでチャンピオンになりたいという気持ちを持って いましたが、途中からは、大輝選手を勝たせたい、大 輝選手をチャンピオンにしたいという気持ちが強くな っていたんです。本当は2019年に二人でチャンピオ
「シーズン前から簡単ではないと予想していました が、新城ラリーではセッティングが合わなかったんで す。厳しいシーズンになることを再認識しましたね。 2戦目のラリー丹後では、大輝選手がブレーキングを 詰めるなど、今まで以上に攻めた走りをしていたんで すけど、それでもトップとはタイム差がありました。 落胆と同時に“これはマズイぞ”という気持ちがあり ましたね」と序盤戦の心境を振り返る小坂選手。 「自分のことよりも嬉しかった」 それだけに3戦目となったラリー北海道の勝利は大 きな意味を持っていたようで、「ここで負ければ、タ イトル争いが終わるのでプレッシャーもありました。 でも、大輝選手はグラベルラリーに自信を持っていた ので心配はありませんでした。実際、ラリー北海道で 勝てたので、ここでようやく、タイトル争いの勝負権 を得られたような気持ちでした」とのことだ。 そして迎えた最終戦の唐津では、「新城ラリーとラ リー丹後の結果を考えると、唐津も難しいと思ってい ました。ですが、レグ1の大輝選手は今まで以上にア クセルを踏み込んで、一段階上の領域でマシンをコン トロールしていました。前日の夜からペースノートの 読み合わせを行っていたので、自分としてもレグ2で は自信を持てました。できることはしっかり対策し て、奴田原選手を追い詰めようという戦略だったの で、レグ2では作戦通りになったと思います。ただ、 そこで気を抜くと逆転される可能性もあるので、その
ンを獲りたかったんですが、それだけに、2020年の 最終戦でタイトルを獲得した瞬間は、自分のことより も、大輝選手がドライバータイトルを獲得したことの
2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 1 ナビゲーターチャンピオン 小坂典嵩 小坂典嵩選手の全日本 ラリーデビューは2012 年。川名賢選手と組んだ JN3クラスでは第6戦京 都で全日本初勝利を挙 げている。新井大輝選手 とは、2016年の第8戦岐 阜でJN5クラスに初参 戦。左ハンドル車のシト ロエンDS3.R3でいきな り優勝してみせた。その 後2019年以降は新井大 輝選手と最高峰JN1クラ スに参戦する。 多くのドライバーとあらゆるサイズ、速度域の車両に乗車してきた小 坂選手。この2年では、世界の走りを体感する貴重な経験を重ねた。 19

優勝者が変わる展開が繰り広げられた。そんな混戦模 様を抜け出し、ドライバー部門で自身初の全日本チャ ンピオンに輝いたのが中平勝也選手だった。 中平選手は2017年からVABのWRX STIでJN1 クラスに参戦していたが、2020年は86 CS-R3に車 両を変更し、JN2クラスに挑むことになった。その理 由については「JN1クラスはレベルが高くて、得意な コースであれば上位陣に迫ることもできましたが、苦 手なコースになると大きく離されていたんです。その ため、スキルの差を埋めるために後輪駆動での参戦を 検討していました。当初は86やBRZでJN3クラス へ参戦することも考えましたが、クルマをイチから作

時に楽しみでもありました。走り切れればタイトルを 獲れる状況でしたが、勝ってチャンピオンを決めたか ったんですよね」とは中平選手。その言葉を実践する かのように最終戦の唐津ではシーズン2勝目を挙げ、 自身初の全日本チャンピオンに輝いた。 「変則的なシーズンでしたが、タイトルを獲得できた のでホッとしました。チームの力に支えられました ね。ですが、自分としてはスキルアップのために後輪 駆動に乗り換えたつもりが、まだまだスキルアップで きていないし、セッティングもできてません。なの で、どうすれば速いマシンにできるのかを考えながら 走ることが今後の課題ですね。2021年はもう一度、 86 CS-R3でJN2クラスを戦いたいと思っています。 できればフルシーズンで多くのラリーを戦って、クラ ス連覇を目指したいですね」と語る中平選手。 JN2クラスを席巻する新たなキーパーソンは、悩 みながらも前向きだ。

JN2 Driver から「クルマに慣れるためにテストをしました。イン ターバルがプラスに働きました」とのことだが、再開 後の2戦目のラリー丹後では4位に惜敗してしまう。 この理由について中平選手は「熱対策がうまくいか なくて、オーバーヒート症状が出るたびにアクセルを 緩める必要があったんですよ。2020年は4戦しかな くて全戦有効ですから。勝てていない状況は不安でし たね」と語る。しかし、3戦目となるラリー北海道では シーズン初勝利を挙げ、中平選手にとってはこれが全 日本ラリー初優勝でもあった。 「ラリー北海道はポイント係数が高いので、ここで勝 てばチャンスはあると思っていました。テストでマシ ンも煮詰められたし、ライバルが脱落したこともあっ て勝てました。これでようやくタイトルが近付いてき たと思えるようになりましたね」と語る中平選手。初 優勝と同時にランキング首位に浮上し、最終戦唐津に ポイントリーダーとして臨んだ。 どうすれば速いクルマにできるか
るのは時間がかかるし、R車両なら国際ラリーにも出 場しやすいので、86
にしたんです」と語る。 思った以上に”ソリッド”なクルマだった 中平選手は1戦目の新城ラリーで3位に入賞したが、 このリザルトについては「JN1クラスからJN2クラス への移行はステップダウンしたような感じになるの で、最初からチャンピオンを意識していました。で も、左ハンドルに慣れていなかったですし、86 CS-R3 は思った以上にソリッドなクルマだったので、シーズ ン序盤ではドライビングに苦戦しました」と語る。 その後はコロナ禍の影響でシーズンが中断したこと 話 2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 2 全日本ラリー選手権 ナビゲーターチャンピオン 大矢啓太 DLシムスR-ART.86.R3[ZN6] 2017年から全日本ラ リー選手権への挑戦を 開始した中平勝也選 手。JN6クラスでGRB、 そしてVAB.WRX.STI を駆り、2019年には強 豪ひしめくJN1クラス で自己最上の4位を獲 得した。2020年はFIA. R車両の86.CS-R3に スイッチ。コ・ドライ バーの行徳聡選手と JN2に参戦した。 ヘイキ・コバライネン選手も乗車する86.CS-R3をチョイスした中平選 手。国内ではノウハウの少ない車両でもあり、今後の開発が課題という。 20
「タイトル争いをしながら最終戦を迎えたのは初めて だったので、プレッシャーはありましたが、それと同
題のFIA R車両を含めた大排気量の2WD マシンがしのぎを削る全日本ラリー選手権 のJN2クラス。2020シーズンはわずか4 戦という短いシリーズとなったが、序盤は一戦ごとに
CS-R3でJN2クラスに出ること

「地元のラリーでは完走したかったのでホッとしまし た」と語るように、初戦の新城ラリーを4位で終える。 2戦目のラリー丹後では「活動再開までの期間が長か ったですし、2018年、2019年ともに2戦目でリタイ アしていたので、正直不安がありました。なので、 2020年は無事に完走できたので良かったです」と語 るように、中村/大矢組は5位完走を果たしていた。

3戦目のラリー北海道では「ラリージャパンを含め て、中村選手が豊富な経験を持つイベントだったので 安心していました。ハイスピードで爽快感のあるステ ージが多かったので、自分としては楽しんでいまし た」と語るように、シーズン唯一のグラベルラリーは

2位に入賞。その結果、大矢選手はナビゲーター部門 でランキング首位に浮上して、最終戦唐津を迎えた。

「僕は完走さえすればタイトルを獲得できるんですが、 中村選手も勝てばドライバータイトルで逆転できる可 能性があったので、勝負してもらうのか、抑えてもら うのか、自分の中で葛藤がありました。でも、ラリー はドライバーが主役であり、コ・ドライバーは縁の下 の力持ちだと自分は考えているので、中村選手に頑張 ってもらいました」と語る。 今度こそ中村選手とチャンピオンを! ツール・ド・九州では、中村/大矢組はクラス2位 に惜敗したことから、ドライバーの中村選手はランキ

JN2 Navigator 日本ラリーには2018年から参戦している 大矢啓太選手。2020年はJN2クラスを戦 う中村英一選手のコ・ドライバーを務め、 自身初のナビゲーターチャンピオンを獲得した。 「全日本ラリーはまだ経験が浅いので、自分がタイト ルを獲得した瞬間は信じられませんでした。本当はド ライバーの中村選手とチャンピオンを獲りたかったの で、それができなかったことが心残りですね」と語る。 中部のベテランラリーストである中村選手は、2020 年のJN2クラスではランキング2位に惜敗。大矢選 手とコンビでの全日本タイトル獲得は叶わなかった。
TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジを経 て、全日本ラリーにステップアップした大矢選手は、 全日本参戦3年目となる2020シーズンも中村選手と コンビを組んでJN2クラスに参戦した。 コ・ドライバーは縁の下の力持ち
があったりしてでガチガチの緊張状態でしたが、年が 明けてチャンピオントロフィーを受け取ったら、よう やく実感が湧いてきました。コロナ禍で、多くのライ バルがスポット参戦になりましたが、自分たちはきっ ちり完走してポイントを重ねられたことが、タイトル 獲得の要因だと思っています」と分析する。 こうして参戦3年目にして全日本の栄冠を勝ち獲っ た大矢選手は、2021年も引き続き中村選手と全日本 ラリー選手権のJN2クラスに参戦する予定だ。 「全日本ラリーはレッキを含めると3日間あるので覚 えることが多いし、コ・ドライバーとしては足りない 部分も多いです。元々そそっかしいところがあるの で、もっと中村選手とコミュニケーションを取りなが ら勉強していきたいと思います。特にテクニカルな部 分を学んで、セッティングの部分にも絡んでいきたい ですね。そして、2021年こそは中村選手と一緒にチ ャンピオンを獲りたい。実は、全日本ラリーでは未勝 利なので、表彰台の一番上に立って、中村選手とシャ ンパンファイトをしてみたいんです」と大矢選手は思 いを新たにした。 全 2020 年 J A F J N 2 名古屋トヨペットNAVUL.Vitz[NCP131] 2018年から名古屋トヨ ペットNAVULの一員と して全日本ラリーに参 戦している大矢啓太選 手。ドライバーは経験 豊富な中村英一選手と いうことで多くを学び ながらの挑戦となって いる。 最終戦の唐津で自身初のナビゲーターチャンピオンが確定した大矢 選手。悲願の優勝、中村選手とのタイトル獲得に次の狙いを定める。 初栄冠の誉れ 特.集. 21
ング2位に留まり、コ・ドライバーの大矢選手がJN2 クラスのナビゲーターチャンピオンに輝いた。 「最終戦が終わった瞬間は、すぐにインタビュー取材

JN3 Navigator

カメラをチェックしたほか、曽根/竹原組はテスト を兼ねてJAF九州ラリー選手権にも参戦していた。 最後まで諦めなかった最終戦の唐津 その甲斐あってか、最終戦唐津では曽根/竹原組 がSS1でベストタイムをマーク。しかし、「翌日に タイヤをチェックしたらエアが抜けていたのでスロ ーパンクチャーがあったのかも知れません」と、ナ イトステージのSS2で失速。クラス4番手に後退 してしまう。 「でも、曽根選手も私も諦めませんでした。タイヤが 予想より摩耗するなど小さなハプニングはありました が、1秒でも詰めて行こうとしていました」と曽根/竹 原組は猛追。その結果、何と最終ステージで逆転を果 たして優勝。曽根選手は逆転でドライバーチャンピオ ンを獲得し、竹原選手は全日本初優勝と同時に、全日 本タイトルを初めて獲得することができた。 「チャンピオンの実感はなかったんですけど、とにか く優勝が嬉しかったです。開幕戦の新城ラリーが8位 に終わったにも関わらず、その後も二人で勝ちを意識 しましたし、そのためにできることは全てやろうとし ていました。今回の勝因は、曽根選手と目指すところ が同じだったことが大きいと思います」と分析した。 竹原選手は2021年も曽根選手とJN3クラスに参戦 する予定だ。「コ・ドライバーとしてはテクニカルな知 識を増やしていきたいですね。クルマやドライビング に対する感覚を鋭くして、タイムが出なかった時の要

因を客観的な意見として指摘できるようにしたいです。 そして、勝つ経験を増やしたい。特に、2020年には参 戦できなかった大会で勝ちたいですね」と語る竹原選 手。息の合ったコンビの進撃はまだまだ続きそうだ。 日本ラリー選手権には2012年にデビュー した竹原静香選手。2020年はベテラン曽 根崇仁選手とコンビを組み、JN3クラスで ナビゲーター部門の初チャンピオンに輝いた。 2020シーズンは、自身にとって全日本初優勝、初 の全日本タイトル獲得と充実した成績に見えるが、シ ーズンのスタートは、実に厳しいものだった。 「開幕前から曽根選手とチャンピオンを獲ろうと話を していましたし、個人的にはまだ全日本で勝ったこと がなかったので、まずは1勝したいと思っていました。 でも、新城ラリーでは雨のレグ1が合っていなかった し、パンクしたりとうまく行きませんでした」と竹原選 手が語るように、初戦の新城では8位に低迷する。 最も勝ちたい大会だったのに コロナ禍による長い活動休止期間の間も、過去のペ ースノートや車載カメラの映像チェックなど、再開後 を見据えて事前の予習に明け暮れていた。2戦目とな ったラリー丹後では「久しぶりに走れるので嬉しかっ たんです。でも、特に大きなミスをしたわけではない んですが、クルマのセッティングが煮詰め切れずに出 遅れました。曽根選手はターマックが得意なので、も っと上に行けたと思うと悔しかったですね」と語るよ うに、シーズン再開の初戦は3位に留まった。 シーズン唯一のグラベル戦となったラリー北海道に ついては「曽根選手は2019年の大会で勝っていて、 自信のある一戦だったので、最も勝ちたかった大会で した。でも、新設されたハイスピードステージで出遅 れてしまい、満足のいくリザルトにはなりませんでし た」。ラリー北海道を2位で終えた曽根/竹原組は、 シリーズ首位の竹内源樹/木村悟士組から、5.1ポイ ント差のランキング2番手で最終戦の唐津を迎えた。 「ラリー北海道でランキング2位に浮上したとはい え、ポイント差がほとんどないので最終戦は勝つしか ない。そのために、できる準備は全て行いました」と 竹原選手が語るように、2019年のペースノートと車載 全 2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 3 ナビゲーターチャンピオン 竹原静香 P.MU☆DL☆SPM☆INGING.86[ZN6] 2012年の第7戦ラリー 北海道で全日本ラリー にデビューした竹原静 香選手。毎年多くのドラ イバーと組み鎌田卓麻 選手や福永修選手らと のコンビ経験もある。 2019年にはFIAアジア・ パシフィックラリー選手 権のアジアラリーカップ のコ・ドライバーチャン ピオンを獲得している。 2020年は曽根崇仁選手とJN3クラスに挑んだ竹原選手。 最終戦唐津では、自身としては悲願だった全日本初優勝も 獲得した。 22

日本ラリー選手権JN4クラスのナビゲー

ン獲得は難しい状況でした。それでも優 勝を狙いにいったんですけど、レグ1の

ナイトステージで離されてしまい、5番手と出遅れて しまいました」と振り返る。

最終戦唐津では、序盤から苦しい展開になってしま う。それでも「どこまで挽回できるのか分かりません でしたが、攻め続けた結果、表彰台を獲得することが できたんです」と語るように最終戦では2位に入賞。 こうして小藤選手がチャンピオンに輝いたのである。 “ ナビゲーターはできて当たり前” 全日本ラリー選手権には2005年にデビューして以 来、小藤選手は15年目にしてタイトルを獲得した。 「一度はチャンピオンになってみたいという気持ちが あったので嬉しいですね。ライバルの欠場もありまし たが、タイトルを獲得できたのは、今まで一緒に戦っ てきてくれた過去のドライバーたちのおかげです。彼 らが自分を鍛えてくれたおかげでタイトルを獲得でき たんだと思っています」と率直な感想を語っている。 そのうえで、2021年の課題について小藤選手は、

JN4 Navigator

トル獲得となったが、コンビを組んでいたドライバー の内藤学武選手はランキング2位に惜敗した。 「本当は内藤選手と一緒にタイトルを獲りたかったん ですけどね。それが心に引っかかっています。僕がタ イトルを獲得できたのは、単純にライバルが1戦欠場 してくれたおかげです」と複雑な心境を語る小藤選手。 2020年JN4クラスのドライバーチャンピオンは古 川寛選手で、古川選手のコ・ドライバーである廣田幸 子選手が1戦欠場したことで、ナビゲーター部門にお いては小藤選手にタイトルの栄冠が輝くことになった。 そんな小藤選手の2020年は、開幕戦となった新城 ラリーでの優勝からスタートした。 「シーズン前に内藤選手と『2020年は全日本チャン ピオンを獲りに行こう!』と話をしていたので、新城 ラリーで勝てたことは幸先良かったんです」と振り返 る小藤選手だが、その後はコロナ禍によりシリーズが 中断してしまう。それでも「走れない状況が続きまし たが、2019年のペースノートや車載映像をチェック するなど、例年より時間をかけてラリーに対する準備 ができました」と小藤選手は語る。 「プレッシャーに負けた……」

そして活動再開後、2戦目となったラリー丹後に挑 んだ小藤選手だったが、「レグ1でトップに立てたの で、連勝できるチャンスはあったんですけどね。僕の ミスもあって高橋悟志選手に逆転されてしまったんで す。実は、秒差の争いを想定していなくて、プレッシ ャーに負けた感じです」とクラス2位に惜敗する。 さらに3戦目のラリー北海道では「チームと話し合 いをして、今シーズンはタイトル獲得よりも、新型コ ロナウイルス感染症によるリスクを避けることを優先 することにしたんです」と語るように、内藤/小藤組

ター部門でチャンピオンを獲得した小藤桂 一選手。2020年は、自身初の全日本タイ
はシーズン唯一となったグラベル戦をスキップして、 最終戦となる唐津に照準を定めることにした。 「タイトル争いとしては、僕は僅差だったんですけ ど、内藤選手はフルポイントを獲らないとチャンピオ
参戦する予定です。やはりフルシーズンを戦ってタイ トルを獲りたいので、2021年は内藤選手と一緒に真 のチャンピンになりたいですね」と語る小藤選手。名 門の看板を背負って立つさらなる活躍に期待したい。 全 初栄冠の誉れ 特.集. BRIG.Moty's.YH.G4スイフト[ZC33S] 全日本ラリー選手権 には2005年の二輪駆 動部門Bクラスでデ ビューしている小藤 桂一選手。以降、小金 井のラリーショップ・ ガレージグループ4の 看板を背負った全日 本ラリー活動にはコ・ ドライバーとしてス ポット参戦。内藤学武 選手とは2014年から コンビを組んでいる。 2018年に内藤学武選手と全日本初勝利を挙げた小藤選手。2020年は 新城ラリーで優勝、ターマック2戦の2位入賞でタイトルを獲得した。 2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 4 ナビゲーターチャンピオン 小藤桂一 23
「内藤選手は『ミスがなくてもギャップは縮められなか った』と言ってくれていますが、2020年のラリー丹後 でのミスが反省点として残っています。ラリーでは、 “ナビゲーターはできて当たり前”という存在なので、 完璧にできるように精進したいですね」とのこと。 今後の目標については「内藤選手とコンビを組んで

手権JN6クラスに参戦した里中謙太選手だ。 その言葉どおり、里中選手は全日本デビューイヤー ながら開幕3連勝を果たし、最終戦を待たずしてJN6 クラスのナビゲーターチャンピオンが確定。まさに 2020年を代表するシンデレラボーイとなった。 明治/里中組の快進撃は、開幕戦の新城ラリーから 始まった。「実は、大会エントリーの締め切り前に明 治選手から誘われて参戦することになったんです。当

JN6 Navigator で、2戦目以降はその課題を克服できるように挑みま した」とは里中選手。その甲斐あって、2戦目となった ラリー丹後でもクラス優勝。開幕2連勝を達成した。 「当初はラリー北海道に参戦する予定はなかったんで すが、今後どれだけラリーが開催されるのか不透明だ ったので、急遽チームの判断でラリー北海道に挑むこ とになりました。新城ラリーとラリー丹後は、併催さ れた地方選手権に参戦した経験があったので土地勘は ありました。でも、北海道は初めてでしたし、グラベ ルのセッティングもぶっつけ本番の状態……。それに ナビゲーターとしては、フレキシサービスの対応など 注意すべき部分もありました。でも、大きなハプニン グもなく優勝できました」と里中選手は語る。 臨機応変に対応できるようになりたい 開幕3連勝を達成した明治/里中組は、最終戦が春 開催から移動してきたターマック戦の唐津となったこ とで、最終戦を待たずしてタイトルが確定した。 「正直なところ、新城ラリーもラリー丹後もラリー北 海道も、勝った実感がなかったですし、チャンピオン を獲った実感もありませんでした」と語る里中選手だ が、タイトルを獲得できた要因をこう分析した。 「まず、経験豊富な明治選手のドライビングがタイト ル獲得の要因です。次に、限られた時間の中でセット アップを煮詰めてくれたチームのおかげでもありま す。自分もシーズン中に多少なりとも成長できた実感 があります。全日本選手権ではライバルなどの情報収 集能力が求められますが、そこも少しずつできるよう になりましたし、ペースノートのリーディングも、明 治選手と細かく擦り合わせて修正できたと思います」。 こうしてルーキーながらもデビューイヤーで初タイ トルを獲得した里中選手は、2021年もターマックイ ベントを中心に、全日本ラリーに参戦する予定だ。 「とっさの出来事に対応できていない部分もあるの で、臨機応変に対応できるようにしたい。その上で、 もう一度チャンピオンを獲りたいですね」と語る里中 選手。期待の若手はさらなるナビゲーションのスキル アップに突き進んでいく。 さかタイトルを獲得できるとは思っていな くて、僕みたいな新参者がチャンピオンだ って本当に喜んでいいのか……という気持 ちがありました。かなり恐縮しちゃいましたね」と語 るのは、明治慎太郎選手と2020年の全日本ラリー選
初はフル参戦する予定もなかったし、JN6クラスはパ ワーがないので、もっと小柄なナビの方が有利なので は……という気持ちもありました。開幕戦では、レグ 1のセクション2で後続を引き離すことができたので、 そのまま勝つことができました」と初戦を振り返る。 全日本ラリー選手権の難しさ 「新城ラリーで優勝したので、そのままフル参戦しよ うということになりました」ということで、明治/里 中組の挑戦が改めてスタートしたのだが……。 「明治選手の横には乗っていたんですけど、ラリー競 技は初めてだったので、コンビネーション面で煮詰ま っていない部分がありました。新城ラリーが終わった 後は活動休止期間があったので、その間にペースノー トのリーディングのタイミングを確認し合いました。 また、リエゾンやライバルチームとのタイム差のチェ ックなど、現場での情報収集の大切さも分かったの 「ま 2020 年 J A F 全日本ラリー選手権 J N 6 G-EYES.YH.cvt.LSDヴィッツ[NCP131] これまでJAF中部・近畿 ラリー選手権や全日本 ラリー選手権のオープ ンクラスでの参戦経験 を持つ里中謙太選手。全 日本ラリーの選手権ク ラスには2020年が初挑 戦となり、明治慎太郎選 手がドライブするヴィッ ツに乗り前半の3戦で3 連勝。明治選手とJN6 チャンピオンに輝いた。 CVT車両のヴィッツを駆る明治/里中組。参戦予定のなかったラリー北 海道で優勝し、最終戦唐津を待たずに二人のタイトルが確定した。 24

第1回デジタルモータースポーツ部会がオ ンライン会議形式で開催された。 このJAFデジタルモータースポーツ部 会は、デジタルモータースポーツに関する デジタルライセンスやデバイスや付帯機 器・設備の調査・研究を行い、競技会やイ ベントを扱いながら諸規則の立案や統一解 釈を行うことを目的としており、FIAデジ タルモータースポーツ委員会とも協働し て、国際・国内の関わり方の方針を始めと した諸事項に対応することとなっている。

デジタルモータースポーツ JAF専門部会がついに始動 内競技規則の一部改正が2020 年9月1日に公示され、JAFは 「国内の自動車競技ならびにあ らゆる形式のあらゆる仮想、電子自動車競 技を管理統轄する唯一の権威」であること を宣言した。それを受けて、モータースポ ーツ専門部会規定を一部改正し、モーター スポーツ専門部会に「デジタルモータース ポーツ部会」が2021年1月1日から新設
JAFにおいては、2019年に「デジタルモ ータースポーツ作業部会」が設立されてお り、すでに、当該活動の下地作りがなされ てきていたという状況だ。 デジタルモータースポーツという呼称 ちなみにこの「デジタルモータースポー ツ」は、FIAが呼称するモータースポーツを テーマとしたeスポーツのことで、シムレ ーシングやバーチャルレーシング、eモー タースポーツなどとして世界に流通してい る電子競技の総称となっている。 FIAでは、Formula Eを始めとした既存 の選手権などに、エレクトリックを示す 「E」を使用していることから、電動車によ るリアルモータースポーツと区別するた め、呼称に「デジタル」を採用している。 FIAでは、2019年3月に「FIAデジタル モータースポーツワーキンググループ」が 立ち上げられており、そこで初めてデジタ ルモータースポーツ(DMS)という呼称が 登場した。そして2021年には、FIAにお ける作業部会が「FIAデジタルモータース ポーツ委員会」へと昇格している。 このたび新設されたJAFデジタルモー タースポーツ部会は、株式会社トムス代表 の谷本勲氏を部会長として、株式会社 ZERO-ONE代表の葦原一正氏とレーシン 国 持続的なデジタル基盤と新たな業界構造の構築に挑む FIAとJAFでは、2019年からデジタルモータースポーツ作業部会を立ち上げ、 いわゆる“eスポーツ”に関する調査研究が行われてきた。2020年にはFIAでは委員会が、 JAFでは新部会が設立され、谷本勲部会長が率いる「JAFデジタルモータースポーツ部会」が動き出した。 フォト/堤.晋一、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」は世界的に 浸透しているデジタルモータースポーツ大会の代表格。 25
されることになった。そして、2月18日、

や、部会が目指すべき中期的なビジ ョンに関する議案が話し合われた。 その過程では、デジタルモータース ポーツの現状認識や、JAFの関与の仕方、 ビジネスとしての経済システム構築の是非 など、時間いっぱいまで各種の議論が行わ れ、広範な領域に検討課題があることも共 有されていた。 それら数多くの課題を踏まえて、「リア ルなモータースポーツとデジタルモーター スポーツは、もともと親和性が高い」とい う認識の元で、当部会では「デジタルベー スの持続的なモータースポーツ振興」を活 動の柱に掲げることを検討することとなっ た。そして、デジタル基盤の構 築や、楽しむ層との接点作り、 自立運営できる業界構造作りな どを通じて、“若者のクルマ離れ” といった社会的テーマにも寄与

グドライバーの小林可夢偉氏、ニッサン・ モータースポーツ・インターナショナル株 式会社企画部の中嶋洋之氏、株式会社 Two as One代表の佐藤恵氏、トヨタ自動 車株式会社GRブランドマネジメント部の 柳澤俊介氏、そして、JAF加盟団体でもあ る、株式会社ポリフォニー・デジタル代表 の山内一典氏という顔ぶれとなった。 また、リアルモータースポーツでは車両 が必須であり、デジタルモータースポーツ でもタイヤなどの仮想車両を通した競技を 基調としており、これまで以上に国内自動 車製造者やアフターパーツ製造者との関係 性を強化する必要があるため、当部会に は、JAFマニュファクチャラーズ部会委員 もオブザーバー出席することになっている。 第1回部会では、まずはJAFモーター スポーツ部の村田浩一部長から、FIAにお けるデジタルモータースポーツ活動の現状 や将来に関する動向の報告が行われた。 新しい部会が取り組む課題 そして、谷本部会長の進行により、デジ タルモータースポーツの国内統轄の在り方
できる活動方針を示すことなど が確認されていた。 デジタルモータースポーツは、 海外だけではなく、すでに国内 でも多くのイベントが行われて おり、FIAグランツーリスモチャ ンピオンシップを始め、TOYO TA GAZOO Racingによるe-M otorsports推進活動や、JAF加盟団体とな ったNGM株式会社が開催するAUTOBA CS JeGT GRAND PRIXなど、継続的な 大会も始まっている。 また、グランツーリスモSPORTだけで はなく、レースシミュレーターとして使用 される機器を含めて、多数のプラットフォ ームを持つ業界でもある。そのため、ルー ルの整備や統一、機器の認定といった包括 的な掌握には、その意義やプレイヤーの反 応も含めて広範な議論が必要だ。 JAFデジタルモータースポーツ部会で は、FIAデジタルモータースポーツ委員会 との足並みを揃えつつも、日本独自の活動 2019年は「JAF認定スーパーフォーミュラ・ヴァーチャルシリーズ」 が開催され、勝ち上がった選手を対象に、最終戦JAF鈴鹿グランプリ の表彰台でシリーズ表彰式が行われた。 第1回デジタルモータースポーツ部会 (2021年2月18日) JAFデジタルモータースポーツ部会は、株式会社ト ムス代表の谷本勲氏を部会長として、葦原一正氏と 小林可夢偉氏、中嶋洋之氏、佐藤恵氏、柳澤俊介氏、 そしてデジタルモータースポーツ作業部会委員も務 めた山内一典氏がメンバー。第1回部会は、谷本部会 長以外はリモート形式での出席となり、JAFモー タースポーツ部の村田部長によるFIA活動の現状や 将来の動向の報告が行われた後に、各部会委員によ る活発な意見交換がなされていた。 26

方針を採っていくことも検討されている。

“リアル”とデジタルの垣根が低い

2018年から株式会社トムスの代表とし てモータースポーツ業界の発展にも尽力し ている谷本氏。国内におけるデジタルモー タースポーツの現状認識を伺った。 「数あるeスポーツのタイトルの中でも、 モータースポーツは、唯一無二に近いぐら い“リアル”とデジタルの垣根が低くて、リ アルに接続し得るスポーツ競技だと捉えて

ます。そういう面では、他のeスポーツよ り拡張性を持ちやすいとも考えています。 プレイヤーの方々が目指す道として、ま ずデジタルの世界でのチャンピオンという 視点があり、そこからリアルの世界でもチ ャンピオンを目指す、という連携があり得 る世界観かなと思っています。

ただ、自分としては“リアルありき”だ と、うまく行かないと感じる部分もありま して、やはり、まずはデジタルはデジタル の世界観で競技ピラミッドを作り、それを

実現させる過程で、どこかで“リアル”に 接続する……。モータースポーツは、デジ タルの魅力に加えて、“リアル”に接続でき るかも知れないという魅力があって、それ が付加価値になるのではないかと感じてい るんです。デジタルモータースポーツはこ の魅力がとても大きいと感じています。 観るものとしても、例えば、ゲーム実況 がありますよね。あれはジャンルができる ぐらい「実況の面白さを目当てに競技を観 る」といったことが起きるわけです。技術 が進めば、“リアル”で走らせながら、デジ タルで“リアル”な人たちと競技する、と いったことが十分できる世界ですよね。そ ういったことがデジタルの特性なので、観 せ方についても新しい世界観を作れるんじ ゃないかと思っています」。

デジタルモータースポーツは、先んじて FIAに承認されたドリフト競技に続く、日 本発祥の新たなモータースポーツカテゴリ ーとも言えるもの。今後の整備・成長が大 きく期待されている。

JAFデジタルモータースポーツ部会 谷本 勲 部会長 ■FIAグランツーリスモチャンピオンシップ https://www.gran-turismo.com/jp/gtsport/ ■AUTOBACS JeGT GRAND PRIX Series https://www.jegt.jp/ ■GT Young Challenge(朝日新聞特設サイト) https://www.asahi.com/ads/gtyc/ © 2017 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Polyphony Digital Inc. Gran Turismo logos are registered trademarks or trademarks of Sony Interactive Entertainment Inc. 国内のデジタルモータースポーツ・イベント 新たな試みが続々と! 「FIAグランツーリスモチャンピオンシップ」はデジタルモータース ポーツ・イベントの先駆者として浸透している。同大会には国や地域 で競う「ネイションズカップ」と自動車メーカーによる「マニュファ クチャラーシリーズ」があり、優れた選手にはワールドツアーやワー ルドファイナルへの参加資格が与えられ、ワールドファイナルの優勝 者はFIAの賞典授与式に出席できる。同シリーズの2018年王者で、日 本にも縁が深いイゴール・フラガ選手が、レッドブル・ジュニアチー ムに加入し、FIA-F3参戦を果たしたことは記憶に新しいだろう。 .また、国内でも大規模なデジタルモータースポーツ・イベントが展開 されており、TOYOTA.GAZOO.Racingによる「e-Motorsports」活動 を始め、JAF加盟団体であるNGM株式会社が運営する「AUTOBACS. JeGT.GRAND.PRIX」や、全日本学生自動車連盟所属の10大学で争わ れる「GT.Young.Challenge」なども熱い注目を浴びている。 「“リアル”モータースポーツの課題は デジタル側で解決できるかも知れない」 27

この結果、2020年は栃木県・ツインリン クもてぎ北ショートコースでの『もてぎシリ ーズ』、岐阜県・フェスティカサーキット瑞 浪での『瑞浪シリーズ』、三重県・鈴鹿サー キット国際南コースでの『鈴鹿選手権シリ ーズ』が、いずれもFS-125部門で開催さ れた。これらは、それぞれのサーキットで 以前から行われていたイアメ・パリラX30 エンジンのワンメイクレースを継続して実 施し、そこに地方選手権のタイトルを冠す る、という方式が採られている。 かくしてスタートした3つの“新・地方選 手権”は、いずれもローカルレースのアッ トホームさとJAF選手権の真剣味を併せ持 ち、他にない魅力を放つこととなった。ま た、ひとつのレースシリーズにローカルレ ースと地方選手権の2タイトルが懸けられ、 各々が異なるポイントテーブルでランキン グを集計するユニークなシステムによって、 鈴鹿選手権シリーズではローカルレースの タイトルと地方選手権のタイトルをふたり のドライバーで分け合う結末が見られた。 3つのシリーズが無事に幕を閉じた202

チャンピオンへの軌跡 フォト/遠藤樹弥、古閑章郎、小竹充、吉見幸夫、JAPANKART、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部 5地域のシリーズで構成された2020シーズンの地方カートは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で 中止や延期を経て3地域が選手権として成立。またジュニアカートは日程変更があったものの、 滞りなく東西地域各5戦+東西統一競技会が開催された。 コロナ禍で翻弄されながらも見事チャンピオンを獲った選手たちの、歓喜の声をまとめた。
2020シリーズの熱闘の感想と、2021シリ ーズに臨む意欲を聞いてみよう。 方カート選手権は、日本のフォ ーミュラレースのヒエラルキー に例えるならスーパーフォーミ ュラ・ライツやフォーミュラ・リージョナル
ンとなった時の年齢は、なんと49歳だ。 今井選手のカート活動のスタートは、40 代半ばになってからのことだった。 「カートを始めたのは5年前です。子供 (颯選手)にカートをやらせたんですが、自
ーカルレースと国内トップカテ ゴリーをつなぐ成長の場とし て、ジュニアからセニアへ上が るひとつのステップとして、各地域でナン バーワンを目指す者の戦いの舞台として ……。JAF公認カート競技の地方選手権は、 多様な存在価値を持っている。 その地方選手権は、2020年に大きな変革 を受けた。2019年まではFS-4/FS-125 /FC-2車両による3部門で開催されてい たが、「オーガナイザーからの申請に基づ きJAFが承認した技術規則に定める車両」 と変更(FP-Jr、FP-Jr Cadets、Miniのジ ュニア対象部門を除く)した。ドライバーの 出場資格も「ジュニアB以上のドライバーラ イセンス所持者(満12歳以上または当該年 12歳になる者)」と対象年齢を引き下げ、さ らに東地域と西地域だった地域区分を、北 海道地方/東北地方/関東地方/中部地方 /近畿地方/中国地方/四国地方/九州地 方の8地域に改めて、競技の構成も「1つま たは複数のカートコースにおいて1つのシ リーズを構成する」と変更した。
0年の地方選手権。そして、FP-Jr部門も FP-Jr Cadets部門とも混戦となった2020 年のジュニアカート選手権。それぞれで戴 冠を果たした5人の新チャンピオンたちに、
と同様の位置付けになる。そのミドルフォ ーミュラで、50歳間近のドライバーがオー バーオールのチャンピオンを獲得する。そ んな偉業を地方カートで成し遂げたのが、 今井雅慶選手。瑞浪シリーズでチャンピオ
分に何の経験もなければ何かを言うことも 教えることもできないので、自分もやって
2020年の激戦を制した王者たちをクローズアップ!! JAF地方カート選手権&ジュニアカート選手権 28

みようと思ったのがきっかけです。で、や ってみたらハマッちゃった。子供もまだカ ートをやっていて、ここ(瑞浪)のX30ク ラスのチャンピオンを獲って、2020年は全 日本のFS-125部門に出ていました。親子 2代で瑞浪のチャンピオンです」。 2020シリーズの戦績は、開幕戦4位、 第2戦優勝、第3戦3位。ポイントリーダ ーとして臨んだ第4戦(最終戦)は気負いも あって完走最下位に留まったが、無事に新 チャンピオン獲得を果たした。 「最年長の挑戦でチャンピオンになれて、 率直にうれしいです。ただ、49歳ですの で、もう少し若い方が頑張ってオジサンに 負けないようにしていただければな、と (笑)。動体視力も体力も落ちているので、 今年が最後かなと思ったりもするんです が、やっぱり2021年も2連覇を目指しま す。最終戦でちゃんと勝ってチャンピオン を獲ることを目標に、また一年頑張りたい

です。2021年は50歳になるので、そこで レース活動についてはちょっと考えようか な、と思ってはいるんですが」。

10代のドライバーたちを相手にチャン ピオンを獲れた秘訣は、何なのだろうか。 「トレーニングはある程度はしています。 腹筋だったりウェイトだったり、あと首に オモリをつけてのトレーニングとか。やる からには子供たちにも負けたくないので。 鈴鹿だとちょっと辛いんですが、走り慣れ た瑞浪なら、レースの周回数であれば体力 の方はまだ大丈夫です。チャンピオンにな れた要因は、練習量だと思います。たぶん 誰よりも練習して、変な話ですがお金もい っぱい使いました。あとは、メカニックの 指導ですね。もともとカート経験が少ない ので、メカニックにかなり怒られながら練 習してきました。そのおかげに尽きると思 います」。

で活躍している。 「あの方たちは、すご いのひと言です。自分 が60歳を過ぎてカー トをやっていられるか というと、それは無理 かもしれない。ただ、 体が動く限りは何らか のカテゴリーで走って いたいです。FS-125 部門は卒業しても、カ ートは続けていくと思 います。休みの日は何 もなくてもサーキット に来てしまいますし、 朝起きるのも得意じゃ なかったのに、カート の日はちゃんと目が覚 めるんですよ」。 2021年、地方チャ ンピオンの最高齢記録 更新に再び挑む今井選 手は、ライバルとなる であろう若手ドライバ ーたちに、こうエール

力の高いタイヤによ るレースで、49歳に してタイトルを獲る ことは、間違いなく 快挙と言えよう。一 方、100ccエンジン などのローカルレー スに目を転じれば、 60代のドライバー たちも現役バリバリ 金子准也 落合蓮音 野澤勇翔 津野熊凌大 今井雅慶 を送った。 「オジサンに負けないように頑張ってくだ さい。私も負けないように頑張ります。身 体能力がぜんぜん違いますから、オジサン がチャンピオンを持っていっちゃったらダ メだと思います(笑)」。 JAF地方カート選手権 瑞浪シリーズ2020年チャンピオン 今井雅慶 選手(Team REGOLITH) 49歳の偉業!親子2代で瑞浪シリーズを制覇!! 29
パワフルな125ccエンジンとグリップ

ってみると勝ってチャンピオンになりたか ったです。それでも周りの人たちからお祝 いの言葉をもらって、自信になりました」。 全日本FS-125部門の上位ランカーもこ ぞって参加する中、野澤選手は4位、優 勝、2位とすべてのレースを上位入賞でまと めた。しかし、この戦績は野澤選手にとっ て、満足と後悔が入り混じるものだった。 「もてぎは地元のサーキットで練習に行き やすいことは自分にとって有利だったし、 チームの人たちが僕のために応援やサポー トをしてくれたことも、チャンピオン獲得 の大きな力になりました。2020シリーズ は、100点満点で60点くらいでしょうか。 レース当日にしっかり速さを維持できたと ころは良かったと思います。優勝したレー

スも、速さを見せなが らミスなく走り切れま した。悔いが残るの は、やっぱり最終戦で 勝てなかったことと、 大会前日の練習でミス やトラブルがあったこ とですね。これからは 前日練習をもっと質の いいものにしてレース につなげたいです」。 2020年の野澤選手

は地方選手権と並行して、全日本FS-125 部門にもフル参戦。こちらは最上位が4位 1回、最終ランキング14位という結果に 終わったのだが、ふたつの選手権を合わせ た9レースすべてでポイント獲得という、 特筆すべき安定感を披露した。 「全日本では消極的なレースが続いて結果 を残せなかったけれど、それも後半戦はか なり改善できたと思います。年間を通して ポイントをしっかり獲れたけれど、大きな ポイントがなかったことと、毎回5位あた りの目立ちにくいところを走る展開だった ことが悔しいです。今の課題は駆け引きの 面ですね。2021年はそこをもっと強化し たいです」。

2021年の野澤選手は同じ体制でもてぎ シリーズと全日本・東地域に参戦する。全 日本ではヤマハのドライバーサポートプロ グラム“Formula Blue”の契約ドライバーと して2年目を迎える。いわば勝負の一年だ。 「2020年は消極的なレースが多かったの で、今度は勢いのあるレースをしたいです。 将来の目標は、F1ドライバーになることで す。そのために、まずは全日本のチャンピ オンを目指します。自分は観ている人を驚 かせる、『あいつスゲエな』って言われるよ うなドライバーになりたい。人と違う特別 なレースができる選手になりたいです。周 りの方々や活動資金を出してくれている親 のためにも、あきらめずに頑張ります」。

に終わってしまいました。決勝は5、6番 手まで上がったんですが、ファイナルラッ プのヘアピンで後続に乗り上げられて順位 を下げてしまいました。(チャンピオンの 権利を持つ)安藤哉翔選手が自分より前で ゴールしていたし、自分のフロントフェア リングが(規定外の位置に)入っているのも 分かっていて、あの時は悔しいというよ り、頭が真っ白でした。そうしたら、安藤 選手も(ペナルティの)サインを求められて いて、場内実況で(チャンピオン候補の)3 人ともノーポイントだということを聞い て、自分がチャンピオンなんだと分かりま した。なんだか複雑な気持ちでした」。 全日本の6戦5勝に対して、地方選手権 は4戦1勝と楽な戦いではなかった。だ 型コロナウイルス感染症の感染 拡大の影響もあって、本来全6 戦で予定されていたところが全 3戦のシリーズとなった、2020年のもてぎ シリーズ。野澤勇翔選手は最終戦をトップ と約0.5秒差の2位でフィニッシュし、チ ャンピオン獲得を果たした。 「最終戦でゴールした時、自分はけっこう プッシュして前を追いかけていたんです が、チャンピオンのこともあったので、あ まり無理はできませんでした。でも、終わ
日本FS-125部門で東西統一競 技会を待たずしてチャンピオン を確定させ、2020年は話題の 的となった津野熊凌大選手。この年は同時 に地方選手権にも参戦し、鈴鹿選手権シリ ーズを制して全日本・地方選手権のダブル タイトルを手に入れた。ただし、西地域を 5戦全勝で駆け抜けた全日本とは対照的
に、鈴鹿選手権シリーズは最 終戦に波乱が待ち受ける、薄 氷を踏む戴冠劇となった。 津野熊選手はポイントリー ダーとして最終戦に臨むも、 決勝は20番グリッドからの スタートに。一時は上位に進 出したが、ゴール間際のアク シデントで順位を落とし、さらにフロント フェアリングのペナルティまで課された。 ところが、津野熊選手以外のチャンピオン 候補たちもノーポイントに終わり、タイト ルは津野熊選手の手中に収まったのだ。 「最終戦は、前日までは調子が良かったけ れど、公式練習(タイムトライアル)の途中 でエンジンが焼き付いて、タイムを出せず 新 全 2021年は駆け引きを強化して更なる躍進! 全日本&地方選手権のダブルタイトル獲得 JAF地方カート選手権  鈴鹿選手権シリーズ2020年チャンピオン 津野熊凌大選手(Scuderia Sfida) JAF地方カート選手権  もてぎシリーズ2020年チャンピオン 野澤勇翔選手(チームエッフェガーラ) 30

が、というか、だからこそ、このシリーズ には参加する意義があるのだと津野熊選手 は語る。 「鈴鹿選手権は、全日本の東西に出ている 人たちだけじゃなくて、地元の選手や鈴鹿 を得意にしている選手たちがけっこう速い ですし、全日本より年齢の低い選手たちも いて、レース展開も全日本とはまったく違 ってきます。毎回コースが変わる全日本で

は、調子をつかめばトップで逃げ切れる展 開もあるけれど、鈴鹿だと毎回、ずっとバ トルが続く感じのレースになります。駆け 引きの面では、すごく勉強になりました。 全日本ではずっとうまくいっていたんです が、鈴鹿では連勝できなくて、基本に立ち 戻れるというか、気持ちを引き締め直す場 になりました」。

圧巻の全日本制覇を果たした津野熊選手 は当然、2021年に大きな注目を浴びる存

在となる。そんなプレッシャーの中でのチ ャレンジにも、津野熊選手は意欲をのぞか せている。

「2021年の活動予定は未定なのですが、 自分としては全日本のOK部門に出たいで す。それが実現したら、レースはOK部門 一本に絞ることになると思います。簡単で はないだろうけれど、早くいいレースがで きるようになりたい。目標はシリーズ3位 以内です」。

位にいた選手がスピン。さらにチェッカー 後、2番手と3番手の選手にペナルティの 判定が出た。これで4番手ゴールの落合選 手は2位に繰り上がり、獲得ポイントも大 きくなった。そしてポイント集計の結果 は、優勝した熱海瑛達選手が124.5点、 落合選手が……125点! 落合選手のチ ャンピオン獲得劇は、まるでドラマのよう な展開となった。

「もうダメだと思いながらも諦めずに最後 まで粘ったら、最終コーナーで奇跡が起き て、しかも前の2台が(ペナルティで)落ち てくれて、チャンピオンになれました。こ の前日は僕のおじいちゃんの命日で、優勝 できなくてもチャンピオンだけは獲ってや るって気持ちでずっと戦っていたら、おじ いちゃんが助けてくれたんだと思います。 それ以外にも、築山さん(敬氏。所属チー ム代表)とかパパがメカをしてくれたり、 アドバイスしてくれたおかげで、チャンピ オンになれました」。 2021年は、世界中の若き才能が集まる

FIA KARTING ACADEMY TROPHYへ の参加が決定、戦場をヨーロッパに移す。 「憧れのドライバーは(アマチュアのレーシ ングドライバーである)パパです。速いだけ

じゃなく、いろいろな能力や技術を持って いるので、僕もそれを見習いたいです」。

争いを3位で終え、見事チャンピオンに輝 いた。 「あのレースは思った以上に入れ替わりが 激しくて、どこで勝負に行くかすごく迷い ました。最後の3コーナーで2台に抜かれ てしまったので、ああこれは1位はヤバい なと思って、なんとか3番か2番に入ろう と思って戦いました。チャンピオンのこと は、やっぱり意識してました。トップの4 台が固まった時に(チャンピオン争いの)ラ イバルの松井沙麗さんがその中にいなかっ たので、そこでチャンピオンいけそうやな って、けっこう自信を持つことができまし

ジュニア選手権FP-Jr部門202 0年の東西統一競技会の決勝。 落合蓮音選手はトップ争いの際 に順位を落として絶体絶命の状況に。とこ ろが、最終ラップにポイント争いの実質首
20年のFP-Jr Cadets部門・ 東西統一競技会。西地域のポイ ントリーダーとしてこの一戦に 臨んだ金子准也選手は、4台一丸のトップ
20️ ジ 6戦中5戦で表彰台を獲得する安定の走り! 最後まで諦めなかったら奇跡が起きた!? ジュニアカート選手権 FP-Jr Cadets 部門2020年チャンピオン 金子准也 選手(ラムレーシング) ジュニアカート選手権  FP-Jr部門2020年チャンピオン 落合蓮音選手(Ash with Hojust) た。このレースは、100点満点で90点く らい。(足りない)10点は、一番でゴール できなかったからです」。 シリーズ全6戦で優勝2回、表彰台獲得 は実に5回。同部門に参加したのべ31名 の中で、6戦すべてでポイントを獲得した のは金子選手ただひとり。“高位安定”で戦 い終えた2020シリーズを、金子選手はど う感じたのか。 「台数が少ないレースだったけど、最後は ちょっと台数が増えて、その中でもチャン ピオンになれてうれしいです」。 将来の夢はF1ドライバー、そして日本
「憧れのドライバーはセバスチャン・ベッ
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人で初のF1優勝だ。
テル選手です。すごく速くて、連続で何回 もチャンピオンになったところが凄いと思 います」。
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2021年01月05日 [2021-WEB001] 2021年JAF地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権クラス区分等について 2021年01月13日 [2021-WEB002] 2021年FIA APRC Asia Cup第1戦/2021年JAF全日本ラリー選手権第1戦「Rally of Tsumagoi 2021」 の開催中止について 2021年01月20日 [2021-WEB003] 2021年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則の誤記訂正について 2021年01月22日 [2021-WEB004] 2021年JAF地方ラリー選手権競技会の開催中止について 2021年01月25日 [2021-WEB005] 2021年JAF北海道ダートトライアル選手権競技会カレンダーの追加登録について 2021年01月26日 [2021-WEB006] 2020年JAF全日本選手権・FIAインターナショナルシリーズチャンピオンおよび上位入賞者 2021年01月26日 [2021-WEB007] 2021年JAF関東ジムカーナ選手権クラス区分等の変更について 2021年02月01日 [2021-WEB008] 2021年JAF筑波サーキットトライアル選手権第1戦の開催日程変更について 2021年02月02日 [2021-WEB009] 車両公認申請一覧表/ロールケージ公認申請一覧表 2021年02月08日 [2021-WEB010] 2021年全日本スーパーフォーミュラ/スーパーフォーミュラ・ライツ選手権統一規則の一部改正について 2021年02月10日 [2021-WEB011] 2021年日本レース選手権およびFIAインターナショナルシリーズ開催日程について 2021年02月22日 [2021-WEB012] 2021年地方ジムカーナ/ダートトライアル選手権の開催中止および開催日程変更について 2021年03月12日 [2021-WEB013] 2020年JAF地方選手権チャンピオンおよび上位入賞者 2021年03月16日 [2021-WEB014] 2021年日本ジムカーナ選手権の開催日程変更および開催場所変更について 2021年03月23日 [2021-WEB015] 2021モータースポーツイヤーブックの誤記訂正について 2021年03月24日 [2021-WEB016] 2021年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則の一部改正について

公示(カート)

日付 公示No. タイトル

2020年12月28日 [2020-WEBK21] 2021年地方カート選手権カレンダー一覧

2020年12月29日 [2020-WEBK22] 2021年全日本/ジュニアカート選手権統一規則の制定について

2020年12月29日 [2020-WEBK23] 日本カート選手権使用タイヤ銘柄について 2021年02月09日 [2021-WEBK01] 2021年全日本/ジュニアカート選手権 東地域 第1戦および第2戦 開催場所変更について 2021年02月22日 [2021-WEBK02] 2021年全日本/ジュニアカート選手権適用車両規定の制定について 2021年03月03日 [2021-WEBK03] 2021年地方カート選手権開催日程の変更について 2021年03月25日 [2021-WEBK04] 全日本/ジュニアカート選手権統一規則 第21条4の統一解釈について

33 INFORMATION fromJAF モータースポーツ公示・お知らせ(WEB)一覧(2020年12月25日~2021年3月25日) 公示(四輪) 日付 公示No. タイトル 2020年12月28日 [2020-WEB090] 2021年JAF地方ラリー選手権競技会の開催中止および開催日程の変更について 2020年12月28日 [2020-WEB091] 2021年JAF地方ラリー選手権のクラス区分等について 2020年12月28日 [2020-WEB092] 2021年全日本ラリー選手権統一規則の制定について 2020年12月29日 [2020-WEB093] 新型コロナウイルス等防止対策に係る対応について(2020年12月29日版)
お知らせ 日付 タイトル 2020年12月29日 新型コロナウイルス関連のお知らせ(2020年12月29日版) 2021年01月07日 新型コロナウイルス関連のお知らせ(2021年1月7日版) 2021年01月13日 JAF MOTORSPORTS YouTubeチャンネル開設のお知らせ 2021年02月19日 2021年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権クラス区分について 2021年03月02日 メディカルカード発行について 2021年03月08日 JAF WOMEN IN MOTORSPORT International Women's Day 2021 動画公開のお知らせ ※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツホームページ(http://jaf-sports.jp/)内の「公示・お知らせ」で閲覧することができます。  2021モータースポーツイヤーブックの495ページ 「2021年エキスパートライセンス所持者名簿」に誤りがあ りました。有村純徳様、徳尾三郎様、ならびに関係者の皆様 にご迷惑をお掛けしましたことをお詫びしますと共に、下記 の通り訂正いたします。 誤) 伊勢 公一 内山 弘紀 澁谷 道尚 三井平八郎(五十音順) 正) 有村 純徳 伊勢 公一 内山 弘紀 澁谷 道尚 徳尾 三郎 三井平八郎(五十音順) [公示No.2021-WEBK015] 2021モータースポーツイヤーブックの誤記訂正について
2020シーズン、全国のサーキットで熾烈なバトルを繰り広げてきたレース地方選手権。 速さを極めた者だけが手にする“チャンピオン”という 栄誉を獲得するまでの過程を、各シリーズごとに振り返ってみた。 フォト/石原康、はた☆なおゆき レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部 2020 年 JAF 地方選手権 レース総括 FIA-F4、F4、スーパー FJ、フォーミュラ・リージョナル、ツーリングカー 20年のJAF公認レースの地方選手権は、 カレンダー延期からのスタートになった り、レースの中止で途中に長いブランクが 生じたりしたが、最終的に不成立になったシリーズは なかった。 FIA-フォーミュラ4地方選手権(FIA-F4) 参戦2年目となる沖縄出身の平良選手、 破竹の10連勝で文句なしのタイトル 6シーズン目のFIA-F4は、併催のスーパーGTの 日程変更に伴い、シーズン後半からのスタートとな り、4大会・全12戦にカレンダーを改めた開催となっ た。スタートダッシュを決めたのは平木玲次選手。ま さに背水の陣、5シーズン目の参戦とあって、豊富な 経験が活かされて初優勝を飾ったが、そのまま勢いを キープし続けることは許されなかった。 沖縄出身で2シーズン目の平良響選手が第2戦で初 優勝を挙げると、以降は連勝街道まっしぐら。2019 年に佐藤蓮選手が達成した連勝記録を上回る10連勝 を達成する。例年より2戦減とあって、佐藤選手の最 多勝利記録に並ぶには最後まで勝ち続ける必要があっ 20️ 2020地方レースを制した王者たちの軌跡 F I A - F 4 選手権 2020 年 チャンピオン 響 開 幕が10月といういつもと違うスケジュールでしたが、9 月からはテストの機会も結構あって、その間はドライビ ングに集中することができました。4月から5月にかけてのまっ たく家を出られない自粛期間中も、課題として送られてきたメ ンタルを含めたトレーニングのメニューがあったのですが、そ れを全部実践しながら開幕に備えてきました。だから、僕に とってはプラスになっています。  最初と最後はやられましたが、全部勝っていたら「なんだ F4、簡単に勝てるじゃん!」と思われるかもしれませんが、10 連勝していた時も本当に全部簡単ではなかったので、全勝で きなかったことはあんまり気にしていません。 40

たが、それは平木選手が阻止。とはいえシーズンを通 じ、バトルの強さも逃げ足の速さも見せたことで、平 良選手はタイトルのみならず、高評価も得ることとな った。

ただ、ひとつ興味深いのは、平良選手は優勝回数ほ どポールポジション獲得の回数が多くないことだ。レ ース1のファステストラップ獲得による、レース3の ポールを含めると7回に留まり、平木選手が2回、神 晴也選手と荒川麟選手、小川颯太選手がそれぞれ1回 獲得している。特に、この未勝利の3選手は、一発の 速さで平良選手に優ったことを誇りに感じていいだろ う。これに強さを増していけば、今後の躍進は必至で ある。 ランキング2位は平木選手で、続く3位は野中誠太 選手。5回の表彰台獲得が決め手となった一方で、シ

ドライバーと女性ドライバーを対象とする、インディ ペンデントカップにおいては、佐藤セルゲイビッチ選 手が2連覇を果たしている。

フォーミュラ4地方選手権(JAF-F4) コロナ禍による影響を受けつつも、 ジェントルマンドライバーが大躍進!

F4(JAF-F4)は東日本/西日本シリーズが一本化さ れてから2シーズン目。8大会・全11戦はどうしても 負担増と映ってしまったのか、あるいは有効ポイント 制が採られているからなのか、全戦エントリーしたの はKAMIKAZE選手だけ。また、スケジュール変更に より、2週連続開催となってしまったことから、筑波 サーキットでの第3戦と第4戦は3台のエントリーに 留まり不成立に。また鈴鹿サーキットでの第10戦 も、台風接近の影響で中止となっている。 2020シーズンの特徴として、ジェントルマンドラ イバーの奮闘が目立っていたことが挙げられる。中で も成立した8戦のうち6戦に出場し、スポーツランド SUGOでの連戦をいずれも制していたのが中島功選手

リーズ終盤の勢いが目立った小川選手を辛くも振り切 っての3位だった。また、40歳以上のジェントルマン
だ。ちなみに、中島選手が岡山国際サーキットの連戦 F 4 選手権 2020 年 チャンピオン 功 チャンピオンを獲れて嬉しいんですけど、8月のSUGOまでは 私、チャンピオンとかポイントに縁がないという感じで、あん まり考えていませんでした。振り返ってみれば運良くJAF-F4だけ じゃなく、オートポリスのVITAレースでもチャンピオンを獲れまし た。一応二冠ということで、いい年だったと思っています。  来シーズンはまだ決めていないんですけど、FIA-F4にどこかで 参加してみたいと思っています。インディペンデントの皆さんを相 手に挑戦したいと思っています。JAF-F4も引き続き。ただ、それ以 上っていうのは正直なくて、自分のモチベーションを上げるため ……人生のモチベーションですが、長くやり続けることで、自分が 健康でいられるような気がしています。 41

を欠場したのは、経営する会社の従業員に新型コロナ ウイルス感染症の陽性者が出てしまったためで、中島 選手自身は陰性だったものの、濃厚接触者ということ で自宅待機を余儀なくされたからだ。もし予定どおり 出場できていれば、王座決定を最終戦まで延ばさずに 済んだかもしれない。ともあれ、その最終戦にはKA MIKAZE選手が逆転の権利を残していたものの、接触 によるリタイアで中島選手の逃げ切りが決定した。

中島選手、KAMIKAZE選手に続くランキング3位 は金井亮忠選手。わずか3戦の出場ながら、優勝1 回、2位2回の安定感が決め手となった。惜しむらく は、こと2020年に関しては若手ドライバーの参戦が 極めて少なかったことだ。第1戦で太田達也選手が、 そして第9戦で太田格之進選手が優勝しているもの の、参戦したのはいずれもその1戦だけ。他の若手で 4戦以上参戦した者は存在しなかった。「学び」の場と して最適なカテゴリーとされるJAF-F4だけに、ジェ

全6シリーズ開催のスーパーFJは 選手たちの成長が光ったシーズンに S-FJもまた、大幅なスケジュール変更を求められ ていた。コロナ禍のみならず、悪天候によって中止に なったレースもあり、当初予定されたレース数をすべ て開催できたのは、開幕2戦分を後半に延期した菅生 シリーズだけだった。なお、2019年にFJ協会とジャ パン・スカラシップ・システム(JSS)が独自に設けた 『S-FJジャパン・チャレンジ』が好評だったようで、 鈴鹿を除く6サーキットを転戦するので、ホームコー スから他のサーキットへの積極的な遠征が目立ってい た。ジャパン・チャレンジのチャンピオンは、5戦出 場して3勝を挙げた岡本大地選手だった。 スポーツランドSUGOの菅生シリーズは8月から スタート。2レースの大会が2回ある全5戦での開催 となった。第1大会はジャパン・チャレンジとの併催 だったこともあり、二桁のエントリーで賑わいを見せ たものの、第2大会と第3大会は2週連続の開催とい うこともあってか、選手権どころかレースそのものの 成立さえ危ぶまれる事態に陥っていた。同シリーズを 主戦場とするアルビレックスRTにとっては、まさに 一大事。1レース開催の第2大会こそ、他チームから のスポット参戦もあってことなきを得たものの、2レ ース開催である第3大会にはそれもなく……。下した 決断は、チーム監督自ら参戦するというものだった! 回避された危機的状況において、チームメイトをま ったく寄せつけなかったのが須合修也選手だった。終 盤の3連勝を飾っただけでなく、第1大会のレースこ そリタイアを喫したが、レース2では遠征ドライバー を相手に一歩も引かず、3位表彰台に上がっていた。 ランキング2位は長谷部一真選手。後半の3戦すべて 2位で、第3大会のレース1では須合選手に大差をつ けられたものの、レース2では大幅にギャップを詰め るなど、レースウィークの中でも成長を遂げていた。 ツインリンクもてぎで当初5戦の開催を予定してい

たもてぎシリーズは、3月に開幕できたものの第2戦 が中止になり、7月半ばに入ってようやく第3戦が開 催された。その後の第4戦も台風で中止になり、結局 J A F スーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 須合修也 本 来はSUGOだけじゃなく、もてぎと2シリーズに出 る予定だったんですが、コロナの関係で開幕戦に 出られなくて、そこで1戦落としてしまったので、シリー ズを追うのが厳しくなってしまいました。自粛期間中は 練習もできませんでしたし。SUGOではチャンピオンを 獲れたんですが、台数が少ないというのもあって、正直 なところ何と言うんですかね、自分の自信にはつながら なかったですね。肩書きがついたことは嬉しく思います。  今後のことはまったく決まっていません。それでも将 来的にはドライバーとしてご飯を食べていけたらいい なと思っています。カテゴリーは定めませんが、まずは
J A F もてぎスーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 新倉涼介 ツインリンクもてぎが休業になって、練習がなかなかできませ んでした。その間もシミュレーターはやっていたんですが、実 は苦手で(苦笑)。実車に乗れない期間が長く続いて、いざ実車に 乗った時も感覚を取り戻すのが難しかったですね。  シーズン前半はトップ争いもしていたんですが、期間がかなり空 いたせいか、後半戦は中団以降に沈んでしまって。決していい流れ ではなかったですね。2021年は本決まりではないですが、ツーリン
年 J A F 42
ントルマンと若手の共存共栄が期待される。 スーパーFJ地方選手権(S-FJ)
そこを目標としてやっていきたいです。
グカーの方に行こうかなと。86とかS耐を考えています。小さい頃 からハコのレースが好きだったんです。F4も手段のひとつだった んですけど、同じお金をかけるなら一気に行っちゃおうかと。将来 的にはGTマシンに乗れたらいいなと思っています。

3戦でギリギリ選手権が成立ということに。

第1戦、フロントロースタートの新倉涼介選手はポ ールの鈴木千勝選手に追従するも、後方から迫る杉本 涼選手とチームメイト同士で激しいバトルを繰り広げ た末、杉本選手の逆転を許して2位。第3戦は新倉選 手のリベンジ達成で、ポールシッターの前田大道選手 を逆転して優勝を飾る。しかし前述のとおり、この後 にも日程のブランクが生じたことで、ウィナーふたり のレース勘を鈍らせてしまったようだ。 最終戦はジャパン・チャレンジの最終大会でもあっ た。そのため、ウィナーの岡本大地選手を筆頭に遠征 ドライバーが上位を占める中、杉本選手こそ6位に入 るが、新倉選手は入賞すら許されず。それでも前2戦 の積み重ねで、新倉選手がチャンピオンを獲得した。 その最終戦でホームのドライバーの最上位は松澤亮佑 選手の3位で、ランキングでも杉本選手に続く3位と なった。

東京五輪・パラリンピックの競技会場となるため、 夏場にレースができず、富士スピードウェイでのレー スが1戦だけとなったことから、筑波サーキットの6 戦と合体することになった筑波/富士シリーズ。開幕 戦こそ予定どおり筑波で開催されたものの、続く2戦 分は中止となってしまい、4か月以上のブランクが空 いてしまう。また、富士で行われるはずだった第6戦 も、台風接近のため中止の憂き目に。結果、4戦での 成立となった。 しかし、ブランクなど何のその、出場した3戦すべ

2DAYの連戦で、しかも第5戦はトップ6のリバース グリッドであったにも関わらず、じわじわと順位を上 げて勝ったことで、より強さを強調した。

FIA-F4での経験を挟み、3シーズン目のS-FJフル 参戦とあって、若手ドライバーの厚い壁となっている ……と言いたいところだが、当の岡本選手はまだ22 歳! ジャパン・チャレンジにも、ジェントルマンド ライバーのコーチングを兼ねて積極的に参戦してお り、重ねた経験がしっかり身に付いているのは間違い ない。2021年も鈴鹿シリーズを主戦場に、継続で参 戦するという。

ランキング2位は、TCRジャパン・サタデーシリー ズのブロンズクラスでチャンピオンとなった女性ドラ イバー、下野璃央選手が2度の2位が決め手になって 獲得。以下、佐藤巧望選手、元嶋成弥選手と若手が続 く中、5位には正真正銘ベテランの太田浩選手がつけ ていた。波乱の展開となった第4戦で、混乱を巧みに

本大地選手の独壇場。最激戦区でありながら、開催さ
て優勝を飾ってチャンピオンに輝いたのは伊藤駿選手 だ。2019年の最終戦でデビューウィンを遂げている だけに、足掛け2年での4連勝となった。 ジャパン・チャレンジもかかった最終戦には伊藤選 手は出場せず、このレースで優勝したのは岡本大地選 手。また、優勝こそ挙げられなかったものの、表彰台 にはそれぞれ2回ずつ上がった本田千啓選手と草野裕 也選手がランキング2位、3位を獲得している。 鈴鹿サーキットで6戦で争われるはずだった鈴鹿シ リーズも、第2戦がコロナ禍で、そして最終戦が台風 で中止になり、4戦での成立となった。ここはもう岡
れた4戦すべて優勝し、2017年の岡山シリーズ以来 となるタイトルを獲得した。こと第4戦と第5戦は
J A F スーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 岡本大地 悪 くはなかったですね。いろんなシリーズに出て、い ろんなサーキットを走れたので。セットも走れば 走るほど煮詰まっていったし、勉強になった1年だった なという感じです。SRS-Formulaを受講していた頃より も乗る時間が多かったですから。なのでFJとはいえ、本 当に上達したなと思える1年でした。  2021年も遠征を交えながら鈴鹿でFJ、86レースもタ
J A F 筑波/富士 スーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 駿 自分はカートの経験もなく、2019年の初めからS-FJの練習 を始め、その年の最終戦でデビューウィンできました。 シーズンを通じての参戦で土台がしっかりしたというか、運 転は確かに上手くなりましたが、まだまだですね。チャンピオ ンが獲れた筑波では良かったんですが、SUGOやもてぎとか 他のサーキットに行ったら、悪いところがいろいろ見えてき て……。でもそれは発見でもあるし、成長でもあると思ってい ます。  先々のことは全然決まっていないんですが、実はハコをや りたいんです。86もそうですが、将来的にはTCRを。もともと ハコをやりたかったんですが、方法が分からなかったので、と りあえずスーパーFJやるか、みたいな感じでしたので。 43
イヤ開発ドライバーとしてやっていく予定です。もちろ ん、他にもチャンスがあればやりたいと思っています よ。将来的にはとりあえずレーシングマシンに乗り続け たいですね。ハコでもフォーミュラでもいいんですが、 やっぱりフォーミュラって楽しいので、やり続けられる なら、ずっと乗っていたいと思っています。

かわし、久々の表彰台獲得ともなった。

最も早い開幕となった岡山国際サーキットの岡山シ リーズは、序盤の2戦を予定どおりこなしたものの、 第3戦は中止。さらに最終戦はエントリー3台とあっ て、レース自体は行われたものの、選手権得点は与え られない試合となった。しかし、その最終戦も含め、 岡山シリーズは行われたレースすべてウィナーが入れ 替わる激戦となっていた。

チャンピオンを獲得したのは、第2戦を制した鹿谷 遼平選手。続いて行われた連戦の第4戦、第5戦をい ずれも5位とし、これで事実上の決定に。しかし、最 終戦はスタート直後のコースアウトでリタイアを喫 し、きれいに幕を閉じることはできなかった。ランキ ング2位は連戦の第4戦を優勝、そしてリバースグリ ッドの第5戦で2位の岡本大地選手。その第5戦で は、デビュー間もない宮下源都選手がポールスタート の利を活かして初優勝を飾っている。

最も変則的なスケジュールになってしまったのがオ ートポリスシリーズだ。開幕からの2戦が中止とな り、本来第3戦として予定していたレースから開幕す るはずも、九州を襲った豪雨のため、そのレースも中 止。結果的に10月から始まり、10月に終わることと なったからだ。 2レース制の第2戦、第3戦を制したのは、またし ても岡本大地選手。ジャパン・チャレンジとの併催で はなかったものの、これでS-FJを開催する7サーキ ットのうち、5サーキットで勝つこととなった。これ は彼の今後にとって、得難い体験ともなるだろう。た だし、最終戦を欠場したことによって王座獲得の可能 性は残したものの、「運を天に任す」状態に。 結果、貴重なチャンスをものにしたのは、優勝した 吉元陵選手ではなく、西村和真選手だった。3戦すべ て表彰台に立つ安定感が、何よりの決定打になった。 ツーリングカー地方選手権 激戦が繰り広げられた2シリーズ、 栄冠は中村選手とHIROBON選手に

ツーリングカー地方選手権は、FIT1.5チャレンジカ ップとのWタイトルでの開催となり、もてぎ・菅生 シリーズ、そして鈴鹿・岡山シリーズで激戦が繰り広 げられた。

もてぎで5戦、SUGOで2戦を開催するはずだっ た、もてぎ・菅生シリーズはそれぞれ1戦ずつ中止 に。その5戦で誕生したウィナーは、実に4人という 激戦状態となっていた。 タイトル争いは最終戦までもつれ込み、権利を残し たのは開幕戦を制していた相原誠司郎選手、そして唯 一2勝を挙げていた中村義彦選手のふたり。優勝は安 井亮平選手に許し、これに相原選手が続いたものの、 リスクを回避して3位をキープし続けた中村選手が逃

鈴鹿・岡山シリーズも、鈴鹿での第2戦がコロナ禍 による中止で、第5戦は台風で中止となり、鈴鹿で3 戦、岡山で2戦の5戦で競われた。 シリーズ展開は、もてぎ・菅生シリーズとは対照的 で、HIROBON選手が出場した4戦すべてで優勝。本 J A F スーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 鹿谷遼平 3 月のレースが終わってから、コロナの影響で次の レースまで一度も練習に行けなくて、金銭面でも苦 しかったのでちょっと残念でした。最初の1戦、2戦と少 しずつ成長していったところで、コロナでブランクが空 いちゃったので、うまく流れをつかめなくてそのまま ……。そうですね、自分の納得いく状況ではなかったで すね。最終戦も残念な展開で終わっちゃいましたし。完 全燃焼できたシーズンではありませんでした。  今後のことは未定でまだ分からないです。将来的に は、やっぱり子供の頃からの夢だったGTを目指したいと ころなので、何とか頑張って目指していこうと思ってい ます。どちらかと言うとハコ志向なんですよね。 中村義彦 J A F オートポリス スーパー F J 選手権 2020 年 チャンピオン 西村和真 鈴 鹿シリーズは本当にまぁ、いろいろあって結果が出せな かったので、苦しいシーズンでした。本来、メインとする シーズンで、ウエストさんの開発も兼ねて結果を求められるシー ズンだったんですけどね。  オートポリスで乗るようになったのは、向こうのオーナーさん からお話をいただいたからなんですが、コロナや天候の影響が強 くあって、10月の頭に開幕して10月末に最終戦というドタバタし たシーズンでした。練習してレースに臨んだという感じではなく て、一回も勝つことができずにチャンピオンだったので、あんま り自分の中では実感はないですね。可能性がある限りはF1を目指 し、届かなくてもプロのドライバーとして戦っていきたいです。 年 J A F 44
げ切って初の栄冠を獲得した。ランキング3位は、未 勝利ではあったがコンスタントに入賞を果たしていた 松尾充晃選手だった。

来なら新たな刺激を求めてもてぎ・菅生シリーズに専 念するはずだったが、同シリーズ第2戦、第3戦の相 次ぐ中止、さらに併せて出場したTCRジャパンのス ケジュール変更で全戦出場するのが不可能となった。 そのため、鈴鹿・岡山シリーズにはスポット参戦のは ずが、“勝ったし、次も出られるから”というラッキー

もあり続けて、チャンピオンはHIROBON選手が獲 得した。

第1戦で優勝した寺西玲央選手がランキング2位。5 戦中4戦で表彰台に立って安定感が光ったものの、4 戦4勝の離れ業を繰り出されては、いかんせん……。3 位は初のフル参戦となった西尾和早選手が獲得した。

20 20年、新設されたのが、フォーミュラ・リージョナル・ ジャパニーズ・チャンピオンシップ(FRJC)だ。このシ リーズにはJAF地方選手権がかけられ、6大会・全14戦で争われ た。そして2020シリーズにおいて、圧倒的な強さを誇ったのが 阪口晴南選手だった。出場したレースすべてでポール・トゥ・ ウィンを達成。だが、早めのチャンピオン確定とならなかったの
場したことで大きなハンデを背負うこととなる。  第2大会において2勝、2位という結果を収めたのが高橋知己 選手。次の第3大会をもって参戦を取りやめてしまうのだが、今 度は古谷悠河選手が阪口選手を苦しめることとなる。古谷選手 もまた、第2大会ではすべて表彰台に上がり、48ポイントを得て いたからだ。第4大会でようやくランキングのトップに返り咲い た阪口選手ではあったが、成長ぶりが著しい古谷選手は着実に2 位に入り続けて、阪口選手になかなか王手をかけさせなかった。  このふたりはシーズン終盤に何度もバトルを繰り広げ、時に はラップタイムで古谷選手が上回ることもしばしば。フォー ミュラのデビューイヤーで、阪口選手とのキャリアの違いを考 慮すれば、まさに期待以上の活躍を見せたと言えよう。それでも 最終大会のレース2を前にチャンピオンを決めた阪口選手。参 戦11戦11勝という圧倒的な強さは、FRJが歴史を重ねていって も語り継がれるだろう。  若手にスポット参戦の機会が与えられることが多かったのも 特徴のひとつで、阪口選手欠場した第2大会では根本悠生選手 が優勝。他にも金丸ユウ選手、篠原拓朗選手、三浦愛選手、石坂
なっていれば、また違ったシリーズ展開になっていたかもしれな い。また若手ではないが、最終大会にはレジェンド・本山哲選手 が出場。「若手を指導する上で、自ら走ってみて分かることもあっ た」と語り、その走りにブランクはまったく感じさせなかった。 シ ーズン前半はこれまでの経験のアドバンテージもあって、しっかり後ろ を引き離すいいレースができたんですけど、後半はちょっと失速気味 で、絶えず追われるようなレースになってしまって。僕としては最後までぶっ ちぎりのレースを思い描いていたんですけど、そうもいかなくて勝ったレース の中でも悔しいレースがありました。  でも、絶対に負けられないというプレッシャーを力に変えられたんじゃない かと思うので、いい1年でした。出たレース全戦、ノントラブルでトップで チェッカーを受けられたので、チームには感謝しています。必ずステップアッ プしてこのカテゴリーの価値を証明したいと思っています。 フォーミュラ ・ リージョナル 選手権 2020 年 チャンピオン 阪口晴南 J A F もてぎ ・菅生 ツーリングカー 選手権 2020 年 チャンピオン 相 原(誠司郎)選手と最後までチャンピオン争いを しましたけど、最初に彼に負けたのが悔しくて。 また出ようという形から仕切り直して、その後なんと か2連勝できて盛り返したかな、という感じで最終戦を 迎えました。その最終戦はちょっと慎重に行きました。  チャンピオンはこのカテゴリーでは初めてです。5年 かかりました。初年度は2位だったんですけど、ワンメ イクレースの猛者たちがいっぱいいたので、なかなか 厳しかったです。けど、やっと獲得できたので少しは肩 を並べられたのかなと思っています。今後のことは未 定ですが、継続できたらと思っています。いずれS耐と かいろんなカテゴリーに呼んでもらえるようなドライ バーになるのが理想です。 J A F 鈴鹿・岡山 ツーリングカー 選手権 2020 年 チャンピオン H I R O B O N 本 当は鈴鹿・岡山シリーズではなく、もてぎ・菅 生シリーズに出るはずだったのに、1戦目がなく なっちゃって……仕方ないから岡山の1戦目だけ出よ うと思ったら勝っちゃったので、もうそのまま出よう となりました。結果、FITで出たレースは全部勝ったの で、あっけないと言ったらあっけなかったですね。  今度こそもてぎ・SUGOシリーズに出たいんですけ ど、それもまたTCRジャパンと重なる感じで……。も し出られるんだったらWTCRに出たいんですけどね、 先々の目標として。日本ラウンドがあったら良かった のになくなっちゃったし。とりあえずは海外のTCR。 ニュルとかに行きたいです。FFにしか興味ないので、 GTとかにはあまり関心がないですね。 45
は、スーパーGTとの日程のバッティングで欠場せざるを得な かったからだ。1大会で3戦が開催されるFRJCにおいて、1レー スの優勝で25ポイント、最大75ポイントが獲得可能となり、欠
瑞基選手が表彰台に上がっており、シーズンを通じた参戦と
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、延期や中止が相次ぎ、 かつてない厳しいシーズンとなった2020年のJAF地方選手権。しかし、関係者や選手の尽力により、 多くの選手権では無事シリーズの成立を見た。苦難の一年を戦って結果を掴んだ選手達を紹介する。 フォト/加藤和由、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 ラリー&スピード競技の地方選手権タイトルホルダーを一挙紹介! ラリー・スピード競技地方選手権 JAF地方選手権2020 チャンピオン RALLY GYMKHANA DIRTTRIAL CIRCUITTRIAL 特集 46

DE-1

DE-1ナビゲーター 田中大貴選手

DE-2ドライバー 廣嶋 真選手

DE-2ナビゲーター 廣嶋 浩選手

DE-5ドライバー 福田卓也選手

DE-5ナビゲーター 中根秀之選手

DE-6ドライバー 田中裕二選手

DE-6ナビゲーター 仲野 篤選手 九州 RH-1ドライバー 藤本大典選手

RH-1ナビゲーター 岡﨑辰雄選手

RH-2ドライバー 鶴田健二選手

RH-2ナビゲーター 松尾圭介選手

RH-3ドライバー 後藤章文選手

RH-3ナビゲーター 河嶋康史選手

RH-4ドライバー 西依良樹選手

RH-4ナビゲーター 土谷英治選手

RH-5ドライバー 中西昌人選手

RH-5ナビゲーター 津野裕宣選手

JAF地方選手権2020年チャンピオン 北海道 RA-1ドライバー 山田健一選手 RA-1ナビゲーター 松本真直選手 RA-2ドライバー 佐藤秀輝選手 RA-2ナビゲーター 松井浩二選手 RA-3ドライバー 松倉拓郎選手 RA-3ナビゲーター 河村幸子選手 東日本 BC-1ドライバー 宇野 学選手 BC-1ナビゲーター 原田直人選手 BC-2ドライバー 森岡大次郎選手 BC-2ナビゲーター 伊藤克己選手 中部・近畿
ドライバー 大江 毅選手
JAF中四国ラリー選手権は豪雨災害のため不成立に 2020年のラリー地方選手権は、中四国ではコロナ禍により10月に 延期された第2戦が、台風14号の接近のため中止となり、他大会の 成立が2戦に留まったため、やむなく選手権不成立となった。また東
12月から2月にかけて開催されるJAF地方選手権表 彰式だが、2020年はすべて中止を余儀なくされた。昨 年夏には近畿が中止を発表。その後、北海道、関東、中 部、中国、四国の各地区も中止を表明し、開催延期を検 討していた東北、九州も最終的には中止に至った。  北海道では表彰対象者を掲載した年鑑を発行して 表彰対象者に送付、中部では表彰対象者の氏名や車 両を紹介する映像を「JAF/JMRC中部モータースポー ツ表彰式」として2月上旬にオンライン配信した。ま た、関東では日刊自動車新聞に表彰対象者の一覧を掲 載するなど、リアル開催がなかった各地区では、それ ぞれ独自の代替措置が採られていた。 2020年JAF地方選手権表彰式は最終的には全地区で開催中止に JAF中四国ラリー第2戦が 台風14号の影響で中止に グラベルラリーが主体となるJAF中四国ラリー選手権 だが、昨年は台風の影響を受けた一戦が中止となり、 2020年はシリーズ不成立を余儀なくされた。 2020年JAF北海道ラリー選手権(5戦開催) 2020年JAF九州ラリー選手権(5戦開催) 2020年JAF東日本ラリー選手権(3戦開催) 2020年JAF中部・近畿ラリー選手権(3戦開催) RALLY ラリー地方選手権 北海道では、JAF北海道本部とJMRC 北海道が共同で年鑑を制作し、賞典と ともに表彰対象者に送付した。 中部では動画投稿サイトを利用したオン ライン表彰式を実施。表彰対象者の氏名 や走行動画などを配信した。 47
日本は3戦が開催されてシリーズは成立となったが、第2戦で出走が なかったBC-3クラスは残念ながら不成立となった。ともに今シーズ ンの成立を祈りたいところだ。北海道は6戦中、スノーラリー2戦を 含む5戦が成立。中部・近畿は第3戦~第6戦が中止となったが残る 3戦が開催され、九州も2戦の中止を余儀なくされたが、計5戦が開 催され、シリーズは無事、成立の運びとなった。

北海道

東北

PN-1クラス 米澤 匠選手

SH-1クラス 金内佑也選手

PN1クラス 上野健司選手

PN3クラス 藤原雄司選手

NSA-2WDクラス 宍戸政宏選手

SA-2WDクラス 小武拓矢選手

SA-4WDクラス 佐柄英人選手

SCクラス 佐藤英樹選手

関東

PN1クラス 斉藤邦夫選手

PN2クラス 梅澤高志選手

PN3クラス 大坪伸貴選手

PN5クラス 中村光範選手

PN6クラス 金子 博選手

SA1クラス 小武拓矢選手

SA2クラス 徳冨太一選手

SA3クラス 金子 進選手

SA4クラス 髙瀬昌史選手

SC・Dクラス 関谷光弘選手

近畿

PN1クラス 古田公保選手

PN2クラス 福尾成泰選手

PN3クラス 石塚 誠選手

PN4クラス 小玉知司選手

B1クラス 藤林伸吉選手

B3クラス 渡邉 肇選手

B4クラス 石田忠義選手

近畿

S1クラス 織田拓也選手

S2クラス 中嶋敏博選手

S3クラス 辰巳浩之選手

Lクラス 砂田光恵選手 中国

BRKクラス 坂井一弥選手

BR2クラス 中田 匠選手

BR4クラス 丸岡 茂選手

PN1クラス 高屋隆一選手

PN2+クラス 内田 敦選手

SA2クラス 吉﨑太郎選手

SA4+クラス 多田 淳選手

SCDクラス 原 和正選手

T28クラス 難波 眞選手 四国

PNクラス 徳永秀典選手

NS1クラス 田中康一選手

R1クラス 福田和秀選手

R2クラス 土居清明選手

R3クラス 仙波秀剛選手

R4クラス 佐伯 希選手 九州

PN1クラス 山下友秀選手

PN2クラス 関岡優季選手

SA1クラス 井上 洋選手

SA2クラス 古賀雄一選手

B1クラス 福田宗久選手

B2クラス たにもと章則選手

JAF地方選手権2020年チャンピオン
2020年JAF北海道ジムカーナ選手権(7戦開催) 2020年JAF東北ジムカーナ選手権(5戦開催) 2020年JAF中国ジムカーナ選手権(4戦開催) 2020年JAF関東ジムカーナ選手権(6戦開催) 2020年JAF四国ジムカーナ選手権(6戦開催) 2020年JAF近畿ジムカーナ選手権(4戦開催) 2020年JAF九州ジムカーナ選手権(8戦開催) GYMKHANA ジムカーナ地方選手権
48
JAF中部ジムカーナ選手権は昨年8月にシリーズを中止に ジムカーナ地方選手権も新型コロナウイ ルス感染症の影響を大きく受け、中部地区 は3月の開幕戦は開催されたものの、その 後は中止が続いて選手権不成立を余儀なく された。一方、北海道と東北は延期された 一戦を、ダブルヘッダーの一戦に組み込む ことで中止を回避してシリーズを成立させ ている。関東では第3戦以降は予定の半数 の4戦開催となってしまったが、序盤の2 戦が開催されたため6戦が成立。近畿と中 国はともに4戦が成立、四国は第1戦のみ が中止となり6戦が成立した。九州では延 期された2戦が11月に開催され、コロナ禍 の中で全戦成立を成し遂げた。

九州

PN1+クラス

N1+クラス 坂本幸洋選手

SA1クラス 松岡修司選手

RWDクラス 臼井幹夫選手

NS1クラス 川戸惟寛選手

SCD1クラス 山下貴史選手

SCD2クラス 藤田宏明選手

N1クラス 谷 芳紀選手

N2クラス 橋本充弘選手

SD1クラス 谷 正史選手

SD2クラス 梶田昌弘選手

PN1+クラス 濱口雅昭選手

RWDクラス 橋本英樹選手

N1クラス 濱口龍一選手

S1クラス 中村 凌選手

S2クラス 井上博保選手

Cクラス 上原吉就選手 Dクラス 橋本和信選手

ズは成立した。一方、中国は半数の4戦が中止という厳しい状況と なったが、シリーズを成立させている。四国も4月に開幕戦を組んだ ため中止としたが、第2戦以降を9月以降への開催に延期したため、 残る4戦を成立させた。九州では6月に開催予定だった第5戦を12月 に延期。1戦のみの中止に留めて7戦を成立させている。

2020年JAF北海道ダートトライアル選手権(6戦開催) 2020年JAF中国ダートトライアル選手権(4戦開催) 2020年JAF中部ダートトライアル選手権(6戦開催) 2020年JAF四国ダートトライアル選手権(4戦開催) 2020年JAF近畿ダートトライアル選手権(4戦開催) 2020年JAF九州ダートトライアル選手権(7戦開催) JAF東北、関東ダートライアル選手権は感染拡大防止のためシリーズ中止に ダートトライアル地方選手権は、新型コロナウイルス感染症の収 束が見通せなかった5月の段階で、まず関東がシリーズ中止を表明。 東北でも中止の表明が続き、東北は最終的には一戦も開催すること なく一年を終えた。北海道は3戦を延期して、中止は1戦に留めて6 戦を開催。中部と近畿はともに3戦の中止を余儀なくされたがシリー
JAF地方選手権2020年チャンピオン 北海道 FF-1クラス 今田恭嗣選手 FF-2/4WDクラス 原 宴司選手 RWDクラス(同点) 和泉泰至選手 RWDクラス(同点) 古谷欣竹選手 4WD-2クラス 島部 亨選手 中部 RWDクラス 山口順平選手 PN1 S1500クラス 本道治成選手 PN2クラス 石川純也選手 N1クラス 松岡剛志選手 N2クラス 村松俊和選手 S1クラス 村瀬貴之選手 S2クラス 三枝光博選手 近畿 RWDクラス 千賀達也選手 AE・PNクラス 田中淳平選手 N1クラス 一宮頼人選手 N2クラス 木村剛士選手 S1クラス 眞砂徳亮選手 S2クラス 藤本 隆選手 Dクラス 小川浩幸選手 中国
山谷隆義選手
四国
DIRTTRIAL ダートトライアル地方選手権 サポートを受けた目黒亮選手は、今季は全 日本ダートトライアル選手権JD2クラスに 参戦。開幕戦では4位入賞を果たした。 Bライセンス競技の若手を応援! CUSCO&DUNLOP若手育成プログラムが2021年も継続  Bライセンス競技を幅広くサポートする CUSCOがDUNLOPとの共同企画として昨 年実施し、大きな話題を呼んだ『CUSCO & DUNLOP B 級ライセンス競技 若手育成プ ログラム』が、昨年末のコロナ禍などの状況 を受け、今年も昨年と同じメンバーへの支 援を継続することになった。これはBライ競 技に参加する若手ドライバーを支援・育成 することで、Bライ競技の活性化やモーター スポーツ振興に貢献するというプログラ ム。選ばれた9名の飛躍に期待が集まる。 49
JAF地方選手権2020年チャンピオン 菅生 B2クラス 湯崎 伸選手 B5クラス 森田正穂選手 B6クラス 佐藤清貴選手 筑波 B1クラス 柴田 尚選手 B2クラス 菊間邦明選手 B4クラス 市川忠康選手 B5クラス 森田正穂選手 B6クラス 澁澤栄一選手 岡山国際 B2クラス 吉見伸吾選手 B5クラス 石田泰久選手 2020年JAF菅生サーキットトライアル選手権 (3戦開催) 2020年JAF筑波サーキットトライアル選手権 (3戦開催) 2020年JAF岡山国際サーキットトライアル選手権 (3戦開催) CIRCUIT TRIAL サーキットトライアル地方選手権 サーキットトライアル地方選手権は 地方レースと併催で3箇所で開催 各サーキット間において共通の規則によって行われたサーキットト ライアル地方選手権は、開催が予定されていた3つの選手権がシリー ズ成立を以て終了した。全4戦が組まれたスポーツランドSUGO戦 では、5月の開幕戦こそ中止に追い込まれたが、その後は3戦が成立。
第84回JMRC全国協議会会議 開催日:2021年3月17日 開催地:JAF関東本部(東京都)  3月17日、JAF関東本部において第84回 JMRC全国協議会会議が開催された。全国8 地区のJMRC運営委員長やJMRC全国振興 事業委員長がリアル参集とリモート形式で 出席し、換気やこまめな休憩を含めた感染拡 大防止策を徹底して開催された。  会議の前半では、2020年度の決算報告や 2021年度の役員人事の議案が審議され、 JMRC全国オールスターを含む振興事業委 員会報告や近況報告などが行われた。後半 では、JAFモータースポーツ部の村田浩一部 長らが臨席し、JAFモータースポーツ公式サ イトのリニューアルに伴う登録クラブ・団体 への協力要請や、現在構築中のJAFライセン ス業務のITデジタル化に関するプレゼン テーションなどが行われた。 全国8地区代表が参加するJMRC全国協議会の2021年第1回会議がリモート形式で開催 会場にはJMRC北海道の中田省吾氏やJMRC関東の小口貴久氏、JMRC四国の大西周氏やJMRC九州の星 野元氏、ラリー振興事業委員長の藤原篤志氏やレース振興事業委員長の関根基司氏が出席。JMRC東北の 小野守平氏や、ダートトライアル振興事業委員長を兼ねるJMRC中部の嶽下宗男氏、JMRC近畿の武地満 喜氏と淀野泰弘氏、JMRC中部の岩根つもる氏はリモート出席となった。 50
3クラスでチャンピオンが誕生した。サーキットトライアル発祥の地 と言われる筑波サーキットでのシリーズも、5月に予定した2戦は中止 となったが、残る3戦は成立した。毎回多くの参加者を集める筑波の 選手権では5クラスでチャンピオンが誕生した。岡山国際サーキット 戦でも4戦中3戦が成立し、2名のチャンピオンを生むことになった。
そこに 〝レーシング 〞は あるか !? 幾つになっても「競争」ができる! “オヤジ”がレースに挑み続ける理由 フォト/石原康、吉見幸夫、廣本泉、JAFスポーツ編集部  レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部 カートからF1パイロットを目指す”エリートレース”の世界。 その対極にあるのがアマチュアによる参加型レース活動だ。 いくら参加型でも、結果を残すには時間やコストが掛かるもの。 レースを長く続けるにも、相当の覚悟や目標が要るだろう。 ここでは、長年レースに挑む3名のベテラン選手にフォーカス。 彼らがレース活動に求めているものが何なのかを紐解いた。 51

いるTCRジャパンシリーズだけでなく、 2020年は鈴鹿クラブマンレースのFIT 1.5 チャレンジカップや、N-ONEオーナーズカ ップ、スーパー耐久シリーズなどでも活躍 するベテランだが、レース活動の出発点は、 2005年の鈴鹿クラブマンレースに遡る。 「もともと峠の出身なんですが、鈴鹿クラ ブマンレースに出ている知り合いから、“走 るのが好きならレースしてみたら”と誘わ れて出場したんです」ということで、鈴鹿 サーキットのFFチャレンジクラスにEG6 シビックでデビューすることになった。 「サーキット走行会には何度か参加して、 トップタイムも出していたので、レースで もイケるんじゃないかと思ってました。で も、デビュー戦は10位に終わった。公式 レースに出てみたら、自分は遅かったとい うことが分かったんです」と振り返る。 その一方で「悔しかったけど、めちゃく ちゃ面白かったんですよ。上には上がいる からもっと頑張らないとアカンと思った し、次は勝ちたいと思うようになりまし た」と、そこからレースに傾倒していった。 そして、EK9シビックで挑んだ2010年 のEK9・FFチャレンジクラス、そして EG6シビックで参戦した2012年のFFチ

ャレンジクラスでは、見事にチャンピオン に輝いた。2011年にはスーパー耐久へ、 2011~2012年にはシビックインターカ ップにも挑戦している。 「2013年は子供が生まれたのでレース活 動は休止した」と語るように、一度はレー スを離れるものの、2014年には鈴鹿クラ ブマンレースで復活。2015年からはFIT 1.5チャレンジカップに参戦。2017~ 2020年にかけてJAF鈴鹿・岡山ツーリン グカー選手権でチャンピオンを獲得したほ か、2016年からはスーパー耐久シリーズ にも復帰した。2019年にTCRジャパンシ リーズが設立されると、新たな挑戦を開始

年のレース業界では”ジェント ルマンドライバー”という言葉 がよく聞かれる。それは、プロド ライバーやワークスドライバーなどを目指 す気鋭の若手たちに対して、あくまで趣味 としてレース参戦を楽しむアマチュアのレ ーシングドライバーを指すことが多い。 しかし、人生経験豊富な彼らは、他の “遊び”もよく知っている。拘束時間も長 く、一定以上のコストが掛かるレース参戦 に代わる”楽しみ”も、たくさん知ってい るはずなのだ。 そんな彼らはレースのどこに魅力を感じ ているのだろうか。ここでは、長年に渡り 国内で活躍している3名のベテランドライ バーに、レースに打ち込む理由を聞いた。 鈴鹿の主・HIROBON選手 デビュー戦は散々な結果に まずご登場いただくのは、スーパーフォ ーミュラと併催されるTCRジャパンシリ ーズに参戦しているHIROBON選手だ。 HIROBON選手は、2019年から参戦して HIROBON 選手 2020.TCRJ.Sunday.Series.Bronze.class.チャンピオン 2020年JAF鈴鹿・岡山ツーリングカー選手権チャンピオン CUPRA.TCR/バースレーシングプロジェクト【BRP】 2019年からTCRジャパンシリーズに挑戦しているHI ROBON選手。2020年はCUPRAに乗り換えて試行錯 誤を繰り返しながらも総合優勝やブロンズクラスの チャンピオンを獲得。
うまくいかないことも多い でも、逆にそこが楽しい! 足掛け15年間に渡ってレースを続けて きたHIROBON選手だが、その理由につ いては、 「レースの“勝負する”という感覚が好き。 それに、長くレースをやってますが、レー スは同じ展開になることは一度もない。だ から、飽きることもないんです」と語る。 持ち前の負けず嫌いな性格も影響してい るのだろう。「レースではうまくいかない 近 「 同じ展開になることは一度もない レースの〝勝負する〞感覚が好き 」 52 ドライバーの伸び代がある限りは レースをやめることはない
した。

ことも多いし、セッティングに悩むことも 多いんです。でも、そこが楽しいんですよ ね。どうやったら速くなるのか、そのチャ レンジが面白いと思っています」と語る。 「レースは、努力したことがそのまま結果 に現れることも魅力の一つですね。2015 年にFIT 1.5チャレンジカップを始めた時 も、最初は勝てなかったんですが、ドライ ビングやセッティングを変えることで、チ ャンピオンを獲れるようになりました。な かなかタイムが上がらなくて、途中で辞め てしまう人もいますが、どうやって速く走 るのかを考えることも好きなので、嫌気が さすことはないんですよね」と付け加える。 「いいメカニック、いいガレージと出会え たこともあって、自分はレースを長く続け

られています。速くなりたい。そのモチベ ーションはレースを始めた時から、現在に なっても変わってません。TCRのマシンは 速いから、正直、体力的にしんどいんです。 そして、速い人もたくさんいるけど、そこ が面白いんですよね。だから、予算を確保 できる限り、レースは続けていきたいんで す」と語るHIROBON選手。今後も精力的 なレースライフは続いていくに違いない。 塩谷選手のデビューはザウルス 人気レースで揉まれて成長する

HIROBON選手と同様に、TCRジャパ ンシリーズに参戦する塩谷烈州選手も様々 なレース経験がある。そのデビューは 1989年に始まった日産ザウルスカップだ った。 「免許を取得してからは峠に入り浸ってま したが、レースに対する憧れもあったんで すよ。最初は、富士フレッシュマンで AE86レースをやりたかったんですが、当 時は台数が多くて実績がないと不受理でし た。僕はカートの経験はないんですが、た またまガレージにザウルスがあったので、 いきなりシングルシーターでレースを始め ることになったんです」と当時を振り返る。

塩谷選手は3年間、スポット参戦ながら ザウルスカップに挑戦。その後は借金返済 のために活動を休止するも、3年後には筑 波サーキットのAE86レースに復活した。 「ハチロクは3年ぐらいやりました。そこ で勝てたので勘違いして(笑)、1998年か らはシビックレースに参戦したんです。で も、あのレースは台数が多くて、かなり苦 労しましたね」と苦笑する。

塩谷選手は2001年に東日本シリーズで タイトルを獲得すると、2002年にはインテ グラワンメイクレースに参戦してタイトル を獲得。インターシリーズにも参戦した。 「当時はステップアップを夢見ていたし、 プロドライバーになりたいという気持ちも ありました。でも、インターシリーズでは 勝てなかったんですよね」と語る塩谷選手。 そして、2007年にはバイクで大怪我を喫 し、レース活動を休止することになった。

塩谷烈州選手

2020.TCRJ.Saturday.Series.Bronze.class.3位 2020.TCRJ.Sunday.Series.Bronze.class.3位

」 Honda.CIVIC.TCR/全薬工業.with.TEAM.G/MOTION'
“環境”を作る過程も面白い しかし、塩谷選手はレースを諦めなかっ た。2009年のスーパー耐久でレースに復 シビックTCRでTCRジャパンシリーズに参戦 する塩谷烈州選手。ホンダFFマイスターの意 地を見せ、2020年の各レースでは若手期待の ドライバーらと激しいバトルを展開した。 鈴鹿クラブマンレースはHIROBON選手のホーム レース。2020年もFIT1.5チャレンジカップに参戦 し、JAF鈴鹿・岡山ツーリングカー選手権のチャンピ オンを獲得した。
“試行錯誤”がレースの魅力

だけですし(笑)、年齢的にも、ドライバー として活動できる期間はそんなに長く残さ れていないと思います。そういう意味で は、若い頃より一生懸命かも知れません」。 「走る環境を作れて、ドライバーとして伸 び代がある限りは、レースをやめないと思 います」と語る塩谷選手。若手の台頭が著し いTCRジャパンシリーズだが、今後もサー キットを駆け抜けてくれることだろう。 フォーミュラは“スポーツ” DRAGON選手のレース事始め 血の気の多い若手がしのぎを削る日本の フォーミュラカーレースにおいて、それを 横目に見ながら、着実なステップアップを 重ねているドライバーがDRAGON選手だ。

全日本フォーミュラ3選手権には2013年 から参戦し、2017年にはF3-Nクラス、 2019年にはマスタークラスでチャンピオン を獲得。2020年には、JAF全日本スーパー フォーミュラ・ライツ選手権のマスタークラ スでもタイトルを獲得していて、今後は選 手権クラスでの活躍も期待されている。 そんなDRAGON選手が、フォーミュ ラカーレースに挑戦し続ける理由を、これ までのレースキャリアとともに聞いた。 「もともとクルマが好きで、改造して峠に

「2008年にリーマンショックが起きまし たよね。その時に『一番安価で楽しそうな カテゴリーは何だろう』と探したところ、 候補に挙がったのがスーパーFJだったん です。もともとレースは観る側で、一番ウ ォッチしていたのがF1やF3000、フォー ミュラ・ニッポンなどでした。それだけに フォーミュラは憧れの存在で、テレビの向 こう側の世界だし、自分がフォーミュラカ ーに乗れるなんて想像できませんでした。 でも、一番下のカテゴリーなら予算内でで きるかも……となったんです。実際にスー パーFJに乗ってみたら、小さなクルマで したが、フォーミュラカーの動きは、ハコ 車とはまったく異質なものでした。完全に “スポーツ”で、フォーミュラにハマった

DRAGON 選手 2020年JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 2020.Formula.Regional.Japanese.Championship TEAM.DRAGON.SFL[Dallara.320/SPIESS.A41] B-MAX.ENGINEERING 全日本スーパーフォーミュラ・ライ ツ選手権の初代マスタークラス王 者に輝いたDRAGON選手。第6戦 SUGOでは総合5位に入り、念願の 総合でのポイント獲得を果たした。
繰り出す感じだったんですが、その一方 で、レースへの憧れもあったんです」と語 るDRAGON選手。知人の誘いもあって、
54 日本のワンメイクフォーミュラは ハコ車よりシンプルに勝負できる
活すると、2011年にはST4クラスでチャ ンピオンを獲得。JAFもてぎ・菅生ツーリ ングカー選手権のFIT 1.5チャレンジカッ プでは2017年と2018年にタイトルを獲 得している。 そして、2019年からはTCRジャパンシリ ーズに参戦しているが、ホンダ系FFハコ車 を乗り継いだスペシャリストですら、手懐 けるのには時間が掛かっているという。 「TCR車両のシビックは、他に比べて乗 り方を変えなきゃいけないんですよ。で も、TCRはそこに面白さを感じています。 どうやってクルマを速く走らせるのかは、 いろいろ試行錯誤になりますけど、そこが レースの魅力だと思ってるんです。速いク ルマを作るためには的確なフィードバック が必要ですし、エンジニアやメカニックも 必要になる。当然予算は掛かるけど、そう いった”環境”をいかに作っていくかもレ ース活動の面白いところだと思ってます」。 「TCRは速いので、フィジカル的にはキ ツイです。クールスーツを着ているのは僕
2004年に鈴鹿サーキットで行われた第 33回インターナショナルポッカ1000km レースのオープンクラスでデビューするこ とになった。 その後も、2005年は同レースに参戦し、 2006年からポルシェカップに参戦するな ど、ハコ車によるレース活動を行うようにな っていったが、2009年には転機が訪れた。

んですよね」。 そして、DRAGON選手は富士スピード ウェイのスーパーFJに参戦することにな った。 自分の体もマシンの一部 フィジカルの改造を開始 当時、DRAGON選手は43歳で、周囲か らは“若いドライバーがやるカテゴリーで、 中年が趣味でやるレースではない”という 意見もあったようだが、デビュー戦では3 位に入賞。このリザルトが嬉しくもあり、 悔しくもあったのだろう。持ち前のストイ ックな性格も手伝って、アスリートのよう な姿勢でレース活動に取り組み始めた。 「今どきの若い子たちのようなカートの経

験はないし、彼らと比べて体重がある中年 ですから。フォーミュラカーはパワーウェ イトレシオが影響するので、トレーニング ジムに通ってフィジカルトレーニング、そ して食事制限も始めたんです」。 その後は、2010年のスーパーFJ日本一 決定戦で7位につけたほか、2011年の富 士シリーズではランキング2位を獲得。 2011年からはスーパーFJと並行してJAF -F4にスポット参戦して経験を重ね、2013 年からは全日本F3のNクラスへの参戦を 開始した。

「JAF-F4ではスピードレンジが上がった んですが、スーパーFJは、細いタイヤを 履いたローパワーなマシンなので、丁寧な 運転が身に付いてました。JAF-F4にはそ れが活きて、フィジカル的にもキツくはな かったんです。でも、それがF3マシンに なると、まったく次元の違う世界だったん です。体幹と首、腕を強化するために、も う一段上のトレーニングを始めました」と 語る。

そして「当初はレースに出るためのフィ ジカルトレーニングでしたが、そのうちト レーニング自体が楽しくなってきたんです よ(笑)。47歳で全日本F3を始めましたが、 トレーニングのおかげで、体脂肪が10% を切りましたからね」と苦笑する。

ワンメイクフォーミュラは シンプルに“勝負”できる

DRAGON選手は名実ともに日本を代表 するジェントルマンドライバーの一人と言 えるが、「クルマをツールとして見た時、 やはりフォーミュラカーの運動性能は特別 なものだと思います。日本のフォーミュラ カーレースはワンメイクが多いですよね。 なので、BoP(性能調整)のあるハコ車のレ ースと違って、ワンメイクフォーミュラは レースとしては非常にシンプル。“勝負”が

できるカテゴリーだと思います」と語る。 さらに「フォーミュラカーレースは、中 年になっても十分できると思います。コク ピットは狭くて運動量も多いので、体には 負担が掛かりますが、そのためにトレーニ ングをするので健康にもなれます。ハコの レースとは違って、接触してタイヤに乗り 上げたらマシンが飛んでしまう可能性もあ るので、レースにはきちんとしたプロセス が求められます。逆に言えば、しっかり練 習すれば、ハコでは味わえない世界を体験 できる。実際、日本では、スーパーフォー ミュラ・ライツより速いハコ車は、スーパ ーGTのGT500しかないと思うんです。 そういう意味では、日本でアマチュアが乗 れる最速マシンはフォーミュラカーで、し かも、日本ではカテゴリーが豊富なので、 自分の技量に合ったレースを選べます。そ こも魅力だと思っています」と語る。 「確かに、視力や反応速度の領域において 体の衰えを感じることもあります。ですが その分、経験値が増えてきたので進歩も感 じています。実際、2019年より2020年の ほうが速くなってるし、トップとのギャッ プも詰まっています。2020年のスーパーフ ォーミュラ・ライツでは総合5位に入れた ので、2021年は総合4位に入りたい。あく までも結果は重要だと思ってますので、一 つでも上に行けるようにしたいですね」。 彼らがレースに打ち込む理由には「試行 錯誤」と「勝負」の楽しさにあった。努力や 試行が結果に結びついたときの達成感は何 物にも代えがたいし、シンプルに腕で勝負 ができるワンメイクフォーミュラは、スポ ーツとしての純度も高い。 一般的な社会において、齢を重ねれば重 ねるほど「競争」とは疎遠になっていくも の。しかし、ライバルとの間接的、直接的 な競争状態が形成されるモーターレースの

「 」 2020年はフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップのマス ターズクラスにも参戦したDRAGON選手。クラス4勝を挙げ、F3相当のフォーミュラ の経験値を積み重ねた。 B-Max.Racingを取り仕切る傍らで、積極的なレーシン グドライバー活動を続けるDRAGON選手(写真左/ 2018年)。
世界には、常に「レーシング」があるのだ。
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ずか2回の走行で勝敗を 争うスピード競技のジム カーナ。全日本ジムカー ナ選手権のトップランカーたちは、 正確無比なドライビング、あるいは 本能が赴くままのアグレッシブ・ド ライビングでスーパータイムを刻ん でいる。そんな彼らにも「あの選手のドラ イビングはスゴイ!」、「あの走りはマネで きない」と言わしめるドライバーがいる。 全日本ジムカーナの上位勢が一目を置く 選手とは誰か? ドライビングスタイルの 違いと合わせて、彼らが理想とするジムカ ーナドライビングをクローズアップする。 まず、ARTAカラーのBRZを駆り2020 年の全日本ジムカーナ選手権PN3ではラン キング4位につけた川北忠選手は、「やはり 山野哲也選手ですが、それは誰もが思って いることですよね。山野選手を除くなら、 僕は小俣洋平選手を推しますね」と語る。 その理由について「僕は、ジムカーナの 戦い方を”エラーが起きないように”組み立 てるんですが、小俣選手はエラーが起きて もその場で対応できてしまうんです。つま り、失敗してもそれを後に繋げない走りが できる。そういったドライバーは、なかな かいないんですよね。以前から小俣選手は 適応能力の高いドライバーでしたが、最近 ではそれに磨きがかかって、理論や経験が 付加されたことで、最近のスーパーラップ が生まれているんだと感じています」と分 J A F スポーツ編集部 レポート/廣本泉、 J A F スポーツ編集部 わ 全日本ジムカーナ ドライバーに聞く あのライバルの 見習うべき凄いトコ あいつ は 56
析する。同じ後輪駆動使い、そして良き理 解者として小俣選手を見てきただけに、そ の成長ぶりには格別の思いがあるだろう。 「FF車両のドライバーだと若林拳人選手 ですね。技術も高いけれど、小俣選手のよ うに反射神経もいい。積極的にクルマを動 かしているところが他のドライバーとは違 うところだと思います」と、2020年のSA・ SAX2クラスでランキング2位につけた若 林拳人選手の名前を挙げていた。 川北選手と同様に、多くのドライバーが 後輪駆動使いとして小俣選手、FF使いには 若林拳人選手の名前を挙げている。 2020年のPN1クラスを戦う北海道の 米澤匠選手は、「重たいクルマをコントロ ールする河本晃一選手を尊敬しています。 もちろん、山野哲也選手のお手本のような 走りには凄みを感じますし、同じクラスを 戦う斉藤邦夫選手の無駄のない走りもスゴ イです。いつかは二人のような領域に到達 したいと思うんですけど、単純にスゴイな
した。あれで山野選手と僅差の勝負ができ るのは、正直理解できないので、山野選手 とは対極の凄さがあります」と語る。 続いて2020年は激戦区のPN2クラスで ランキング7位につけた工藤典史選手は、 「後輪駆動のドライバーなら山野哲也選手 や斉藤邦夫選手です。ムダがないし走りが 常に安定しているので、やはり極めた領域 にあると感じています。また四輪駆動なら、 片山誠司選手のドライビングはユニークで すね。乗り方がFF的で、イケイケで突っ 込んで曲げていく走りは面白いです」。 そして「FF使いなら、やっぱり若林拳人 選手ですね。彼はリアのスライドをうまく 制御していて、旋回軸で曲がっていく速度 も高い。クルマの仕上がりも良さそうです 川北忠選手/オートバックスDL.E.BRZ(2020年) 米澤匠選手/シンシアDL功誠会ロードスター(2020年) 工藤典史選手/YH.wmx.ITO.spmシビック(2020年) 小俣洋平選手/DL.WMコサリmCrt.124(2020年) 経験と理論が加わった、 小俣洋平選手ですね。 小俣洋平選手の走りは 理解できません(笑) 見ていて面白いのは、 片山誠司選手ですね。 実は茅野成樹選手に 憧れてました。 2020年全日本ジムカーナ選手権PN3 川北忠選手 2020年全日本 ジムカーナ選手権PN1 米澤匠選手 2020年全日本 ジムカーナ選手権PN2 工藤典史選手 2020年全日本ジムカーナ選手権PN2 小俣洋平選手 57
ぁと感じているのは小俣選手です」と語っ ている。 その理由については「小俣選手が2019 年にPN1クラスに移行してきた時、“あれ でいいの?”と思う暴れるような走りでし たが、それで異次元のタイムを出していま
やはりコーナリングは、 茅野成樹ですね(笑)。 やはり野島孝宏選手と、茅野成樹選手ですね。 津川選手のブレーキングと、 菱井選手のターンですね。 対極にいる仲川雅樹選手と、 津川信次選手ですね。 2020年全日本ジムカーナ選手権PN4 茅野成樹選手 2020年全日本ジムカーナ選手権PN4 野島孝宏選手 2020年全日本ジムカーナ選手権PN4 片山誠司選手 が、それをうまく乗りこなしてますよね。 マシンコントロールは若手ドライバーの中 ではピカイチだと思いますよ」と分析した。 引き算なのか足し算なのか!? 限界を超えた領域の“取り分” 多くの選手から高い評価を受ける小俣洋 平選手と若林拳人選手だが、小俣選手は誰 の走りが気になっているのだろうか? 「一番リスペクトしているのは、茅野成樹 選手です」と2020年のPN4クラスを戦う 大ベテランかつ4輪駆動マイスターの名前 を挙げた小俣選手。その理由について、 「自分が“ジムカーナ少年”だった頃から茅 野選手の走りには憧れがありました。ジム カーナを始めて茅野選手の横に乗せてもら う機会があって、そのときに凄く感動して、 オレの目指す走りはこれだと思いました」。 「茅野選手はハイスピードでありながら、 クルマをスムーズに曲げているんです。慣 性というか物体のエネルギーをうまく使っ た動かし方だと感じています」と分析した。 加えて小俣選手は「PN3クラスの川北忠 選手はクルマを丁寧に動かす人ですが、自 分はそっちじゃないんです(笑)。自分はミ スを許容範囲として、あえて限界を超えた ところで繋ぐタイプ。山野哲也選手を相手 にすると、そのミスが響いてくるんです が、それを意識し始めると自分じゃなくな ると思ってるんですよ」とのことで、小俣 選手は、王者へのチャレンジャーらしく、 独自に攻めの姿勢を貫いているのだ。 一方、四輪駆動車を駆る選手は、誰のド ライビングが気になっているのだろうか? 2020年のPN4クラスでランキング4 位につけた、若手期待の奥井優介選手は、 「同じクラスでは野島孝宏選手か茅野成樹 選手の走りを目標にするドライバーが多い と思いますが、僕は後輪駆動のようなドラ イビングをする野島選手のドライビングを 理想としています。とはいえ、まったく再 現できてませんけど(笑)。野島選手がやっ ていることは理解しているつもりですが、 真似できないほどレベルが高いんですよ」。 奥井優介選手とダブルエントリーで戦 い、そして父である奥井毅選手は「私は茅 野成樹選手がスゴイと思いますよ。茅野選 手は基本に忠実な走りで、誰よりも小さな ラインでコンパクトに走っているように感 じます。攻撃的ではないから、地味に見え るんですけど、叩き出すタイムは凄いんで す。私は4WDでもFFのようにテールを 2020年全日本ジムカーナ選手権PN4 奥井優介選手 DLクスコΩブリッグランサー犬 FCコサ犬ΩレイズDLランサー 2020年全日本ジムカーナ選手権PN4 奥井毅選手 58

落ち着かせて走りたいんですが、アクセル を踏むとラインが大きくなりがちなので、 茅野選手の走りは異次元だと思います」。 2020年はシーズン途中からGRヤリス での参戦に切り替えた片山誠司選手。得意 な名阪スポーツランドでは存在感を示した。 「FF使いだと仲川雅樹選手がスゴイと思 います。クルマをピタッと止めてミリ単位 で詰めてくる。練習熱心だしセッティング も細かい。技術と運動能力が揃っていると 感じています。後輪駆動使いだと、2020 年は参戦していなかったユウ選手や、スポ ット参戦した森嶋昭時選手ですね。週末を 通して、決勝に向けてコンディションを正 確に詰めていくんですよね」。 四輪駆動使いについて片山選手は、2020 年SA・SAX4クラス王者の名前を挙げた。

「僕は津川信次選手がスゴイと思います。 ピタッとクルマを止めるし、パイロンへの アプローチも正確。僕は一発屋の綱渡りの ようなドライビングなので(笑)、正反対に いるので憧れますよね」と苦笑いする。 ジムカーナには欠かせない ターンセクションの対応 そして、4WDマイスター勢である茅野 成樹選手と野島孝宏選手。PN車両のライ バル同士でもある彼らは、誰のドライビン グに一目を置いているのだろうか? 野島選手は「後輪駆動使いだと、やはり 山野哲也選手と小俣洋平選手ですね。二人 ともテクニックは素晴らしく、まったくス タイルが違うのに接戦になるんですから。 FF使いだと若林拳人選手がピカイチで、 高江淳選手のターンもスゴイと思います」。 「PN車両では、やっぱり茅野成樹選手で すね。クルマをタテに走らせる技術が抜群 で、きっちり止めて、きっちり曲げて、き っちり前に出す能力がスゴイですね」。 「SA車両だと津川信次選手と菱井将文選 手ですね。特に津川選手のブレーキがスゴ イ。昔、データロガーを比べたことがある んですが、津川選手はブレーキの初動に特 徴があって、普通はロックしちゃうところ を、ロックさせずに速度を落とせるんです。 そこが本当に上手いと思いますね。菱井選 手は、やっぱりターンの技術が素晴らしく 高い。普通ならターン中でもボトムスピー ドを上げたいと思うんですけど、菱井選手 はあえてマシンを止めて、小さく回して前 に出す。その技術がスゴイですね」と語る。 一方の茅野選手は「関東のドライバーは 細かいターンを小さくまとめるのが上手い ですね。自分はターンが苦手で人並みレベ ル。コーナリングで稼いでいる感じなの で、野島選手に勝つためには人並み以上に ターンを決めないといけないと考えていま す。なので、野島選手のターンはスゴイと レコードラインがあるわけではないので、 設定コースへのアプローチは、経験値や考 え方、全体の組み立て方によって千差万別 だ。それだけに、勝利のためにはライバル の走りの分析は必要なプロセスで、どうに かして自分に応用するか、はたまた、独自 路線を貫いて一発逆転を狙うといった、そ
針に糸を通す繊細なコントロールで最短
手かな。SA・SAX4クラスなら菱井将文選 手で、360度ターンが素晴らしい。オール マイティに速いのは津川信次選手ですね」 と語る。 ちなみに茅野選手が考える理想のドライ ビングは「コーナリングは茅野成樹です (笑)。ターンは菱井選手だけど、SA車両 はまた違いますからね。PN車両なら、や はり野島選手のターンが素晴らしいと思い ます。でも、野島選手はコーナリングも上 手い。特に高速コーナーが速いので、あの “野島走り”が正解なんでしょうね」。 「ターンで野島選手に勝ったこともあるけ れど、毎回勝てるわけではないんです。勝 つためには一発の集中力とコースへの対応 能力が必要です。自分はキャリアが長くて 引き出しはあるつもりなんですけど、なか なか思惑通りにはいかないですね(笑)」。 ジムカーナ競技は、サーキットのように 片山誠司選手/GR水戸インターYH.Wmヤリス(2020年) 野島孝宏選手/DLレイズWM.Lubランサー犬(2020年) 茅野成樹選手/KYB☆DL☆BM☆ランサー(2020年) 100勝王者の山野哲也選手。コースや天候を見極めて車両やアイテムと 真摯に対話するアプローチはあらゆる選手からお手本とされている。 59
れぞれの考え方で千分の一秒を争っている。
ラインを駆け抜けるドライバーもいれば、 卓越した対応能力でマシンをねじ伏せるド ライバーもいる。それぞれが磨き上げたド ライビングをぶつけ合って日本一を決める 全日本ジムカーナ選手権は、まさにドライ ビングテクニックの見本市と言えるだろう。 思います。若いドライバーだと奥井優介選
JAF登録クラブ・団体の相互交流を円滑 にし、調和ある発展を目的とする「JAF登録 クラブ地域協議会(JMRC)」。全国に8つ の団体があり、そのうちJMRC中部には中 部地方7県(富山・石川・福井・岐阜・静 岡・愛知・三重)のクラブが所属している。  このレスキュー講習会は、各競技会でコ ースマーシャルなどの役務を担っている人 たちを主な対象として、緊急時の基本動作 と応急手当、即ちファーストエイドの方法 をレクチャーするものだ。  JMRC中部では鈴鹿サーキットで毎年1 回、北陸地方でも2年に1回、レスキュー 講習会を開催している。今回の講習会は当 初、定員20名で開催するはずが、その倍 近い応募が集まり、急きょ広い会場で行わ れることになった。  講師を受け持つのは、全国のモータース ポーツに携わる人たちにファーストエイド の普及を図ることなどを目的に設立された、 モータースポーツ・ライフセービング機構 (LSO)。受講を完了した参加者は、LSOよ りFIRST AIDER with CPR&AEDトレー ニングの認定を受けることができる。この J フォト/吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部 JMRC中部レスキュー講習会 日程:2021年2月14日(日) 会場:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市) 担当:JMRC中部レース部会 検温や手指の消毒、マスク装着といった感染 拡大防止対策の元で講習会は実施された。 参加者には講習で使用するテキスト、COV ID-19追加冊子、感染防止用具などを配布。 チャプターごとに講師の説明を受け、動画で予 備知識を学び、実技に移る講習の流れ。 鈴鹿サーキットのピットビル2Fで レスキュー講習会が開催された。 60
AF中部地域クラブ協議会 (JMRC中部)の主催で2月14 日、鈴鹿サーキット・国際レ ーシングコースのピットビル2階におい て、レスキュー講習会が開催された。

認定は2年間有効で、今回も認定の更新を 目的のひとつとして受講に訪れた参加者が 多かった。

講習会のスタートは午前9時。その30 分前に受け付けが始まると、参加者が続々 とやってくる。今回の講習会が以前と大き く異なるのは、これが新型コロナウイルス 感染症(COVID-19)の感染拡大下での開 催だということだ。参加者は事前にインタ ーネット経由で2度の体調確認を済ませ、 当日は会場に入ると検温と手指のアルコー ル消毒の後に参加手続きを行って、大きく 間隔を空けて配置された椅子に腰かけて講 習の開始を待つ。  コロナ禍の影響は講習内容にも色濃く表 れており、各参加者には通常のテキストに 加えて「COVID-19対応スキル ワークシ ート」と題されたテキストが配布された。 これには傷病者との距離の取り方など、フ ァーストエイドを行う際の感染防止策がま とめられている。また、実技講習は各自に 支給されたゴム手袋を装着してアルコール 消毒をしながら行った。以前に対人で行わ れていた実技は、自分の体で行うなど他人 に触れないやり方に変更された。「講習会 でもファーストエイドでも、感染しない、 させない」ことが徹底されていた。  午前9時、講習が始まった。参加者は定 員いっぱいの40名で、うち7名が女性。 受講者のクラブが扱うカテゴリーは、四輪 レース、ラリー、ジムカーナ、ダートラ、 二輪と、カート以外のほぼすべての分野に わたっている。その半数近くが初めての受

ファーストエイドに対する関心の高さを表 すものと言えそうだ。  講師はLSO事務局長の伊東和雄氏。レ ースシーズン中はスーパーGT等の救急救 命チームに加わって全国のサーキットを回 り、オフシーズンにはレスキュー講習会な どの講師として、やはり日本中を駆け回っ ている人物だ。今回は他にLSOのスタッ フ1名と、鈴鹿サーキットのスタッフ2名 が講習のサポートに当たった。  広々とした会場は、半分ほどが座学のた めに椅子を並べて使用され、残りが実技講 習のスペースに用いられる。実技で使用す る訓練用人形やAEDなど大量の機材はす べてLSOが用意したもので、講習会のた

び保管場所から運んでくるそうだ。  最初の講義はファーストエイドの概論。 テキストの内容をまとめた7分間ほどの動 画を観た後、伊東講師の講義が始まった。 まず語られるのは、「ファーストエイドと はどのようなものか」という話だ。「ファー ストエイドは怪我や病状の悪化を防いで、 なるべく早く医師の手当てを受けさせるた めのもの。いわば“救命リレーの第一走 者”で、初動がいちばん大事です」と伊東 講師。テキストにはこう記されている。 「第一走者にとって大切なことは、すばら しい完璧なランニングを披露することより も、とにかく走り始めること。そしてバト ンを落とさないように第二走者、アンカー

講だったことは、モータースポ ーツを現場で支える人たちの、
JMRC中部の事務局や、インストラクターらの 協力の元、講習は1日がかりで行われた。 事故状況の観察と傷病者への接触に始まり、 「大丈夫ですか?」と肩叩きして反応を見る。 続いて呼吸の確認を行い、可能であれば気道 を確保する。 CPR/心肺蘇生法で胸骨圧迫。COVID-19対 策にエアロゾル飛散防止のハンカチを使用。 「LSOはサーキットが中心になって作っている、安全のための任意の組織です。講習の内容は応急手当のいちばん 基本的なところなんですが、基礎知識のない人がいきなりそれをやってもうまくはいきません。競技会場ではコー ス上だけでなく、観客が熱中症で倒れたりすることもありますから、すべての人が基本的なスキルを覚えておくこと が大切です。今回も参加者のみなさんの熱意が素晴らしかったことが印象的でした」。 さらに心肺蘇生とAEDを併用した訓練へ。 AEDの音声に従って処置を行っていく。 井上裕紀子さん 知識を身に付けて“いざ”という時に備える  全日本ラリーで11年連続ナビゲーター部門の チャンピオンに輝く井上さんは、オフィシャルと しても20年以上の活動歴を持つ。講習会は今回 が3回目の受講だ。「今回は対人の実技がないのは残念でしたけれど、実際の現 場で役に立つお話を伺うことができるこの講習会には、毎回すごく期待を持って 臨んでいます。特にラリーの場合は、いざという時に現場にいる人たちでなんと かしなきゃいけないシチュエーションが非常に多く、そのためにも初動が大事な ので、ちゃんとした知識を身に着けておくことは必要だと思っています」。 講習会参加者の声 61

項目を学び、これを次々と繰り返し ていく。講習会は1時間の昼休みを はさんで午後4時過ぎまで続く一日 がかりのもので、その内容も多岐に わたるのだが、それぞれの項目をコ ンパクトにまとめた講義がテンポ良 く続くうえ、経験豊富な伊東講師の ユーモアを交えた語り口も分かりや すく、退屈することがない。小休止 をはさむタイミングも心地良く、参 加者たちの間に集中力が途切れる様 子は最後まで見られなか った。  実技講習では参加者が 3人1組になり、伊東講

師のレクチャー内容を実体験し ていく。会場で初めて顔を合わ せた人同士がトリオになること もあったからか、最初はいささ かぎこちない雰囲気だった。そ れが項目が進むにつれて、互い に声をかけあって実技のやり方 を教え合うなどチームの息が合 っていき、会場の雰囲気は講義 が進むにつれてどんどんと温ま っていった。

レクチャーの内容も、単にテキストをな ぞるだけにとどまらない。例えば心肺蘇生 の胸骨圧迫(心臓マッサージ)では「指先で 肋骨を押さないように、胸に置いた両手の 指を組むなどして指先を上げる」、「肘や手

へと引き継ぐことです。(中略)第一走者が スタートを切らなければバトンは第二走者 やアンカーへは届かず、救命のゴールはき わめて困難となってしまいます」。  講習はここから実践的なレクチャーへと 進んでいく。その項目は以下のとおりだ。 1.当初の観察と接触 2.生の徴候の調査 3.気道確保と回復体位 4.心肺蘇生とAEDの使用 5.止血とショック管理 6.迅速な全身観察 7.各部のけがと応急手当 8.負傷者の固定と搬送  5分程度の動画でテキストの内容を確認し てから実技講習へ、という流れでひとつの  実技講習中や小休止の時間には、自ら分 からない点を講師に教わりに行く受講者の 姿も見受けられた。競技会の運営に携わる オフィシャルは、あくまでボランティアであ ることが多い。そんな人たちが、他人を救 うための知識をこれほど積極的に学ぼうと する姿勢には感銘を受けた。  スムーズに進行したこの日の講習会は、 予定より早い午後4時前にすべての講義を 終え、FIRST AIDER with CPR&AEDトレ ーニングの認定・登録手続きをもって散会 となった。「事故が起きないように。でも、 万が一起きた時には、自分が“救命リレー の第一走者”になれるように」。モータース
らの体で応急手当の動作を体験しておくこ とは、いざアクシデントの現場に遭遇した 際に大きな効果を発揮するはずだ。 嘔吐等で窒息の恐れがある場合に取らせる回 復体位。気道確保され、体への負担も少ない。 ターニケット(止血帯)を用いた止血方法。動脈 性の出血を止めるのに有効的だ。 蘇生成功に欠かせないAEDはさまざまな場所 に普及した。使用方法はぜひ覚えておきたい。 「この講習はモータースポーツだけじゃなくて、一般社会でも役に立つもの だと思います。特にこういう(コロナ禍の)時期ですので、自分の身を守るた めにも正しい知識を身に着けて、感染防止を図りながら救助ができることは 大切です。だから、むしろ今の時期こそ、この講習会はやっていかなきゃい けないな、と思って開催しました」。 「今回は新型コロナの関係で、事前の体調確認をどのように行うか、と いうところはけっこう苦労しました。また、鈴鹿サーキット国際レーシン グコースのピットビルが会場でしたから、参加者の気が散らないように 椅子をコースではなく壁向きに置いて、目線や聴覚がコース上のスポー ツ走行へ向かないように、という点も工夫しました」。 講習会参加者の声 この受講で自信を持って一歩が踏み出せる  ダートトライアル競技でオフィシャル歴1年の 黒川さんは、今回が初の受講だ。「今日の講習会 で一番タメになったと感じたのは、AEDの使い方 と心臓マッサージでした。オフィシャルで事故に遭遇することもあるんですが、 今まで一歩踏み出せなかったところが、今日で自信を持って踏み出せるように なったかな、と思います。ダートラはやっぱり横転が多くて、けっこう大きな事 故があった時に自分も近くにいたことがあるんですけれど、その時は声をかける ことしかできなかったので、これからは一番先に動けたらいいなと思いました」。 黒川真功さん 62
ポーツは、こんな人たちの情熱に支えられ ているのだ。 首を曲げず、上半身の体重移動で垂直に圧 迫する」といった具合に、実践において大 切なポイントが、実技体験真っ最中の参加 者たちに伝えられる。AED使用の際、どの 位置にAEDを置くとスムーズに作業が行 えるか、といった話は、ファーストエイド に熟練した人からしか教われないものだろ う。例え人形が相手の訓練であっても、自

ニカルなものが増えているようだ。しか し、今回、“難所”と見られた縦列駐車ガレ ージについては、「下手に考えすぎず、い つもの感覚でやったらスッと入れた」、「肩

際に走った参加者は意外と苦労しなかった 様子。
ートテストのコンセプトが体現されたセク ションだったようだ。 春到来を待ちきれず、全国各地で 新たな年のオートテストが始まった 年が明けた2021年。1月末には静岡、大阪を皮切りにオートテストが始まった。 新たなスタイルを取り入れ始めたイベントもあり、2021年もオートテストは 進化を続けることは間違いなさそうだ。冬の寒さを吹き飛ばして行われた 全国のオートテストの模様を見てみよう。 フォト/小竹充、谷内寿隆、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 オート テスト 倶楽部 AUTO TEST CLUB スポーツランドSUGOのメインゲー トの隣に位置する広大なスペース、 Mパークでは、オートテストのシリーズ戦 が数年前から行われているが、今年は通常 のシリーズ戦の前に、冬限定のウインター オートテストが2月と3月に1回ずつ予定 され、その第1戦が2月14日に行われた。 今回のオートテストの特徴は、安全な広 い会場を活かしたコースの長さで、ほとん どの選手は1分30~40秒台で走るという ロングコースが設定された。3つ設定され たガレージ(車庫入れ)はいずれもバックで 進入するが、縦列駐車に近いガレージや入 口と出口が違うガレージなど、三者三様に 工夫を凝らされた勝負所を、手練れた参加 者は思い思いの方法で攻略していた。 SUGOのオートテストは、始まった当 初は広大なスペースを活かしたジムカーナ 的な要素が強い設定だったが、人気の高ま りに沿ってオートテストの“キモ”である ガレージの設定が増え、かつその形もテク 2月14日に24名が参加して行われ、 AT、MT、EXPERTの3クラスに分かれ て、東北地区今年初のオートテストを 楽しんだ。経験者が集うEXPERTクラ スでは3人の選手が1分20秒台で走り 切った。 マルイコンタクトレンズカップ2021 SUGOウインタートライアル第1回 開催日: 2021年2月14日(日) 主催: SSC 開催場所: スポーツランドSUGO Mパーク(宮城県村田町) 63
の力を抜いたらスムーズにこなせた」と実
まさに、『気軽に参加できる』を謳う、オ

にオートテストの強豪として知られる日紫 喜俊夫選手と浜屋雅一選手が下馬評通り、 決勝に進み、ともに1本ずつを取り合う接 戦となったが、最後は浜屋選手が3本目を 制して優勝した。 「なるべく相手のことは気にせず、普段の オートテストと同じ気持ちで走ろうと思い ましたし、その通りに走れたつもりです」 と勝った浜屋選手。「今回の設定では相手

勝ち抜きオートテスト戦が初開催 1月31日、大阪市の舞洲スポーツアイ ランド特設コースでは、2台が同時にスタ ートしてトーナメント方式で競うオートテ スト、「Dual Auto Test」が初開催された。 今回のDual Auto
に並べたレイアウトを採用した。当初は背 中合わせでスタートする案もあったようだ が、同じ方向に走る形が採られた。 今回は2名のドライバーが、1本ずつコ ースを入れ替えながら同時スタートで対 戦。先に2本を制したドライバーが勝ち上 がるという形で行われた。西日本ではとも
と思うので、また違う気持ちになるかもし
ちが、自分の普段の実力以上の走りを引き 出してくれるという可能性もあるとは思い ます」と振り返った。 ある参加者は、「観てる方も楽しいイベ ントだと思うので、Dual Auto Testは観 せるオートテストとしても、この競技を PRするイベントになってほしいですね」 と話した。Dual Auto Testが少なくとも オートテストの新たな可能性を示してくれ たことは、間違いないようだ。 2月21日、中国地区では今年初となるオートテスト、「オート テストin.TSタカタサーキット」が開催された。これまでオー トテストを積極的に開催してきた中国地区とあって、2021シーズ ンの到来を待ちわびた参加者も多く、今回は75名ものエントラン トが集まった。この多数の参加者に対応して、イコールコンディ ションを図るべく、当日は12ものクラスが設定された。会場と なったTSタカタサーキットは、今年は全日本ジムカーナ選手権も 開催される中国地区を代表するスピード競技コースのひとつだ が、当日は観戦エリアとなるピット、パドックに近い場所 にコースを設定するなど、観戦のしやすさも考慮したレ イアウトとした。  コース設定は前半をスラロームが連続するセクションとし、後 半にラインまたぎとガレージを設定する形を採用。大きめのクル マを対象としたクラスにミニバンで参戦したある選手は、「サー キットを走れるというので参加しました。意外と自分のクルマも 走れるんだなと実感できて良かったですけど、今度は娘の小さい クルマで家族一緒に出たいです」と初体験のオートテストを楽し んだ様子だった。 オートテスト人気が高い中国地区でも2月にシーズンが開幕! オートテストin TSタカタサーキット 開催日:2021年2月21日(日) 主催:CCN 開催場所: TSタカタサーキット(広島県安芸高田市) 参加者の経験・レベルや車格に応じて12ものクラスが設定された。デモ ラン、GRヤリスの試乗会、レーシングシュミレーター体験会など付帯イベ ントも盛り沢山だった。 ラインまたぎ、ガ レージは後半に 設定。ガレージ は入口と出口を 別にする形が採 られた。 舞洲でもオートテストのシリーズが数年前から開催されているが、同 時スタート方式は今回が初。今年はこの舞洲の他、兵庫県三木市の、 かじやの里メッセみきでも、Dual.Auto.Testの開催が予定されている。 Dual Auto Test 開催日:2021年1月31日(日) 主催:TJ 開催場所:舞洲スポーツアイランド特設コース(大阪市此花区) 64
Testは、縦長の敷地 を利用して、同じレイアウトのコースを縦
はよく見えませんでしたが、これが並走と なったら、相手の動きが今日よりも見える
れないですね。相手に勝ちたいという気持

富士スピードウェイのカートコースを舞台に行われたオートテ ストには48名がエントリー。クラス区分はエキスパートとビギ ナーの2クラスとし、楽しく競技に臨めるようにカートコースに 沿ったシンプルなコースレイアウトとした。その甲斐あって、ミス コースは2ヒート中でわずか2名だけに留まった。

優勝はエキスパートクラスがスイフトスポーツの浜屋雅一選 手、ビギナークラスがMR-Sの氏家龍一選手。またJAFウィメン・ イン・モータースポーツ作業部会によるサポートで女性参加者の 表彰も行われ、総合12位の古賀亜希子選手がスイフトを駆ってLa dy's.Best.Time賞を獲得した。

競技長を務めたプリンスモータリストクラブ・スポーツ(PMC・ S)の関根基司氏もこのオートテスト開催に携わり、「(今回のオー トテストは)100点満点の80点。オフィシャルの体制とか改善の 余地はありますが、今後のシリーズはもっとうまく開催できると思 います」と手ごたえを感じた様子だった。

20 15年から国内で開催されているオートテストは6年目を迎 え、各主催者はさまざまな趣向を凝らしている。そんな中、 JAF公認クラブのビクトリーサークルクラブ(VICIC)による、オー トテストのシリーズ化を目指した取り組みがなされた。1月30日 にスタートを切った「JAFオートテスト.in.富士スピードウェイ」 は、全5回の開催を予定したオートテストとなっている。  主催のVICIC・今宮眞代表によると、「富士スピードウェイとい うモータースポーツに最適な施設で定期的にオートテストを開催 することで、クルマ好きな皆さんの盛り上がりが図れると思いま す」と語る。一戦限りではなく、同じ開催地で継続して行うことで 「次こそは頑張ろう」と参加者の参加意欲の形成を狙う。
オートテストのシリーズ化の取り組みで 新たなモータースポーツの可能性の兆し JAFオートテスト in 富士スピードウェイ 開催日:2021年1月30日(土) 主催:VICIC 開催地:富士スピードウェイカートコース(静岡県小山町) 富士スピードウェイのカートコースを有効活用して行われた。初心者でも楽し めるようにミスコースのないシンプルなコースレイアウトだ。 本大会ではJAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会のサポートもあり、女性の全参加者 に記念品が贈られると共に、1位の選手にはLady's.Best.Time賞の盾も授与された。 ビクトリーサークルクラブ 今宮眞氏 「(富士スピードウェイの カートコースの)コース自体 が“遊びからモータース ポーツ”というコンセプトと なっているので、オートテス トの開催会場としてはピッ タリな場所です」と、今後 のシリーズ主催に期待を寄 せる今宮氏。 尾林憲一/明子夫妻 ジムカーナ経験者でもあ る尾林さん。オートテスト は3年前から始めて、参戦 10回ほどになる。「一般道ではできない急発進 /急制動が、ぶつける心配なくできることが魅 力」と憲一さん。明子さんは「富士開催はトイ レ等の設備がしっかりしていたので安心です。 富士山もきれいに見られて良かったです」と、 参加のしやすさを感想として挙げた。 吉澤瞭介/美穂夫妻 夫の誘いで初参加の美穂 さん。「近所のスーパーま で運転する程度のペー パードライバーなんですが、非日常的な走行が できてとても楽しかったです」と、オートテス トに好印象の様子。一方、ジムカーナ経験者の 瞭介さんは美穂さんの運転を見て「だいぶ運転 が上手くなりましたね。日程が合えばまた2人で 参加してみたいですね」と語った。 プリンスモータリストクラブ・ スポーツ 関根基司氏 競技長として今大会のオー トテストの開催に携わった 関根氏。「後退がある競技 は非常に興味深いです。皆 さんには参加してみて走る ことの面白さを感じてもら い、小さなレースに挑戦し て欲しいです」。 オートテスト参加者 日柴喜俊夫さん 各地のオートテストに参加 するオートテスト常連の日 柴喜さんに話をうかがっ た。「今回はシリーズという ことが面白そうなので参加 しました。日程が合えばシ リーズ全戦出たいと思い ます」と今後の参加に意欲 を見せた。 参加者の声 参加者の声 65
ニッポンのモータースポーツは JAF 動画サイトでチェックしよう! NEWS! スーパーフォーミュラからレーシ ングカートまで、国内で開催 されるJAF全日本選手権のイマを伝 える、インターネット配信を利用し た国内モータースポーツニュース情 報番組を配信中です。番組のナビゲ ーターは、日本を代表するレースア ナウンサー、ピエール北川さん。4月 からは月1回の配信予定です。 JAFモータースポーツホームペー ジの特設バナーからご覧になれます が、YouTubeの公式アカウントから も無料で視聴が可能です。 全日本選手権のイマを伝えるモータースポーツ・ニュース情報番組 「JAF モータースポーツニュースダイジェスト」好評配信中! JAF モータースポーツホームページ http://jaf-sports.jp 公式チャンネル チャンネル登録をお願いいたします!! JAF MOTOR SPORTS YouTube 2 3 4 5 6 1 JAF MOTOR SPORTSホームページの“取扱説明書”です WEB誌面、動画、カレンダー、講習会日程、オートテスト…などなど、役立つ情報が盛りだくさん! 1 公示・お知らせ モータースポーツの規則や規定の改 正、登録車両や車両公認の申請一覧、 競技会の日程の変更や取消等、ライ センス所持者向けの情報を掲載。 2 NEWS&TOPICS 最新のモータースポーツのニュース やトピックスを随時更新している コーナー。各種競技の速報はここで チェックしよう! 3 NEWS DIGEST 直近で開催された競技を月1回公開!  モータースポーツのHOTなニュースを お伝えする動画番組。過去放送のバッ クナンバーも充実。 4 競技会カレンダー 主要モータースポーツを始め、全日本 選手権や国内競技会を「ラリー」「ジ ムカーナ」「ダートトライアル」「レーシ ングカート」のカテゴリーで紹介。 5 ライセンス講習会日程 全国で開催されているライセンス取得 のための講習会を開催日順にご案内。 A/Bライセンス以外に、公認審判員 やカートライセンスも検索が可能。 6 AUTO TEST モータースポーツの入門競技・オート テストのルール説明から、直近開催予 定の情報までを網羅。オートテストの 雰囲気がわかる動画も必見! JAF スポーツ誌は2018年にリニューアルし、現在 は年4回の季刊発行となりました。本誌内容の 充実化のため、また情報の速報性を図るため、いくつかのコ ンテンツがJAFモータースポーツホームページに移行いたし ました。 そこで今回はパソコンやスマホでいつでも気軽にアクセス できるホームページの活用方法を、主だったバナーを中心に 紹介していきます。 常に最新の情報を掲載している「公示・お知らせ」「モータ ースポーツカレンダー」は競技関係者なら要チェック。また WEBならではの動画配信コンテンツ「NEWS DIGEST」や、 競技会等の速報「ニュース&トピックス」も必見です。その他、 競技結果や獲得ポイントのデータベースもありますので、上 手に活用して、さまざまなシーンでお役立て下さい。 告知 ※リニューアル移行作業期間中は「NEWS&TOPICS」等の更新が停止される可能性があります。あらかじめご了承ください。 JAF MOTOR SPORTS ホームページがリニューアルされます!
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J A F M O T O R S
2021 SPRING
P O R T 第S 55巻 第 2 号 2021 年 5 月 1 日発行︵年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行︶ 発行人 西岡敏明 ☎ 0 3 ︵ 5470 1711 ︵代︶ 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 0570 00 2811 ︵総合案内サービスセンター︶ 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス 定価279円
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