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2023.5.4
万物の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯とは?特徴と鑑賞のコツも解説
万物の天才と称されたレオナルド・ダ・ヴィンチは、芸術に興味のない方でも一度は名前を聞いたことがある偉人でしょう。ダ・ヴィンチが芸術界に与えた功績は大きく、ミケランジェロやラファエロと並んでルネッサンスの三大巨匠の1人として知られます。
しかし、実は現存するレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画作品は、ごくわずかだとご存じでしたか? この記事では、ダ・ヴィンチの生涯について、作品、特徴、鑑賞のコツを通して紹介します。
ダ・ヴィンチの生涯①:今でも謎多き『万物の天才』
Leonardo da Vinci, Public domain, via Wikimedia Commons
レオナルド・ダ・ヴィンチは、芸術以外にも天文学や物理学などさまざまな科学の分野で才能を発揮しました。ミステリアスで神秘的な印象を持たれることがありますが、研究や観察は緻密で合理的なものが多く、歴史上最も多才だった人物として知られます。芸術分野においては、『モナ・リザ』や『最後の晩餐』を始めとした名作を残し、盛期ルネッサンスの写実主義と古典主義の中心的人物でした。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』, Public domain, via Wikimedia Commons
レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』,Public domain, via Wikimedia Commons
ダ・ヴィンチは、14歳からフィレンツェで師ヴェロッキオ(1435年頃- 1488年)に弟子入りし、フィレンツェやミラノで芸術活動にあたったといわれています。いくつか作品を残したのち、レオナルド・ダ・ヴィンチは、1513年から3年ほどローマで生活していた記録があります。
しかし、同時期にヴァチカン宮殿の装飾で活躍していたミケランジェロやラファエロと対照的に、ダ・ヴィンチはローマに多くの作品を残しませんでした。1516年以降はフランソワ1世の招待によりフランスにうつり、1519年に死去するまで国王の居城近くの邸宅に住んでいました。
ダ・ヴィンチの生涯②:現存する作品は実はごくわずか?
レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』, Public domain, via Wikimedia Commons
ダ・ヴィンチは芸術家として偉大な功績を残しているものの、現存している作品は実はごくわずかで、15作品程度といわれます。その少ない作品の中でも、現在では本人の作品ではない可能性が疑われているものもあります。有名なダ・ヴィンチの自画像も、その1つです。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『自画像』1510-1515年, Public domain, via Wikimedia Commons
レオナルド・ダ・ヴィンチは、うまくいかなかった作品をすぐに破棄してしまったともいわれます。また、芸術分野においても常に科学的探究心を持っていたダ・ヴィンチは、新しい技法に挑戦して失敗してしまうこともありました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』(部分), Public domain, via Wikimedia Commons
実際、ミラノの壁画『最後の晩餐』は、当時の壁画に一般的だったフレスコ画技法ではなく、パネル絵などに用いられたテンペラ画技法が用いられています。結果的に『最後の晩餐』はわずか20年程度で顔料の剥離が進み、現在残っている作品は損傷が激しいことがわかります。
ダ・ヴィンチの生涯③:デッサンと解剖学
Leonardo da Vinci, Public domain, via Wikimedia Commons
完成した絵画は少ないにもかかわらず、なぜレオナルド・ダ・ヴィンチの芸術界への影響がここまで大きいのか? それは、ダ・ヴィンチが残したデッサンの多さによります。
初期ルネッサンス以降、とくにフィレンツェの工房におけるデッサンの重要性は高く、芸術家の本質的なスキルとみなされていました。ダ・ヴィンチは、現存するだけでも900種類のデッサンを残しており、絵画作品の下絵や人体・自然の観察などさまざまなバリエーションがあります。
レオナルド・ダ・ヴィンチ『衣服の研究デッサン』15世紀後半, Public domain, via Wikimedia Commons
レオナルド・ダ・ヴィンチは、筋肉や骨の構造を含めた人間や動物の解剖学に強い関心を示していました。人体表現を研究するデッサンでは、洋服だけにフォーカスして描かれていることもあり、写実表現への飽くなき探求心が伺えます。
ダ・ヴィンチの生涯④:ダ・ヴィンチの作品を鑑賞するコツ
レオナルド・ダ・ヴィンチ『受胎告知』, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ダ・ヴィンチの作品を鑑賞する際は、細やかな人体や自然の観察に注目しましょう。レオナルド・ダ・ヴィンチの作品では、登場する人物はもちろん、背景の植物や動物にいたるまで細やかな表現にこだわった特徴があります。
ダ・ヴィンチの衣服の表現は、ゴシックから初期中世にかけての堅苦しい質感に比べると、自然で温かみがあります。衣類の下の肉体を感じさせる天才的な技術は、徹底的な研究があってこそ成り立つものです。
作品数は少ないものの、デッサンが多い点もポイントです。デッサンのうちのいくつかはルーブル美術館やウィンザー城のロイヤル・コレクションなどに所蔵されています。
レオナルド・ダ・ヴィンチが残した多くのデッサンは、間違いなく後世の芸術家たちに大きな影響を与えています。展示でデッサンを見つけた際は、ぜひ細かい部分まで注目してみてください。
【関連記事】
「優等生」ラファエロの生涯とは?ルネサンス巨匠の作品を楽しむための基本知識
https://irohani.art/study/13170/
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イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
イタリア・ローマの大学の美術史修士課程に在籍中。3年半勤めた日系メーカーを退職後、2019年から2年半のスペイン生活を経てフリーライター、日英・日西翻訳として活動するかたわら、スペイン語話者を対象に日本語を教えています。趣味は読書、一人旅、美術館・教会巡り、料理。
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