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里見義堯 北条の野望を打ち砕いた房総の勇将 (PHP文庫)
里見義堯
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紙の本
読者を関東・房総半島の戦国時代へ誘う秀作
2006/01/05 11:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
里見と聞いて思い浮かぶのは、正月にテレビでも放映された滝沢馬琴の南総里見八犬伝であろう。里見氏は新田義貞の流れを汲む源氏の家系で、安房一帯を領地とした豪族であった。里見氏が栄えたのは戦国時代であるが、戦国時代といえば、天下を争う守護大名同士の戦いが注目されるのは当然である。その時代に関東はどうであったかは案外知られていない。織田、豊臣、徳川以外はあまり眼を向けられることがないが、織豊徳にはそろそろ飽きがきた。
実際、関東もまさに戦国時代であったのだ。伊勢から駿河に流れた伊勢新九郎長氏(北条早雲)が箱根の坂を越えて相模に入ってからまさに戦乱の世となった。
関東の覇権は足利傍流の鎌倉公方が支配していることになっていたが、それも怪しくなってきた。怪しくした犯人は関東管領として不動の地位を築いていた上杉家であった。関東管領は鎌倉公方を補佐する役目を担っていたが、時と場合によっては公方を諌めたり、武力攻撃をしたりで、その両者の反目は時とともに表面化してくる。
その古河公方、その傍流である小弓公方、管領家の山内流と扇谷流の両上杉氏、小田原の後北条氏、それに里見氏が役者である。
前置きが長くなったが、本書はこの里見氏の中興の祖である里見義堯を主役とした歴史小説である。古河・小弓公方を交えた豪族との争い、とくに後北条氏との争いは幾度となく窮地に追い込まれる。二度にわたる国府台合戦での敗北によって、里見氏は房総半島の奥の安房に押し込められる。
その間、里見氏は水軍を鍛えて三浦半島に上陸し、後北条氏の支配する鎌倉を蹂躙し鶴岡八幡宮を焼き払ったり、太平寺の庵主である青岳尼を略奪するなどの挙に出る。味方の懐柔、腹心の裏切り、越後上杉氏との連携など、いかにも戦国時代に起こり得る出来事が展開される。
それでも里見氏は領民の支持によって踏ん張り、後北条氏に拮抗する。徒に領土を拡張せず、領土内の充実を図った戦略が効を奏した。房総半島を支配する一地方豪族の領袖の苦難をまざまざと描いている。
房総半島がこれほどの戦場となったことなどは知る機会もなかったが、実際にこの時代には半島が豪族の存亡を掛けた戦場だったのだ。歴史上もあまり表舞台に登場することのない題材である。今から500年も前の出来事であるが、里見八犬伝への興味とともに読者を関東の戦国時代へ誘う作品である。