木村拓哉宮沢りえと共演!田村正和が建築家役を好演したドラマ「協奏曲」

田村正和、宮沢りえ
田村正和、宮沢りえ

2021年4月に惜しまれつつこの世を去った、俳優・田村正和。田村の代表作といえば、やはり刑事ドラマの傑作「古畑任三郎」が印象深い。「刑事コロンボ」を思わせる古畑の魅力的なキャラクターは田村しか表現できない唯一無二の刑事像を表現していたが、田村が主演した傑作ドラマ「協奏曲」において、彼が「唯一無二の建築家像」を体現していたことはあまり知られていないかもしれない。

「協奏曲」に出演した田村正和、宮沢りえ
「協奏曲」に出演した田村正和、宮沢りえ

「協奏曲」は、1996年にTBS系で放送された恋愛ドラマで、視聴率28.2%を記録した人気作品だ。田村正和は自分の美学を厳しく追及する著名な建築家・海老沢耕介を演じている。共演者には、彼に弟子入りする建築家の卵・貴倉翔役で木村拓哉が出演。翔を支え、愛する女性・花を宮沢りえが演じた。本作で海老沢は弟子の恋人である花を一途に愛するようになり、2人の男と、彼らに愛されて揺れる女が織りなす奇妙で素敵な三角関係を描いた大人のラブストーリーとなっている。

田村は放送当時53歳で、まさに渋みのある大人の男の魅力が全開。木村と宮沢は20代前半で、ともに人気絶頂の若きスター。芸能界屈指の人気を誇る木村と宮沢の共演も話題性抜群だったが、歳の差が約30歳の美男俳優2人が恋愛バトルを展開する物語は当時話題となり、高視聴率にもつながった。

ただし、同作の魅力は単に人気スターたちを起用した豪華キャスティングというだけには留まらない。例えば、ドラマのオープニングで、翔(木村)が海老沢(田村)と初めて出会う場面。翔は波の中を浜辺に向かってくるずぶ濡れの男性を目撃する。男はタキシードに蝶ネクタイ。彼こそ、翔が憧れるスター建築家の海老沢耕介なのだが、彼は船上パーティーで誤って海上に落ちてしまい、浜辺に打ち上げられたのだった。しかし著名人でありながら、翔は憧れの耕介の顔を知らないのだ。海老沢はいわゆる「顔出しNG」だった。そして翔に「大丈夫ですか、いったいどこから?」と声をかけられた海老沢は「...ふふっ、天使の国から」。とだけ言って、気を失ってしまうのだ。

こうして書くと、まるでツッコミどころ満載の場面のようなのだが、田村はこんなセリフも本当に絵になる稀有な俳優だった。いや、田村が演じなければ成立しないだろう。とにかく、このあまりにも絵になるミステリアスなオープニングで、早々に視聴者はくぎ付けにされてしまう。

とにかく、田村の魅力が全開のこの作品。新旧2人のイケメンスターを劇中で宮沢が翻弄するシーンも楽しい。時に優柔不断な彼女の自由さに、2人の男が気の毒にも感じられてしまう。

さらに本作が秀逸なのは、海老沢が仕事に熱中し過ぎて妻に愛想をつかされた過去をもつなど、出演者たちがカッコ悪い一面も持っている点だ。立ち振る舞いはカッコいいが、生き様としては完璧ではない海老沢だからこそ、田村の柔軟な演技がハマる。仕事に対しては頑固一図で、事務所の部下にも怒鳴り散らし、徹夜仕事を強いる厳しさも見せる。現代ならパワハラ上司と言われそうだが、当時の社会ではまだ当たり前に見られた光景で、ドラマでも普通に存在する表現だったことは時代を感じさせる。

三角関係だけでなく、本作は木村演じる翔が建築家として成長する物語でもある。彼の才能を高く評価する海老沢は彼を鍛え上げ、やがて才能を開花させる。ドラマの終盤では、彼も有名建築家の仲間入りを果たして、世間での名声を得るようになるが...。このあたりは、往年のアメリカ映画「スタア誕生」で描かれた悲劇を思わせる展開だ。

当代きっての人気スター主演の恋愛ドラマというだけでなく、「建築家師弟の成長ドラマ」としてのリアリティーも見逃せない。タイトルが「協奏曲」ということもあるが、全編に流れるバート・バカラックのピアノ曲も大いにドラマを盛り上げる名脇役となっている。90年代の時代の空気を感じながら、魅力的な名優たちの演技に酔ってみてはいかがだろう。

文=渡辺敏樹(エディターズ・キャンプ)

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放送情報

協奏曲
放送日時:2021年12月18日(土)11:00~
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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