森永卓郎さん「休んでいる暇はない」…昨年末ステージ4すい臓がん公表 直後「死ぬ一歩手前」も人生観不変

スポーツ報知
リモートインタビューに応じ心境を語った森永卓郎さん

 昨年末にステージ4のすい臓がんであることを公表した経済アナリストの森永卓郎さん(66)が、日本経済を斬る毎月第4日曜掲載のコラム「森永卓郎の本音」。今月は特別編として、リモートインタビューで現在の状況や今後に対する思いなどを聞いた。人生観について「病気の前と何一つ変わっていない」という森永さんは「止まることなく、とにかく進むしかない」と前向きに語った。(高柳 哲人)

 昨年12月27日、レギュラー出演するラジオ番組で突如、ステージ4のすい臓がんが見つかり、闘病中であることを明かした森永さん。同日から抗がん剤治療を開始していたが、実はその直後、生命の危機に陥っていた。

 「正直言って私は納得していなかったのですが、サードオピニオンまで取って全部同じ見解だったので、すい臓がん用の抗がん剤を打ちました。でも、薬が合わなくて大失敗。12月29日に、本当に死ぬ一歩手前だったんです。その後に新薬を投与して、2週間ほど入院。ほぼ元の状態というか、抗がん剤を投与する前の状態に戻ってきました。ただ、ずっとベッドにいたので筋トレで筋力を戻さないといけないんです」

 今月中旬から、2018年に本庶佑さんがノーベル医学生理学賞を受賞したことで名前が知られるようになった、がん免疫治療薬「オプジーボ」を使用。現在は退院して治療を続けている。

 死を覚悟した時に頭をよぎったのは、家族のことではなく仕事のことだったという。

 「その時までに9割方できていた本があったんですが、意識がもうろうとして、全く進まなくなった。何が何でも書き終えないと…という気持ちだったので、それができなかったのがすごく苦しかったんですよ。幸いにして次の薬が効いたので、一気に書き上げました」

 その時には「もういいかな」と思ったそうだが、一仕事を終えると「まだ休んでいるわけにはいかない」と思うことが浮かんできた。

 「一つは(独協)大学のゼミ。1年生を(来年度に向けて)30人くらい採用しちゃっているんです。この子たちにまだ、授業ができていない。一人前にするために、9月のゼミ合宿まで何が何でも生き残らないといけないんです。それが、とりあえずは最低限の目標。できれば卒業まで面倒を見たい。もう一つはラジオ。リスナーは家族みたいなものですが、この人たちが勝手に死のうとすることを許してくれないんです。あとは、かみさんと一緒にいる時間を作りたいってこと。この3つですね」

 現在は新規の仕事は受けていないが、以前からの連載などは基本的には継続中。多忙ゆえに、治療に影響が出ることも心配される。

 「なんやかんや言って、今も1日17~18時間は働かないと終わらない。時間的には以前と同じですが、仕事のペースは落としています。仕事と治療は、完全に同時並行です」

 そこまでして働く原動力はどこにあるのか。がんを患ったことで、人生観が変わったところはあるのだろうか。

 「何一つ変わっていないですね。権力と戦い、とにかく前向きに死ぬということ。だから、(がんが判明しても)ゆっくり人生を過ごそうとは、みじんも思わなかったですね。休んでいる暇はない。行けるところまで行きますよ」

 パソコンのモニターに映る顔つきを見れば、一時期と比べて頬がこけているのは間違いない。ただ、みなぎる気力は画面からあふれ出てくるほどだった。

 ◆森永 卓郎(もりなが・たくろう)1957年7月12日、東京都生まれ。66歳。東大経済学部卒業後の80年、日本専売公社(現JT)に入社。経済企画庁(出向)、三和総研(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て2006年から独協大経済学部教授。独立後は経済アナリストとして、TBS系「がっちりマンデー!~日曜に勉強!月曜から実践!~」などに出演。長男は同じく経済アナリストの森永康平氏。

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