片桐仁、「予想だにしなかった」50年 俳優、創作活動と幅広く活躍「新しいお話が来たら、できるだけやってみたい」

スポーツ報知
自身がデザインした携帯ケースを手にする片桐仁(カメラ・竜田 卓)

 俳優の片桐仁(50)が、肩書を超越した活躍を続けている。多摩美術大在学時にコントグループ「ラーメンズ」を結成。お笑いの世界で一世を風靡(ふうび)すると、個人では俳優、粘土細工などの創作活動でも活躍。50歳の誕生日を迎え、「予想だにしなかった」という半世紀を振り返った。

 この日50歳を迎えた片桐は、トレードマークである天然パーマの髪をなでながら、笑みを浮かべた。「会社員ではないので、年齢とともに役職が上がることはないし、精神的には変わらないんですけど、体的には年を取ったなと思います。でも(10月まで出演した朗読劇の)『ハロルドとモード』で先輩たちがとにかく元気で」。髪を揺らし、瞳を大きく広げた。「(主演の)黒柳徹子さん、90歳ですよ。もう年なんて数字でしかない。自分は半世紀という節目ですけど、まだまだこれから新しい可能性があるんじゃないか? 20代より30代より、40代の方が楽しかったので、これからもワクワクですよね」

 多摩美大在学中に、小林賢太郎さん(50)と「ラーメンズ」を組んだ。

 「版画学科だけしか受からなかったんですけど、同じクラスに、お笑いマニアの小林賢太郎がいて。本当に運命の出会いですよね」

 作り込まれたコントや2人の独特の世界観が人気を呼んだ。NHKのバラエティー番組「爆笑オンエアバトル」などで存在感を発揮し、お笑い芸人として確固たる地位を築く一方、俳優業やアーティスト業にも着手した。

 「最初は、気が進まなくて。美大の時に『演劇なんて恥ずかしいこと、できない』と思っていたけど、いざやってみると、普段は2人でしていたことを、皆でやるとこうなるんだとか。共演者や演出家によっても変わる。これはやっている人が、一番楽しいなと思いましたね」

 だが、自身の思いとは裏腹に当時は周囲の視線が冷たかった。

 「今は芸人がアーティストや俳優をしようが何も言われないけど、2000年代初頭までは『お笑い芸人なんだからお笑い以外やるなよ』という空気感が強くて」

 その当時は、小林さんの言葉が支えになっていた。

 「昔、相方に『アーティストと芸人は近い』と言われたことがあって。アーティストは自分が作った作品を見てもらうけど、芸人は自分の体を使って見てもらう。クリエイティブな意味で言ったら同じなんだと」

 その言葉を胸に秘め、俳優としてのキャリアも重ねた。01年の日本テレビ系「金田一少年の事件簿SP」でドラマデビュー。シリアスからコミカルまで幅広い演技で、NHKの連続テレビ小説にも3本出演するなど順調な歩みを続ける中、20年12月、小林さんが突然芸能界を引退した。

 「ラーメンズ自体は、10年以上開店休業状態だったので。解散公演も何もしなかったですけど、周りからの期待があったので申し訳なかった」

 “ソロ”になったが、「笑い」は捨てていない。お笑いコンビ「エレキコミック」とのユニット「エレ片」で毎年コントライブを開催している。

 「肩書は俳優かもしれませんけど、あくまで原点は芸人ですから。コメディーでも、ウケたい気持ちは人一倍強いですしね」

 お笑い、演技、創作。さまざまなものに触れた半世紀。今後、見据える先は―。

 「年末には、廃材を使ったクリスマスツリーを作るイベントがあるんですけど、僕はフィギュアを作る時にできる“バリ”と言われるゴミでオーナメントを作る。今までは粘土や絵の具を使ってきたけど、グニャグニャしていてアプローチの仕方が全く違って」。そう言いながら、目を輝かせた。「やってみて初めて分かったんですけど、面白いんですよ。今年は初めて時代劇にも出演して、所作とか着物の動きとか。あとは、京都の街中どこでもロケできるんだとか。やっぱり、やらないと分からないんですよ。だからこそ、これからも新しいお話が来たら、できるだけやってみたい。体のあちこちが痛い50歳ですけどね(笑い)」(田中 雄己)

 ◆片桐 仁(かたぎり・じん)1973年11月27日、埼玉県出身。50歳。多摩美術大在学中に、小林賢太郎と「ラーメンズ」を結成。NHK「爆笑オンエアバトル」などを契機にブレイク。その後、ドラマ、舞台、ラジオ、粘土創作など活動の幅を広げる。血液型B。

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