井上尚弥、史上初無敗4階級制覇「最強と言えるんじゃないですか」試合後には「今年中」の4団体統一戦約束

スポーツ報知
8回TKO勝利で新王者となった井上尚弥はコーナーに駆け上がり、雄たけびを上げてこん身のガッツポーズ(カメラ・堺 恒志)

◆プロボクシング ▽WBC、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 ○同級1位・井上尚弥(8回TKO)統一王者スティーブン・フルトン●(25日、東京・有明アリーナ)

 前世界4団体バンタム級統一王者・井上尚弥(30)=大橋=が、WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(29)=米国=に8回TKO勝ちし、新王者に輝いた。世界戦20連勝で井岡一翔(志成)に次ぐ日本人2人目の世界4階級制覇を達成した。8回、右で崩すと左でダウンを演出。パンチをまとめて試合を決めた。2012年10月のプロデビュー以来、25連勝(22KO)を決めた試合後、リング上でWBA&IBF統一王者マーロン・タパレス(31)=フィリピン=と年内対戦を約束した。(観衆1万5000)

 コーナーポストに上がった井上は、誇らしげに右手で何度も胸をたたいた。21戦無敗だったフルトンをたたき潰したヒーローに大観衆は総立ちだ。8回、左ボディーを振って、強力な右を一発。フラフラになったところに左腕を伸ばして追撃し、ダウンを演出。立ち上がった王者にパンチをまとめると、レフェリーがたまらず試合を止めた。

 「気持ちいい。最高の日となりました。スーパーバンタム級の壁を感じずに戦えた。フルトンを倒して最強と言えるんじゃないですか」。昨年12月、バトラー(英国)に勝利し、史上9人目となる主要4団体の世界王座統一を達成。だが今年1月に全王座を返上、階級を一つ上げた。体格差も心配される中、井上はたった1試合で世界王者に返り咲いた。世界戦で挑戦した王者には全てKO勝ち。統一王者から2本のベルトを奪取できたのも日本史上初で、世界戦の連勝は20。4階級制覇は井岡に続き2人目だが、無敗で達成は史上初。4団体統一と4階級制覇を成し遂げたのはサウル・アルバレス(メキシコ)に続き史上2人目の快挙だ。

 試合前、フルトン陣営からバンデージの巻き方にクレームが入った。テープを巻く前にガーゼをあてることで双方が歩み寄ったが、“神経戦”に疑問を持った。前日計量では見下すようなフルトンに怒りの感情をあらわにした。試合が始まるとプレスをかけて、右の強打を放った。世界戦では18年5月以来となる挑戦者の立場も「高いモチベーションを持って練習できた。楽しかった。技術戦ですごく頭を使った」と笑った。

 試合後、タパレスがリングに上がり、井上と握手。「戦いたい」と言うと、井上は「今年中に2つのベルトをかけて戦いましょう」と応えた。井上が勝てば、バンタム級で4年7か月かけて成し遂げた4団体統一を5か月で達成する。米興行大手トップランク社の91歳、ボブ・アラムCEOが駆けつけたが、井上がフェザー級に上げた場合にはWBO世界同級王者ラミレス(キューバ)を“刺客”に送る考えもあるという。日本人初の世界5階級制覇。モンスターの夢は広がるばかりだ。(谷口 隆俊)

 ◆井上尚弥の記録

 ▽無敗4階級制覇 世界戦20連勝で18年9月に1敗をはさみ24戦目で達成した井岡一翔(志成)以来で、無敗では日本史上初。

 ▽連勝 12年10月のデビュー以来、無敗で自身の日本記録を「25」に更新。2位は具志堅用高(WBAライトフライ)の23。

 ▽世界戦最多KO 自身の持つ世界戦最多KO勝利数が「18」に。2位は10KOの井岡一翔と、内山高志。4位タイで9KOの具志堅用高、山中慎介(WBCバンタム)

 ▽KO率 世界戦20試合目で18KOとなり、KO率90%は歴代1位。

 ◆井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年4月10日、神奈川・座間市生まれ。30歳。相模原青陵高でアマ7冠など通算75勝(48KO・RSC)6敗。2012年10月にプロデビュー。14年にWBC世界ライトフライ級王座、WBO世界スーパーフライ級王座を獲得。18年にWBA世界バンタム級王座を獲得し3階級制覇を達成。19年ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ決勝でドネア(フィリピン)を下して優勝。米トップランク社と契約。22年にバンタム級で世界初の4団体統一。身長165センチの右ボクサーファイター。家族は妻と1男2女。

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