好角家・安斎肇さん流観戦はうなぎ・どじょう食べるまでがセット…マゲ結い断髪式の経験も

スポーツ報知
イラストを描いた色紙を手に「相撲愛」を語った安斎肇さん(カメラ・小泉 洋樹)

 スポーツ報知の好角家インタビュー企画・推し相撲は、「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)の人気コーナー「空耳アワー」でおなじみのイラストレーターで“ソラミミスト”の安斎肇さん(68)が登場。大相撲観戦の楽しみ方や、相撲LOVEのあまり、マゲを結った秘話などを披露した。(取材・久浦 真一)

 安斎さんが本格的に本場所を見に行くきっかけとなったのが、イラストレーターとして独立し、事務所でテレビを見ていた1986年のことだった。

 「カミさん(香代子さん=故人)が『相撲を(生で)見たことがない』と言うので、大相撲トーナメントに行きました。その席が、審判長の後ろの砂かぶりだったんです。僕も生観戦は初めて。千代の富士の横綱土俵入りでのせり上がりで、にじり寄ってくるのが怖くて怖くて。あまりの迫力に圧倒されました。想像以上に当たりがすごいし、びっくらこいて、高校生くらいまでテレビ観戦していた相撲を改めて見るようになりました」

 安斎さんの大相撲観戦は、幕下以下が土俵に上がる午前中から始まる。

 「コロナ禍になってからは午後1時からの開場になっていましたが、その前は朝のだーれもいないようなところから見ていました。裸足の行司さんがいて、さがりがぐにゃぐにゃの力士から始まって、真剣勝負がずっと続いて、お客さんが満杯になって最後に大きい力士が出てきて、大技を決めて大歓声が沸く。どんどんどんどん盛り上がっていくという、グラデーションになっていく演出が楽しい」

 打ち出し後の飲食も合わせてが「大相撲観戦」というのが、安斎流だ。

 「午後6時に(幕内の取組が)終わると、以前は、国技館の前から船に乗って、夜景を見上げながら浅草まで10分かからずで行って、駒形でどじょうを食う。粋でしょ。全員が全員、喜ぶ。最初はみんな、どじょうは嫌いだと言うんですけど、鍋にねぎをたっぷり入れて食うと抜群にうまい」

 現在は、両国近辺で飲むことが多いという。

 「今、館内はお酒が制限されてきているので、居酒屋に入ると我慢していた分、すごく飲んじゃって。午後7時くらいにもうべろべろ。食は大阪でも名古屋でも観戦の一部。九州場所では、タモリさんに教えてもらったうなぎ屋さんに必ず行きます。日本一おいしい」

 元幕内敷島(現浦風親方)との出会いが、さらに相撲への思いを強くした。

 「僕がWAHAHA本舗のパンフレットの仕事をしていた時に、その公演に来ていたのが敷島で、公演の舞台裏で会ったところから交流が始まった。(消しゴム版画家の)ナンシー関主催のカラオケ大会にゲストで来て、サザンの歌を歌ったりしたんですが、うまいんですよ。それでみんなで応援しようということになって、ちょうど、十両から幕内に上がるころで、浴衣の生地を作って、贈りました。ナンシーが、はんこを掘って、(作家の)いとうせいこうが歌を詠んで、僕が敷島のイラストを描きました」

 安斎さんが「ちゃんこを食べたことがない」と言ったら、敷島が安斎さんの自宅に来て、作ってくれたという。

 「材料を全部持ってきてくれて、『台所借ります』と速くて手際よく、作ってくれました。大根をピーラーで薄く切って、それをちゃんこ鍋で、しゃぶしゃぶにして食べるんですが、おいしくていくらでも食べられましたね。敷島の引退相撲も、みんなでマゲにハサミを入れたんですが、僕らの仲間はふざけた名前が多くて、『有限会社さるやまハゲの助社長、しりあがり寿様』とかアナウンスされるたびに、場内が大爆笑だったですね(笑)」

 相撲LOVEが強すぎて、50歳の記念に、本格的なマゲを結ったこともある。

 「床山さんに来てもらって、びん付け油を1時間くらいかけて、すりこんで、やってもらいました。知人の展覧会にそのまま行こうかとも考えましたが、勇気がなかった。それで写真を撮って、断髪式をやりました。だけど、落武者みたいになって…、知り合いの理髪店に行ったら『どうにもなんないよ』と言われましたね(笑い)。半年くらいお相撲さんの香りがしてました」

 熱心に応援しているのは大関・正代と幕内・阿炎。

 「カミさんと一緒に応援するのが、すごく楽しかったんです。3年前にカミさんがいなくなっちゃったんで、彼女が好きだった阿炎と正代を応援しています。阿炎は、仕切りで足を高く上げて、一直線になる。昔は拍手が来たもんですよ。それが一度(不祥事で幕下まで)落ちてからは、少ない。一番のハイライトなので、バーっと、拍手してほしい。正代は柔らかい感じがいい。相手の力を吸い取っちゃうような体。めちゃくちゃ期待してるんですけどね。応援する人を決めると“基準”ができる。だれかのファンになれば、そのスポーツ全体が好きになります」

 ◆安斎 肇(あんざい・はじめ)1953年12月21日、東京都生まれ。68歳。イラストレーター、アートディレクター。75年、桑沢デザイン研究所修了。JAL「リゾッチャ」のキャラクターデザインなどを手がける。92年から「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」の進行役となり、人気に。父は肖像画家の友行氏。叔父に立命館大特命教授・名誉教授の安斎育郎氏。神奈川・藤沢市鵠沼海岸にギャラリー「FK235」をオープンし不定期で開催。HPは、https://www.fk235gallery.com

スポーツ

×