小川彩佳アナ 2歳児抱え明け方睡眠3時間だけ それでも伝えたい「一人じゃないんだよ」

スポーツ報知
にこやかな表情でカメラマンのポーズに応じた小川彩佳アナ(カメラ・今西 淳)

 フリーアナウンサーの小川彩佳(37)が、TBS系報道番組「news23」(月~木曜・後11時、金曜・後11時半)のキャスター就任から3年を迎えた。同局の報道の“顔”として活躍する一方で、2020年7月には第1子が誕生した。「人生観が変わった」という出産を経て、仕事と育児に向き合ういま伝えたい思いとは―。(田中 雄己)

 冷静沈着な画面上では、めったに見せない姿だった。「これ、合ってますかね」。カメラマンの要求するポーズに照れながら応じると、「こういうお仕事は、慣れないですね」。顔を手で覆い隠しながら、笑みがこぼれた。

 2007年のテレビ朝日入社から15年がたった。“夢”の始まりは、米国に住んでいた小学生時代。多種多様な人との出会いと交流が「原体験」という。「いろいろな人を結ぶ懸け橋として、分かりやすい存在で」。卒業アルバムには「ニュースを読むアナウンサーになりたい」とつづった。

 新人時代に抜てきされた「サンデープロジェクト」では、ジャーナリストの田原総一朗氏(88)、7年半サブキャスターを務めた「報道ステーション」ではフリーアナの古舘伊知郎氏(67)とタッグを組んだ。

 「田原さんは、常に人の評価を上書きされる。ミスをしても、次に何かをした際には評価を重ねる。イメージを固めることなく、常にアップデートする。古舘さんは、言葉と間の魔術師ですよね。2、3分間のニュースでも言葉の意味を凝縮させる。たとえ5秒でも間や表情で意味を持たせて。お二人のマネなんておこがましいですけど、今に生きる貴重な経験でした」

 2人の“師”との時間をへて、19年6月に「news23」のキャスターに就任した。

 「育休中にも思ったんですが、午後11時までは日々の活動の余熱が残っているんですけど、11時以降は明日のことを考えたり、睡眠前のオフタイム。受け止め方や頭の使い方がガラッと変わる。コロナ禍でテレビを取り巻く環境も変わり、ニュースの合間に挟む言葉や表情一つとっても工夫しないといけないんですけど、気づいたら、しかめっ面になっちゃったりしているんですよね(笑い)」

 11年3月11日。「報道ステーション」のサブキャスター発表予定日に、東日本大震災が起きた。「情報は、救うことにも傷つけることにもなる諸刃(もろは)の剣」だと再確認した。意識するのは「無意識の加害性」。

 「万人を傷つけない言葉は、ないかもしれない。誰かを傷つけるかもしれないと思いながら、言葉を投げかける。ただ投げかけるのでは、言葉を届けるまではいかない。知れば知る程難しい仕事で、ドツボにはまってますね」

 私は、小川アナと大学の同級生だった。凜(りん)としたたたずまい、「うーん」と視線を落として考え込む姿や、豪快な笑顔は変わらない。その一方で、端々に思いと配慮を込めた言葉からはキャスターとしての顔を感じさせた。

 そして、2年前には、また新たな“顔”も加わった。20年7月に第1子を出産した。わずか3か月で復帰し、昨年6月には離婚も経験した。現在は生放送から帰宅後、夜中3時に就寝。2歳の我が子と共に午前6時に起床し、育児、家事、仕事に追われる。それでも「ここまで誰かのためにとか、いとおしいという感情は経験したことがなくて。家族と保育園の保育士さん、番組スタッフには日々感謝で。仕事と育児との両立が当たり前になってほしい」。そう願うからこそ、仕事をやめたいと思ったことはない。

 「言葉も覚えてきて、かわいさ増し増しで。番組冒頭の私をマネするんですよ。『こんばんは、ニュースとぅーしゅりーです』って。でもこないだ夕方のニュースを見ていたら、女性キャスターを見て『ママ、ママ』と指さしていたから、ちょっと雰囲気の似た女性キャスターは同じに見えるのかも(笑い)」

 子供の話題になると、目尻が下がり、身ぶり手ぶりが大きくなった。

 「家を出る時に泣きすがっていたのが、『ママ、ニュースやだ』と攻めてくるようになって。より心は引き裂かれますけど、好きな仕事を続けながら子供と過ごすことができる。貴重な機会を頂けているので、一心不乱に駆けている感じですね」

 少しの沈黙の後、「でも」と声を張った。「ギッチギチですけどね」。睡眠不足と疲労で、目の下のクマが気になることも増えた。「私に限らず、誰にも言えずにいろんなことを抱えている人は多い。仕事と子育てを両立している方も多いし、介護をされている方も、持病を抱えながら働いている方もいる。人知れず両立するのは孤独だとも思う」。そして、重ねた。「私なんて全く特別じゃない」

 ブレない視線に、より力が宿った。「皆がなんとか毎日を乗り越えている。だから『この人もジタバタしてるな』なんていうふうに見てもらって構わないんですよね」

 彼女に対し、学生時代から一度も「ジタバタ」という印象を抱いたことはなかった。

 「コロナや戦争があって、皆が漠然とつらくて、なかなか弱音を吐きづらい。その中で『一人じゃないんだよ』と受け皿になるような放送ができたら。出産しても、離婚しても番組は毎日続くし、子供も日々成長する。前を向くしかない環境は、私にとってありがたい。だからね、ジタバタやるしかないんですよ」。キャスターとして、ママとして。パワフルさと大胆さが加わった気がした。

 ◆小川 彩佳(おがわ・あやか)1985年2月20日、東京都生まれ。37歳。青山学院大国際政治経済学部卒業。2007年、テレビ朝日に入社。11年4月から18年9月まで「報道ステーション」を担当。19年4月同局を退社し、同6月にTBS系報道番組「news23」のメインキャスターに就任。趣味は、音楽・映画観賞。特技は、日本舞踊で花柳流名取。身長168センチ。血液型A。

芸能

×