【カムカム】ヒロイン3人の中で深津絵里だけ“NHKからのオファー”だった3つの理由

スポーツ報知
深津絵里が演じる「るい」(C)NHK

 NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土曜・午前8時)が、8日で最終話を迎える。本作では、朝ドラ史上初の3人のヒロインが登場したが、2人目のヒロイン・るい役の深津絵里(49)だけがオーディションではなく、直接のオファーによるキャスティングだった。なぜ、深津だけ違う選考方法だったのか―。その狙いに迫った。

 昭和・平成・令和の時代を股に掛けた100年にわたる3代の母子を描いた物語も残り4話となり、クライマックスに突入した。視聴者の間では、上白石萌音(24)が演じた母・安子とるいが再会するのか否かに関心が高まるばかりだ。ネット上ではすでに“カムカムロス”を憂う声も相次いでいる。

 思い返せば、残酷な形で母親と生き別れになったるいの成長譚という側面が、物語を牽引した一つの大きな要因になってきたと思う。るいは、幼い頃に事故で負った額の傷をひた隠しながら、故郷・岡山を飛び出し大阪、京都で居場所を探し求め、人生を切り開いていくという難役だ。3人のヒロインの中で最も登場回数が多かった。

 今年1月で49歳を迎えた深津。主人公の晩年を別の女優が演じた「おしん」の乙羽信子、「すずらん」の倍賞千恵子、「カーネーション」の夏木マリを除くと、「芋たこなんきん」の藤山直美(当時47)を抜いて朝ドラ史上“最高齢ヒロイン”となった。

 そうした中で、本作の3人のヒロインの選考方法には違いがあった。1人目のヒロイン・安子役の上白石、3人目のヒロイン・ひなた役の川栄李奈(27)は、3000人以上が応募したというオーディションで選ばれたのに対し、深津はNHK側からのオファーによるものだったのだ。

 ではなぜ、「るい」だけ直接オファーによる配役だったのか。制作統括の堀之内礼二郎氏(42)に尋ねると、3つの理由を挙げた。

 一つ目は、「娘・ひなたとの親子関係を分かりやすくするために30~40代の方が望ましかった」。二つ目は、「18歳の頃も、70代の頃も魅力的に演じられる」。三つ目は「2008年以来、連続ドラマに出演されていなかったので、先入観なく見ていただける」。こうした点から深津の名前が浮上したのだという。

 深津の初登場シーンが18歳の設定だったと分かった時は驚いたが、実際に視聴してみると違和感はなかった。むしろ、そこはかとなく漂う可憐さと変わらぬ透明感に魅了された。

 額の傷におびえながら、自信なさげだった10代。愛を知り、恋人を守る力も身につけた20代。母になり、自身の母への思いに変化が生じ始めた50代。時代とともに、深津の演技は実年齢を超越した。そして、はかなげな声で歌う「On the Sunny Side of the Street」は、人々の心に響いたことだろう。

 最近は連ドラだけでなくメディアへの露出が少なかった深津自身だが、藤本有紀氏の脚本の内容に惹かれてオファーを引き受けたという。母親役で脇に回っても、その存在感は不変だ。「この物語は、深津さんなしには考えられない」と堀之内氏。

 5か月余りで描かれた壮大な“ファミリーストーリー”も、残すところ4話となった。そこには「震えるくらい、深津絵里のすごさが描かれている」という。時代に翻弄された母子は、どんな結末を迎えるのか。多くの視聴者が、固唾を呑んで見守っている。

(記者コラム デジタル編集部・江畑康二郎)

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