仲村トオル、俳優業への思い「自分を鍛え、挑戦すべきポイントみつける」…「愛のまなざしを」12日公開

スポーツ報知
仲村トオル

 俳優・仲村トオル(56)の主演映画「愛のまなざしを」(万田邦敏監督)が12日に公開される。人間の性とエゴをあぶり出した愛憎サスペンス。“万田作品”は4回目の出演だが「自分では作ったことのないキャラクター」という主人公の精神科医を演じた。俳優業について「失敗したら続けられないかもしれないという緊張感があるからこそ、達成感がある」とストイックな素顔をのぞかせた。

 仲村演じる主人公・滝沢貴志は、患者からは信頼の厚い精神科医だが、夜になると亡くした妻を思いむせび泣き、薬で精神を安定させるという役柄。物語が進むにつれ、心身のやつれが顔のしわや声色ににじみ、薬を大量にバリバリとむさぼる様子は、前後不覚になっていく貴志を見事に表現している。

 「脚本を読んだ時『これは難しい役だろうな…』と思いました。でも、ラストまで緊張感が途切れることなく続く、僕の好きなタイプの作品になるだろうという期待感もありました」

 役柄へのアプローチを模索しながらも、“鬼才”と言われる万田監督とは「UNloved」(02年)から20年来の付き合いだけに、撮影には「白紙に近い状態」で臨んだ。

 「監督は演出の時、全くに近いほど心の中のことは言いません。ただ、動きについての指示は『そこで右足から3歩、歩き出して、顎の角度はこのくらいで』と非常に具体的。表に現れると書いて『表現』というように、外側から作ることを徹底していて、僕は100%監督に委ねています」

 これまでも強烈な自我を持つ女性を軸に、狂気的な愛を描いてきた万田作品。本作でも、貴志の愛を渇望し、亡き妻への嫉妬に狂う女が登場。ひかれ合う貴志と女だが、互いに向け合うまなざしがだんだんと不信感や恐怖に満ちていく様子は、見る側に不穏な緊張感と混乱を与える。

 「観客も理解しづらい部分はあるでしょうし、俳優も全てを理解してやっていないです。作品を通じて伝わることがあるならば『人間なんてそう簡単に理解できるものじゃない』ということかもしれませんね」

 作品ごとに新しい“仲村トオル”を発見できる新鮮さは20年間変わっていない。

 「万田組では、一個も『自分はこうしたい』という感情を持ち込まないからこそ、自分では演じられなかった、これまで見たことがない自分がスクリーンに残るのだと思います。独特の楽しさや魅力があります」

 俳優歴37年目。かっこいい大人の男性というパブリックイメージを持つ仲村。原点となったのは、デビュー当時の事務所の先輩・松田優作さん(89年死去、享年40)や日本テレビ系ドラマ「あぶない刑事」シリーズで共演した舘ひろし(71)、柴田恭兵(70)だった。

 「20代でお三方とご一緒した時は、言葉にすると薄っぺらいですが『あぁ、こういうかっこいい人になりたいな』と心から思い、憧れました。おかげさまで自分もそうなれましたとは全く思いませんが…。現場では感じのいい人ではありたいなと心掛けてはいます」

 取材中、一度も背もたれに寄りかかることなく受け答えを続けた仲村は、今後の俳優業への思いを語った。

 「本気でやりたい役や人たちと仕事を続けていきたいです。そう思うものには、挑戦の要素が必ず含まれていると思うので。手を抜かずに自分を鍛え、どんな仕事にも挑戦するべきポイントをみつけて進んでいきたいですね」(奥津 友希乃)

 ◆愛のまなざしを 精神科医の貴志(仲村)は、6年前に亡くした妻・薫(中村ゆり、39)への罪悪感や未練を抱え、精神安定剤を服用する日々を過ごしていた。患者として現れた女・綾子(杉野希妃、37)は、次第に貴志に愛を求め、薫に猛烈な嫉妬心を抱くようになる。そして、薫の弟・茂(斎藤工、40)ら周囲を巻き込みながら、極限の愛にたどり着くために“ある決断”を下す―。102分。

 ◆「日本沈没」で初の首相役「政治家見る目変わった」

 仲村はこれまでも元プロ野球選手など幅広い役柄を演じてきたが、放送中のTBS系日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(後9時)では、自身初の総理大臣役に挑んでいる。

 「最初に総理大臣と聞いた時は『うわぁ、すごい。ついに!」と、とても子供っぽいはしゃぎ方を心の中でしました(笑い)。演じてみて『楽しかった』と今言いそうになりましたが、記者会見のシーンでは本当に緊張しましたし、演じている時は『苦しい』が大きかったかな。最近では、政治家の先生方を見ると前より温かいまなざしで見るようになってしまいました」

 ◆仲村 トオル(なかむら・とおる)1965年9月5日、東京都生まれ。56歳。85年、映画「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューし、多数の新人賞受賞。86年から日テレ系「あぶない刑事」シリーズでブレイク。韓国映画「ロスト・メモリーズ」(04年)など海外作品出演も多数。主な出演作は、フジ系「チーム・バチスタ」シリーズ、日テレ系「家売るオンナ」シリーズなど。185センチ。血液型A。

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