「ムコ殿!」の声はもう聞けない…菅井きんさん92歳で死去

スポーツ報知
テレビ朝日系「必殺」シリーズに出演する藤田まことさん、菅井きんさん(写真提供=ABCテレビ・松竹)

 時代劇ドラマ「必殺仕事人」シリーズ、映画「お葬式」などに出演し、名脇役として活躍した女優の菅井きん(すがい・きん、本名・佐藤キミ子)さんが今月10日午後2時に心不全のため都内の自宅で死去した。23日、所属事務所が発表した。92歳。家族が最期をみとり、通夜、密葬は近親者で執り行われた。しのぶ会の予定はないという。代表作となった「必殺」では、主人公をいびる姑(しゅうとめ)を演じ、「ムコ殿!」の決めゼリフは流行語になった。

 「ムコ殿!」の声は、もう聞けなくなった。名脇役の代名詞として、映画、ドラマに欠かせない存在だった菅井さんが、天国に旅立った。

 菅井さんは2010年に自宅で転倒し、大たい骨を骨折。歩くのが困難になり仕事復帰はかなわなかったが、所属事務所によると、特別な持病もなく、亡くなる前日の8月9日まで元気な様子だったという。10日、ひとり娘ら家族にみとられ、天国へと旅立った。葬儀は近親者で済ませ、娘の夫・三上登氏が喪主を務めた。

 最後のドラマ出演は2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」で武市半平太(大森南朋)の祖母・武市智役を演じた。その後、骨折が原因で表舞台から姿を消し、一部では認知症とも報じられたが、14年10月2日に放送されたフジテレビ系「ノンストップ」に出演。夫で映画プロデューサーの佐藤正之さんが96年に亡くなってからは娘夫婦と生活していたが、骨折後、都内の特別養護老人ホームで暮らす日常を公開した。

 認知症報道を完全否定し「腹が立ちました」と猛反発。車椅子生活を送っているが、再び歩くことを目指しリハビリに励んでいることを明かし、元気な姿を見せた。ただ、女優復帰については「もう仕事はしない。無理ですもん」と事実上の引退宣言をしていた。その後、再び自宅に戻ったと思われる。

 名脇役として定評のあった菅井さんの知名度が一気に広がったのは、73年スタートの「必殺仕置人」から出演した「必殺」シリーズ。故・藤田まことさんが演じた主人公・中村主水(もんど)の姑・せんを演じ、主水の妻・りつ(白木万理)とともに主水をいびる姿はドラマの名物シーンとして人気に。「ムコ殿!」のセリフは流行語にもなった。

 84年には映画「お葬式」(伊丹十三監督)で、報知映画賞助演女優賞を受賞。08年には映画「ぼくのおばあちゃん」(榊英雄監督)で、82歳にして映画初主演。世界最高齢の主演女優(当時)としてギネスに認定され、話題を呼んだ。

 ◆菅井 きん(すがい・きん)1926年2月28日、東京都生まれ。46年に東京芸術劇場の研究生となり47年に「林檎園日記」で初舞台。51年「風にそよぐ葦」で映画デビュー。主な出演映画は「赤ひげ」「ゴジラ」、ドラマは「いのち」「瞳」「家なき子」など。90年に紫綬褒章、96年に勲四等宝冠章を受章。

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