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HOME SPECIAL とりあえず、やってみた。 「食べる」を仕事にする生き方。フードジャーナリストに1日弟子入り体験!
「食べる」を仕事にする生き方。フードジャーナリストに1日弟子入り体験!

VOL.9 「食べる」を仕事にする生き方。フードジャーナリストに1日弟子入り体験!

気になる職業を一日体験できる「仕事旅行」。編集部員がそれぞれの興味に合った旅行先を選び、実際に体験する企画です。今回は、編集部やぎが、「好きなことを仕事にする生き方」という言葉に惹かれ、この道20年のフードジャーナリストに1日弟子入りしました。

未だ見ぬ”グルメ”を求めて、東へ西へ。美味しいもののためなら、時に国境をも越えてしまうほど食への想い(というか食欲……)が人一倍強い私。そこで今回、170以上もの“仕事旅行”の中から選んだのは「フードジャーナリストになる旅」です。取材でありながら、好きなモノを食べて、探求し続けられるなんて、なんてオイシイ仕事なんでしょう!私もその恩恵にあずかりたいものです(笑)。

さらに選ぶ決め手になったのは、この仕事旅行を紹介するページに「『好きな仕事で生きていきたい!』と思う方にピッタリ!」という一文があったこと。「“好き”を仕事に」という言葉が躍る書籍はいくつもありますが、実践者に直接話を聞くことができる機会なんてそうそうない!ということで、仕事への想い、姿勢やこだわりなどの真面目な話から、裏話まで純粋に疑問をぶつけてきました!

師匠はフードジャーナリスト歴20年の大ベテラン、はんつ遠藤さん

私が弟子入りする、はんつ遠藤さんは、フードジャーナリストとして、今までなんと1万店舗以上を取材してきた方。雑誌、Web、TVなど、さまざまな媒体で活躍されています。

体験当日は、はんつさんが連載する週刊誌の取材にアシスタントとして同行。全国の美味しい麺料理のお店を紹介する食レポに密着します。

取材1麺目は、ラーメン!
売れっ子フードジャーナリストの秘訣は“スピード”

東京・目黒で待ち合わせ。まずははんつさんとご挨拶。にこやかに話される姿から、優しそうな人柄にひと安心。そして、そのままお店の取材へ、のはずがだったのですが……。なんと約束の時間になっても、お店のシャッターは閉まったまま。別の入り口を探してみたり、仕込みの音がしないか確認してみたりしますが、まったく人の気配がありません……。

店長さんを待つ間、店員さん、はんつさんとお店の前でおしゃべり。

待つこと30分、ようやく、店長さんが登場!どうやら店長さんがうっかり寝坊してしまったらしいんです。平謝りする店長さんに対して、はんつさんが「よくあることですから」と優しくフォロー。優しさがまぶしい!

さて、気を取り直して取材スタート。開店時間が迫るなか、遅れた時間を取り戻そうと準備を進める店長さん。その邪魔にならないよう、はんつさんも機材を取り出し、準備を始めます。

カメラ、照明、レフ板…。「あれ?フードジャーナリストってご飯を食べて感想を書くだけじゃないの? 何だかカメラマンみたい……」。次々と出てくる、本格的な撮影機材にびっくり。そうこうしていると、ラーメンがテーブルに到着。

その瞬間、はんつさんの表情が一変して厳しくなりました。照明を調整しながら、美味しく見える角度を探し出し、素早く撮影を進めます。所要時間はなんと1分!

取材先で「撮影が早いですね」とよく言われるというはんつさん。「料理は出来立てが一番。最も美味しい状態で料理をいただくために、スピードにはかなりこだわっています。フードジャーナリストの中でも一番早いんじゃないかなあ」と照れ笑い。

撮影が終わると、見た目の感想をささっとノートにメモ。さて、お待ちかねの、いただきますタイムです!

さすがは、はんつさんが選んだお店。スープは澄んで、だしの旨みが詰まっている! 全粒粉の麺は、細くてツルツル。スープが麺によく絡まって、これぞ中華そばという味わい。あっという間に食べきってしまいました!

好きな仕事に就けたきっかけは、”スキル”があったから

取材が終わると、喫茶店に移動。撮影した写真のバックアップをとっている間に、フードジャーナリストという仕事についてお話を伺いました!

さきほどの取材で気づいた通り、フードジャーナリストは“ただ食べて記事を書く人”ではありません。話を伺うと、フードジャーナリストとは、いわば“食”のマルチプレーヤー。リサーチ、ライティング、コーディネートから撮影、コンサルティングまで、その業務は多岐にわたります。

編集者もさまざまな知識・技術は必要とされますが、ここまで広範な領域が求められることは少ないもの。そんな膨大な知識と技術が必要なお仕事を、はんつさんは20年も続けているのです。

でも、初めから好きなことを仕事(フードジャーナリスト)にしたわけではなかったそう。前職は出版社の編集者で、バックパッカー向け旅行雑誌を5年間担当。国内外を1人で取材していました。

1人で周る取材方針だったため、否が応でも、1人でいろいろとこなせるスキルが身についたといいます。しかし、当時大流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響で、海外旅行者が激減。担当していた旅行誌は廃刊に追い込まれました。

「どうしようか……と思っていたところ、カメラマンもライターも1人でこなせるスキルを買われ、食事系の雑誌に勤める先輩に声をかけられました。これがきっかけとなり、フードジャーナリストの道を歩み始めました。元々、食べ歩きは大好きだったので、どんどんハマっていきましたね」。

好きなことを仕事にするには、スキルが道を切り開いてくれるということがよくわかります。

フードジャーナリストの仕事術。その厳しさと秘訣とは?

続いて、はんつさんの仕事術に迫ります。20年間で1万店舗も取材してきたというはんつさん。単純計算で年間500店舗も取材をしていることになります。

こんなに数多くの取材をこなすためには、店舗に関する豊富な知識が必要不可欠。どうやってそんなにたくさんの店舗情報をリサーチしているのでしょうか?

「全国各地のフードジャーナリストと繋がりがあり、その方々と日々情報交換をしています」とのこと。なるほど、やっぱりネットワークが不可欠なんですね……。

ちなみにお仕事とはいえ、食べ物の好き嫌いは少なからずあるはず。はんつさんに苦手な食べ物はないのでしょうか?

「じつは白魚がダメなんです。といっても、調理してあれば大丈夫なんですが、“踊り食い”だけはどうしてもダメで……。過去にTVの仕事でどうしても食べなければいけなくて。バレないように美味しそうに食べるのは大変でした(笑)」

そして、「同じメニューが1日3食以上続くこともこの仕事ではめずらしくありません。しかも、スケジュール次第では、1時間おきに食べることもあります」とのこと。

やっぱりただ“食べるのが好き”というだけでは、やっていけない厳しい仕事なんですね……。むむむ、私の食欲が試されているのかも? ということで……。

今日は私もフードジャーナリスト!
自主的に2麺目、蕎麦屋へ!

次の取材までは、まだ2時間ある…。1麺目で学んだことを即実行すべく、私は1人、蕎麦屋へ。

気分はすっかりフードジャーナリスト。師匠の教えを守って、すばやく写真を撮り、そして、美味しくいただきました!今はこれが限界(笑)。フードジャーナリストの大変さを少し味わった気がします。

3麺目はうどん!美味しさの秘訣に迫るには?

次の取材は足立区・大師前にある老舗のうどんのお店です。

ここでは、お店のイチ押しメニュー「特製冷やしかんなめうどん」をいただきます。麺の上に野菜などの具材が乗り、見た目は冷やし中華のよう。細くて透明な麺は、口当たりがとってもなめらかで、私が食べたうどんの中で1、2を争う美味しさです。味噌ベースのお出汁はなめことの相性も抜群!

気づけば、本日3麺目ながらも、つるつると完食してしまいました。すでに2麺食べて苦しかったお腹はどこへやら。美味しいごはんは、やっぱり別腹ですね。

さて、実食のあとはインタビューです。

はんつさん曰く、食レポ取材の場合、メニューや調理方法だけを取材するライターも多いそう。でも、はんつさんは料理人の出身地や経歴まで尋ねるようにしているといいます。というのも、その人のバックグラウンドを知ることで、味へのこだわりや想いをより一層理解できると考えているから。

さらに、料理人との距離も縮まり、時によっては美味しさの秘密も教えてもらえることもあるそうです。こうした場面も、はんつさんがジャーナリストとして対象と真剣に向き合っている姿が垣間見えた瞬間でした。

「好きなことを職業にする」のではなく、「好きなことを仕事にする生き方」もある

2軒目の取材のあと、再度喫茶店へ。今回の体験のまとめをします。

今回の同行で、フードジャーナリストは“食べる”仕事以外に、たくさんの時間と労力をかけられていることを実感。とてもじゃないけれど、半端な気持ちでやるものでないことがよーくわかりました。

けれど、それを差し引いても「やはり美味しい食事を食べられて、お金がもらえるというのは、やはり魅力的……」。浅はかかもしれませんが、そんな気持ちを伝えたところ、はんつさんから満面の笑みが浮かびました。

「そうなんですよー! もともと旅行も好きなので、全国各地に行けて、いろいろなお店を巡るなんてほんとに楽しい仕事です。芸能人に会えたり、一緒に仕事したりできるのもフードジャーナリストをやっていて良かったなと思う瞬間です」

うん、やっぱり“好きを仕事に”というのは、とっても強い力になるんですね。ただ、はんつさんは「フードジャーナリストになりたい」という方々に必ず伝えるようにしていることがあるといいます。

「フードジャーナリストは名乗った瞬間になれる職業。しかし、経済的なことを考えるのであれば、おすすめはしてないです」とのこと。

そのため、お金を稼ぐ本業は別で持ちつつ、自分の「好き」の形のまま、仕事にすることも視野に入れてほしい、といいます。実際に、はんつさんの知り合いのケースを話してくれました。

「たとえば、“ナポさん”という方は、ナポリタン専業のブロガーさん。純喫茶からコンビニまで、さまざまなナポリタンを自分のブログにアップしていたところ、“2000食のナポリタンを食べた男”として、様々なメディアに呼ばれるようになりました。また、ホテル好きだったある夫婦は、思い切って家を持たず、毎日ホテルを渡り歩く生活を続けたそうです。すると、“ホテル専門家”として、仕事が舞い込むようになったようですよ。これも“好きを仕事”にする方法のひとつ。ネットやSNSが発達した、今の時代だからできることですよね」

なるほど、「好きなことを仕事にしていく」には、1.好きなことを絞ること、2.発信すること、3.やり続けることが、仕事にするための近道ということですね。いきなりその職業一本で生活しようとするより、確かに現実的。私でも今日から始めることができそうです。

編集の仕事を極めるために、企画やデザインなどのスキルを磨くことを重要視してきた私。今回の旅ではそういったスキルが大事だということを再認識しましたが、それ以上に「好きなことをとことんやり続ける」ことの大切さを痛感しました。

仕事に必要なスキルと自分の「好き」をとことん追求していくことがどんな道でもプロフェッショナルに必要なことだと学んだ旅でした。

はんつ遠藤さん、ありがとうございました!
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