アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~「株価出遅れ」のアマゾン、アルファベット、マイクロソフト、セールスフォース、エヌビディア~

アメリカNOW! 今週の5銘柄 ~「株価出遅れ」のアマゾン、アルファベット、マイクロソフト、セールスフォース、エヌビディア~

投資情報部 榮 聡

2024/03/25

先週はiPhoneによる対話型AI「ジェミニ」採用の可能性、エヌビディアのGTC、FOMCでの政策金利予想据え置き、マイクロンテクノロジーの好決算など、株式相場を刺激する材料が途切れず、S&P500指数は再び史上最高値を更新しました。今週の株価材料として、2月個人消費支出物価指数、iPhoneによる「ジェミニ」採用の可能性に関するアップデート、国債入札、などが注目されます。

今回は業績堅調であり、かつ、アナリストによる目標株価との比較で株価の上昇余地を残す銘柄をスクリーニングで抽出し、その中からアマゾン ドットコム(AMZN)アルファベット A(GOOGL)マイクロソフト(MSFT)セールスフォース(CRM)エヌビディア(NVDA)を選んで今週の5銘柄といたします。

図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)

史上最高値の更新が続いています。適度なもみ合いを挟みながらの上昇で、特段の上昇過熱感も見られません。

※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成

図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率

S&P500業種指数騰落 5日 1ヵ月 3ヵ月
コミュニケーションサービス 4.8% 4.3% 16.0%
情報技術 2.9% 4.0% 14.2%
資本財・サービス 2.9% 4.4% 10.7%
一般消費財・サービス 2.8% 0.9% 3.6%
S&P500 2.3% 2.9% 10.1%
金融 1.9% 3.1% 10.9%
エネルギー 1.8% 8.2% 8.7%
公益事業 1.5% 3.5% 1.9%
素材 1.0% 5.3% 6.5%
生活必需品 0.9% 1.7% 7.0%
ヘルスケア 0.4% -1.4% 7.7%
不動産 -0.4% -0.1% -2.9%
騰落率上位(5日) 騰落率
フェデックス 12.3%
ブロードコム 9.5%
エヌビディア 7.3%
フォード・モーター 7.0%
チャールズ・シュワブ 6.8%
騰落率下位(5日) 騰落率
アクセンチュア -9.9%
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ -6.0%
ナイキ -5.8%
アボットラボラトリーズ -4.3%
フィリップ・モリス・インターナショナル -3.6%

注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。


※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

先週の米国株式市場

S&P500指数は週間で2.3%、NYダウは2.0%、ナスダック指数は2.9%の大幅な上昇となりました。

先週はアップルのiPhoneによるグーグルの対話型AI「ジェミニ」採用の可能性、エヌビディア技術カンファレンス(GTC)でのフアンCEOの基調講演、3月FOMCでの2024年末の政策金利予想の据え置き、マイクロンテクノロジーの好決算と新規上場したレディット A(RDDT)の株価大幅上昇など、株式相場を刺激する材料が途切れず、再び最高値を更新しました。

注目を集めた3月FOMCでは、メンバーによる2024年末政策金利予想が年内3回の利下げに相当する4.50~4.75%に維持されました。2月の消費者物価指数が上振れて市場にはメンバーの政策金利予想が上方修正されるのではとの警戒があったため、ポジティブな反応となりました。

ただし、2024年の実質GDP成長率が前年比+1.4%から同+2.1%へ、個人消費支出物価指数のコアが前年比+2.4%から同+2.6%へ上方修正され、さらに2025年末、2026年末の政策金利予想も上方修正となっているため、2024年末の政策金利予想が上方修正されていてもおかしくなかった内容でした。

業種指数では、「コミュニケーションサービス」が4%を超える大幅な上昇で、好材料が出て週間で+5.4%となったアルファベット A(GOOGL)に加え、同+3.6%のメタ プラットフォームズ A(META)がけん引しています。個別株では、12-2月期決算を発表したフェデックス(FDX)の上昇が目立ちました。売上は市場予想を下回ったものの、経費削減が奏功してEPSは市場予想を12%上回ったことが好感されました。

今週の米国株式

今週は主要企業の12-2月期決算発表が一巡して、下掲のiPhoneによる「ジェミニ」採用の可能性以外には株式相場を押し上げそうな材料は見当たりません。先週に相場の好材料が続出した反動も想定され、調整となりやすいと考えられます。S&P500指数の予想PERは21.5倍と高い水準まで上昇しており、高値警戒感を持続しておくほうがよさそうです。

今週の株価材料として、2月個人消費支出物価指数、iPhoneによる「ジェミニ」採用の可能性に関するアップデート、国債入札、などが注目されます。

3/29(金)に発表予定の2月個人消費支出物価指数は総合指数が前年比+2.5%の予想(前月は同+2.4%)、コア指数は前年比+2.8%の予想(前月は同+2.8%)です。先のFOMC会見でパウエルFRB議長は、「2月消費者物価指数の上振れは季節要因によると分析しているため、これに対して過度に反応しない」とコメントしました。2月個人消費支出物価指数がこの見方に沿った結果となるか注目されます。

3/17(日)にアップルがiPhoneにグーグルの対話型AI「ジェミニ」搭載で協議していると報道されました。これが実現すれば、生成AIの利用が企業だけでなく消費者へも広く普及する契機となる可能性があるため、アップデートがでてくる可能性に注目です。

3/25(月)~3/27(水)にかけて、2年、5年、7年の国債入札があります。米10年国債利回りは、2月下旬に付けた3.5%を超えることなく反落となっていますが、再び上昇に転じないか注目です。

経済指標では上記のほか、3/25(月)に米国の2月新築住宅販売件数(前月比+2.1%の予想)、3/26(火)に3月コンファレンスボード消費者信頼感(前月の106.7から106.8に改善の予想)、などの発表が予定されています。

今週の5銘柄

S&P500指数は3/22(金)までに年初来9.7%上昇、予想PERは21.5倍まで上昇して、市場には高値警戒感もあると考えられることから、今回は主要銘柄のS&P100指数採用銘柄を対象に業績堅調かつ株価の上昇余地を残す銘柄を以下のスクリーニングで探ってみました。

【スクリーニング条件】

(1)過去3ヵ月の予想EPS修正率が-1%以上

(2)現在値がアナリストによる目標株価から5%以上乖離(目標株価>現在値)

(3)アナリストによる目標株価修正率(過去3ヵ月)がプラス

(4)アナリストによる投資判断のBUY比率が70%以上(BUY比率は、{BUY判断数÷総投資判断数})

図表3に抽出された銘柄から、アマゾン ドットコム(AMZN)、アルファベット A(GOOGL)、マイクロソフト(MSFT)、セールスフォース(CRM)、エヌビディア(NVDA) を選んでご紹介いたします。

図表3 業績堅調で買い余地がありそうな銘柄のスクリーニング(S&P100指数構成銘柄対象)

コード 銘柄名 目標株価
乖離率
(%)
目標株価
修正率
(%)
予想EPS
修正率
(3ヵ月)
(%)
アナリスト
投資判断
BUY比率
(%)
株価
(3/21)
(ドル)
予想
PER
(倍)
AMZN アマゾン・ドット・コム 16.5 15.1 18.0 97.1 178.15 33.8
GOOGL アルファベット 12.4 7.2 -0.4 85.9 147.60 20.0
MRK メルク 9.1 8.8 1.2 82.8 123.62 14.4
MSFT マイクロソフト 8.1 11.7 6.6 92.5 429.37 35.1
CRM セールスフォース 7.9 18.4 7.7 72.7 308.39 31.6
BLK ブラックロック 6.8 12.1 5.6 81.0 842.06 21.2
EMR エマソン・エレクトリック 6.1 10.1 1.1 79.2 112.60 20.7
NVDA エヌビディア 6.0 48.0 15.1 89.6 914.35 36.9

注:銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

今週の注目銘柄

取引 チャート 銘柄 株価
(3/22)
予想PER
(倍)
ポイント
買付チャートアマゾン ドットコム(AMZN)178.87ドル35.3

【1-3月期の利益見通しが予想上回る】

・10-12月期決算は、年末商戦が好調で売上・EPSとも市場予想を上回りました。また、広告売上が前年同期比26%増とけん引するほか、クラウドサービスは同13%増と7-9月期の同12%増から加速したことも好感されました。

・1-3月期は売上を1,380億~1,435億ドル(前年同期比8%増~13%増)、営業利益を80億~120億ドル(前年同期は48億ドル)のガイダンスで、営業利益は市場予想を上回りました。ネット通販事業でのシェア拡大、AWSおよび広告事業の10%以上の成長によって2030年の売上は1.3兆ドル(2023年実績は5,748億ドル)に達すると期待されます。

買付チャートアルファベット A(GOOGL)150.77ドル21.4

【見直し買いが進みつつある】

・年初来悪材料が重なり(10-12月期決算で広告収入が予想を下回る、対話型AIの「ジェミニ」に不具合など)、株価は低調に推移していましたが、テクノロジー株の中で株価の出遅れが目立ってきたため、3月上旬から見直し買いが入っているとみられます。「ジェミニ」の不具合は痛いものの、同社のAIリソースの厚さを考えれば、いずれ解決してくると期待されます。

・3/17(日)にアップルがiPhoneに「ジェミニ」を採用する可能性があるとの報道があり、期待が高まっています。10-12月期決算については、主力の広告収入が市場予想を下回って失望を招きましたが、全体としては売上が前年同期比15%増、EPSが同56%増、それぞれ市場予想に対して2%、3%上回って堅調な決算でした。

買付チャートマイクロソフト(MSFT)428.74ドル36.8

【AIが業績に貢献し始める】

・生成AIの刺激もあって企業のデジタルトランスフォーメーションは加速する可能性が高く、幅広いソフトウェアを擁する同社の恩恵は大きいと考えられます。また、オープンAI社との親密な関係によって生成AIでも強いポジションを確保できていると考えられます。

・10-12月期決算は前年同期比で大きく伸び、また、市場予想も上回って好調です。クラウド収入は前年同期比24%増で7-9月期の伸びに並び、AI機能を付加した「Office365」(法人向け)の売上は前年同期比17%増と伸びました。ソフトウェア株は昨年後半に好調であった反動で、年明け以降は一部の半導体銘柄ほどには買われていない印象で、買い余地がありそうです。

買付チャートセールスフォース(CRM)307.77ドル31.4

【収益改善が進む】

・顧客関係管理(CRM)やマーケティング、カスタマーサービスなどを支援する企業向けソフトウェアをクラウドベースで提供する企業で、主力の顧客関係管理ソフトウェアでは世界トップ。これまで企業買収を繰り返し、規模の拡大を追い求めてきましたが、2022年末より収益性を重視するように経営の舵が切られました。

・11-1月期の売上は前年同期比11%増、調整後EPSは同36%増と堅調です。マーケティング&販売費用等の抑制で、調整後営業利益率は前年同期の29.2%から31.4%に改善、受注高(残存履行義務)は前年同期比17%増で市場予想を5%上回って好調です。初めての配当支払いを開始し、100億ドルの自社株買いを承認しました。2025年1月期のガイダンスは売上が市場予想を下回ったものの、調整後EPSは市場予想を上回りました。GAAPベースの営業利益率は20.4%程度、調整後営業利益率は32.5%程度へさらなる改善を見込みます。

買付チャートエヌビディア(NVDA)942.89ドル38.2

【競争優位性を確認】

・先週開催の年次技術カンファレンス(GTC)では、GPUの新製品「Blackwell」を発表しました。現在の主力製品「Hopper」に対してAI計算で5倍の処理能力をもち、とくに「推論」(AIに対する問いかけの処理)では30倍の能力を保有していることが明かされました。AIのサービスを提供する主なハイパースケーラーが今年後半から導入する予定です。AIコンピュータ市場での優位性を再確認することになったと考えられます。

・同社の予想PERはAIコンピュータの需要急増が明らかになってから低下基調となっていました。しかし、直近の11-1月期決算発表で昨年のAI計算に占める「推論」の割合は4割に達しているとコメントしたことで市場の見方が変化して、予想PERの低下が鈍る、あるいは、上昇する可能性が指摘できます。これはAIの「推論」でもGPUが使われるようになると、AIコンピュータに対する需要の安定性が高まると考えられるためです。

注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期は、マイクロソフトが2024年6月期、セールスフォースとエヌビディアは2025年1月期、その他はいずれも2024年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。

主要イベントの予定

  経済指標・イベント 企業決算・イベント
25(月) ・シカゴ連銀全米活動指数(2月)
・アトランタ連銀ボスティック総裁が討論に参加
・米新築住宅販売件数(2月)
・2年債入札
 
26(火) ・米耐久財受注(2月)
・S&PコアロジックCS住宅価格(1月)
・米コンファレンスボード消費者信頼感(3月)
・5年債入札
 
27(水) ・中国工業部門利益(2月)
・7年債入札
カーニバル
28(木) ・米実質GDP(10-12月期、確報値)
・米新規失業保険申請件数(3月23日に終わる週)
・米中古住宅販売成約(2月)
・米ミシガン大学消費者信頼感(3月、確報値)
 
29(金) ・米個人所得、個人支出(2月)
・米個人消費支出物価指数(2月)
・米国市場休場(グッドフライデー)
 
4月
1(月)
・日本日銀短観(1-3月期)
・米ISM製造業景気指数(3月)
 
2(火) ・米求人労働異動調査(2月)
・米製造業受注(2月)
 
3(水) ・米ADP雇用統計(3月)
・米ISM非製造業景気指数(3月)
 
4(木) ・米チャレンジャー人員削減数(3月)
・米新規失業保険申請件数(3月30日に終わる週)
ラムウェストンホールディングス、コナグラブランズ
5(金) ・米雇用統計(3月)  

注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1~30位、青字のハイライトは31~50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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