起業に関するお役立ち情報

#29会社設立後の最初の事業年度の数え方って?事業年度のルールと得する設定

会社の設立を考えている人の中には「決算日はどうやって決めればいいのか」と悩んでいる人もいるでしょう。また、「会社を設立して3カ月後を決算時期にしてもいいのか」と不安に思っている人もいるかもしれません。そこで今回は、会社の事業年度や決算に関する疑問を解決します。起業を考えている人や事業年度や決算に対して少しでも不安がある人は必見です。

  1. 1.そもそも事業年度・決算日(月)とは

    会社を設立して事業を営む場合は、一定の期間で区切って売上や手持ちの資産や負債などをすべて計算する必要があります。この計算作業を「決算」と呼びます。決算や法人税の申告のために区切った期間が「事業年度」です。会社にとって最初の事業年度を「1期目」、次の期間を「2期目」というように数えます。そして、事業年度の最終付きを「決算月」と言い、決算月の最終日を「決算日」と呼びます。決算に詳しくない人の中には、「わざわざ決算をする必要が分からない」という人もいるかもしれません。決算を行う理由には、「国や地方自治体に納める税金を計算するため」や「金融機関などから融資を受けるときに必要な財務資料を作成するため」などがあります。

  2. 2.事業年度・決算日のルール

    事業年度や決算日を決めるときには、ルールに従う必要があります。具体的にどのようなルールがあるのか紹介します。

    1. 2-1.原則として期間は1年

      会社の事業年度は、基本的に1年間です。例えば、「1月1日から12月31日までの1年間」「4月1日から3月31日までの1年間」というように事業年度を設定します。1年を超えなければいいので、事業年度を数カ月に設定しても問題ありません。一般的には3月や12月を決算月にしている会社が多いですが、会社の都合に合わせて自由に設定するとよいでしょう。

    2. 2-2.定款に定めなくても可

      会社を設立するには、「定款」という会社の基本規則を記載した書類を作る必要があります。事業年度は定款の任意記載事項なので、記載しなくても大丈夫です。ただし、定款に事業年度を記載しない場合は、会社を設立してから2カ月以内に法人設立届出書に事業年度を記載し、税務署に届け出る必要があります。

  3. 3.事業年度の期間を決めるポイント

    会社の事業年度の期間は自由に設定できますが、どのようにして決定するかを迷ってしまう人もいるでしょう。そこでこの章では、事業年度の期間を決めるときのポイントを4つ紹介します。

    1. 3-1.繁忙期を考慮する

      後ほど詳しく紹介しますが、決算をする時期は申告に必要な書類をまとめたり、計算をしたりするため忙しくなります。そのため、会社の繁忙期と決算期はずらしておくと安心です。繁忙期と決算期が重なると、会社の利益の予測が立てづらい側面もあります。利益が予想できないと、節税対策がしづらくなるデメリットがあるので気を付けましょう。繁忙期と決算期は少なくても、1~2カ月程度はずらすとよいでしょう。

    2. 3-2.納税を考慮する

      会社が支払う税金にはいくつかの種類がありますが、決算月を工夫することによって消費税の節税ができます。消費税は資本金や売上、給与の額によって決定されます。会社を設立したときの資本金が1千万円未満の株式会社であれば、2期目までの消費税が免税されます。そのため、決算月の設定の関係で1期目が短くなると、消費税の納付義務が生じるタイミングが早まる可能性があります。ただし、初年度を長く取ったからと言って、必ず消費税が免税されるわけではありません。

      なぜなら、消費税は会社を設立して半年経過したときの売上や給与支払額がいずれも1千万円を超えた場合、2期目から納付義務が生じるからです。ただし最初の事業年度が8カ月未満の会社については例外もありますので、しっかりと確認しましょう。

      つまり、消費税を2期目から発生しないようにするには、売上または給与のいずれかが1千万円を超えていないか、会社にとって最初の事業年度を7カ月以下(最初の事業年度が7カ月以下の場合はこの特例は適用されません。)になるように設定するかのどちらかを満たさなければいけません。消費税のことを考えて事業年度を設定する場合は、売上や給与が設立してから最初の6カ月間で1千万円を超えそうか判断して、最初の事業年度の期間を検討することが大切です。

    3. 3-3.資金繰りを考慮する

      事業年度終了日から、2カ月以内に納税する必要があります。支払う税金は1つではなく、法人税や消費税、地方税など複数納税しなければいけないので、納付額はある程度まとまった金額になる可能性があります。そのため、会社の資金繰りが苦しくないタイミングに決算月を設定すると経済的な負担が軽くなるでしょう。

    4. 3-4.関連会社に合わせる

      親会社などの関連会社と決算月を合わせると、経営に関する数字を立てやすいメリットがあります。その他、世界基準では12月決算になっています。諸外国の会社と頻繁に取引をする予定があるなら、世界基準に合わせるとよいかもしれません。

  4. 4.決算って具体的に何をするの?

    「決算時期は忙しい」という言葉を耳にしたことがある人もいると思いますが、決算とは具体的にどのようなことをするのでしょうか。設立から決算までにしておくべき準備についてもあわせて紹介します。

    1. 4-1.決算の準備

      決算をするためには、事業年度の間に行った取引やお金の動きをこと細かに記録して管理する必要があります。このときに使うのが「帳簿」です。帳簿に記録する作業を「記帳」と言います。決算の時期まで記帳しないままに放っておくと、決算前にバタバタすることになります。そのため、毎日少しずつでも記帳をすることがスムーズに決算を行うために必要な準備です。また、定期的に記帳が正しくできているかを確認することもポイントです。決算前に間違った記帳を見つけるのはとても大変なので、面倒でも見直しを日頃からきちんと行いましょう。

    2. 4-2.決算でやること

      決算時には「決算整理仕訳」を行います。決算整理仕訳とは、期中に発生した取引を整理するために必要な作業のことです。いくつかの種類がありますが、商品の棚卸資産を適切に評価したり、機械や備品などの固定資産の減価償却費を計算したりすることが例として挙げられます。また、売掛金の貸し倒れに備えて、貸倒引当金を計算するのも大切な決算整理仕訳の1つです。続いて、「決算書」を作成します。法人の税務申告で必要になる決算書には、次のようなものがあります。

      • 貸借対照表(B/S)
      • 損益計算書(P/L)
      • 株主資本等変動計算書(S/S)
      • 個別注記表
      • 事業報告書
      • その他附属明細書

      無事に決算書の作成が完了したら、取締役会や株主総会で公開して承認を得なければいけません。これは会社法で決められたルールで、承認を得たときに初めてその年の決算書が確定します。その後、会計ソフトなどを使って法人税や地方税、消費税などの申告書を作成します。自社で申告書を作れない場合は、税理士や会計士に作成を依頼するとよいでしょう。申告書が完成したら、決算書とあわせて税務署に提出しなければいけません。そして、税務署や都道府県税事務所、市町村に納税をすればその年の決算が完了します。

  5. ルールを踏まえたうえでお得に楽になる設定を

    会社の事業年度の期間は自由に設定できるので、そこまで心配する必要はありません。しかし、よく考えずに事業年度を決定してしまうと、損をすることもあるので気をつけましょう。まずは、今回紹介したルールやポイントを参考に、会社にとって楽な時期はいつか考えてみることが大切です。決算に必要な準備も計画的に進めるようにしましょう。

  • ※ 本コラムは2022年7月4日現在の情報に基づいて執筆したものです。
  • ※ 本コラムの内容は執筆者個人の見解です。

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執筆者情報

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V-Spirits グループ代表
税理士・社労士・行政書士・CFP®
中野 裕哲 監修

■起業コンサルタント®、税理士、特定社労士、行政書士、CFP®。V-Spiritsグループ代表(税理士法人・社会保険労務士法人・行政書士法人・株式会社V-Spirits/V-Spirits会計コンシェル・給与コンシェル・FPマネーコンシェル・経営戦略研究所株式会社)。
年間約300件の起業相談を無料で受託し、起業家をまるごと支援。経済産業省後援 起業支援サイト「DREAM GATE」で11年連続相談数日本一。著書・監修書に『一日も早く起業したい人がやっておくべきこと・知っておくべきこと』(明日香出版社)、『ネコ先生がやさしく教える 起業のやり方』(アスカビジネス)など、16冊、累計20万部超。

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