サイエンス

アメリカの野生の淡水魚1匹を食べると1カ月分の汚染された水を飲むのと同量の化学物質を摂取してしまうという研究結果


アメリカの川や湖で捕獲された淡水魚1匹を食べると、有毒な化学物質で汚染された水を1カ月分飲む場合と同量の化学物質を摂取してしまうという研究結果が、アメリカ・デューク大学のナディア・バーボ氏らの研究チームによって発表されました。

Locally caught freshwater fish across the United States are likely a significant source of exposure to PFOS and other perfluorinated compounds - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.envres.2022.115165


Eating one fish from U.S. lakes or rivers likened to drinking month's worth of contaminated water - CBS News
https://www.cbsnews.com/news/pfas-forever-chemicals-one-fish-us-lakes-rivers-month-contaminated-water/

フライパンのコーティングや消化剤、食品の包装紙などの製品には、はっ水性やはつ油性があり、熱や薬品に強い「ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物(PFAS)」が使用されています。

しかしPFASは生物学的にも化学的にも極めて分解されにくく、何十年も環境に残留するため、「永遠の化学物質」と呼ばれています。そんなPFASは食物や飲料水などを通して人間の体に次第に蓄積され、肝障害や高コレステロール、免疫機能の低下、数種類のがんなどの深刻な健康被害を引き起こすとされており、PFASの規制強化が求められています。


バーボ氏らの研究チームは2013年~2015年にかけてアメリカ中の川や湖で500匹以上の淡水魚を捕獲し、PFAS汚染のレベルを調査しました。

調査の結果、PFASの中央値は淡水魚1キログラムあたり9500ナノグラムだったことが判明しました。以下の画像は検出されたPFASの内訳を示したグラフです。検出されたPFASのうち、約4分の3は危険性が最も高いとされているペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)でした。


研究チームによると、淡水魚を1匹食べた場合に摂取するPFOSの量は、汚染された飲料水1カ月分に匹敵するそうです。また、研究チームは野生の淡水魚の総PFAS汚染レベルは、アメリカ食品医薬品局(FDA)が検査した養殖魚のPFASレベルの約278倍だったことを報告しています。

研究チームのデビッド・アンドリュース氏は「この結果から、タンパク質摂取の手段として、または社会的、文化的要因で魚を消費するコミュニティへの影響が懸念されます」と述べています。また、「PFASを製造および使用した企業は地球を汚染しているにもかかわらず、その責任を問われていません」と指摘し、PFASの不要な使用を避けるために、より厳格な規制を求めています。

イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーアズ大学のパトリック・バーン氏はPFASについて「おそらく21世紀に人類が直面している最大の科学的な脅威です」と指摘しています。また、「この研究はPFASが魚から人間へ直接移動したことを示す証拠となり得るため、非常に重要です」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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