サイエンス

およそ3500年前のミイラ「アメンホテプ1世」をデジタルで開封して中身をスキャンするとこんな感じ


およそ3500年前に存在した古代エジプト第18王朝の第2代ファラオであるアメンホテプ1世のミイラは、エジプト王家で唯一棺(ひつぎ)に入ったまま開封されていないミイラで、エジプト国立文明博物館に展示されています。そんなアメンホテプ1世のミイラの中身を3D断層撮影する試みが行われました。

Frontiers | Digital Unwrapping of the Mummy of King Amenhotep I (1525–1504 BC) Using CT | Medicine
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2021.778498/full

Scientists digitally 'unwrap' mummy of pharaoh Amenhotep I for the first time in 3,000 years
https://phys.org/news/2021-12-scientists-digitally-unwrap-mummy-pharaoh.html

Egyptian pharaoh’s mummified body gives up its secrets after 3,500 years | Egyptology | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2021/dec/28/egyptian-pharaohs-mummified-body-gives-up-its-secrets-after-3500-years

アメンホテプ1世は紀元前1525年から紀元前1504年まで古代エジプトを統治していたファラオで、35歳で亡くなりました。アメンホテプ1世のミイラは1881年にフランスのエジプト学者だったガストン・マスペロらによって、エジプトのルクソールにある第21王朝時代の墓から発見されました。このアメンホテプ1世の墓は紀元前1000年頃に盗掘の被害に遭い、ミイラだけがルクソールの墓に納められたと考えられています。アメンホテプ1世のミイラは1881年に発見されてから一度も開封されておらず、古代エジプト王家に関連する人物のミイラでは唯一遺体の詳細な調査が行われていませんでした。


アメンホテプ1世のミイラを3D断層撮影したのは、カイロ大学医学部の放射線科医であるサハル・サリーム氏らの研究チームです。サリーム氏らはアメンホテプ1世のミイラをCTスキャンで撮影し、その断層写真を重ねることで非侵襲的にミイラを調査することに成功しました。

以下がCTスキャンで撮影したミイラ頭部の断層写真。



そして、棺の上部を横から見た3D写真が以下。


スキャンの結果、アメンホテプ1世の身長は約169cmで割礼済みであり、歯もきれいな状態であることが判明。また、体を包む布の下には30個のお守りと、金のビーズがついた金色のガードルが巻かれていたこともわかりました。このガードルには「亡くなった王を死後の世界で助ける役目」があると考えられていたそうです。以下の画像に写っている金色の鎖のようなものが、ガードルについているビーズです。


また、アメンホテプ1世のミイラには首に骨折、頭に切り傷、腹部に大きな欠損があり、右手と右足が切断されていたこともわかりました。これらの傷はかつて墓が盗掘の被害に遭った時に受けたものではないかとみられています。


このことから、サリーム氏は「少なくともアメンホテプ1世のミイラについては、第21王朝の神官たちが、墓荒らしから受けた傷を愛情を込めて修復し、ミイラをかつての輝きに戻した上で、見事な宝石やお守りと共にそのまま保存していたことを示しています」と論じています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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