爆笑中華ロボ「先行者」の開発者と開発元のいま
日本のインターネット黎明期だった2001年ごろ、一世を風靡した『侍魂』というテキストサイトがある。こちらで紹介されて当時のネット民の大爆笑を巻き起こし、17年後の現在でもネット上で伝説化している中華ロボットが「先行者」だ。
当時の『人民日報』は先行者について、身長1.4メートル体重20キロ、湖南省長沙市の国防科技大学が10年にわたる開発の末に作り上げた中国最初の人間型ロボットで、ある程度の会話能力と毎秒2歩(速い!)の自力歩行能力を持つと伝えていた。
だが、外見があまりにもお間抜けすぎたことと、それに比して『人民日報』が伝えたスペックが高すぎて逆にヨタ話くさかったため、当時の日本のネット民からネタにされてしまったのだった。
……しかしながら、先行者の開発元である国防科技大は、党中央軍事委員会に直属する人民解放軍の理系高等教育機関。学力的にも中国トップクラスであり、2017年現在のアジア大学ランキングに照らせば京大くらいには匹敵してもおかしくない超エリート校だ。
しかも、中国当局は研究開発に潤沢な資金を投入し続けている。先行者が誕生した2000年には日本の4分の1しかなかった中国の名目GDPは、2017年現在は日本の2.4倍にまで爆成長(なお、日本のGDPは17年前とほぼ同数値のまま)。もはや国防科技大の開発資金力は、日本国内のいかなるロボット研究機関をも上回っていると思われる。
結果、さらなる開発に邁進した国防科技大は、ついに中国版ロボコップを開発して2016年6月に深圳空港に実戦配備。また人民解放軍向けに、偵察任務を担えるロボットソルジャーも発明した。いっぽう、かつて『侍魂』が先行者と比較したソニーのロボットは2006年に開発がストップされ、もはや「なかった話」に等しくなっている(ホンダはまだがんばっているようだが)。
気になる先行者のボディについてだが、残念ながら2003年ごろから先の動向は不明。ただ、2010年代になっても「中国ロボット発展史」といった文章でしばしば言及されており、中国国家や学会から決して「黒歴史」扱いはされていないらしい。国防科技大の研究室の一角で、引退して静かな余生を過ごしているのではないかと思われる。
なお、先行者の開発に携わった国防科技大の馬宏緒教授と周華平教授は、現在でも国防科技大で教鞭を執る。馬先生は国際オリンピックAIボット協会の中国区委員会主席に就任。2016年12月に湖南省の名門小学校で開かれたロボットイベントに出席し、ロボットのおじさんとして少年たちに親しまれていることが報道から確認できる。