CoCo壱番屋・伝説のメニュー「1300gカレー」を覚えていますか?

『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』パート①
村瀬 秀信 プロフィール

「1辛」口中ボーボー、三口でシャックリ。「2辛」汗はタラタラ、耳までマッカ。「3辛」目はパチパチ、十二指腸もビックリ。「4辛」頭はガンガン、二日酔いもマイッタ。「5辛」食身ガクガク、三日はケッキン。「6辛〜10辛」内臓破裂、医者の紹介致します……。

好きなのに。今会いたい。すぐ会いたい。なのに会えない私の私のカレーは1300グラム。思いは叶わず、片思いのまま年月は過ぎ去っていく。

イラスト:サカモトトシカズ

23歳。最初の出会いから実に9年目。上京した高円寺で、夢にまで見た黄色の看板を発見。脊髄反射で入店してしまった。金など持っていない。されど、鋼鉄の胃袋さえあればここではそれが正義。10年来の宿願を果たすべく、オーダーするは万感の思いを込めた1300gカレー。

運ばれてくる間、店の壁面を見れば、野球博物館の殿堂入り選手のレリーフのように、成功者たちの誇らしげなポラロイド。もうすぐそちら側へ行ける。あの日見た、英雄の姿に近づける――。

そこへ現れしは、あの日見たザ・マウンテン。北壁ならぬ白い米壁。色めきたつ店内。10年越の戦いがはじまった。ひと口、ふた口……200グラム、500グラムと順調にカレーが胃袋へ吸い込まれていく。約1キロを平らげ残りはあとわずか。勝った! 我大願成就せり! と、万感の思いが込み上げてきた……いや、チガウ。込み上げてきたのは……カレーだ。

お金より、体調は大丈夫ですか?

貧乏で胃袋が小さくなっていたようだ。無念。失態は見せられないとゴール目前で慌ててトイレへ駆け込むと「失格」が言い渡された。いろんな意味で顔面蒼白である。

「お金は後で大丈夫ですよ。それより体調は大丈夫ですか?」

無銭飲食と罵られてもしょうがない筆者に、そう言ってくれた店員の菩薩のような微笑みを一生忘れない。今でもココイチの接客は天下一であると思う所以だ。

結局、1300gカレーにはその後も三度挑戦したが、ことごとく跳ね返されて制覇は叶わず。2003年8月に食品リサイクル法の施行などもあって1300gカレーは歴史に幕を降ろした(一部、継続していた店もあったようだが)。

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