なんと、「紀元前1世紀の沈没船」にコンピュータが積まれていた…!太陽と月、さらに5つの惑星の動きまで予測する「驚愕の精巧度合い」
沈没船に遺されていた“複雑な歯車連動装置”
古代ギリシャにおける究極の“複雑な歯車連動装置”は1901年、クレタ島の北西にあるアンティキテラ島沖の沈没船から回収された「アンティキテラの機械」である。
これが何であるかが判明したのは、1951年にイェール大学のプライス教授が科学的調査を開始してから二十数年後のことであるが、その後の研究成果(たとえば、T. Freeth et al., Nature, 2006.11.30, 2008.7.31)によって、驚くべき精密さで太陽と月に加え、当時知られていた水星から木星までの5つの惑星の動きを予測し、太陽と月のカレンダーを計算する“世界最古のカレンダー用コンピュータ”であることが明らかにされている。
プライス教授は二十数年の時を費やし、X線投影法などの科学的手段を駆使して複雑なギアの復元図を得ている。その復元図によれば、中心の歯車の回転は太陽年を表し、それより小さい歯車は太陽と月の位置や、いくつかの重要な星が昇ってくる位置を示す。歯車群の全体は木製の箱に納められ、箱の扉を開けると驚くべき仕掛けを見ることができた(Nature, 2006.11.30)。
2008年には、青銅の表示盤上に古代ギリシャの全ギリシャ(Pan-Hellenic)競技祭典の開催年を示すと思われるギリシャ文字が発見された。競技開催のインターバル(1〜4年)、開催地(イストミア、ネメア、オリンピア、ピューティア、ナア)などが記されていたのである。
“世界最古のコンピュータ”もアルキメデス作か
じつは、この「アンティキテラの機械」に相当すると思われる装置について、キケロが紀元前1世紀頃の哲学対話集『国家論』の中で、太陽、月、当時知られていた5つの惑星の動きを予測する装置について記述しており、その機械はアルキメデスによってつくられたという。
アンティキテラの沈没船から回収された「アンティキテラの機械」がアルキメデスの手になるものであるかどうかの確証はないが、いずれにせよ、“世界最古のカレンダー用コンピュータ”の製作に、複雑な歯車連動装置を熟知していたアルキメデスが直接的、少なくとも間接的に関与していたことは間違いないだろう。
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