2023.01.15
# マンガ

その死を嘆き、ファンが「実際の盛大な葬儀」を執り行った…『あしたのジョー』力石徹を知っていますか?

週刊現代 プロフィール

長谷川 少年院を出たジョーと力石がリングでグローブを交えるためには、力石がジョーと同じバンタム級に落とす必要がありました。そのために過酷な減量をするのは、重要なエピソードです。

川 プロのボクサーがどれほど辛い減量やトレーニングをしているか初めて知ったのがこの作品でした。トマト1個だけで空腹と渇きに耐える力石の精神力の強さは、読んでいて怖いほどでした。

力石の身体が大きい理由

長谷川 減量する力石が、夜中に水を飲もうとするけれど、蛇口に針金が巻かれて飲めなくなっていることに愕然とする場面は衝撃的でしたね。ジョーや力石がバンタム級だったので、僕は元々そこで自分も活躍することに拘っていました。だから、バンタム級をキープするための減量の辛さはよくわかる。あまりにきつい減量の時には、足が縮んで靴がブカブカになります(笑)。

呉 そういう人間の心理や感情の変化を、画で見せてくれるちばてつやの画力もすごい。特に減量が進むと頬がこけ、目だけが血走って迫力を感じます。あれは、ちばてつやの筆力が出ている場面ですね。

川 漫画的要素は極力抑えながらも、人物の精神的な動きはじっくり描写しているんです。例えば顔の表情がゆっくりと変わるシーン。力石は減量中はカサカサになっているのに、ジョーとの対戦の時は、痩せ細っているけど精気がみなぎっている。仕上がった感じが画から伝わってきました。

呉 力石がものすごい減量をするのは、ちばてつやが力石の登場シーンで大きく描きすぎたために成り行きでそうなったと言われていますが、事実ですか?

Photo by gettyimages
 

 先生は『ジョー』以前にもボクシング漫画を描いています。「階級について知らなかったため」というのは先生特有の冗談でしょう。先生は人物のキャラクターを大切にする人です。少年院における力石の圧倒的な存在感を表現するために意図的にあの体格にしたのだと思います。

長谷川 結果として過酷な減量のエピソードが生まれたわけですね。

 梶原一騎(高森朝雄)から届く原作に、細かな描写がなかったというのは事実ですよね。極端な時は「リングに上がって、ジョー、戦う」しかない時もあったとか(笑)。

川 特に中盤以降はその傾向が強かったらしく、先生がかなり肉付けしていたそうです。「設定を詳細に決めれば後はキャラクターが勝手に動いてくれる」とよくおっしゃっていました。

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