1匹のコバエが3ヵ月後には100万匹に
しかし、清掃業者にとって風呂場が真の「魔境」となるのは、これだけが原因ではない。
「時折、浴室の天井に蚊ぐらいの大きさで、逆ハート形の羽をもつ小さな虫が止まっているのを目にします。これはチョウバエというコバエの一種です。
依頼主は、ダクトを通って舞い込んできたんだろうと軽く考えますが、チョウバエは飛ぶ力がとても弱く、外から入り込むことは考えづらい。私たちはこのハエを見ると、さては"エプロン"の裏は地獄絵図だな……とげんなりします」(「おそうじ専科」代表の池谷正勝氏)
現在、日本の一般家屋では、そのほとんどにシステムバスが導入されている。立体成型されて継ぎ目のないつるっとしたプラスチック製のバスタブは掃除も容易で清潔に見える。だが、バスタブの正面にしゃがんでよくみれば、床面との間にうっすら境目があるのがわかるはずだ。
お椀型をしたバスタブと床面との間の空間を隠す前面のパネルを「エプロン」といい、これを外すと空間が現れる。ここは往々にしてチョウバエの巣となっているのだ。
「一匹のチョウバエはおよそ200個の卵を産みます。ライフサイクルは約1ヵ月で、200個の卵から100匹のメスの幼虫が生まれ、また200個の卵を産み……となると、おおむね夏場3ヵ月の間に100万匹のチョウバエが発生する計算になる。
エプロンはぴったりとはまっているだけに湿気がこもりやすく、バスタブに繋がる排水管の小さな継ぎ目から汚水や菌が侵入し、ヘドロが溜まっています。少しでも腐臭がする場合には、エプロンの裏はチョウバエの天下になっていると覚悟したほうがいいでしょう」(同)