インドのデジタルマーケティングトレンド2022(Web/SNS事情/EC、マーケット傾向分析) 

アジアで中国に次ぐ経済成長力が期待されているインドは、持ち前のIT人材を積極的に起用し、一大デジタル国家としての地位を固めつつあります。 

今回はそんなIT大国として成長するインドでのデジタルマーケティング事情について、最新のトレンドについてご紹介します。 

インドの概要 

南アジアに位置し、中国と隣接しているインドは、13億8,000万人を超える世界有数の人口を抱えています。日本の10倍以上の人口にのぼり、その数は2022年に前年比1,300万人の増加を記録し、ますます増える傾向にあります。 

参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/data.html#section1 

総人口の年齢における中央値は29.1歳と若く、労働人口も豊富です。先進国が直面している少子高齢化の傾向は見られず、成長余力の大きな国と言えるでしょう。 

人口比率として、都市部に住んでいる人間が全人口の35.9%程度にとどまり、残りの64.1%は農村部に住んでいます。インドは発展途上国ということもあり、都市部への人口流出はまだ顕著ではありませんが、今後都市が発展するにつれ、更なる人口流出の可能性もあるでしょう。 

一人当たりのGDPは1,935ドルで、国全体の名目GDPは2兆6,676億ドルです。2020年度のGDP成長率は-7.9%となっていますが、これは新型コロナウイルスの感染拡大によるものが大きいと見られます。 直近5年の数値は以下の通りです。

 2018年2019年2020年2021年2022年※
名目GDP(10億ドル)  2,702.93 2,831.55 2,667.69 3,177.92 3,534.74
名目GDP(10億インド・ルピー)  188,996.7 200,748.6 198,009.1 236,438.8 268,144.3
一人当たりの名目GDP(ドル)  1,998.26 2,070.41 1,935.04 2,282.97 2,515.44
一人当たりの名目GDP(インド・ルピー)  139,724.08 146,786.05 143,628.42 169,854.02 190,819.98
経済成長率(%)  6.453.74 -6.6 8.95 8.15
物価上昇率(%)  3.434.76 6.18 5.52 6.08 

※ 2022年の数値はIMFによる2022年4月時点の推計 

出展:IMF – World Economic Outlook Databases(2022年4月版) 

公用語はヒンディー語ですが、憲法で認められている州の言語が他に21言語存在します。宗教はヒンドゥー教徒が多数派であるものの、イスラム教徒やキリスト教徒、シク教徒なども一定数共存しています。 

インドのデジタルマーケティング概況 

続いて、インドのデジタルマーケティングの概況です。モバイル端末ユーザーの数は11.4億人に達しており、これは全人口の81.3%にあたります。一方でインターネットユーザーの数はこれに劣り、6億5,800万人程度に留まっています。人口比で言うと47.0%にとどまり、国民の二人に一人しかインターネットが利用できない状況です。 

ただ、近年無料通話と格安データ通信サービスを提供するReliance Jioが急速に成長しているとともに、インターネットへのアクセスのチャンスを手に入れる人が増加の見込みです。インターネットユーザーの数は2022年現在、前年比3,400万人の増加が見られています。インターネットの平均利用時間は7時間19分で、インターネットユーザーの91.3%はモバイル端末からアクセスしています。 

インターネットの利用時間は前年比で43分も増加しており、徐々に各種Webサービスが現地に浸透していることがわかります。 

インドにおけるSNSユーザー数 

ここからは、インドにおけるSNSユーザーの数についての近況を見ていきます。インドにおけるSNSユーザーの数は、2022年現在で4億6,700万人に達しています。この数は全人口における33.4%にあたり、前年比で1,900万人(4.2%)の増加が見られました。全インターネットユーザー人口の71.0%にあたり、ネット環境にある人はおおむね何らかのSNSを利用していると見て間違い無いでしょう。 

また、インドにおける平均SNS利用時間は2時間36分で、1月に利用するSNSの数は平均して8.6です。SNSユーザーの74.5%は男性が占め、女性ユーザーは25.5%にとどまるなど、男性利用者が圧倒的に多いという点もインドにおけるSNSの特徴です。 

対象SNSSNS利用ユーザー数
Facebook3億2,970万人
Youtube4億6,700万人
Instagram2億3,030万人
Facebook Messenger1億2,250万人
LinkedIn8,300万人
SnapChat1億2,600万人
Twitter2,360万人
引用:Meta,Google,Twitter,Tiktokなど各社のオープンデータ
対象SNS1カ月に利用する
Whatsapp81.2%
Instagram76.5%
Facebook74.7%
Telegram56.9%
Facebook Messenger49.3%
Twitter44.9%
SnapChat42.9%
LinkedIn37.2%
Pinterest34.9%
Mx Tatatak23.4%
MOJ23.0%
Skype23.0%
ShareChat20.9%
TikTok19.2%
Discord18.2%
引用:GWI.com

Facebookのユーザー数 

世界で最も有名なSNSであるFacebookは、インドでも極めてポピュラーなプラットフォームです。インドにおける2022年のユーザー数は3億2,970万人で、SNS利用者の大半がFacebookを利用していることになります。 

Facebook広告のリーチ数は、2022年時点で総人口の23.5%、インターネットユーザーに限定すると、50.1%に達します。国内に広く普及しているSNS上の広告ということで、インターネットユーザーをターゲットにした広告として十分に機能するでしょう。 

Youtubeのユーザー数 

世界最大の動画共有プラットフォームであるYoutubeも、インドでは人気のSNSの一つです。2022年のユーザー数は4億6,700万人と、Facebookのユーザー数を1億人以上も上回る結果を残しています。 

総人口比で見た場合の、Youtube広告のリーチ数は33.4%にとどまりますが、これをインターネットユーザーに限定すると、71.0%に達します。テレビに代わるマスメディアとして、強力な影響力を発揮します。 

Instagramのユーザー数 

画像・動画共有プラットフォームのInstagramは、2022年現在2億3030万人ものユーザーを抱えています。Instagram広告のオーディエンス数は総人口の16.4%で、インターネットユーザーに限定すると、その数は35.0%に達します。 

Instagramは一般的に女性ユーザーが男性ユーザーよりも多い、あるいは同数というケースが他の国では見られますが、インドでは26.6%が女性、73.4%が男性と、インドのネット事情が色濃く反映されている点にも注目です。 

Facebook Messengerのユーザー数 

Facebookのメッセージ機能をつかさどるFacebook Messengerは、欧米で人気のサービスですが、インドにおいてもそのユーザー数は1億2,250万人と、決して少なく無い数のユーザーを誇っています。 

インドの主流のメッセージアプリ「WhatsApp」の次はFacebook Messengerであり、広告リーチ数は、全人口の8.7%、インターネットユーザーに限定すると、18.6%にのぼります。 

LinkedInのユーザー数 

ビジネスパーソン向けのSNSとしてユーザーを増やしているLinkedInは、インドでも相応のユーザーを抱えています。2022年現在のユーザー数は8,300万人と、他のSNSよりは数の面で見劣りしているものの、ビジネスパーソン向けという特殊性を考えると、決して少なく無い数と言えそうです。 

全人口比で見たLinkedIn広告のリーチ数は5.9%で、全インターネットユーザーの比率で表すと、12.6%です。 

SnapChatのユーザー数 

日本で見かけることは少なくなりましたが、いまだに欧米を中心に根強い人気を誇るSnapChatは、インドにおいても相応のユーザー規模を誇ります。 

2022年現在におけるSnapChatのインドのユーザー数は、1億2,600万人にのぼります。SnapChat広告のリーチ数は、全人口比でみると9.0%にのぼります。インターネットユーザーに限定した場合、リーチ数は人口比で19.1%に達します。 

また、SnapChatユーザーについては女性ユーザーが38.4%と40%近い数字にのぼっており、他のサービスと比べて女性の支持が集まっているSNSであるとも言えるでしょう。 

Twitterのユーザー数 

日本では大きな人気を誇るTwitterですが、インドにおいては他のSNSに比べるとその人気は劣ります。インドにおける2022年のTwitterユーザー数は2,360万人で、全人口比でみると、Twitter広告のリーチ数は1.7%にとどまります。 

インターネットユーザーに限定しても、そのユーザー数は3.6%で、日本でTwitterを積極的に活用している場合は、インドでは運用体制の見直しが求められるでしょう。 

検索エンジンシェア率 

続いて、インドにおける検索エンジンのシェアを見ていきます。インドで最も利用されている検索エンジンは、他の大国と同様、Googleです。Googleの利用比率は98.75%と圧倒的で、他社の追随を一切許していません。中国では圧倒的なシェアを誇るBaiduでも、インドでは0%と少なく、中国向けのサービスが普及していないことも裏付ける結果が出ています。 

Googleの次点に当たるのがMicrosoftのBingですが、それでもシェアは0.91%と、わずか1%にも満たないのが現状です。 

検索エンジンシェア率前年比
Google98.75%+0.01%
Bing0.91%+9.6%
Baidu0%不明
Yahoo!0.25%-28.6%
Yandex0.01%不明
DuckDuckGo0.05%-16.7%
Ecosia0.01%不明
その他0.02%0% から
引用:Statcounter

インドの検索言語 

インドはヒンディー語が公用語として広く普及している国ですが、Googleを使って検索されている言語を見ると、英語、あるいはアルファベット入力による検索が圧倒的です。 

欧米圏のWebサービスがインドで広く普及していることや、公用語として認められていない英語が現地で普及しつつあることを占める現象と言えるでしょう。 

新しい商品・ブランドを何で最初に知るか 

インド人が新しい商品やブランドを知るきっかけとなっているのが、やはりSNSです。調査によると、ブランドや商品を新しく知るきっかけとして、81.7%のインターネットユーザーがSNSの存在を挙げています。 

TV広告34.7%
検索エンジン34.5%
ソーシャルメディア広告32.5%
通販サイト30.5%
TV番組・映画29.5%
ウェブサイトの広告28.2%
ブランド・商品のウェブサイト27.5%
モバイル内の広告26.9%
消費者レビューサイト24.2%
印刷広告24.1%
ソーシャルメディアコメント22.7%
口コミ22.7%
プリロール型動画広告22.1%
専門家のレビューサイト20.5%
音楽ストリーミング広告20.4%
引用:GWI.com

商品・ブランドを何を通じて調べるか 

新商品、及びブランドについて深く知りたい場合も、SNSやWebサービスが用いられています。調査ではSNSの他にも、質問フォーラムや動画コンテンツ、オンラインピンボードなどがブランド検索において一定数のユーザーが確認でき、消費のきっかけとしてこれらのWebサービスが有効活用されている様子がわかります。 

SNS47.7%
検索エンジン47.2%
モバイルアプリ38.8%
消費者レビュー38.3%
ブランド・商品のウェブサイト36.4%
ビデオサイト32.2%
価格比較サイト30.6%
Q&Aサイト29.3%
クーポンサイト26.6%
ブランド・商品のブログ25.5%
メッセージ・ライブチャット24.2%
VLOGS21.5%
フォーラム・メッセージボード20.6%
個人ブログ19.2%
専門家のレビューサイト17.8%
引用:GWI.com

デバイスの比率(PC・スマートフォン・タブレット) 

デバイスの比率ですが、先ほども少し触れた通り、今はスマートフォンユーザーが圧倒的な数を占めています。インドにおけるスマホ所有率は91.3%に達し、スマホユーザーも89.4%という数字を記録しています。逆にPCの保有率は64.5%と低く、タブレットに至っては19.1%と、所有しているのはわずかの人という結果に陥っています。 

まとめ 

今回は、インドにおけるデジタルマーケティングの概況について、ご紹介しました。インドはIT先進国と言われていますが、まだまだIT普及の余地は広く、今後も更なる成長が期待できます。 

SNSやWebサービスの利用も盛んで、こちらも今後のユーザー増加に期待されています。 

この記事を書いた人

野口慎平

GDX 事業責任者 兼 UDX株式会社ゼネラルマネージャー。
新卒で大手外資系総合コンサルティングファームにビジネス&テクノロジーコンサルタント職として就職。2016年よりプルーヴ株式会社に法人営業職として入社。慶應義塾大学理工学部・同大学院 理工学研究科電子工学修了。
海外SEOとマーケティングオートメーションを軸としたデジタルマーケティングを得意とする。
Salesforce Pardot甲子園2021優勝

取得資格:
応用情報技術者、IPAプロジェクトマネージャ、上級ウェブ解析士、IoTコーディネーター取得
Salesforce認定アドミニストレーター