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春に唇形の小花を無数につけるシソ科の宿根草「アジュガ」。公園などの林床や、シェードガーデンの植栽には欠かせない植物です。繁殖力が旺盛で、一度植えてしまえば特別な世話がいらないほど育てやすいので、園芸初心者にもおすすめです。生育に適した環境や、葉色を美しく保つコツなど、アジュガを上手に育てる方法をご紹介します。

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「アジュガ」ってどんな花?

アジュガ

庭や公園などの地際付近でよく見かける丈の低い草花。唇形の花も見覚えがあるような……? アジュガは、日本の野山に自生する種類もあるシソ科の草本植物。ここではアジュガの仲間について見てみましょう。

アジュガの特徴

アジュガ、ジュウニヒトエ
日本の山野に自生するアジュガ、ジュウニヒトエ。

アジュガ(Ajuga)は、シソ科の常緑性宿根草。日本にも、ジュウニヒトエ(A.nipponensis)やキランソウ(A.decumbens)など10種余りが自生していますが、園芸植物として普及しているのは、ヨーロッパからアジアの温帯に分布するセイヨウキランソウ(A.reptans)です。「レプタンス=匍匐する」という名前の通り、ランナーを伸ばして旺盛に広がるので、グラウンドカバーに最適。丈夫で増えやすく、日向でも半日蔭でもよく育つので、ガーデニングビギナーにも育てやすい植物です。

キランソウ
日本自生種のキランソウ。別名はジゴクノカマノフタ。

草丈は10〜30cm、春には長さ15cm程度の花茎がいっせいに立ち上がり、青紫やピンク、白の可憐な花を穂状につけます。そしてなんといってもその魅力は、変化に富んだ葉色の美しさにあります。ライムグリーンやブロンズ色のほか、白やピンクの斑入りなど、じつにバラエティー豊か。花壇や寄せ植えにアクセントとして取り入れれば、花物にも負けない存在感を放つことでしょう。

アジュガの種類

‘バーガンディグロー’

アジュガ バーガンディグロー

白とピンクの斑が入る美しいトリカラーのアジュガ。寒さにあたるとピンクが冴え、高温時には白が強くなり銀色を帯びます。

‘チョコレートチップ’

アジュガ チョコレートチップ

濃緑と紫のコントラストが美しい、ポピュラーな品種。葉を密に茂らせる小型種なのでグラウンドカバーや花壇の縁取りなどに使われます。

‘キャトリンズジャイアント’

アジュガ キャトリンズジャイアント

大型のアジュガで、葉はほかの品種の倍ほど、 花茎の丈も30~40cmほどと高く伸びます。花も大きいので花期の見応えは十分。ブロンズ色を帯びた光沢感のある葉で、カラーリーフとしても通年楽しめます。

‘ディクシーチップ’

アジュガ ディクシーチップ

細めの葉を密につける小型のアジュガ。クリーム色、ピンク、赤紫と、複雑な斑が入ります。温度や日照で色が変化するので、季節ごとに趣が異なるのも魅力。

‘ピンクシェル’

アジュガ ピンクシェル

優しい色合いのピンクの花は、日陰でいっそう目を引く存在に。花径も長く伸びるので、寄せ植えのアクセントにもなります。

アジュガの楽しみ方って?

アジュガの開花期は4~6月中旬。冬にはロゼット状だった株に、春先になると花芽が現れます。長さ10~15cmほどに伸びた花茎の先に、1~2cm前後の唇形花を幾重にも重なるようにつける姿から、日本の自生種(A.nipponensis)に付けられた和名は「十二単(ジュウニヒトエ)」。鮮やかな青紫や白、ピンクといった美しい花色は、樹木の根元や林床といった日陰の場所でひと際目立つ存在です。

乾燥にやや弱いアジュガは、木漏れ日などの「柔らかな日差し」を好みます。むしろ夏場の直射日光や西日など、強い日差しに当たり続けると葉焼けを起こし、カラーリーフとしての観賞価値を損なってしまいます。1日1時間程度の短い時間でも日照が確保できれば元気に育つので、植えるものが限られる日陰のバイプレーヤーとしても頼れる存在。生育が旺盛で、一度根付けば手間をかけずに増えてくれるので、グラウンドカバーに限らず、敷石の間や花壇の縁取りなど、活用の幅も広がります。

アジュガの基本的な育て方をご紹介!

アジュガ

アジュガを美しく育てるポイントは、適度な湿り気と強すぎない日差しの確保です。ここでは、植え付けや繁殖、管理方法など、アジュガを上手に栽培するコツをまとめました。

アジュガの植え方

アジュガ

アジュガを入手するには、市販の苗を購入するのが一般的です。植え付けの適期は3~6月上旬と9月中旬~11月上旬。春や秋に苗が出回りますが、寒さが残る早春の苗はロゼット状で縮こまった株が多く、本来の葉色が分かりにくいかもしれません。

アジュガは日当たりがよくても日陰でもよく育ちますが、一日中日が当たり乾燥しやすい場所よりは、日陰でもやや湿気の多い場所を好みます。とはいえ、暑い時期の過湿は根腐れを起こす原因になるので、水はけが悪い場合は、赤玉土や腐葉土、ピートモスなどをすき込んでおくとよいでしょう。このときに、緩効性肥料を少量混ぜておくと、その後に追肥をする必要はありません。むしろ多肥になると立ち枯れ病が発生しやすくなります。

伸ばしたランナーの先に次々と子株を出して広がるので、株間は20cm程度とるように。一方、鉢植えの場合は、市販の草花用培養土を使うか、赤玉土の小粒7に対して腐葉土やピートモスを3程度混ぜ、緩効性化成肥料を加えるとよいでしょう。

植え替えの目安と手順

アジュガ

地植えの場合は、基本的に植え替えの必要はありませんが、鉢植えや寄せ植えなどで葉が混み合ってくると、蒸れて枯れてくることがあります。姿が乱れてきたり、花付きが悪くなってきたと感じたら、植え替えのタイミングです。

植え替えの適期は、植え付けと同じ、春と秋。傷んだ枝を間引いて風通しをよくし、一回り大きめの鉢に植えるか、株が一回り小さくなる程度に根と茎の先端を少し切り詰めて同じ鉢に植え直します。寄せ植えにしていた株も姿が乱れてきたら一度抜き取り、同様の手順で株を整えてから植え替えます。

アジュガの剪定

咲き終わった花茎は、付け根から切り取ります。さらに、開花期が終わってから再度刈り込んでおくと、蒸れやすい夏の備えに。また、秋以降の新芽の伸びも促します。

一方、地植えの場合は、その旺盛な繁殖力を抑えるために剪定が必要となります。ランナーを伸ばして広がるため、他の植物の生育を阻害してしまうこともあるからです。広がりすぎて困る場合は、ランナーを小まめに切って、繁殖域をコントロールしましょう。

アジュガの増やし方

種子でも増えますが、植え付けられる大きさまで育てるには時間も手間もかかるので、一般的には株分けや挿し木で繁殖させます。

種子で増やす

アジュガの種子は市販されていないので、種子で増やすには、花後の採取から始めます。種まきの時期は春か秋。薄く土をかぶせ、発芽するまでは乾燥させないように注意しましょう。

株分けで増やす

アジュガ

植え付けて数年経つと、株が混み合い、葉が黄色くなってきます。そのような株は根詰まりを起こしている可能性が大。一度鉢から抜いて、株分けを行いましょう。大株の根をほぐしながら、手で丁寧に分けていきます。2、3芽をひとまとめに分けたら、根のボリュームより一回り程度大きなポットに植え付けます。

また、ランナーについた子株もそのまま苗にできます。すでに発根している子株は、根をなるべく傷めないように掘り上げて、鉢に移植するだけです。まだ発根していない子株も、ビニールポットなどに土を入れて、その上に子株を乗せておくと発根してきます。数週間ほどして新しい葉が出てきたら、根が定着した合図。ランナーを切って親株から独立させます。

株分けに比べて時間がかかりますが、葉挿しでの繁殖もできます。新芽ではなく、すでに成長した葉を選び、生え際から一枚一枚カットして、栄養分を含まない挿し木用の培養土に挿すだけ。数週間ほどで発根が始まりますが、定植できるサイズになるまでには半年ほどかかります。

株分けでも、葉挿しでも、根がしっかりと生えそろうまでは、土が乾かないように注意しましょう。

アジュガを育てるときの注意点

育てやすいカラーリーフとしても人気のアジュガですが、葉色を美しく出すには、強い日差しは好ましくありません。とくに初夏、いきなり日差しが強くなるとダメージを受けやすいので、5月中旬以降は、徐々に茎を間引いて風通しのよい株に整えておきましょう。

一方、耐寒性は強く、北海道中南部以南であれば地植えが可能。ただし霜が降りると枯れてしまうことがあるので、寒冷地などでは敷き藁などの対策が必要になります。

アジュガ

斑入りの品種も多いアジュガですが、ときに、斑が入らない緑の葉が出現することも。そのような枝は成長が旺盛なので、そのままにしていると全体に広がり、斑入りの株に戻らなくなってしまうこともあります。伸びる前に付け根から切り取り、斑入りの枝のみ保持するようにしましょう。

アジュガ

春には可憐な花を咲かせ、一年を通して美しい葉をつけるアジュガ。丈夫で増やしやすいので、苗を増やしておけば、グラウンドカバーや寄せ植えにと、用途もさまざま。品種も豊富なので、いろいろ集めてみるのも楽しそうです。

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Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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