1965年、劇団「新国劇」に入団し、俳優人生をスタートさせた若林豪。以降、ドラマ、映画、舞台で活躍している。『Gメン』シリーズや『十津川警部』シリーズ、NHK大河ドラマ徳川家康』『独眼竜政宗』『翔ぶが如く』など、刑事ドラマや時代劇などに多く出演し、人気を博した。現在84歳の大ベテラン俳優、若林豪の「THE CHANGE」とは。【第1回/全2回】

若林豪 撮影/弦巻勝

 長崎の茂木という田舎町で生まれ育った私が、どういうわけか、こうして俳優としてこの年まで活動できた。そのきっかけは、実はちょっとした思いつき、もっと言うと、魔が差したとしか言いようがないんですよね。

 茂木というのは、長崎市内から峠を越した漁師町で、私の家は山のあたりでビワとミカンを作る、農家でした。

 子どもの頃から家業の農業が大好きだったので、当然、私も親父の後を継ぐつもりだったんです。でも、若気の至りで「その前にちょっと東京を見てみたい」と思ってしまったんですね。

 それで実際に上京して、「もう東京はだいたい分かった」と数年後に帰郷したんです。すると、親父が「東京は面白かったか?」と聞くんですよ。急に東京に出ていった息子に、それですよ(笑)。

 もし、あのとき、親父が「勝手なことばして!」と叱っていたら、おそらく私は、そのまま長崎でビワやミカンを作って一生を送っていたと思います。

 でも、親父は叱らなかった。そのことが、私の心にまた火をつけてしまったんです。そこもやっぱり、若いですよね(笑)。自分の中に「茂木を飛び出して、何かがやりたい。刺激がほしい」そういう思いが強くなってしまった。