自社株買いは高水準で持続、政策保有株式の売却は下半期に増加と予想

日本企業が自社株買いと政策保有株式(持ち合い株)の売却を積極的に進めています。事業法人の年度初からの累積現物買い越し額は、9月第3週時点で2兆1,331億円に達し、過去5年間の同時点平均(1兆4,725億円)を44.9%上回っています。今年度の事業法人の売買動向は、グロス(総量)の買い付け額(過去平均比+49.6%)と同売り付け額(同+51.9%)の両方が大きいという特徴を持っています。企業は自社株買いのみならず、政策保有株式の売却も積極的に行っていると考えられます。この異例の動きの背景には、東京証券取引所(東証)の「要請」が、これまで企業間で敬遠されていた政策保有株式の売却を促す触媒として機能している面があるとみます。

今後、自社株買いは高水準で持続すると予想します。これについては、以下の3つのポイントが挙げられます。①還元の原資となる税引後利益の増加が見込まれます。野村證券では、2023年度のTOPIX-EPS(1株当たり利益)が前期比10.8%増加すると予想しています。②企業が保有する現預金が高水準となっています。全上場企業ベース(除く金融、日本郵政)の現預金は、2023年度第1四半期末時点で148.8兆円であり、2019年度末時点の112.0兆円から36.8兆円増加しています。③企業から見た株価の割安感の低下は限定的です。QUICK短観における自社の株価水準判断DI(全産業ベース)は、9月の調査時点で58%ポイントと、2022年度下半期の平均(58.8%ポイント)とほぼ同水準です。

一方、政策保有株式の売却は下半期に増加する可能性が高いとみます。事業法人の売買動向の季節性を見ると、グロスの売り付け額は上半期よりも下半期、特に3月に多くなる傾向にあります。有価証券報告書で掲載される政策保有株式の保有状況は、年度末時点が参照されるため、下半期になると駆け込み的な加速が見られます。東証の「要請」の目に見える成果として、政策保有株式の売却に対する注目度が今後高まる公算が大きいでしょう。

(FINTOS!編集部)

要約編集元アナリストレポート「日本株ストラテジー – 注目点とトピック(2023年9月28日配信)」(プレミアムプラン限定)

(注)画像はイメージ。

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