異例のデフォルト懸念=ロシア国債、外貨凍結で―脱ドル依存加速も 2022年03月17日

 ロシア国債がデフォルト(債務不履行)に陥る懸念が強まっている。発生すれば1998年のロシア危機以来だが、ウクライナ侵攻を受けた経済制裁が引き金となる点で、98年の財政不安によるデフォルトとは様相が大きく異なる。ロシアは支払い能力があると主張するが、海外の中央銀行に預けている外貨準備の凍結などにより、米欧日は軍事侵攻の代償を払わせる構えだ。
 ロシア危機以後に発生したアルゼンチンやギリシャ国債のデフォルトはいずれも、放漫財政などで利払いや償還に必要な外貨が不足したことが主因だ。これに対し、ロシアは原油や天然ガスの輸出で巨額の外貨を蓄積しているが、制裁で凍結され使えなくなった。
 デフォルトが起きた場合は通常、国際通貨基金(IMF)などから資金支援を受けつつ、財政再建を進める。しかし、今回は先進7カ国(G7)が、IMFや世界銀行による対ロシア融資停止を実現させると表明。仮にロシアが支援要請しても、「必要となる加盟国の賛成は得られない」(IMF副専務理事を務めた篠原尚之元財務官)状況だ。
 日本政府内には、ロシア国債がデフォルトに陥っても、国際経済への影響は限定的との見方が強い。海外投資家による外貨建てロシア国債の保有が比較的小規模なためだ。ただ、ロシアにとっては、国際金融市場での資金調達が、長期にわたり困難になるのは確実。このため、中国などと経済・金融面で連携を強める可能性もある。
 ロシアは2014年にウクライナ南部のクリミア半島併合に対する米国の制裁を受け、外貨準備のドル建て比率を引き下げてきた。今後はロシアだけでなく、中国をはじめ米国と距離を置く国も今回の制裁を踏まえ、外貨準備の脱ドル依存を加速させる可能性がある。既に世界の外貨準備のうち、ドル建ての比率は00年前後の7割から21年9月末には約59%まで低下した。今後、「新たな世界の通貨秩序」(クレディ・スイスのポズサー氏)が生まれるとの声も出始めた。 

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