舞台『My Boy Jack』眞島秀和インタビュー「難しいと思う役を舞台でいただけるというのは、俳優としてはすごく幸せなこと」

「ジャングル・ブック」などで知られるノーベル文学賞受賞作家、ラドヤード・キプリングが第一次世界大戦中に書いた詩を元に、家族の姿を描いた舞台『My Boy Jack』。時代の波に飲まれ息子を戦地に送り出すしかなかった父の気持ち、息子の気持ち、姉の気持ち、そして母の気持ちを切々と伝える本作で、一家の父親・ラドヤードを演じる眞島秀和に、公演への思いを聞いた。


――最初に台本を読んだ時の感想を教えてください。

お話をいただいた時にあらすじを伺って、その後に、仮の台本をいただいたのですが、とにかくやりがいがあって、難しいお話をいただけたなという印象が強かったです。


――どの辺りに難しさを感じたのですか?

(セリフの)ボリュームがありますし、出演者の人数も限られていて、各キャラクターのパートに厚みがあるというところがまず、難しいなと思いました。それから、第一次世界大戦下という時代設定です。以前、第一次世界大戦中のアメリカを舞台にした『月の獣』という作品に出演させていただいた時に、今、僕たちが生きている時代とは全く違う濃度を感じたのですが、今回もそれを感じています。これは頑張らないといけないという気持ちになりました。


――今回、眞島さんが演じるラドヤードという人物については、今の段階ではどのように捉えていらっしゃいますか?

台本読んだ段階では、相当な堅物という印象です。ただ、映画化された作品を観た時には、愛国心があって、家長として名誉を重んじているけれども、息子に対する愛情もきちんと持っていて、時代が彼をそうさせていただけなのかなとも思いました。台本を読んだ時に感じたラドヤードの印象と映画での印象が違ったので、自分が演じるにあたってどういうふうに作っていくのかは、稽古を重ねながら見つけていきたいと思います。ただ、第一次世界大戦中という、この時代に生きている人たちは、密度の濃い日々を送っていたと思いますし、あの時代の人たちならではの骨太さがあると思うので、そこは稽古の中で身につけたいところですね。


――そうしたラドヤードの“密度の濃い日々”というのは、どのようにして自分の中で深めていこうと考えていますか?

こればかりは、“家族”みんなで作っていかないといけないと思います。家族であるということを体感して、4人の絆を作り上げる。僕は、相手役の方が深めているのを感じて、そこについていこうと自分を調整するところがあるので、家族で集まった時にみんながどう演じるのかを感じながら作っていけたらと思います。


――映画をご覧になって、息子への愛情をきちんと感じたということですが、ラドヤードの家族に対する思いについては、どのように考えていますか?

彼は厳格な父親なので、そう思うしかなかったということなのかなと思います。戦地に行って、人が殺し合いをする中から名誉が生まれるというのは、とても怖いことだと思いますが、そう思わざるを得なかったのかなと。母親は父親とはまた違う視点から息子を見ているんでしょうが、社会の中で生きなければならない父親は、一家の長としてはこうするというものに縛られていたのかなと思います。


――このラドヤードという人物に対して、共感できるところだったり、理解できるところはありましたか?

今のところはまだそんなに見つかってないですね。話は変わってしまうかもしれませんが…自分の祖父を思い出すと、近所付き合いも含めて、家族単位での付き合いを強く意識していたところがあったように思います。そうした時代の空気感は、ラドヤードが生きていた時代も同じだったのかもしれません。そう考えると、共通点というのはあまりないかもしれないですが、そうした時代を理解していくという作業になるのかなと思います。


――役を作る上で実際のラドヤードについての人となりはリサーチしていくものですか?

そうですね、リサーチというほど堅苦しくはないですが。ただ、リサーチをするにしても、まずはある程度、台本を自分に染み込ませて、余白が生まれてからになります。そこは稽古を重ねながらになるのかなと思います。今の段階では、この時代のイギリスの情勢などを少しずつ勉強している感じです。

 


――ビジュアルも公開になりました。撮影は、別々に行われたため、家族が並んだ写真は出来上がったビジュアルで初めてご覧になったそうですが、どのように感じましたか?

いいチラシができたなと思いました(笑)。


――眞島さんと息子役の前田旺志郎さんは、どことなく似ていますよね。

僕も見ていて思いました(笑)。共通点は、眉毛じゃないですか? 彼は22歳なので、実際に親子でもおかしくない年齢なんですよね。きっといい“家族”になれると思います。


――前田さんの印象は?

実はドラマでは共演しているんですよ。ただ、ほとんど絡みがなかったですし、話すタイミングもあまりなかったのですが。僕は大変申し訳ないですが、あまり彼のことを存じ上げてなくて…芸人さんもされていたんですよね? すごくフットワークが軽くて飄々とした様子でドラマの現場にいらっしゃったので、今思えば、色々な顔を持っている方なのかなと思います。その場所によって存在感が変わるのかなと感じました。


――母親役の倉科カナさんとはこれまでも共演経験がありますね。

そうですね、舞台では3回目です。プライベートでも親しい友人ということもあり、倉科さんが奥さん役をやってくださるのであれば、何も心配ないなと思っています。


――倉科さんは、眞島さんから見てどんな方ですか?

倉科さんは、台本にたくさん何かを書かれているんですよ。以前の稽古場を思い出してみると、そういえば、2冊目の台本をもらっていたなと(笑)。セリフを覚える時や、稽古の序盤で色々と書き込みをされる方なので、今回もそれがあるのかもしれない(笑)。


――眞島さんは、台本にはあまり書かないんですか?

映像の仕事の台本よりは舞台の方が書くことが多いです。動きのきっかけや稽古での変更点などは書いてます。ですが、倉科さんは、本当に色々と書かれているみたいですよ。以前、稽古中に何かを書き込んでいる姿を見て、チラッと覗き見したら怒られました(笑)。


――演出の上村聡史さんとは今回、初めてご一緒されるそうですが、上村さんの作品に対してはどんな印象がありますか?

(上村さんが演出を務めた)『エンジェルス・イン・アメリカ』を観劇させていただいたのですが、シリアスな場面から軽いタッチのシーンまで、幅広く演出される方だなという印象がありました。今回の台本をどのように導いてくださるのかすごく楽しみです。


――では、映画やテレビドラマなどさまざまなメディアでご活躍されていらっしゃる中で、眞島さんにとって舞台に挑戦することにはどのような思いがありますか? 映画やドラマとは違いがありますか?

多少の違いはあると思います。僕が元々、演劇の研究所出身ということもあるのかもしれないですが、どこかで舞台には「目指すべき場所」という感覚があります。自分の中で役者として経験を重ねて成長していく上でも必要な場所です。もちろん映画もドラマも大事な場所ではあるのですが、仕事の仕方という意味では、日常の中にあるものだという感覚があるんですよ。舞台の場合はある期間、特別な場所に向かって、いつもとは違う集中力を使って演じるという作業が必要なので、日常とはちょっと違った感覚があり、それが違いでもあると思います。映画やドラマのように、編集があって、曲や音を入れてパッケージとして出すのではなく、目の前にお客さんがいて生のものを出していくのが舞台なので、そういう意味でも大きく違いますね。


――今作は、第一次世界大戦下を舞台にした作品ですが、眞島さんが戦争について思うことを教えてください。

僕の母方の祖父が満州に移民していたので、その母方の祖父の話はよく聞きました。その後、シベリア抑留も経験し、祖父だけが日本に帰国したそうです。僕はそうした話を聞いただけですが、戦争は絶対になくなって欲しいものだと思います。戦争で何よりも怖いのは、国のためという考えや息子を戦争に送り出すということが正しいという空気感が出来上がることだと個人的には思います。それはこの第一次世界大戦当時もそうですし、日本の過去の戦争もそうですが…。


――もしも、眞島さんが、戦時下に生まれたとしたら、本作の家族4人の誰に一番近い考えをしたと思いますか?

この時代に生まれて、どんな教育を受けて成人していくのかも分かりませんが、今の僕だとしたら、母親に近いんじゃないかなと思います。息子を戦争に行かせたくはないですから。


――本作の出演が決まった際のコメントに「今、演じる意味を感じながら」という言葉がありました。今の段階では、眞島さんがこの作品を演じる意味や、この作品を通して伝えたいことはどんなことですか?

これから稽古を重ねないとわからないところはありますが、自分の中では、こうした父親の役をいただけたことに意味があると思いますので、まずは、そこに向き合って、稽古に入りたいと思っています。難しいと思う役を舞台でいただけるというのは、俳優としてはすごく幸せなことです。そうした役に向き合った先には、自分の中に大きな経験が積み重なるだろうという期待もあります。僕は、分かりやすい強みがあるタイプの役者ではないので、こうした作品に向き合って、一生懸命やっている姿を見ていただくことで、成長できるのかなと思います。


――改めて、公演を楽しみにされている方にメッセージを。

今、稽古を控え、相変わらず不安で、すごく怖いですが、一生懸命稽古して、素晴らしい作品になるように頑張ります。楽しみにしていてください。

 

取材・文/嶋田真己
スタイリスト:増井芳江
ヘアメイク:佐伯憂香