趣里、『ブギウギ』歌唱シーンは「苦手意識あった」 カラオケの十八番は「昭和歌謡」

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(月~土曜午前8時)でヒロイン・福来スズ子を演じる俳優の趣里(33)。お茶の間を魅了する国民俳優が映画主演した『ほかげ』(塚本晋也監督)がヒット公開中だ。趣里が『ブギウギ』と『ほかげ』の意外な縁を語ってくれた。

2471人の応募者から朝ドラヒロインに選ばれた趣里【写真:舛元清香】
2471人の応募者から朝ドラヒロインに選ばれた趣里【写真:舛元清香】

『ブギウギ』と主演映画『ほかげ』の意外な共通点

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(月~土曜午前8時)でヒロイン・福来スズ子を演じる俳優の趣里(33)。お茶の間を魅了する国民俳優が映画主演した『ほかげ』(塚本晋也監督)がヒット公開中だ。趣里が『ブギウギ』と『ほかげ』の意外な縁を語ってくれた。(取材・文=平辻哲也)

 歌手の笠置シヅ子をモデルにした『ブギウギ』。12月4日から第10週に突入し、現在は戦時下での人間模様が描かれているが、『ほかげ』は、終戦後の闇市をしたたかに生きる女と戦災孤児らの物語。時代的に重なる部分もある。

「『ブギウギ』でも闇市のシーンが少し出てきます。撮影のときは活気づいているけど、その中にはお腹空かしている子どもたちが結構いたんだろうなと考える瞬間がありました。(朝ドラの)スタッフさんも“『ほかげ』も闇市の話だもんね”と言ってくれたりしました。状況も気持ちも違いますが、戦争によって苦しみながら、策を見つけて未来に向かって生きていく姿は一緒だと思います」

 撮影は昨夏、埼玉・深谷に組んだロケセットで行われた。

「実は『ブギウギ』のオーディションシートは深谷で書いたんです。写真は、『ほかげ』のボロボロの女の衣装と顔で。無理して笑ってるみたいな感じが良かったのかもしれません。マネジャーさんが『これがいい』と選んでくれたんです」

 その結果、2471人の応募から見事に選ばれたわけだが、朝ドラヒロインは『ほかげ』のおかげだったのかもしれない。

 塚本監督との出会いは2019年3月の高崎映画祭だ。趣里は『生きてるだけで、愛。』で最優秀主演女優賞、塚本監督は『斬、』が最優秀作品賞に選ばれた。趣里は『野火』『斬、』の大ファンだったことからあいさつした。

「『いつか作品に呼んでいただけるようなことがあったら、うれしいです』みたいなことをお伝えして。実際にお声をかけていただいて本当にうれしかったです。同時に生半可な気持ちではできないなとも思いました」

 演じたのは、半焼した居酒屋に住む女。体を売ることを斡旋されて、なんとか生きている。ある日、戦争孤児の坊や(塚尾桜雅)がやってきたことから、少しずつ生き方を変えていき、そこに復員兵(河野宏紀)や戦争で片腕をまひした男(森山未來)らが絡んでいく。それぞれ役名はない。

「監督は、個人の人生ではなく、もっと広い目で見ているんだと思いました。よくおっしゃっている『祈り』が込められているのかなと感じました」

 塚本監督がカメラも担当する撮影現場は少数精鋭。それぞれのスタッフが作り込むセット、衣装、ヘアメイクが女役を作ってくれた。

「本当に手作りの現場で、すごくぜいたくな時間でした。一人一人の技術がここまでダイレクトに映画に反映されていて、力になりましたね。役作りというよりも、自分が持っているものを手放すという感じでした。ものすごく暑かったのですが、その息苦しさもよかったと思います。そんな中でも、坊や役の桜雅君がものすごく元気で、サンシャイン池崎さんのまねをして笑わせてくれたりして、撮影の時が一番静かだったんですよね」

趣里は映画『ほかげ』でも主演を務めた【写真:舛元清香】
趣里は映画『ほかげ』でも主演を務めた【写真:舛元清香】

今後についても言及「出会ったものを一つ一つ大切にしたい」

『ほかげ』の初日舞台あいさつでは、スタッフ・キャストと久々に再会も果たした。

「監督をはじめ、みなさんから『ブギウギ』を観ていますと声をかけていただきました。桜雅君はステージのシーンをずっとやっているそうで、お母さんから動画を見せてもらいました。(共演の)利重剛さんも『ブギウギ』にも出ているので、すごくつながっている感じがしました」

『ブギウギ』の撮影は来春ごろまで。歌唱シーンも日を重ねる度に増えている。

「撮影以外にも歌の練習もあるので、何で体が一つなんだろうと思ったりしますが、できる限りのことはやっています。前は歌うことに、苦手意識があったんですけど、今は楽しくなってきたので、スズ子とともに成長しているのかな」と笑い。ちなみにカラオケの十八番は欧陽菲菲、テレサ・テンだそうで、「いろいろ頑張って、今、はやってる曲も歌ってみたりするんですけど、結局は昭和歌謡にいきつきます」。

 この『ほかげ』を経て、朝ドラヒロインを務めるなど昨今、活躍が目覚ましい。33歳の現在地をどう見ているのか。

「出会ったものを一つ一つ大切にしたいのは変わらないです。だから、逆にこうなりたいとも思わないようにしています。その中で、塚本監督と出会えて映画作りができたんだと思います。これからも、あまりガチガチに決めすぎずにやりたい。『ほかげ』は『野火』『斬、』に続く3部作の最後の作品で、私の体に間違いなく刻まれた作品になりました。戦争があったことは忘れてはいけないですし、もう繰り返してはいけない。メッセージ性の強い作品になっています」と趣里。『ブギウギ』を見た朝ドラファンが劇場に足を運ぶことを祈っている。

□趣里(しゅり)1990年9月21日、東京都出身。2011年デビュー。主演を務めた映画『生きてるだけで、愛。』(18/関根光才監督)で第33回高崎映画祭最優秀主演女優賞、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作に、映画『流浪の月』(22/李相日監督)、『もっと超越した所へ。』(22/山岸聖太監督)、ドラマ『DCU~手錠を持ったダイバー~』(22/TBS)、『サワコ~それは、果てなき復讐』(22/BS-TBS)など。23年はNHK連続テレビ小説『ブギウギ』、ドラマ『東京貧困女子。-貧困なんて他人事だと思ってた-』(WOWOW)、映画『零落』(竹中直人監督)、『愛にイナズマ』(石井裕也監督)に出演。

スタイリスト:中井綾子(crepe)
ヘアメイク:伴まどか

ベスト:7万1500円
スカート:4万9500円
上記2点:TAN/contact@tanteam.jp

その他:スタイリスト私物

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