長髪をバッサリ、金髪ショートで挑んだ映画初主演 梅宮万紗子、デビュー25年目の決意

デビュー25年目の女優の梅宮万紗子(45)が、「リ、ライト」(9月17日公開、一ノ瀬晶監督)で映画初主演を果たした。長い髪をバッサリ、金髪ショートカットにして、自身の性格とはまったく違うハスッパな自称ジャズシンガーを体当たりで演じた。役のモデルにした人物を聞くと、意外な人が……。

映画「リ、ライト」で初主演を果たした梅宮万紗子【写真:荒川祐史】
映画「リ、ライト」で初主演を果たした梅宮万紗子【写真:荒川祐史】

埼玉・川越が舞台の映画「リ、ライト」17日公開 梅宮「もがいている人の応援歌」

 デビュー25年目の女優の梅宮万紗子(45)が、「リ、ライト」(9月17日公開、一ノ瀬晶監督)で映画初主演を果たした。長い髪をバッサリ、金髪ショートカットにして、自身の性格とはまったく違うハスッパな自称ジャズシンガーを体当たりで演じた。役のモデルにした人物を聞くと、意外な人が……。(取材・文=平辻哲也)

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 TBS「サラリーマン金太郎2」(2000年)、フジテレビ「ランチの女王」(02年)など主にテレビドラマで活躍してきた梅宮。そのデビューは1997年の佐藤藍子主演のテレビ朝日「研究医なな子」にさかのぼる。

 女優生活25年目での映画初主演は、友人から誘われた小さい劇団の公演に一ノ瀬監督が見に来てくれたことから始まった。

「5、6年前から映画で主演したいと思っていたんです。もちろん脇でも全力で頑張るのですが、私ってこういう役者なんです、と言えるものができたら、名刺代わりになると、ずっと思っていました。でも、『できないな』とちょっと諦めていたときにお話をいただいたので、すごくうれしかったですね」。

 本作は埼玉県川越市でアンティークな照明器具屋を営む孤独な照明職人(大森博史)と自称クラブシンガーの洋子(梅宮)が織りなす心の交流をジャズの音色とともに描いたヒューマンドラマ。洋子は職人の息子の子どもをはらんでいると店に押しかけ、住み始める。金髪ショートカットで背中にはタトゥーもある。平気で怒鳴り込みもする一見、乱暴な女。演じていくうちに自分自身と似ている部分に気づくこともあったようだが、等身大の梅宮とは少しかけ離れた存在だった。

「最初は身近に洋子みたいな人がいたら、ヒントになるかなと思ったんですよ。でも、そんな人はいなかった(笑)。姉が『浅草に焼肉屋さんの女主人がいる』と教えてくれて、出かけていったんです。その方は一見さんお断りで、ものすごく怖い人。お客さんには塩対応で、お客さんがいるのに横になって休憩するような人。あまりにキャラが立ちすぎて、お客さんがその方をモチーフにしたTシャツを作っちゃうぐらい面白い人なんです。電話で予約を入れたら、『今コロナだから、はっきり言って、来て欲しくないわけよ』と言われてしまいましたが、おいしいと伺ったので、ぜひ行かせてくださいと頼み込んだんです」

 何度か通ううちに、女将さんに本当の目的を告げると、その生い立ちも話してくれた。「在日朝鮮人の方で、朝鮮学校に行っていたときに女番長だったそうです。『パッチギ』の世界なんでしょうね。女将さんのおかげで、撮影ではまったく迷いもなく、演じることができました。この10年間、いろんなワークショップに参加させていただきましたが、こういう風に役作りをしたのは初めてでした」と振り返る。

撮影は「天国みたい。監督はお姫さまのように接してくれた」と笑顔を見せた【写真:荒川祐史】
撮影は「天国みたい。監督はお姫さまのように接してくれた」と笑顔を見せた【写真:荒川祐史】

川越での撮影は「天国みたいでした」 見せ場は町おこしのためのジャズセッション

 劇中では、川越の町おこしのためのジャズセッションが大きな見せ場。しかし、実は歌は得意ではなかった。「リズムを取るのが苦手だったんです。歌のレッスンを受けたのですが、コロナ禍だったので、最初はZoomレッスンだったのですが、切羽詰まってきて、実際にスタジオで練習していくうちに少しずつ自信がついてきました。大人になってからカラオケもほとんどいったことがないのですが、今ではひとりカラオケも全然行きます」と笑う。

 川越での撮影は幸せな毎日だったという。「時間内に撮影しなきゃいけないとか、寒いとかとはありましたが、イヤだと思うことは一切なくて、天国みたいでしたね。監督はお姫さまのように接してくれたので、それが大きいですね。洋子はすぐに切り替えができる人で、それもよかったかもしれない。くよくよしない、恨み言を言わないとやっていくと、いい方向に転がっていくんだと、役に気づかせてもらった気がします」。

 人生史上最も短いショートカットも気に入っていた。「普段なら、女らしくしないといけないという意識が働くんですけど、飾りようもない。しかも金髪だったら、カタギの人じゃないと思われるだろうから、ちゃんとしなくてもいいんだなと思ったり。髪を洗うのもシャップーだけでおしまい。結局、人間は中身で勝負しないといけないんだ、と思いました」と笑顔で振り返る。

 今では前向きになっているが、30代は悩んでいた時期もあったという。

「20代のキラキラとは違いますからね。親戚が芸能人、有名人が多いことも影響があったかもしれません。お芝居がイヤになって、お芝居の楽しさを味わうことなく、10年くらい過ごしていました。そんな30代後半に(『太陽の帝国』『ラストサムライ』などハリウッドで活躍するキャスティング・ディレクターの)奈良橋陽子さんの演技スタジオに行ったら、本当に楽しくて。ニコール・キッドマンやアル・パチーノにもレッスンした外国人の先生ロベルタさんは『役者にとって一番大事なのは?』と聞くんです。みんなは『演技力』『オーラ』『コネ』とか言うんですが、『違います、友達です』と。本当にそうだな、と思ったんですね。この映画も友人が舞台に誘ってくれたのがきっかけでしたから」

 1年前から友人を誘って舞台公演も行っている。「今では7人ぐらいになっています。洋子の生き方とはすごく重なっていて、ポジティブでいることの大事さを感じているので、この作品が強い後押しになれば、いいなと思って。この映画は、もがいている人の応援歌。明日への勇気になって欲しいなと願っています」。梅宮自身もこの「リ、ライト」で文字通り再び輝く。

□梅宮万紗子(うめみや・まさこ)1977年6月11日、東京都出身。97年、「研修医なな子」で女優デビュー。代表作は、TBS「サラリーマン金太郎2」(2000)、フジテレビ「ランチの女王」(02)、テレビ朝日「仮面ライダー響鬼」(05)、「亜人」(17)。21年公開された伊藤俊也監督の映画「日本独立」では、吉田茂の娘、麻生和子を演じた。

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