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太陽光と水から継続的に酸素・水素・電気を製造! JAXAとホンダの宇宙開発研究がNEXTステージへ

宇宙での持続可能なシステム構築に向けた動きが加速

加速している宇宙開発競争において、長期間の宇宙滞在実現が今後大きなキーポイントやアドバンテージになるに違いない。一方で、その実現の大きな壁となっているのが、水や電気などをいかに宇宙で得続けるのかということだ。今回は宇宙での持続可能なシステムの構築を目指す国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)とホンダの取り組みをご紹介する。
TOP画像:(C)JAXA/Honda カルーセル画像:(C)Honda

宇宙開発で求められる膨大なエネルギーの地産地消

1961年にソ連の宇宙飛行士、ユーリ・ガガーリンが初めて宇宙飛行に成功してから約60年。その間、技術は飛躍的な進歩を遂げ、近年は民間による宇宙旅行の話題も耳にするなど、21世紀は本格的な宇宙時代の幕開けともいわれている。

今後は各国による激しい宇宙開発競争が予想されるが、活動領域を月から火星へと広げていくためにも、長期間にわたって人が宇宙に滞在し活動できる環境を整えなければならない。

日本も参画している米国提案による国際宇宙探査プロジェクト「アルテミス計画」を踏まえ、JAXAが描く日本の国際宇宙探査ロードマップ

画像提供:ホンダ(C)JAXA

そこで必要になるのが、酸素や水、食料に加え、燃料となる水素や諸活動を行うために用いる電気だ。

これらを都度、地球から輸送していてはコストがかさみ、とても現実的とはいえない。そのため、宇宙活動で使用する分を宇宙で賄う持続可能なシステムの構築が求められている。

そうした中、JAXAと株式会社 本田技術研究所(以下、ホンダ)は6月14日、共同研究を進めてきた循環型再生エネルギーシステムの実現性の検討を開始すると発表した。

宇宙でエネルギーを生成し続ける仕組みとは?

2020年11月に3年間(2020~2022年度)の共同研究協定を締結した両者は、ホンダが有する高圧水電解技術および燃料電池技術を活用した「月周回有人拠点(Gateway)及び月面での循環型再生エネルギーシステム」に関する研究を進めてきた。

月面での循環型再生エネルギーシステムの活用を表したイメージ図

画像提供:ホンダ(C)JAXA/Honda

2021年度は、2020年度に識別した循環型再生エネルギーシステムの要素技術に関する課題に対し、試作による評価を行いながら実現性を検討していくという。

宇宙でエネルギーを得るという課題の一つの解決策として期待される循環型再生エネルギーシステム。その仕組みは、高圧水電解システムと燃料電池システムを組み合わせ、太陽エネルギーと水から継続的に酸素と水素、電気を製造しようというもの。

具体的には、太陽エネルギーを使って、高圧水電解システムで水を電気分解し、酸素と水素を製造。酸素は有人拠点で活動する人の呼吸用として、水素は月面を離発着する輸送機の燃料としての活用を見据える。また、酸素と水素を使って燃料電池システムで発電し、有人拠点や移動用車両などへの電力供給も想定されている。

循環型再生エネルギーシステムの概念図

画像提供:ホンダ(C)Honda

ポイントとなる高圧水電解システムだが、電解質膜の片側が高圧に、もう一方が常圧になる差圧式高圧水電解方式を採用しており、その独自の構造によって、ホンダだけがFCV用の燃料供給が可能な圧力レベルで実用化している。これによって水素圧縮用のコンプレッサーが不要となり、コンパクトかつ軽量化を実現していることが大きな特徴。

これまでにもホンダは同システムを使ったスマート水素ステーションの開発・設置を通じてノウハウを蓄積しているだけにその信頼度も高い。この技術活用は、積載容量と質量の低減化という宇宙輸送における課題の解消にもつながると期待されている。

なお、得られた結果は、2022年度に計画しているシステムとしての成立性の検討へとつなげていく予定だ。

さらに株式会社本田技術研究所 先進パワーユニット・エネルギー研究所担当の武石伊久雄執行役員は「地上でのカーボンニュートラルに大きく貢献する循環型再生エネルギーシステムを、宇宙という究極の環境で技術を磨き、再び地上にその成果をフィードバックする」としている。

宇宙開発のみならず地球の持続可能な社会実現への貢献も期待される今回の取り組み。

日本が世界をリードしていく存在になれるか、その成果に今後も注目していきたい。

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