赤井英和ד赤井の嫁”佳子×長男・英五郎、展開が読めない特別鼎談の結末は…

2022年9月3日 10:00


取材に応じた(左から)赤井英五郎監督、赤井佳子、赤井英和
取材に応じた(左から)赤井英五郎監督、赤井佳子、赤井英和

AKAI」(9月9日公開)は、俳優・赤井英和のボクサー時代を描くドキュメンタリー。昨年、プロボクサーデビューした英和の長男、赤井英五郎が編集・監督し、インタビュアーも務めた。英和、英五郎監督、そして、Twitterでは「赤井の嫁」として人気の赤井佳子さんの3人が語り合った。


――最初にそれぞれの好きな映画を伺いたいです。

英和 子どもの頃から好きだったのは、大映映画の「悪名」です。勝新太郎さん、田宮二郎さんのシリーズですけど、新世界や(生まれ育った)西成にも当時は映画館があったんで、全部見ていましたね。後は「仁義なき戦い」シリーズも。「悪名」シリーズはDVDを全部そろえたくらいです。上西雄大監督が「悪名」をイメージした「ねばぎば 新世界」を作ってくれましたけど、シリーズ化してくれたらうれしいな、と思っていますね。

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佳子 最初に見たのは薬師丸ひろ子さんの「セーラー服と機関銃」でした。(故郷の)青森県八戸の東映で見て、薬師丸ひろ子になりきって出てきました。もっと小さい頃は公民館で「ダンボ」を見ましたね。英五郎が小さい頃、熱を出してぐずっていた時に見せたら、じっと見ていました。

英五郎 そんなこと覚えていないな。僕が映画好きになったのは親の影響ではないんです。好きな映画はいっぱいありますけど。


――英五郎さんが、英和さんの映画で一番好きなのは「どついたるねん」だそうですね。

英五郎 お父さんの映画で一番熱がこもっているから。気持ちの入り方が他の作品とは違いますよ。俳優デビュー作でもあるし、先があるか分からない中、懸命にやった。これは阪本順治監督がお父さんの性格を分かっていないとできないと思います。

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(そこへ阪本順治監督が突然、あいさつに現れ、去っていく)

佳子 うわー、びっくりした。阪本監督は、私にとって特別な方で、この世界で唯一、気軽に話せない相手なんです。赤井は、阪本監督にもう1回声をかけてもらえるような俳優でなければ、駄目だと思っているんですね。声をかけてもらえないのは、みなぎったものがないからじゃないか、と。3人の子ども(長女・つかさ、長男・英五郎、次男・英佳)は立派に育ってくれたし、生活にも困っていないんですが、それだけじゃいけないんじゃないかと思っているんです。阪本監督には、俳優として魅力的でいることをずっと見られているような気がして、すごく緊張するんです。この意味は、赤井には分からないと思います。英五郎は、この意味はよくわかっていて、「大丈夫だよ。お父さんが馬鹿なことして地獄に落ちれば、阪本監督は映画を撮ってくれる」って言うんですけど(笑)。

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――英和さんにとって、阪本監督はどんな存在ですか?

英和 私の師匠であり、恩人ですね。阪本監督がいなかったら、今の自分はいませんから。お会いしたのは久しぶりですけど、電話ではお話していますし、緊張はしませんね。

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――「AKAI」では阪本順治監督が「どついたるねん」の映像許可を出してくださったそうですね。

佳子 英五郎が、阪本監督に会いに行くと聞いた時は、「はあ?」と思いましたね。映像を使わせてほしいなんて、無理だと思っていました。でも、英五郎は「阪本監督にシンパシーを感じている」と言うんです。私は「シンパシーってなんだよ」って思ってしまいました。でも、阪本監督はすぐに返事くださって、びっくりしました。

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英五郎 最初に会ったのは僕が2歳の時で、26年ぶりくらいにお会いしました。実際にお会いしたら、26年の歳月が一気に縮まった気がしました。一番印象的だったのは「舞台は空間の芸術、映画は時間の芸術」という言葉。どんな映画が好きなのか、という話をしたり、「どついたるねん」の裏話もしてくれました。おじいちゃんとおばあちゃんの実家のこたつで、スタッフと打ち合わせをしたという話をしてくれ、その風景が浮かんで、すごく感情的になって、涙が出る瞬間もありました。1時間少しでしたけど、不思議な時間でしたね。


――英五郎監督が見たこと、体験したことが積み重なって、「AKAI」という作品になったんですね。

佳子 「AKAI」は英五郎の全てだと思います。今までのアメリカに行ったこと(小6から留学)、友達のこと、きょうだいのことだったり、全ての感覚が出ている気がしますね。例えば、(英和のコーチの)エディ(・タウンゼント)さんの素晴らしいところ、優しいところはこの映画がなかったら、世に出てこなかったと思うんですよね。私たちも見てよかったと思いました。

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英五郎 映画を作りたいと思ったきっかけは2020年春でした。その前の年に東京五輪の代表選考から漏れて、この先、どうしようと思っていた時期だったんです。でも、コロナ禍で緊急事態宣言が発令され、ジムにも行けないし、就職活動もできなかった。以前から、お父さんのボクサー時代の話を映像にまとめたら、面白いなと思っていたので、家にある素材をまとめてみようと思ったんです。映像はアメリカの大学でも少しは学びましたけど、ほとんど独学だったんです。

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英和 「AKAI」を見て、私も、赤井英和のファンになりましたね。「どついたるん」に至る前の映像を使っているけれども、一つのドキュメンタリーみたいになっている。編集が素晴らしい。うまいことやってるなと感心しました。

英五郎 僕は「お父さんがすごいボクサーだったんだ」と言いたくてやったんじゃないんだよね。自分の表現をしたんだ。

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英和 (英五郎に)映像は、試合だけじゃなくて、ドキュメンタリーとか、ワイドショーであったり、いろんな素材が多かったから、大変だったでしょ。

英五郎 でも、使うカットは決まっていたし、(緊急事態宣言下で)時間があったからね。


――英五郎さんはプロボクサーとして活躍中です。今年7月2日のダイナミックグローブで2ラウンドTKO、プロ初勝利。私も観戦しましたが、興奮しました。試合はどんな風に入っていったんですか?

英五郎 気負いすぎず、なるべくリラックスしなきゃと思っていました。入場前にちょっと弾むとか、軽くシャドーするとか、めい想してみるとか。めちゃくちゃやったことはなかったです。どうせリングに上がったら緊張するから、試合前はリラックスしたら、ちょうどいい具合になりましたね。今までなかった感覚だったんですけれど、改めて振り返ると何も考えない方がいいなっていうふうに思いました。

1ラウンド目は一番得意じゃないんですけど、2ラウンド目は得意。温まってきたのか、慣れてきたのか、作戦があったわけじゃないけれど、うまく動けた気がします。その瞬間瞬間で動けばいいのかな、と。

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佳子 赤井(英和)は試合の前は緊張しないんですって。

英和 いや、するけどな。

英五郎 映画では使わなかった映像はたくさんあるんですが、エディさんは「別に作戦なんてない」と言っていました。行く時の合図だけは決めているんです。これって、相当な信頼関係がないとできないことです。エディさんは自分の感情で見つけられるような選手に育てたということだと思います。スポーツは理屈では動けない。ある程度、練習した後はその人の感性に任せるということだと思いますが、それをスラッと言えるのはすごいなと思います。深いです。

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佳子 赤井は相手を「殺してやる」って思いながら試合に入っていくんですよ。そんな人、怖いですよね、イヤですよね。これは、持って生まれたものじゃないかな。

英和 イヤがられるのが?(笑)

佳子 そうじゃなくて、どんな時も、一歩出るタイミングが独特じゃない。横断歩道で待っていて、青に変わった時に歩く時も合わせ方がちょっと難しいんですよ。

英和 この場で横断歩道のことを言われるとはな(笑)。これからは歩道でシャドウせんで、車道でシャドウするわ。ガハハ。


――夫婦漫才みたいですが、子どもとして、両親のことはどう見ているんですか?

英五郎 いや、いつものことなんで。これが普通のことですね。基本、僕は話を聞くだけ。おねえちゃん(つかさ)がツッコミじゃないけど、いろんな反応してくれるんです。弟(英佳)は合間にしゃべったり、しゃべらなかったり。きょうだい仲はいいですね。けんかもしないですし、年も近いし感覚も近い。かといって、めちゃくちゃ連絡を取り合うわけじゃないんですけど、気軽に話し合いますね。

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――英佳さんはロサンゼルスで俳優として活躍中ですね。

英五郎 英佳はお父さんに似ているところがあります。お父さんは、自分が何がいいとか悪いとかわからない。だからこそ、よくも悪くもこだわりがない。英佳も似たようなところがあるんですけども、勉強家でルーティンを大事にする。そこは、僕は感性で行くことが多いので、逆ですね。もう少し殻を破ったら、と思うんですけど……。英佳の性格を一番わかってくれる人が撮ってくれたら、一番いい作品ができると思うんです。阪本順治監督とお父さんの関係性みたいな感じで。

佳子 英佳は、演技はうまくないけど、華があるんです。大学最後の4年生の時、チェーホフの芝居を観に行ったんです。何が面白いのか分からないような難しいやつです。素敵な絵画の中に1人だけ違う人がいる。それが英佳なんです。場を壊しているんですけど、華がある。しかも、日本にいる時よりもアメリカにいる時の方が需要があるんです。

英五郎 アメリカでやった方がいいと思う。華があるのはすごく大事なこと。芝居は上手くはないけど、何者かになりたいというパワーがあるから、面白いなと思っています。基本的にはすごい真面目。宿題やノルマはちゃんとこなして、人の何倍も節制して挑む。絶対完璧な状態にしていきたい人。そこはおねえちゃんも同じ性格です。


――英和さんの役作りはどんな感じですか?

英和 50~60ページの台本をいただいて、その人、シーン、いろんなことを整理しています。実はその裏には何があるかとか、本に書かれてないところをイメージしたりすることは大切だと思います。

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――聞いているお二人は笑いをこらえているように見えますが……。

佳子 こういうことを聞かれた時に、いいだろうと思っている案を言っていましたので。

英五郎 赤井英和という人は、本来役作りはしないんです。頑張ってセリフを覚えて、そのタイミングでそれっぽくいう。操り人形みたいな感じで、そこに魂や役作りは存在しない。赤井英和という人が、役のセリフを覚えて、しゃべっている。赤井英和はキャラクターではなく、役者の名前で覚えている人。だから、30年も俳優ができた。唯一違うのが「どついたるねん」だと思っています。主人公、安達英志は、違う世界線、パラレルワールドにいる赤井英和になっている。お父さんはけがでボクサーを引退したけれど、もし復帰したら、どうなっているのか。そこがすごくリアルだった。


――英和さんは、どんな役を演じてみたいという思いはありますか?

英和 僕ら俳優は、「赤井がいいかな」とキャスティングしてもらうほうですから、そういうのはあまり……。でも、「これは、赤井じゃないかな」と思うような役もやってみたいという欲もありますね。

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――こだわりがないのが、こだわりですかね。

佳子 そういったら、聞こえはいいですけどね。阪本監督から声がかかるような俳優になってほしいですね。

――英五郎さんはボクサー兼監督としてやっていくのですか?

英五郎 肩書きについてはこだわっていないんです。自分らしく、やっていきたいと思っています。もちろん、ボクサーとして今後、試合も控えていますし、映像作品もチャンスがあれば、やってみたいとは考えています。


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