ヤマトが誇る物流拠点「羽田クロノゲート」に潜入!

福島 れい

羽田空港から数駅離れたところに巨大な物流拠点があることをご存じだろうか?その名も「羽田クロノゲート」。ヤマトグループのすべての機能が集結する最先端の施設だ。今回は「巨大な物流ターミナルを探検しませんか?」との言葉に誘われ、羽田クロノゲートに潜入してきた。

物流に付加価値を!「バリュー・ネットワーキング」構想

物流に付加価値を!「バリュー・ネットワーキング」構想

まず、初めに驚くのは、その施設の大きさだ。駅からほんの数分歩くと羽田クロノゲートが視界に入るのだが、綺麗で大きな施設にこの中でどんなことが行われているのだろうかとわくわくした。

施設内に入る前に、羽田クロノゲートについてもう少し説明しておこうと思う。羽田クロノゲートとは、羽田空港をはじめとする陸・海・空すべての輸送モードを利用できる立地に位置し、ヤマトグループが持つ「速く、正確に届けるための仕組み」「洗浄」「印刷」「修理」「メンテナンス」など多彩な付加価値を持った施設だ。ヤマトグループではこの羽田クロノゲートを最大限に活用し、「バリュー・ネットワーキング」構想、つまり、物流をバリューを生み出す手段にするのだとの強い想いで物流の革命を目指しているのだという。

それでは羽田クロノゲートの中に進もう。受付棟で見学者用カードを受け取り、しっかりセキュリティ管理された施設内を進む。広い廊下から窓の外を見下ろすと、多数のヤマト運輸のトラックが見え、ヤマトグループの拠点に来ているのだと改めて実感した。

国内最高級機材を活用「オンデマンドDM便」

国内最高級機材を活用「オンデマンドDM便」

はじめに案内していただいたのは、ヤマトシステム開発が提供する「オンデマンドDM便」の印刷などを行うフロアだ。ここでは1台1億円もするという大きなオンデマンドプリンターが稼働していた。このプリンターは1分間に110枚をプリントでき、そのスピードと質を総合的にみると国内最高級のものなのだという。

このプリンターを活用する「オンデマンドDM」の特徴は必要な時に必要な分だけプリント、発送するという仕組みだろう。発注があってから印刷し目的地に送るため、営業担当者が数日後に必要な営業資料を発注し、出張先のホテルで受け取るということが実現するのだ。この仕組みでは在庫を抱えないため、コストダウンが実現するという。特に年に数回の資料変更があるMR事業者などが積極的に利用しているそう。個人情報の管理も万全で、1枚1枚に異なる情報を印刷することもできるため、データを入稿するだけで完全に自動でDMを発送することも可能だ。

次に案内していただいたのは、DMの梱包作業を行うフロアだ。広い室内にコンベアーや作業の進捗確認を行うボード、発送ミスを防ぐための機械などが設置されていた。感動したのは、発送ミス防止のための機械だ。カメラと計りが設置されており、表紙の画像と重さで発送ミスを防ぐのだという。1枚数グラムしかないDMを重さで管理できる驚きの精度の高さだ。また、ピッキングに関しても完全にバーコードで管理されていることに加え、システムを利用した最適化がすすめられている。

想像を上回る仕組み化された施設こそが、ヒューマンエラーを防ぎ、高い質とスピードを実現するのだと理解したと同時に、それに対して最先端技術を積極的に活用し、本気で取り組むヤマトシステム開発の”価値づけ”に対する本気を感じた。

次のページからは、メインとも言える羽田クロノゲートをご紹介する。ヤマト運輸が請け負う荷物が各地の集配センターから集められ、目的地近くの集配センターに再振り分けされるまでのちょうど真ん中にあたるヤマト運輸の配送網の心臓部とも言える施設だ。

必見!国内最大級の物流ターミナル!

必見!国内最大級の物流ターミナル!写真は羽田クロノゲート見学コース案内HPより引用
http://www.yamato-hd.co.jp/hnd-chronogate/visitortour.html

見学者用に設置された廊下を歩きつつ、ガラス越しに物流ターミナルのまさに中身をみることができるのだが、ほぼ完全にシステム化されたこの空間はまるでSF映画の世界に来てしまったかのような衝撃があった。残念ながら撮影は禁止、言葉でのみお伝えすることになる。

視界一面に広がるのは、長く複雑なコンベアーとその上を流れる無数の荷物だ。数えきれない数の荷物が流れていくのに対し、作業をする人の姿は一切見えない、つまりほぼ完全にシステム化されているのだ。ここでは最大1時間に4万8000個の仕分けができるのだそう。

少し荷物の流れを説明すると、まず集配センターからトラックに載って届いた荷物は、コンベアーに載せられ巨大なスキャナーに運ばれる。このスキャナーで荷物についた行き先を示すバーコードを読み取るのだ。スキャナーによって目的地が明らかになった荷物は、1,070mもの長さがあるコンベアーに移動する。このコンベアーにはセルと呼ばれる大きなプレートが多数並べてあり、このセル1つにつき、1つの荷物が割り当てられる仕組みになっている。なぜセルが必要になるのかというと、セルが荷物の行き先を把握し、仕分ける作業を行うからだ。実際に見ていると、まるで荷物自身が目的地を把握し、自ら移動しているのではないかと思ってしまうほどだ。

日本最大の物流ターミナルと聞いても、荷物が沢山集まっているのだろうな…と簡単に捉えてしまいがちだが、その多数の荷物を破損なく素早く届けるために、ヤマトグループが持つノウハウをまさに終結した施設だと言えよう。

ピッキングシステム「FRAPS」を体験!

ピッキングシステム「FRAPS」を体験!

圧巻の羽田クロノゲート内部の見学終了後には、FRAPS(Free Rack Auto Pick System)を体験しながらおみやげを頂いた。FRAPSとは、ミスなくピッキング作業を行うために活用されているシステムだ。バーコードを読み込むと、ピッキングの対象物が入った棚に必要数が表示され、ピックしたらボタンを押して表示を消すという仕組みになっている。見学ツアーに参加する子供でもすぐに体験できるほど簡単なため、作業員の熟練度に関わらず、質の高いサービスを提供するための工夫だ。

 最後には、ヤマト包装技術研究所株式会社から、企業ごとにカスタマイズしたデザインの段ボールや、緩衝材を利用しない手軽で環境に優しい梱包資材などが紹介された。

上の写真は、緩衝資材を活用しない梱包資材の例だ。丈夫で伸びるビニールが張られた段ボールに商品を詰め、折り目を曲げて、ぴったりサイズの段ボールに入れることで、緩衝資材をつかわずに発送することができる仕組みだ。

羽田クロノゲートに潜入してわかったこと。それはヤマトグループがお客様の利便性向上を真剣に考え、システムから梱包資材の至るところにまで、配慮を重ねているということだ。物流に”付加価値”を付ける。ヤマトグループが掲げるこの想いを非常に強く感じる現場だった。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

福島 れい の執筆記事