再生可能エネルギーを普及させるには?今後の政策と企業の役割について解説

再生可能エネルギーを普及させるには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。米国南西部で最高気温40℃を超える熱波や、欧州では大洪水が発生、日本でも九州で72時間に800mmを超える雨量を記録し、毎年のように異常気象による災害が深刻な影響を及ぼしています。

温室効果ガスによる気候変動への対応は切迫した状況にあり、CO2を発生しない再生可能エネルギーの普及は重要課題です。今回は、企業や国、自治体がどのように取り組んでいくべきか、また、新規導入のFIP制度や電力の地産地消等の政策についてもあわせて解説いたします。

目次

  1. 日本では現状、再生可能エネルギーの普及が進んでいない

  2. 再生可能エネルギー普及への政策、FIP制度と電力の地産地消

  3. 再生可能エネルギーに転換する企業のメリット

  4. まとめ:地域に根差した再生可能エネルギーの導入を検討しよう

1. 日本では現状、再生可能エネルギーの普及が進んでいない

地球温暖化をくいとめるためには、CO2を始めとする温室効果ガスの排出を減らさなければなりません。世界がその取り組みを強化する中、日本でも2050年カーボンニュートラルに向けて、さまざまな取り組みがなされています。再生可能エネルギーへの転換はもっとも強く推進していく事項です。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、エネルギーとして永続的に利用することができ、エネルギーを作り出すときに温室効果ガスを排出しないものを言います。具体的には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等による電力が政令で定められています。

出典:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー 再生可能エネルギーとは』

日本の再生可能エネルギーの割合

日本の再生可能エネルギーの比率は、2019年で約18%でした。3割以上を実現するドイツやイギリス等の欧米諸国と比べて、普及が進んでいないことがわかります。

日本の電源構成の内訳は、燃料のほとんどが輸入頼りな火力発電が大きな割合を占めています。再生可能エネルギーを普及させることは、エネルギー自給率の改善に寄与し、安定供給にもつながります。

出典:資源エネルギー庁『2020—日本が抱えているエネルギー問題(後編)』(2020)

出典:資源エネルギー庁『日本の一次エネルギー供給構成の推移』(2020)

日本の再生可能エネルギーの推移

東日本大震災後、原子力発電が稼働を停止し、石炭、LNG等の化石燃料を使用する火力発電の割合が増加しました。これは温室効果ガスの排出が増加していることを意味しています。

2012年に再生可能エネルギー由来の電力の固定価格買取制度、いわゆるFIT制度が始まり、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進展しつつあるものの、2030年に温室効果ガスの排出を46%削減するというパリ協定の目標を鑑みると、さらなる取り組みが必要と言えるでしょう。

出典:資源エネルギー庁『2020—日本が抱とえているエネルギー問題(前編)』(2020)

2. 再生可能エネルギー普及への政策、FIP制度と電力の地産地消

再生可能エネルギーの普及を推進していくことは、今後の気候変動にどのように影響していくのでしょうか。そして、どのような対策がとられているのでしょうか。

2050年カーボンニュートラル

2020年10月菅総理大臣は所信表明演説で、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」こと、2050年カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。2021年3月までに世界125の国と地域が同様に、2050年カーボンニュートラルを表明しています。

出典:環境省『2050年カーボンニュートラルの実現に向けて』

IPCCの報告書はさらに厳しい予測

2021年8月、IPCC「気候変動に関する政府間パネル」の自然科学的根拠を担当する第1作業部会が報告書をまとめました。それによると、向こう数十年の間にCO2等温室効果ガスの排出を大幅に削減しない限り、今世紀中に世界平均気温の上昇が1.5℃及び2℃を超えると予測しました。

熱波、熱帯低気圧、干ばつ等の極端現象の頻度がさらに増していく等、過去の研究報告よりもさらに厳しい予測となりました。各国政府、企業にとって気候変動対策は、これまでにも増して重い責務となっていくでしょう。

出典:環境省『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について

再生可能エネルギーを普及させるための政策

この危機的な状況に対し、最も重要なのがエネルギーの転換です。2019年度日本で排出される温室効果ガスの内、CO2は91.4%を占めています。特にエネルギー起源のCO2は84.9%と、化石燃料に依存する実態が窺えます。化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーを推進していくことが必要です。

出典:環境省『2019年度(令和元年度)温室効果ガス排出量ー要因分析ー概況と増減要因(PDF)P4』(2021)

日本はかねてよりエネルギー転換のためにさまざまな施策を打ってきました。その一つが、前章でも述べた2012年から開始のFIT制度です。FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。対象の再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスによる発電です。買い取りに要した費用は、再エネ賦課金として電気の使用者から電気料金とあわせて集められ、賄われています。

出典:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー・固定価格買取制度の仕組み』

2022年4月から再生可能エネルギーのさらなる拡大、安帝供給化に向け、FIP制度が導入されます。あらかじめ設定される「基準価格」と、市場に連動される「参照価格」の差を「プレミアム」として電気を売った価格に上乗せして再エネ発電事業者が収入として受け取るものです。これにより市場の電力の需給変化に合わせた運用を行う業者に対してインセンティブが確保されることになります。

出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!『FIP制度』が2022年4月スタート」(2021)

出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!『FIP制度』が2022年4月スタート」(2021)

FIP制度の下では、小規模な再エネ電源を取りまとめ、蓄電池システム等で需給管理を行い、市場取引を代行するアグリケーション・ビジネスが発展することが重要とみられています。それによって新規参入のハードルが下がり、投資効果の高い取り組みとして、さらに再生可能エネルギーが拡大していくことが期待されています。

出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!『FIP制度』が2022年4月スタート」(2021)

出典:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!『FIP制度』が2022年4月スタート」(2021)

電力の地産地消が拡大

改正地球温暖化対策推進法では、自治体の「ゼロカーボンシティ」宣言の実現のために、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取り組みを推進しています。再エネ活用事業の地域内での、円滑な合意形成が図りやすいしくみをつくっています。

さらに、災害時のライフラインの確保や地域活性化推進の観点から、自治体とエネルギー会社の共同出資により自治体新電力を設立する動きが広まっています。地域の分散型エネルギー、すなわち地域で作られた電力を買い取り、地域内に供給する、電力の地産地消が今後拡大していくとみられています。

FIT制度は一定期間を過ぎると買い取り期間が終了します。自治体新電力はそうした卒FIT電力の受け皿になり、地域経済の発展にも寄与しています。

出典:資源エネルギー庁「知ってる?『電力の地産地消』地域貢献で選ぶ、卒FITの新たな選択肢。」

出典:環境省『【概要】地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案』(2021))

3. 再生可能エネルギーに転換する企業のメリット

(1)脱炭素社会への適応

日本を含め、世界全体で、再生可能エネルギーを主電源とする未来を見据え、取り組みが活発化しています。企業の気候変動への対応を財務情報として開示するTCFDや、サプライヤーを含めた脱炭素への目標設定・取り組みを行うSBT、RE100等を通じて、企業の脱炭素経営は広がっています。大企業のみならず、中小企業にも脱炭素社会への適応は重要な経営戦略となっていきます。

(2)事業基盤の強化

世界的なESG(環境・社会・企業統治)投資の波は、金融機関の投融資や企業との取引において影響を及ぼしています。再生可能エネルギーに転換することは、環境への配慮ある取り組みをアピールするためにメリットになるでしょう。

4. まとめ:地域に根差した再生可能エネルギーの導入を検討しよう

再生可能エネルギーをはじめとした気候変動への対策を行うことは、企業の責務となりつつあります。再生可能エネルギーが普及していくためには、企業や地域での導入拡大が不可欠です。国はFIP制度をはじめとした、新たな施策や制度の導入を増やしていくでしょう。

化石燃料の大規模な発電施設は役割を縮小し、地域における再生可能エネルギーの役割は、今後ますます大きくなることが予想されます。各地域で活動を進めるみなさんも、地域に根ざした再生可能エネルギーの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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