「世界保健機関国際緊急援助隊熱傷災害診療ガイドライン作成委員会」活動報告 vol.1


World Health Organization (WHO) Emergency Medical Team (EMT) Technical Working Group on Burns「世界保健機関国際緊急援助隊熱傷災害診療ガイドライン作成委員会」活動報告
開催場所:1回目-Swansea(英), 2回目-Genova(スイス), 3回目-New Deli(印)
活動内容:国際緊急援助隊の熱傷災害における活動基準を作成する



このたび小倉崇以は、日本熱傷学会災害ネットワーク委員会の命を受け、World Health Organization (WHO) Emergency Medical Team (EMT) Technical Working Group on Burns(世界保健機関国際緊急援助隊熱傷災害診療ガイドライン作成委員会)に参加してきました。活動の開始は2017年の秋だったのですが、そこから会議を繰り返し、201812月をもって皆様に報告ができるレベルまで来ました。現在、我々の活動の記録は、提言書としてまとめられ、Publishへ向かっているところです。




WHOでは世界各地の大規模災害に対して、Emergency Medical Team(以下、EMTと略しますが)組織を立ち上げて派遣しています。EMTが変わるきっかけになった自然災害は、2010年にハイチで地震です。死者31万人以上という大災害でした。ここでEMT部隊の派遣がありましたが、派遣数がピークに達したのが発災から10日後でした。





 
これは国際的な災害援助のシステム構築ななされていなかったことが原因と言われており、その後、WHOが率先してその統制をとってゆくことなります。そして2015年のネパール地震では、これも死者8500名のこれも大災害でしたが、EMT派遣は発災から24時間以内に開始、そのピークも5日目と組織の統制が取れるようになりました。
 
EMTの役割について述べます
 


まず医療チームの役割をEMT type1、2、3に分けます。Type1はいわゆるクリニックレベルで、Type1(mobile)は、イメージでいうと日本DMATを指し、災害現場で患者をトリアージし搬送する役割を、Type1(Fix)は外来での通院治療業務を担います。Type2は入院や手術のできる一般病院レベル、Type3はICUもある大病院レベルの業務を担います。

また、Specialized teamは、熱傷などの特殊疾患を専門で行うチームとして編成され、必要に応じて追加派遣されてゆきます。実は20113月からはじまったシリアの内戦でもEMTは派遣されていますが、紛争地域においては安全な地域が常に変わること、新規外傷患者が常に増え続けることが自然災害とは違います。また、限られた資源の中での熱傷治療では、TBSA40%以上の重症熱傷はほぼ100%死亡しているという現実がありながら、更に災害医療における熱傷ガイドラインは存在していません。このような現状のなか、今回のミッションは、熱傷災害におけるEMTの活動をシステム化させるためのガイドラインづくりについて具体的に話し合ってきました。

WHOのリーダーは、EMT活動のプロジェクトリーダーであるイアン先生です。
今回の私のミッションのボスでしたが、彼は若いながらもWHOで精力的に国際活動のガイドラインをたくさん作っているカリスマ的存在で、図にあります通称ブルーブックという、災害時の活動指針のガイドブックを作成しています。

イアン先生は、部隊派遣のEMTガイドラインは大枠ができていて実際に活動も行なっているので、次に、熱傷に特化したガイドラインも作成しようとのことで動き始めました。

ということでWHOより日本災害医学会代表理事である、災害医療センターの小井土雄一先生へ熱傷ガイドライン作成の派遣要請があり、分野が熱傷に特化しているものであったため、その派遣について日本熱傷学会代表理事である齋藤大蔵教授へ話しがあり、日本熱傷学会から当院形成外科部長の林稔医師(日本熱傷学会学術委員会)と私(日本熱傷学会災害ネットワーク委員会)が参加のチャンスをいただきました。この場をお借りしまして、日本熱傷学会に厚く御礼申し上げます。
 
vol.2に続く・・・

 


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