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労働基準監督署の臨検とは?タイミング・調査内容・対策について解説

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更新日:2023.02.28

労働基準監督署の臨検監督に備えて、万全な準備をしておきたい企業の担当者は多くいらっしゃるでしょう。労働基準監督署の臨検監督は突然実施される可能性があり、是正勧告されることもあるため、臨検監督が実施される具体的な流れや調査対象は何なのかをしっかり把握しておく必要があります。

この記事では、労働基準監督署の臨検の調査内容や実施されるタイミング、具体的な流れなどを解説します。臨検監督で指摘を受けた場合はどのような措置が取られるのかも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

労働基準監督署の臨検とは

労働基準監督署は、労災補償・監督指導・是正勧告に関する役割を持っています。

労災補償は、労働安全衛生法に基づいた事業場への指導、労働者が業務・通勤の際にケガや病気になった場合の保険の申請と給付を行います。監督指導は、労働環境や労働条件が遵守されているかを事業場に立ち入って監督する業務です。是正勧告は、法律違反の可能性がある管轄内の事業場に立ち入り調査し、労働環境や労働条件などに問題がないかを確認します。その一環で臨検監督が実施されています。

臨検監督の概要

労働基準監督署とは|厚生労働省PDF資料
※画像引用:労働基準監督署とは|厚生労働省PDF資料

臨検監督とは、労働基準法や労働安全衛生法などの法律が守られているかを確認するために労働基準監督官が実施する調査です。臨検監督を担当する部署は、労働基準監督署の方面(監督課)です。臨検監督は、労働基準監督官が管轄内の事業場を訪れ、機械や設備、帳簿などを検査して労働者の労働条件などに法律上の問題がないかを確認します。

臨検監督が実施されるタイミングの詳細は、労働基準監督署の臨検の種類とタイミングの章で解説します。

準備しておくべき書類

企業は臨検監督に備えて書類を準備しておく必要があります。書類とは、労働基準法と労働安全衛生法のそれぞれを順守していることを証明するものです。主な書類は次のとおりです。

【労働基準法関連の書類】

  • ・企業の組織図
  • ・労働者名簿
  • ・労働時間制度等の別規程を含む就業規則
  • ・労働条件通知書
  • ・賃金台帳
  • ・シフト勤務表(変形労働時間制)
  • ・年次有給休暇の取得状況が確認できる書類など

【労働安全衛生法関連の書類】

  • ・定期健康診断の個人票や実施結果
  • ・産業医の選任状況や面接指導の実施状況などが確認できる書類
  • ・安全管理者や衛生管理者の選任に関する書類
  • ・安全・衛生委員会の議事録
  • ・安全・衛生委員会の調査審議状況に関する書類

特に、年1回実施の定期健康診断や、健康診断の実施日から3カ月以内に産業医への意見聴取を行うことは、法律で義務付けられているため、計画的に産業医の選任と健康診断の実施を進めましょう。

臨検監督で法律違反と判断された場合はどうなる?

臨検監督が実施され、指摘を受けた場合にどのような措置が取られるのでしょうか。下記の3つのケースが挙げられます。

法律違反と判断されたケース
労働者に危険があり緊急を要すると判断されたケース

  • 1. 法律違反ではないものの、改善が必要と判断されたケース
  • 2. 法律違反と判断されたケース
  • 3. 労働者に危険があり緊急を要すると判断されたケース

1のケースでは、行政指導の一環で指導票が交付されます。2のケースでは、行政指導の一環で是正勧告書が交付されます。企業は、臨検監督で指摘を受けた項目の改善を実行し、労働基準監督官へ是正報告書を提出します。

3のケースに該当する企業は使用停止等命令書が交付されるため、行政処分は免れられないでしょう。行政処分には法的な強制力があるため、停止命令に従わない場合は50万円以下の罰金もしくは6カ月以下の懲役の罰則が科せられる場合があります。

労働基準監督署の臨検の種類とタイミング

労働基準監督署の臨検の種類とタイミング
臨検監督は、定期監督・申告監督・災害時監督・再監督の4つのタイミングで行われます。それぞれのタイミングに臨検監督が実施される目的を解説します。

定期監督

定期監督は最も一般的に行われている臨検監督です。労働基準監督署が管轄している企業に対して調査を行います。

定期監督のスケジュールは、年度ごとの監督計画に任意の調査対象として組み込まれているため、労働者からの申告や労働災害の発生がない場合も定期監督の対象になります。主な調査の対象範囲は、労働基準法や労働安全衛生法を順守した運営が行われているかどうかです。

申告監督

申告監督は、労働者から申告を受けた場合に実施される臨検監督です。したがって、調査範囲が明確になっている定期監督と異なり、申告監督では労働者の申告内容を中心に企業の実情を調査します。労働基準監督官が申告内容と企業の状況を照合した上で、企業の実態に違法性があるのかを審議する流れで進められるのが一般的です。

申告監督は、労働者から了解を得た上で申告があったことを明かして、企業に呼び出し状を発行するケースと、労働者から申告があった事実を企業に明かさず、定期監督を装って実施する2つのケースがあります。労働者が申告する内容は不当解雇や残業代の未払いなどの例が挙げられます。ただし労働者からの申告内容だけでなく、定期監督と同じレベルで調査されることも少なくありません。

災害時監督

災害時監督は労働災害が発生した企業を対象に実施される臨検監督です。労働災害がなぜ発生したのか原因を究明し、対象の企業に再発防止の指導を行うことを目的としています。災害時監督が実施されるタイミングは、主に3つのケースが挙げられます。

  • 労働災害の発生によって被災者が亡くなった場合
  • 労働災害で同時に複数人が被害に遭った場合
  • 労働災害の被災者のうち、一人でも重度の傷害を負った場合

災害時監督は労働災害が発生したときだけでなく、事故報告書などの書類から労働災害の原因が労働安全衛生法の違反にあると疑われた場合にも行われます。

再監督

再監督は、上述した臨検監督で是正勧告を受けた企業を対象に実施される再検査です。再監督が実施される目的は、是正勧告を受けた違反内容が改善されていることを確認するためです。是正報告書の提出後に、違反内容が正しく是正されているかを確認する必要があると判断された場合に、再検査が行われます。

また期日までに是正報告書が提出されない場合や、改めて実態を調査する必要性が出た場合も再監督の対象です。いずれも、是正勧告書に記載されている是正期限の後に再監督が実施されます。

労働基準監督署の臨検における調査内容

労働基準監督署の臨検における調査内容
労働基準監督署が実施する臨検監督の調査内容を改めて確認しておきましょう。主な調査内容は一般労働条件と安全衛生に分けられます。それぞれの調査内容の詳細を以下で解説します。

一般労働条件

一般労働条件では4つの項目が確認されます。それぞれの項目は以下のとおりです。

  • 1. 事業所・労働者関係:事業所の所在地や事業内容、労働者名簿など
  • 2. 労働条件:労働条件通知書・就業規則の内容、就業規則の周知状況など
  • 3. 労働時間:労働者の労働時間の記録や時間外・休日労働の現状など
  • 4. 賃金:賃金台帳、時間外手当・休日労働手当、最低賃金の把握状況など

具体的には、就業規則の内容と実情が異なる場合や、労働条件を記載した書類を労働者に交付していない場合、長時間労働者に対する配慮がなく産業医などによる面接指導を行っていない場合などに、改善が求められるケースがあります。

安全衛生

安全衛生では、以下の2つの項目が確認されます。それぞれの項目の内容を解説します。

  • 安全衛生管理:安全衛生推進者や産業医の選任状況、安全衛生委員会の設置状況
  • 健康管理:定期健康診断の実施記録、健康診断結果の報告状況、事後措置の状況把握など

安全衛生で改善が求められるケースは、定期健康診断を同じ時期に実施していない場合と、衛生委員会を設置していない場合が挙げられます。定期健康診断は、労働安全衛生法によって年1回の実施が義務付けられており、毎年同じ時期に実施しないと法律違反になる可能性があります。

労働基準監督署の臨検監督の流れ

労働基準監督署の臨検監督は、臨検の予告・実施・結果の報告・是正報告書の提出の4つの段階を踏んで実施されます。臨検の予告から是正報告書の提出までの流れを以下で解説します。

1.臨検の予告

臨検監督は事前に調査日が知らされないまま労働基準監督官が企業を訪問し、即日中に実施されるケースと、電話やFAXなどで事前に調査予定日の連絡を受けてから実施されるケースがあります。労働者の申告をきっかけに臨検監督が行われる場合は、予告なしに実施される可能性が高いでしょう。なぜなら、企業によるデータ不正や証拠隠滅で、実態を把握できなくなるリスクを避ける必要があるためです。

基本的に臨検監督の拒否は認められていませんが、責任者や調査対象の当事者が不在で対応できないなどの明確な理由がある場合は、調査日程を相談できます。一般的な臨検監督では労働基準監督官が企業に足を運び、企業が必要な書類を準備してから調査が始まります。ただし出頭要求書が届いた場合は、企業が調査に必要な書類を労働基準監督署に持参して調査が行われます。

2.臨検の実施

臨検監督は2名体制で調査が行われるケースがほとんどです。労働基準監督官は調査前に自身の身分を明かした上で臨検監督を実施する目的を明示し、事業主や責任者の面会を要請します。臨検の調査内容や質問の順番などは明確に定められていません。調査の流れは以下のように行われることが一般的です。

労働関係の帳簿類の確認
事業主や責任者へのヒアリングの実施
勤務実態の確認
労働安全衛生法に関する状況の把握
事業場内への立ち入り調査と労働者へのヒアリングの実施

  • 1. 労働関係の帳簿類の確認
  • 2. 事業主や責任者へのヒアリングの実施
  • 3. 勤務実態の確認
  • 4. 労働安全衛生法に関する状況の把握
  • 5. 事業場内への立ち入り調査と労働者へのヒアリングの実施

臨検監督では労働関係の帳簿書類に目を通し、書類の不明点などを事業主や責任者から聞き取り調査をします。また労働者の勤務実績や労働安全衛生に関連する書類の内容確認、事業場への立ち入り調査などを実施します。現状把握のために現場で働く人の意見も参考にするためです。

3.臨検結果の報告

後日、労働基準監督署から調査結果が通知されます。通知内容は調査結果の内容によって異なり、改善点がある場合は指導票・是正勧告書・使用停止等命令書のいずれかが交付されます。指摘された項目がある場合は通知書に書かれている期日までに改善を行って、労働基準監督署へ是正報告をしなければなりません。

指導票や是正勧告書の交付は行政指導に留まっており、法的な強制力はありません。しかし、期日までに正しい是正を行わなかった場合は、労働基準監督官の権限で書類送検される可能性があります。臨検監督の調査結果が届いたら、通知書にある期日までに指摘された項目を改善し、速やかに是正報告を行います。

4.是正報告書の提出

改善の実行後は、是正報告書を労働基準監督署へ提出します。是正報告書の提出は、労働基準監督官から指摘された項目を改善したことを証明するためです。是正報告書のフォーマットの指定はありませんが、実施した改善内容がわかるように具体的にまとめる必要があります。改善内容の具体例は下記のとおりです。

【具体例1】就業規則の記載漏れを指摘された場合

  • 指摘を受けた○○の項目を追加
  • ○月○日に管轄内の労働基準監督署へ届出

【具体例2】定期健康診断後に産業医などによる面接指導の未実施を指摘された場合

  • 医師による面接指導に関する規程を○月○日に制定
  • 産業医を○月○日から導入

改善内容は、上記の具体例のように「いつ」「何を」「どのように改善したのか」を明確にして簡潔に記載しましょう。

まとめ

労働基準監督署の臨検監督は、管轄内の企業が労働基準法や労働安全衛生法などの法律を順守して運営されているかを確認するための調査です。臨検監督は書類をチェックして終わりではなく、事業場への立ち入り検査や聞き取り調査なども実施されます。

臨検監督で提出が求められる書類は、法律を順守していることを証明するために必要です。必要となる書類も多いため、普段から情報を整理しておく必要があります。

また、労働基準法や労働安全衛生法などの法律を正しく理解し、労働者が安心安全に働ける労働環境づくりに取り組むことが大切です。

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鈴木 健太
監修者
鈴木 健太
医師/産業医

2016年筑波大学医学部卒業。
在学中にKinesiology, Arizona State University留学。
国立国際医療研究センターでの勤務と同時に、産業医として多くの企業を担当。
2019年、産業医サービスを事業展開する「株式会社Dr.健康経営」を設立、取締役。

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