11月8日、衆院財務金融委で質問に答える鈴木俊一財務大臣

 岸田首相がこれまで主張してきた「税収増分の還元」をめぐって、還元の原資がないことを、鈴木俊一財務大臣が認めた。11月8日の衆院財務金融委員会での発言だ。

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 立憲民主党の階猛衆院議員がこの日の委員会で、自民党の宮沢洋一税制調査会長が所得減税は「還元ではない」と発言していることを踏まえて、鈴木大臣に「還元と考えているのか」と質問。鈴木財務大臣はこう回答した。

「すでに税収の増えた分については政策経費、国債の償還などに使っているわけで、減税をするとなると、やはり国債の発行をしなければならない」

 そして「総理の言う“還元”を行った結果、借金が増えるということは認めるのか」と再び階議員に問われると、鈴木財務大臣は「減税をしないときに比べれば、国債の発行はその分必要になると考えている」と認めた。

 鈴木財務大臣のこの発言が報道されると、SNSでは〈原資がなければ『還元』とは言えない〉、〈還元はウソで、借金を増やすだけだったのか〉〈グダグダ過ぎる〉などと岸田首相が掲げた「還元」に疑問の声が多数あがった。

 鈴木財務大臣の発言の意図にも注目が集まっている。岸田首相が支持率回復を意図して掲げた減税策について「還元ではない」「原資がない」などと発言すれば、批判が起こるのは必至だ。岸田首相が「還元」と言い出す前には当然、財務省とも打ち合わせをしているはずで、岸田首相は財務省にハシゴを外されたようにも見える。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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財務省などが岸田政権に攻勢をかけている