美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。

接吻 グスタフ・クリムト『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』より

クリムトといえば黄金! その影響はどこからきたの?

こちらはクリムトの描いた「接吻」という作品です。クリムトの作品群の中でも最高傑作と呼び声の高い作品ですね!

──うわぁ~。すごくキラキラしているんですね! これってまさか金ですか?

はい、その通り! この黄色く見える部分は全て金箔、背景にも金が使われているんです!

──なんとまあ豪華な! でもどうして金なんて使おうと思いついたんでしょうね。

これはいろいろなきっかけがあったと言われています。

例えばクリムトのお父さんが金銀細工師だったので金は割と身近なものだったのかもしれませんし、イタリアのラヴェンナという町を旅行したときに見たビザンチン美術の影響とも言われています。

──ビザンチン美術…? ってどんなのですか?

5世紀頃から1000年ほどにわたって描かれた様式なんですが、写実性よりも神やイエスの威厳を表すことに重点を置いた美術で、威厳を表すために金を多用していたんです。

──なんか顔が怖いと思ったらそういうことだったんですか(汗)。確かに威厳に関しては200%溢れていますね。

ちょっと溢れすぎですけどね(笑)。

あと、金の影響はもう一つ、尾形光琳の「紅白梅図屏風」から影響を受けているとも言われています。

──え! 日本の?! そんな時代に画家同士の接触があったんでしょうか?

いえいえ、彼らは生きた時代も違いますし、会うことはできないんですけどね。

ただ、1873年にクリムトの住むウィーンで「ウィーン万博」が開催されているんですが、どうやらそこでこの屏風が展示されたそうなんです。

そして、それを見たクリムトが影響を受けた…! ということですね。

──なんと! 日本の屏風から影響を受けてあの金箔になっただなんて、日本人として鼻が高いですね! ちょっと周りの人にも知らせなきゃ! 「みなさ~ん、このクリムトの金箔はね~」

ちょっと待ってください!(汗)。1873年というとクリムトはまだ11歳の頃

確かに影響を受けたとはいっても、それを直接的な理由とするのはすこし強引かなと思いますね。金を使う要素の一つになった、くらいが妥当じゃないでしょうか。

──そうなんですね…。ガックシ。

まぁまぁ、クリムトの一部になれただけでもいいじゃないですか♪ 

こうして金を多用するクリムトの作品「黄金様式」と呼ばれて、クリムトの代名詞にもなりました。

(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)