前澤友作氏Photo:JIJI

日本の民間人として始めて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し、12月20日に地球に帰還した前澤友作氏。超高額な「100億円の宇宙旅行」に対して「もっと他にすべきことがある」という批判が一部で上がっており、筆者もそれに同調する部分は大いにある。しかし、この一件を「金持ちの道楽」で片付けてもいけないと考えている。その理由をお伝えしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)

ジェフ・ベゾス氏、イーロン・マスク氏
前澤友作氏…なぜ宇宙を目指す?

「宇宙なう」

 2人分で100億円とも言われる巨額費用をかけて宇宙へ飛び出し、民間の日本人として初めて国際宇宙ステーション(ISS)での滞在を果たした前澤友作氏。衣料品通販サイト「ZOZO」の創業者として知られる前澤が、2021年12月9日(日本時間)にツイッターでつぶやいたのが冒頭の言葉だ。

 総資産額が2000億円以上とされる前澤氏としては、100億円程度は大した額ではないのかもしれない。だがISS滞在は12日間。1日当たり10億円近いコストは、庶民には手が届かない。

 宇宙でも前澤氏は話題を振りまいた。ウーバーイーツの特別配達パートナーを務めて宇宙ステーションのクルーに食事を届けたり、地球にいるソフトバンクグループの孫正義会長兼社長に電話をかけてみたり。地球帰還後の記者会見では、「地球を大事にしようと思った」「宇宙から地球を見ると、お考えもいろいろ変わるかもしれないので、たくさんの方々に宇宙に行ってほしい。特に国を動かすような偉い皆さまに」と語った。

 しかしなぜ宇宙なのか。

 10月14日にポッドキャストで配信された英BBCの番組「ニュースキャスト」でのインタビューで、英王室のウィリアム王子は宇宙旅行に目を向ける大富豪らを批判し、代わりに地球を救うことに時間と資金を投入すべきだと語った。「われわれは、世界で最も偉大な頭脳と知性は、移住するための別の星を見つける試みではなく、この惑星を修復する試みに充てる必要がある」と述べている。

 気候変動問題への早急な対処やSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる中、何をよそ見しているんだという批判だ。

 それにしても私たちは、何を見させられているのだろうか。

 今回の宇宙旅行に、科学技術の進歩的な意味や人類史的な意味は特にないようだ。前澤氏の感想は、地球にいる私たちの想像を全く超えていない。「地球を大事にしようと思った」のは、100億円かけないと気付けないものなのだろうか。宇宙から地球を眺めて、地球温暖化の様子が分かるのだろうか。

 むしろ、南極探検に出かけた方がよかった。前澤氏の宇宙旅行は、ロケット燃料でCO2(二酸化炭素)を大量に排出し、宇宙ゴミを増やして帰ってきたというのが実情だろう。

 今回の前澤氏の宇宙旅行にかなり否定的な感情を持っている私だが、科学的・人類史的な意味が弱くても、経済・経営の観点から見れば「金持ちの道楽」とは言えない大きな意味があることを認めざるを得ない。