ウィズ・コロナ時代にどう「場」をつくるのか
──実践を行ううえで「場」の持つ重要性も述べられています。これまではホンダのワイガヤや京セラのコンパなど、リアルの場に焦点をあてていましたが、ウィズ・コロナ時代には対面が難しくなりました。場づくりをどう考えればよいのでしょうか。
バーチャルにおいてもリアルな場と同等の文脈(Context)をつくることができると考えています。その時、何が肝となるかといえば、相互作用(Interaction)です。
ワイガヤにしても、なぜ酒を飲むかといえば、本音を引き出すためですし、コンパをなぜ畳の上でやるのかといえば、それは動きやすくするためです。
これをバーチャルに置き換えてみるとどうでしょうか。IT化が相当進んでいますから、大規模なミーティングから個別のチャットルームまで、相互作用を促すためにさまざまな仕掛けができるでしょう。
私の所属するハーバード・ビジネス・スクールも大きく進化しています。もともと授業では相互作用を重要視していたため、他大学に比べてIT化が進んでいませんでした。ですが、今回のコロナを受けて見直しました。時間や国境を超えて自由に発言できるようになり、非常に柔軟になりました。
日本の会社はピラミッドのような階層型組織となっています。そのため、皆で自由に言いたい放題言う場が必要です。
ワイガヤやコンパの本質は、階層型組織とは異なる文脈をつくろうということにあります。異なる階層の社員たちが意見交換をして「お前、そんなこと考えていたのか」などと気づくことができる。それが共感のある組織になっていくことでしょう。
場において重要なのは、リアルでもバーチャルでも、予期していなかった偶然の産物(Serendipity)を生み出せる空間づくりです。そのために、皆が言いたいことを言える場をつくり、思ってもみなかったことが発見できるようにする場を目指せばよいでしょう。
──「場」は共感を醸成する装置でもあるわけですね。竹内先生ご自身も、(取材の場所である)ここ「青山ツリーハウス」の開設に関われています。コミュニティスペース設置の目的は何でしょうか。
運営企業GlobalTreehouseにおいて、私は4人目の創業者として参画しました。日本の企業が30年ぐらい前の輝きを取り戻すには、何をしなければならないのか。そう考えて企業、団体に所属するリーダー向けプログラムを立ち上げ、メディテーションプログラムとイノベーションカリキュラムを軸としたのです。
やるからには、日本独自な方法がよい。共同創業者の一人、山田匡通が禅宗の管長ですので、欧米で流行っているマインドフルネスを取り入れることにしました。我々は、マインドフィットネスと呼ぶプログラムにしました。
また、日本の強みは、やはりチームの力にあります。だからこそ、チームで取り組む課題解決プログラムを用意しました。ここにはもう一人コラボレーターであるSYPartnersのキース・ヤマシタによるデザイン思考の知見も取り入れています。
12種類ある中から課題を解くのに最適なツール一つを選び、チームで1日かけて取り組んでもらいます。そのツールは、お弁当箱のようなイメージの木製の箱に入れ、準備するので「BentoBox」と呼んでいます。
──お弁当ですか。
10年ぐらい前でしょうか、世界経済フォーラムのダボス会議でジャパンランチセッションを開きました。2000人用のランチを用意して食べて片付けるまで1時間半。そこで、独デュッセルドルフの日本料理店にお弁当スタイルでお願いしたところ、非常に評価が高かった。
幕の内弁当だったので、お魚やお肉まで幅広いおかずの種類があり、美味しくて、かつ美的感覚に訴えかけるものでした。さらには、片付けまで時間効率も高かった。世界の人々が「ワオ、ベントーボックス」と喜んでいたんです。
今回の課題解決ツールも、種類の豊富さや1日で取り組む効率性等から、そう名付けました。将来はデジタルでの提供も行う予定です。
これらのコンテンツは日本発世界に向けたプログラムです。"Pioneered in Japan, Made for the World" だと考えています。この場から、コミュニティメンバーであるリーダーたちの交流を通じて、新しいイノベーションを起こしていきたいですね。
【著作紹介】
『ワイズカンパニー 知識創造から知識実践への新しいモデル』(東洋経済新報社)
学問を超えた理論と数多くの企業事例から、デジタル時代の人間の生き方と経営を考える。知識から知恵へ、イノベーションから持続的イノベーションへ。経営学の世界的名著『知識創造企業』著者両氏による四半世紀ぶりの続編。
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