実際に起きた障害者殺傷事件を題材にした辺見庸の小説『月』が映画化される。脚本・監督を務めたのは石井裕也、10代の頃から辺見氏の作品のファンであったという。主演は宮沢りえ、主人公の夫・堂島昌平をオダギリジョーが演じている。

 オダギリジョーはこの映画への出演を受け、迷いなく出演を決めたと振り返る。『舟を編む』『茜色に焼かれる』『アジアの天使』など複数の作品で築かれた石井監督への信頼について、作品について、そして役者として撮影に臨むスタンス、監督としての今後の活動を聞いた。


みんなが目を逸らしてきた部分に切り込んでいこうとする作品

――映画『月』のオファーが来た時に、どのように感じましたか? 実際の事件をもとにしている重厚なテーマに抵抗はなかったのでしょうか。

 石井監督とは付き合いが長いこともあって、石井さんだから安心して引き受けられると思ったのは確かです。人となりを知っているので、どういう気持ちでこの作品に向き合っているかを想像できるし、軽率な気持ちで扱っていい題材じゃないだけに石井監督なら適任だと思いました。

 この作品はとても鮮烈で、今までみんなが目を逸らしてきた部分に切り込んでいます。そんな大きな挑戦とも言える作品に自分を必要としてくれたことも嬉しかったですね。監督もスタッフも、もちろん僕自身も、この作品に関わった全員が大きな覚悟をもって参加していると思います。

2023.10.12(木)
文=あつた美希
写真=釜谷洋史