沖縄の美しさ見てほしい 「ちむどんどん」の黒島結菜
4月に始まったNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」(月~金曜、朝8時)の主演・黒島結菜は、役と同じく自身も沖縄出身。地元を舞台とした今作には格別の思い入れがあるという。インタビューで、故郷へのあふれる愛を語った。
「朝ドラのヒロインということには特別感はあまりないです。それよりも、地元の沖縄の話を朝ドラでできるというのがやっぱり特別かなと思います」
演じる比嘉暢子(ひがのぶこ)は、アメリカ統治下の沖縄本島北部やんばる地域に生まれ、個性豊かなきょうだいたちと、貧しくも心豊かに育つ。
朝ドラの主演と言えば、半年の放送期間中ほとんどの場面に登場し、物語をリードしていく存在だが、「大変なことはそんなに今のところなくて、大変だと思ってもそれを上回るものがあるので楽しくやっています」と、苦労の様子を見せず、事も無げに言う。自分の育った沖縄の素晴らしさを視聴者に届けられることが、とにかくうれしいのだという。
「初回の一番最初のドローンカット。(映像が)海から、わーっと、暢子がシークワーサーの木の下で立っているところにいく。あのカットが撮れたときはテンションが上がりました。沖縄の美しさを皆さんに見てもらえると。そもそも風の影響でドローンが飛ばないかもしれないという不安要素もあった分、すごく良いカットが撮れたので本当に思い出に残っています」。興奮気味に話す。
序盤でお気に入りのシーンがもう一つある。放送の3週目、暢子役が、子役から黒島にバトンタッチした直後の回。暢子が高校の友人と卒業後の進路について語り合い、社会人生活に胸を躍らせる。この場面も海のそばで撮影された。「海が、本当にきれいだったんです。そういうきれいなところで撮影できたのはうれしい」
沖縄の海は、思い出の場所だ。家も学校も海から近く、学校帰りにはよく海に寄った。「友達とおしゃべりしながら海に夕日が沈むのを見て」。今でも、沖縄に帰れば海へ行く。「ぼーっとしたり散歩したり。何でか分からないけど、ちょっと前向きになれる。リセットされて、『よし』って次に進めるので、すごく好きです」。コロナ前は、連休があれば、たとえ1泊でも東京から沖縄に帰って家族に会い、海を見た。
昨年11月から12月にかけて、沖縄でロケがあった。「やんばるの自然の美しさを改めて感じました。こんなに自然豊かで面白いところがいっぱいあるんだと」。地元は本島南部の糸満市。自分の知っている沖縄とはまた違った、北部やんばるの魅力を知った。
自慢の美しい風景に恵まれる一方、厳しく悲しい歴史を持つ沖縄。黒島も小中学生の頃から学んできた。
「沖縄の歴史や戦争について、小さい頃から『平和学習』をしてきました。でも大人になって、ふと思い出したんです。最近忘れてきているなって」。今作の主演が決まる前にそう自覚してからは、ふるさとの歴史を意識的に記憶に刻んでいる。
「大人になってからも知っておきたいなと思って、自分で資料館に行ったり、調べたりしているんです。知ることが一番大事なのかなと思います。過去を知って、同じことを繰り返さないように」
「でも、やっぱり大人になってから改めて勉強することってなかなか、きっかけがないと。このドラマでも歴史的なことが描かれるので、それをきっかけに勉強してみようとか、知ることのきっかけになったらいいなと思います」
沖縄の人物を演じるのは初めてではない。沖縄出身者としては、喜びと、少しのプレッシャーが入り交じるという。
「地元の沖縄の背景を背負ってお芝居ができるのは、その土地で過ごしてきた人だからできるものもきっとあると思う。そういう意味ではやりがいがあり、うれしいです」
「ただ今回で言えば、同じ沖縄でも、自分が過ごしてきたものとはちょっと違う言葉遣いがあったりして、ちゃんと沖縄の言葉をしゃべれているかなというプレッシャーが、ちょっとはあります」
そう明かした後で、またあっけらかんと言った。「でもまあ、そんなに気にせずやっているので。地元の沖縄のものをできるっていうのはすごくうれしいです」(野城千穂)